解説
「イツマ・ウエキ・タイラー」とは、吉岡平のライトノベル作品『宇宙一の無責任男シリーズ』の最終シリーズ『無責任三国志』の主人公の1人である。
第1シリーズ『宇宙一の無責任男』の主人公である、「ジャスティ・ウエキ・タイラー」の玄孫であり、
そして第2シリーズ『無責任キッズ』の主人公、「ビクトリー・キサラ・ウエキ・タイラー」の曾孫であり、
第3シリーズ『無責任カルテット』の主人公、「ジャスティ・エドワード・ウエキ・ハス・ヤマモト・タイラーIII世」こと「エド」の孫である。
その他、マコト・ヤマモト、シア・ハス、コウサク・カヤマ、ノリコ・バッハなど、『宇宙一の無責任男シリーズ』の主要登場人物たちの血を引く「『血』のハイブリッド」であり、
超絶美形かつ、超有能かつ、あらゆる面で万能な、タイラー一族の当主最有力候補者と謳われていた。
しかし、そんな恵まれ過ぎていた「彼」にも、本人でもどうにもならない「欠点」であり「弱点」があった。
それは、実は「男装の麗人」、つまりは「女性」であり、「彼女」である、という「現実」。
「彼女」の元の名は「ジョアンナ・ウエキ・タイラー」。
ラアルゴン人であった高祖母譲りの豊かな鮮紅色の髪を持ち、またその顔立ちは、高祖母の一人である「現・タイラー一族の長老」に似ていたという。
しかし、とある事件が原因で、ジョアンナを「殺し」、男性である「イツマ」として生きるようになる。
そのため女性として扱われる事と、男性と比較される事、
そしてなによりも「我が身が女性である事」を嫌い、憎んでいた。
それでも、高祖母からのラアルゴンの血と、タイラーや他の血縁者の、あらゆる能力や素質を受け継ぎ、
そして、「どうしても抵い切れない感情の起伏」と闘いながら、血のにじむような努力を積み重ね、
男性と互角に渡り合い、男性にも負けない程の実力者となっていた。
そして高祖父である「ジャスティ・ウエキ・タイラー」が発案した「銀河三分の計」の「計略の駒の1人」となり、
つまりは「無責任男候補者」の一人となる。
他の二人の「無責任男候補者」である「ドン・レオ・スレイ」と「イーサン・ベルファルド=タイラー」と出会い、様々な出来事や事件を通して、彼ら二人とも、男女の性別に問わず、平等かつ対等な好敵手かつ親友となっていく。
まあ、そのうち一人とは「性別問わず」という訳にはいかなかった、のではあるが。
そしてタイラー一族の兵器会社TAC社(タイラー・アームズ・コーポレーション)の経営者を経て、「タイラー一族の当主」となり、
最終的には「三国の一国」である、汎銀河共和国連邦の大統領にまで上り詰める事になる。
『無責任三国志』のネタバレ
以下、ネタバレのため、空欄を開ける。
「とある事件」のことについて
上述した「とある事件」、通称「アカネ館事件」について、簡単にではあるが記述する。
それは宇宙歴7084年。
少女「ジョアンナ」、11歳。
惑星ビシュラムに築かれていたタイラー一族の別荘「アカネ館」の、とある嵐の晩のこと。
ジョアンナは、「エド」の次男、つまりは叔父に当たる「ユズル」に「襲われてしまった」。
そのショックにより自分の中にあった「男性」が目覚め、そしてその夜以降、女性である「ジョアンナ」を「殺し」、男性「イツマ」として生きていく事になった。
ちなみに、本作の主人公の一人である「イーサン・ベルファルド=タイラー」は、この「ユズル」の「義理の息子」となっていた。
この事実を知ったベルファルドは、イツマの苦しみを知り、それでも友人として接してくれたイツマに感謝し、イツマの力になることを、「スレイ」と共に誓うことになる。
その要因:タイラーの原罪
この事件の直接的な原因は、その叔父の「ユズル」が「幼女にしか興味を抱けない性質」であったが故に起こってしまった事件であった。
要は彼は、ロリコンだったのであった。
さて、その「ユズル」の曾祖父、つまりはイツマの高祖父である「ジャスティ・ウエキ・タイラー」であるが、
彼は、このような性質をもっていた。
実は原作版のタイラーは、「ロリコン」であったのだ。
タイラーが原作版第1作目『無責任艦長タイラー』で、神聖ラアルゴン帝国の捕虜となり、時の皇帝「ゴザ16世」ことアザリンに初めて謁見した際に、この「ロリコン」の性質であるが故に、当時11歳であったアザリンに、一目惚れをしてしまったのだ。
これが要因の一つとなり、タイラーとアザリンは「ペットと飼い主」以上の縁を結ぶ事になる。
その一方でタイラーは、「幼女以外の女性にも興味を持てた事」(でなかったらユリコ・スターとは結婚していない)。
「幼子が育つのを見守る事を楽しむロリコン」であった事。
そしてアザリンへの恋慕の情を「身の程知らずなもの」と認識していたこと。
それらの要因のため、タイラーは「アザリンへの想いを遂げること」は無かったのである。
しかし、彼の中に潜んでいた「その因子」は受け継がれてしまい、曾孫の代で、最悪の形で現れる事になってしまった。
そして「ジョアンナ」は、アザリンがタイラーと出会った時の年齢と、同い年の11歳で、災禍に見舞われてしまった。
しかもアザリンと縁の深い、彼の場所で。
(惑星ビシュラムはラアルゴン帝国の保養惑星として、アザリンの幼い頃の思い出の地なのである。原作版第1シリーズ「アシュラン編」を参照のこと)
これは、因果は巡ってしまった、ということなのであろうか。
タイラーは、『無責任三国志』第2巻『冷たい三角関数』のP128にて、「ジョアンナ」に対して謝罪をしている。
もしかしたらタイラーも「この事実」を自覚していたのかもしれない。
その後:「ジョアンナ」を掬った男
本編では「イツマ」は男性として生きたが、そんな「彼女」に惚れてしまった男たちがいた。
1人はイツマの側近である「キリヒト・アキヅキ」。
そしてイツマと同じく「無責任男候補者」の1人であった「ドン・レオ・スレイ」。
そして、TAC社に入社した「銀河工科大学 秀才三羽烏」の1人であった「オリヴァー・ナサニエル・ポコ・カイゼル・ドミナントⅤ世」こと、通称「ドミン」。
ドミンはTAC社に入社し、イツマ直属の開発部員として働いている内に、「イツマの正体」に気づき、そして「女性として」惚れてしまう。
またイツマの方もドミンのことを「不思議と男性としての嫌悪感を感じない相手」となっていった。
ある日、意を決したドミンは、イツマにプロポーズをし、そして「彼女」に受け入れられた。
しかしその直後、イツマを襲った銃撃から身を呈して庇い守り、その凶弾に倒れてしまう。
こうして、タイラーでさえも掬えなかった「ジョアンナの心」を、1人の男の真摯な行動が掬うことになったのである。
関連タグ
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:もう1人のイツマ