CV:日笠陽子
魔法少女リリカルなのはシリーズ劇場版第3弾『魔法少女リリカルなのはReflection』初出のキャラクターで、ストーリー設定のほとんどをPSPゲームシリーズの『THE GEARS OF DESTINY』から引き継いでいる本作において唯一とも言える完全新規キャラクターである(前2作は“リビルド”されたとはいえ概ねTVシリーズに拠ったものであるため、ある意味「劇場版初」および「劇場版発」のダブルミーニングと言える)。
概要
惑星エルトリアの廃墟化した教会に住んでいた少女。
自身は生きた人間ではなく教会内部に置かれた石板状のプレートに宿っている人工知能のインターフェースのような存在であり、キリエ・フローリアンとは彼女が幼い頃に出会ってからの親しい友人でもあった。
一方でキリエには自分の存在は他の誰にも内緒ということにしており、二人の関係は姉のアミティエを含め家族の誰も知らなかった。
当初は石板本体からほとんど離れることはできなかったようだが、キリエの協力で石板の機能を拡張したことで現在ではより広い範囲での現実的な行動が可能になっている。それに加えてエルトリアのフォーミュラシステムのみならず異星の文明である古代ベルカのテクノロジーで作られたデバイスにもアクセスしてそれらを操作することができ、さらに地球の機械を戦闘ロボットへと作り変えるといった独自の能力をも有している。
滅亡寸前のエルトリアと病に倒れた父のことで思い悩んでいたキリエに「地球にある“エグザミア”を見つけ出せば星も父も救うことができる」と教え、そのエグザミアを求めたキリエをサポートするために自身の媒体となる石板の子機端末を持たせて彼女と共に地球に赴いた。
地球に到着すると手始めに八神はやての持つ夜天の書を狙って彼女を襲撃、キリエとの連携で高町なのはとフェイト・テスタロッサも退けて夜天の書を奪うと先に戦ったなのは達のデータを元にして夜天の書からディアーチェ、シュテル、レヴィら3体のマテリアルを呼び出す。
そのマテリアル組をなのは達にぶつけて向こうの注意を引きつけている間にキリエと共に本格的なエグザミア捜索を開始、遂にその在り処を突き止めた。
ここから先は『魔法少女リリカルなのはReflection』と『Detonation』のネタバレになります
しかし、エグザミアを発見するや態度を豹変させてキリエを裏切り、エグザミアを強奪するとその中に封印されていた少女「ユーリ」を解き放った。
最初は自分のことを石版に意識が封じられた人間だと言っていたが、彼女の真の正体はそのエルトリア再生委員会が開発した「IR-S07」という名称の生体テラフォーミングユニットで、僅かな資材から様々な生体および機械製のドローンのようなものを生み出すことができる生産システムそのものと呼べる存在である。
生みの親であるフィル・マクスウェルというエンジニアに育てられ、後に当時エルトリアに転移していた夜天の書とそのインターフェースであるユーリと出会い、彼女とも仲良くなり共に惑星再生のために活動していた。しかし、ある時ユーリは暴走を起こしてフィル以下再生委員会の人間を虐殺、止めようとしたイリスとの交戦の末に逃亡し、残された彼女は“自分を裏切って全てを奪ったユーリに復讐すること”を目的に思念だけの状態で石版の中で生き続けていた。
以前こそ確かに困っている人を見ると放っておけない優しい性格であったが、現在ではユーリに対する憎悪の所為か目的のためならいかなる犠牲も厭わず、あまつさえ長年の親友すら騙して傷つけるような冷徹で歪んだ性格へと変わり果ててしまっており、そのユーリが封じ込められているエグザミアが地球にあることを突き止めるとそのエグザミアを探し出すためキリエに「エグザミアがあれば父も星も助けられる」という虚言を吹き込んで利用していたに過ぎなかった。
その直後に駆けつけたクロノ・ハラオウンの率いる管理局部隊に包囲されるも、ユーリの能力を介した結晶体攻撃でクロノ達にダメージを与え、同時に彼らからエネルギーを吸収して完全な実体化および自身の戦闘形態とも言うべき“武装侵攻形態アスタリア”への強化を果たす。
そしてエグザミアから開放したユーリを打ち込んでおいたウイルスコードによって自分の操り人形へと変えてしまい、挙句の果てには「彼女に自分と同じ絶望を与えるため」と称してその悪意の矛先を地球そのものへと向け始める。
一時撤退した後は自身の能力を使って「群体」(群体イリス)と呼ばれる様々な形態や武装を持つ分身体および「機動外殻」なる戦闘兵器を多数生み出し、これらとユーリと合わせて地球への攻撃を画策、それを阻止しようとするなのは達管理局と向こうに協調したマテリアルらを相手に激しい戦いを繰り広げる。
(イリスが作り出した群体の一部、劇中ではこれらも含めて10体近く登場している)
だが、ユーリはマテリアルの尽力によってその制御から脱してしまい、この直後には死亡していたと思われていたフィルが突如現れ、彼にユーリを連れ去られてしまう。
さらに再会したキリエから過去の事件に関して管理局がこれまでの情報を総合して突き止めた“フィルがイリスとユーリを軍事兵器に悪用しようとして結果的にユーリの自己防衛により倒された”という真相を明かされ、全てはイリスに自身を復活させるシステムを組み込んでいたフィルが彼女に偽の記憶を植え付けてユーリを狙わせるのと同時にイリスの実体化に合わせて自分も蘇るために仕組んだ計画であったとし、自身もまたキリエと同じく他人に利用されていただけの傀儡でしかなかったことを思い知らされる。
復活を遂げたフィルは今度はイリス本体とその群体、そしてユーリを操ってかつての野望を果たさんとし、イリスもまた強制的にキリエと戦わせられる。自分の全てを否定され、半ば自棄気味に自分を見捨てるように叫ぶが、キリエにとってはそれでも自分の友達であるとし、強い決意を持ってイリスを救うため彼女を押し留め続けた。
やがてなのはの活躍によってフィルが倒されたことで彼女とユーリはその支配から開放され、その後ユーリとマテリアル達はエルトリア復興のためにエルトリアに移住することを選ぶ中、自身は騙されていたとはいえ、キリエとユーリに今までのことを謝罪し、エルトリアには戻らず皆と別れる旨を伝えるが、二人からはこれまでと変わらぬ友人として何時かの再会を期待された。
事件収束後は管理局に投降したが、数年後か十数年後には釈放されたようで、再生の進んだエルトリアに帰還、キリエらとの再会を果たすことができ、改めて偽りのない本当の友として暮らすことになった。
余談
彼女を演じた日笠陽子は今から約10年前に『魔法少女リリカルなのはStrikerS』出演のためのオーディションを受けたがその時は落選したといい、結果的にではあるが本作においてようやくのシリーズ初出演を果たした形となっている。
あと『Detonation』にて登場したイリス群体達の声も全て日笠一人で担当している。
イリスの特徴が「目的の為なら手段は選ばない」、「真の目的は敬愛する父の為」、「正体がアンドロイド」、「最終的に敵対した相手と和解する」などゲーム版のキリエに似た部分もあり、そういう意味ではもう一人のキリエとも言える。
ちなみにイリス役の日笠と相方であるキリエ役の佐藤聡美は以前に『けいおん』を始め、『生徒会役員共』などでも近しい間柄のキャラ同士として共演しているのだが、その劇場版が『Reflection』とほぼ同時期に公開されており、この二作を続けて見た観客の一部は片や“一方的な信頼と身勝手な思惑で繋がった歪な関係の二人”、片や“互いに過激な下ネタを飛ばしまくる天然痴女のコンビまたは仲良く漫才をする幼馴染コンビ”という極端な内容のギャップを味わうことになったとかならなかったとか。
偶然とはいえ、ベストキャスティングとも言える。
『魔法少女リリカルなのはDetonation』のパンフレットにある漫画版『魔法少女リリカルなのはINNOCENT』では「イリス・セブンフィールド」という人間として登場し、親友のキリエとの仲良しっぶりを見せ、スタイルの良いフローリアン姉妹を羨ましがっていた。