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概要編集

ロシアの口承叙事詩「ブィリーナ」に登場する英雄で、キエフ大公(史実におけるウラジミール1世)に仕えたとされる。

彫像などでは剣を持っている事があるが、ブィリーナ作中ではで戦う事が多い。


名前は「ムウロム人イリヤー」の意味。ムウロムとは現在のロシアヴラジーミル州にある都市、イリヤーは旧約聖書に登場する預言者の名前から取られた。また、預言者イリヤーはスラブ神話最高神にして雷神ペルーンと習合した為、彼の名を冠するイリヤー・ムーロメツにもペルーンの影響が見られる。(事実、彼の仕えたウラジミール公もかつてはスラブ神話の神々、特にペルーンを信仰していた。)


貧しい老夫婦の間に生まれ、30代までは手足が不自由だったが、ある時、3人の旅の老人が霊薬を与えるとイリヤーはたちまち自由に手足を動かせるようになっていたが、あまりにも効果が絶大過ぎたので、彼らはイリヤーの力を薄めてこの力は第一に正教の為に、第二に邪悪を倒す為に、第三に弱き者を助ける為に使いなさいと言い残して去っていった。


旅の途中、キリスト教以前の古代神話の流れを汲む騎乗しているまで巨大な巨人スヴャトゴルと出会った彼は、人間である妻に誘惑された挙句に脅迫された事を正直に話した所、妻を追い出した後に彼の正直さを大層気に入って、義兄弟の契りを結び、旅を共にする。

しかし旅の途中でスヴャトゴルは瀕死の重傷を負ってしまい、死の間際にイリヤーに力を分け与えると崩れ去った。


その後彼はブリャンスクの森で旅人の声を真似しては金品を盗む盗賊「怪鳥ソロウェイ」、キエフの街では幽霊や巨人イードリシチェを退治するなどの武勲を上げた。


しかし、そんな無敵の強さを誇るイリヤーにも最期の時が訪れる。タタール軍との戦いで部下が「我々ならば天軍にさえ勝てるだろう!」と慢心、あるいは主を侮辱するかのような言葉を吐き捨てた為に、死んだ筈の敵軍が蘇ってしまう。これはダメだと悟ったイリヤーは天に祈りを捧げると何事もなかったかのように辺りは静けさを取り戻し、役目を失ったイリヤーは石となって果てた。


関連作品編集

  • 「豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服」

 旧ソ連時代に作られた特撮映画。この作品に登場する三つ首竜ズメイは日本の怪獣映画でもポピュラーな怪獣キングギドラのモチーフになったとされる。一応、原作の「ブィリーナ」においても三つ首竜を退治するエピソードはあるものの、竜退治をする英雄はイリヤーではなく、ドブルイニャ・ニキチッチという英雄である。


 Fateシリーズの外伝作品で、本作にはいわゆるサーヴァントではなく、「英雄史大戦」という劇中劇の登場人物として登場。上記のスヴャトゴルや名前の由来に関する逸話から巨大化する設定になっている。


 魔女やお化けが大祖国戦争に関わる速水螺旋人作の架空戦記漫画。

民衆のため一兵士として参戦し、ナチスのグリム機関によって復活した不死身のコシチェイやズメイと戦う。


  • 交響曲第3番イリヤー・ムーロメツ

 グリエールの交響曲1911年完成。

 第1でイリヤーの誕生と成長、第2は追剥ソロウェイとの戦闘、第3では宴会、第4ではイリヤーの最後が語られる。特徴はとにかく長いこと。総演奏時間平均80分は交響曲の中では最大の部類に入るため、要請で45分の短縮版で作られた。このため、原典版と短縮版の二つがあることに注意。


イリヤー・ムーロメツに由来する物編集

  • イリヤー・ムーロメツ

帝政ロシアの時代に作られた、世界初の四発爆撃機。その巨大な機体から編成された爆撃機部隊は「空中艦隊」と呼ばれたとか。まだ航空機の生産体系が未発達だったこともあり、一機ごとに仕様がいくらか異なっているのもまた「軍艦ぽい」と言えなくもない。なお爆弾は機内に搭載し、乗員が一個ずつ手でポイポイ落とすという原始的な爆撃方法だが、当時としては珍しくない。ちなみに開発者は後にアメリカへ亡命した、シコルスキー社の創業者となるイーゴリ・シコルスキー。


関連タグ編集

ロシア 叙事詩 英雄 露国面

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