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概要編集

かつて北大西洋と北極海に分布していたチドリ目・ウミスズメ科に分類される海鳥の一種であり、1840年代又は1850年代頃に絶滅した。


学名「Pinguinus impennis」の通り、本来はこの鳥が「ペンギン」だった


ウミスズメ科の中では抜きん出て体が大きな種類で、全長約80cm・体重5kgに達する大型の海鳥だった。


腹の羽毛は白く、頭部から背中の羽毛はつやのある黒色だったが、くちばしと目の間に大きな白い斑点が1つあった。また、若鳥は首が白黒のまだら模様だった。くちばしは大きく、横に数本の溝があったとされる。翼は長さ20cm程で、南半球のペンギン同様に飛ぶ事が出来なかった。脚は黒くて短く、極端に尾の近くに寄っていた。


ニューファンドランド島からグリーンランドアイスランドアイルランドイギリス、スカンジナビア半島北岸迄の北大西洋、北極海に分布し、大きな群れを作って生活した。


海中に潜水してイカナゴ等の魚類やイカを捕食した。

外見も動作もペンギンに似て、水中では短い翼と脚を使って高速で泳ぐ事が出来たが、陸上では体を立ててよちよちと歩いた。

人間に対する警戒心もなかったといわれるが、時間が経つにつれてその逆になったともされる。


繁殖期は6月頃で、島嶼部の断崖に上陸して1個の卵を岩肌の上に直に産んだ。

卵は長径13cm、重さ400gもある大きな物で、黄白色の地に黒い斑点やすじがあった。

又、断崖から落ちない様、ウミガラス等と同様に一端が尖った洋梨型だった。

卵は両親が交代で抱卵し、孵化迄には6~7週間もかかった。

ペンギンと同様、非常に親子の信頼関係も強かったとされ、一説には雛を背中に乗せた親鳥が獲物のいるポイント迄雛を連れて行ったと言った目撃例もあるといわれる。

又、ペンギンの様に親が獲物を取ってそれを吐き出してヒナに与えていた、とされる説さえある。

オオウミガラスは、世界で初めて「ペンギン」と名付けられた鳥であるが、近縁種ではない。

むしろ、ウミガラスオオハシウミガラスをはじめとするウミスズメ科である。

何故北半球に住んでいたオオウミガラスが南半球に住むペンギンとここ迄類似した生活形態を取っていたのかは詳しく解明されていない。

それ以外にも、正確な生息数や生活の様子等、この鳥についてはほとんど何もわかっていない。


絶滅編集

かつては数百万羽もいたとされるオオウミガラスだが、少なくとも8世紀頃から、卵や肉、羽毛や脂肪を採取する為に捕獲されていた。

小氷期等も個体数減少に関わったとされるが、その後の大規模な乱獲が激減の最大の原因とみられている。

本種はただでさえ繁殖力が弱かったのに加え、人間を恐れず好奇心から自ら近づいていったため、乱獲の影響を受けやすかった。


1534年、フランスの探検家ジャック・カルティエの隊がニューファンドランド島に上陸して1日で1000羽以上のオオウミガラスを虐殺し、この話がヨーロッパ中に広がった事で各地の海岸で無秩序な狩猟が行われ、卵が持ち去られる事となった。

1820年頃になると、生息地は繁殖地周囲を崖で囲まれていた為人が近づく事が出来なかったアイスランド沖のウミガラス岩礁だけになってしまった。

しかしこの岩礁も1830年に海底火山の噴火に伴う地震によって海に沈み、この災害から生き残った50羽程が近くのエルデイという岩礁に移り住んだ。


この時点で既に絶滅寸前であった本種だが、当時は保護されるどころか、それ迄ありふれた生き物と見做されて碌な標本がなかった事から、多くの収集家や博物館が「絶滅する前に標本を入手しなければ」と高額な懸賞金をかけた事で、一攫千金を狙った強欲な人間達によって残った個体も次々と狩られていった。

そして1844年7月3日6月3日4日ともされる)、エルデイで抱卵中の1組のつがいが発見され、2羽は急いで逃げようとしたが、それと同時に数人の発見者によってオスは棍棒で撲殺、メスは絞殺された。

残された卵も殻が割れてしまい、海に投げ捨てられてしまった。

これ以降オオウミガラスの生体は確認されなくなってしまった。


現在では80体余りの剥製、20体余りの骨格標本と70個余りの卵殻が知られるのみである。


絶滅したと分かっていても探し求める人は少ないが存在し、1844年以降も、この鳥の目撃情報が何度かあるが、どの情報も確かな物ではない。


登場する創作編集

関連タグ編集

絶滅動物  ペンギン

ウミスズメ科 ウミガラス オオハシウミガラス


ブブリィ/ブーブリー:スコットランドで伝承される、人間や家畜を食べる程大きい水鳥の魔物で正体説がある。

ジョヒ:古代中国の地理書『山海経』に記載される、この鳥に似ているともいわれる怪魚。

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