曖昧さ回避
「カールグスタフ」とは……
- スウェーデンに見られる人名。スウェーデンの現国王もこの名前。(カール16世グスタフ)
- スウェーデンの「カールグスタフ・ファクトリー」にて開発された短機関銃「カールグスタフ/m45」。
- 同じくスウェーデンのFFV社で開発された無反動砲。本項で解説する。
カールグスタフ無反動砲の概要
スウェーデンの航空機メーカー、サーブ(SAAB)社が同じスウェーデンの軍需企業、ボフォース社を買収して生まれた新たな軍需企業「サーブ・ボフォース ダイナミクス社」が生産する、クルップ式の無反動砲。
口径は84mm。24条のライフリングが刻まれており、砲弾の回転で飛翔を安定させる。
砲身は特殊鋼製で重量が約16㎏(M1)にもなるが、改良型のM2で約14㎏、そしてM3では複合材料などの導入で約8㎏、M4ではさらにチタン材料と炭素繊維複合材を導入したうえ全長が短くなって約7㎏と、初期型と最新型を比べれば半分以下にまで重量を低減することに成功している。ただし、M2以降の仕様では使用回数や耐用年数がある程度低く抑えられたものになっている。
薬莢を用いた装填方式で雷管は薬莢側面にある「リムファイア」式のため、撃発装置との位置を合わせ易いように薬莢には切欠きが、砲身側には噛み合わせるための突起がある。また、クルップ式の欠点として後方爆風が激しいことから射手の後方にはある程度の開けた空間が必要になるため、建屋内やトーチカなどの閉所から射撃することは危険である。
また、本砲の対戦車兵器としての後継としてパンツァーファウスト3が開発され、本砲は照明弾発射などの限定的な任務へシフト(が、そのパンツァーファウスト3も一部ではその後継装備である新型無反動砲へ更新されつつある)されている。
しかしながら、日本の陸上自衛隊ではまだまだ現役。と言うより再調達が開始(後述)されている。
ちなみに、本砲は弾薬を後方から装填するせいで、砲口径を超える大口径のHEAT弾を用いることができず、貫徹能力に限度がある。
そのため、砲弾を二つに分けて、前後から装填することで、この問題を一応は解決したFFV-597 132㎜ロケットアシストHEAT弾が作られているが、装弾に時間がかかるうえ、装填時の総重量が重くなり過ぎるとして採用されずに終わっている。
陸上自衛隊におけるカールグスタフ無反動砲
日本の陸上自衛隊では、本砲のM2を「84mm無反動砲」名義で採用・配備している。
これは陸上自衛隊が範を取っている米国陸軍の装備にカールグスタフがあったためである。
隊員間の通称は「84RR(RR:Recoilless Rifle)」「ハチヨン(口径である84mmから)」「カール君」。
陸上自衛隊においてこれを携行する隊員は小銃ではなく、拳銃を携行する。
本砲はM20A1B1 スーパー・バズーカ(自衛隊での正式採用名:89mmロケット発射筒M20改4型)の更新用に、当初は輸入、のちに豊和工業によるライセンス生産により調達された。
イラク人道復興支援活動においてイラクのサマーワに派遣された時には自動車爆弾による自爆テロ等への対処用に宿営地へ持ち込まれた。
陸上自衛隊において使用可能な弾種は榴弾、対戦車榴弾、照明弾、発煙弾の4種類。ほかにも鏃(やじり)状の散弾をばら撒くフレシェット散弾が砲弾ラインナップとして存在し、アメリカ陸軍レンジャー部隊などでは使用されているが、陸上自衛隊では導入していない模様。
すでに旧式化しているため、110mm個人携帯対戦車弾(LAM)や01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)などにより更新が図られているが、後方支援職種など一部部隊では現役。
旧式化したとはいえ、対戦車(対装甲車両)戦闘のみにしか使えないLAMや軽MAT(そもそも軽MATは熱源を探知して初めてシステムが起動するため、起動中の装甲戦闘車両にしか使えない)よりも弾薬の多様性及び薬莢を用いているので装填が容易な利便性があるため、平成24(2012)年以降、本砲のM3型を「84mm無反動砲(B)」の名称で調達を再開し、M2型を装備する部隊へ配備されている。ちなみに、M2型以降への更新が遅れていたのは軽量化メリットよりも耐用年数の削減などを自衛隊では問題視していたためである。
関連動画
USA Military Channel
【カールグスタフ無反動砲】1日6発限定!M3&最新M4(M3E1)を大量配備する米軍(2019年5月)