CV: 納谷六朗(カセットブック版) / 中村大樹(OVA版) / 安元洋貴(日5アニメ版)
概要
第一次アトロパテネ会戦当時パルス国に12人いた万騎長(マルズバーン)のひとりで、初登場時29歳。後に大将軍(エーラーン)となり、アルスラーンの十六翼将のひとりに数えられる。
二本の剣を自在に操って勇猛に戦うことから「双刀将軍(ターヒール)」の異名を持つ。
りっぱな顎鬚が特徴で、告死天使(アズライール)・告命天使(スルーシ)と名づけた二羽の鷹を従えている。
パルス王朝に代々仕える武門の名家という出身に加え、穏やかな気性と細やかな配慮から、人々からの信望は厚い。早くから王太子アルスラーンの素直さに好感を持ち、その傍らになくとも全面的に支援をしてくれる頼もしい味方として描かれている。
経歴
万騎長のなかではダリューンに次いで二番目に若いが、その勇名は「生ける城壁」として国内外に轟いている。
ミスル国との小競り合いが続く西方国境で縦横無尽の活躍を見せ、「双刀将軍キシュワードあるかぎり、翼があろうともディジレ河をこえるあたわず」と謳われた。ミスルがパルスと講和を結ぶにあたり、五つの砦と引きかえに、キシュワードを西方国境から東方国境へ配転するよう要求したことからも、彼がいかに敵から恐れられていたことがわかる。
一方で、告死天使(アズライール)・告命天使(スルーシ)の二羽の鷹を通じて、王太子アルスラーンとは個人的な親交を持っていた。
第一部
第一次アトロパテネ会戦時点では、キシュワードは万騎長バフマンとともに遥か離れた東方国境ペシャワール城塞にいた。会戦後、ペシャワールが要するパルス軍の兵力は国内最大であったが、アトロパテネでのパルス軍敗北や、王都エクバターナ陥落の報を受けても、国内の諸勢力を見極めるというバフマンの消極性と隣国シンドゥラへの牽制の必要性もあって、軍事行動を起こすことができなかった。
やがて王太子アルスラーン一行がペシャワールにやってくると、キシュワードは喜んで彼に従う。ナルサス発案のシンドゥラ出兵にあたってはペシャワール城塞に残留、以後は愛鷹の告死天使(アズライール)をアルスラーンに預ける。その後のルシタニア追討に参戦して数々の勲功を立てるが、国王アンドラゴラス三世とアルスラーンの対立が発生すると、アルスラーンへの個人的な好意との板挟みになりながらも国王への忠義を選んだ。ただし告死天使をアルスラーンに預けたり、捕虜のジムサを逃がす手引をしたりするなど、個人的な信条に基づいて、アンドラゴラス三世の許容範囲を冷静に見極めながら、その意に沿わない行動をとる場面もある。
アンドラゴラス三世の下でふたたび王都奪還に向かうキシュワードは、ナルサスから秘かに預かった策をもとに敵を撃破していく。最終的にはアンドラゴラス三世の不慮の死によって王太子軍に合流した後は、ともに王都奪還を果たした。
第二部
国王アルスラーンによってパルス国の軍事の最高責任者である大将軍(エーラーン)に任ぜられる。アトロパテネ会戦で討死した万騎長マヌーチュルフの娘ナスリーンを娶り、すでに一児アイヤールをもうけている。原作小説15巻現在では、十六翼将の中で唯一円満に家庭を持つことのできた人物である。
就任後は大過なく務めを果たしていたが、魔軍との戦いのなかで立て続けに僚将を失ったことから強い自責の念に駆られる。自殺を懸念したナルサスの勧めを受けた国王アルスラーンは、キシュワードの大将軍職を解いた。以後、幕下の一武将として軍務に当たることになる。
荒川弘版との差異
荒川弘版ではまだ第二部の内容に入っていないが、キシュワードの妻子としてナスリーンとアイヤールが登場している。
性格
キシュワードの一族はパルス建国以来王室に仕えてきた武門の名家で、キシュワード以外に5人の万騎長と1人の大将軍を輩出しており、パルス国内でも最も格式の高い武人の家であると言ってよい。それは同時に、彼が骨の芯まで王室の廷臣であることを意味する。
謹厳実直で責任感が強く、クバードからも、地の文でも「苦労人」と評される。一方でアルスラーンの微行(おしのび)を黙認するなど、細かなことをいちいち咎めるようなことはしない度量の広さを持ち合わせる。
日5アニメ版でキシュワードを演じる声優の安元洋貴は、原作小説の読者である。