クックック、殺せ
くっくっくっころ
創作物において、どれだけ敵があくどいのかを端的に説明してくれるセリフであり、同時にその人物がただの雑魚キャラなどではなく、一定の地位を築いており「命令」を下せる立場にあるということを読者・視聴者にお知らせしてくれる大変便利なセリフでもある。
このセリフは大抵最終通告として扱われることが多く、言わば「冥土の土産に教えてやろう…」に代表される接頭文と対を成す〆のお言葉であり、その間には「どうしてこのような状況に陥ったか」「今現在どのような状況にあるか」「今後の敵集団の展望」などをベラベラと解説してくれるため我々受け手側としても状況整理のために非常にありがたい展開とも言える。
往々にして通達される刑量に対して成功率は反比例の関係にあり、例えば「クックック、連れて行け」などの軽い処断であれば概ね成功するが、本項に示すような「クックック、殺せ」という非常に重い決断を下した場合は「味方の献身による英雄的行動」や「遅れてやってきた援軍の到着」や「予期せぬ天変地異」などによって大概失敗する。
近年は物語の大河化に伴い、親子孫世代に渡り話が展開されることも少なくなく、場合によってはこのセリフと共に次世代へバトンが渡されてしまう急展開となることもあるため油断は禁物である。
明確な起源は確認できないものの、近年発掘された「くっ、殺せ!」とは異なり、相対的に創作物のセリフとしては古参の部類に属するものと思われる。
というのも統計的に年代が古くなるほど正義の味方の双肩には「人類の未来」や「地球の平和」「宇宙の存続」といった壮大な運命がのし掛かっており、安易に「潔い死」や「自ら斃れることを良し」とする風潮がない。対して圧倒的不利な状況における敵幹部との対面というパターンは古くから王道化されており、物語の転機としても導入が容易いうえ、悪役の顔見せとしても大物感を出すことができる。そこで発せられるのが本項の「クックック、殺せ」というセリフである。
著名人の中では漫画家平野耕太氏により2014年後半にTwitter上で指摘されていることが確認できる。内容としては「くっ、殺せ!」の類語でありながら「ク」が増えるだけで全く用途が異なってしまう、という指摘である。
悪の大幹部
「クックック、殺せ…」
本当に偉い立場にある「皇帝」や「首領」の場合は、威厳ある笑い声と共に命令一つで無数の部下を動かすことができ、どんな残酷な命令であっても眉一つ動かさずフラットな声色で下してしまえるセリフ。
悪の幹部(小物)
「クックック、殺せ!」
同じセリフでありながら「反撃されたらやだなぁ」「自分の手が汚れるのも嫌だなぁ」という軽薄な思考が透けて見える小物の中の小物のセリフ。やたら興奮している。
悪の怪人
「クックック、やれい!」
基本ルーチンとして「ヒーローの変身→戦闘員による殺陣→怪人との一騎打ち」が要求されるため、取り敢えず部下を突っ込ませる際に発せられるセリフ。
アンチヒーロー(お一人様)
「クックック、死ね!」
ソロぼっちで仲間も配下も存在しないため「殺せ」という命令を下すことができず、何をするにも自力でなんとかしなくてはならないセリフ。やはり興奮している。
悪の代官
「クックック、引っ立てい!」
所詮はお代官様という中間管理職でしかないため、その場で処断という権限は持っておらず、事なかれ主義により詰め所に突っ込んでおくためのセリフ。
非常事態発生
「くっ、殺せ!」
前述した「英雄的行動」「援軍の到着」「予期せぬ天変地異」などによる混乱の最中発せられるセリフ。どこぞの女騎士のようなセリフになる場合も多く、命令としても具体的内容はない。大概発した本人は逃げる。