概要
『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』のvol.3のエピソード15より登場。都合が悪くなるとすぐに嘘をつく癖があり、しかも嘘がバレると発言が二転三転する。逆に有利な状況では笑顔で人をいたぶる等、より卑劣さが際立っている。単行本の登場人物紹介でも「弱い者いじめが好き。」とまで書かれている。
自分の社会的地位を悪用し、逆にスカル団の様に社会的地位が低い相手を見下す傾向が強い。
月間20万PVを誇る人気ブロガーらしい。
vol.3では
海で遭難していたムーン、ククイ博士、バーネット博士をエーテルパラダイスで保護し、施設を案内している。話の流れでキャプテン達がスカル団のアジトに向かった事を知る。スカル団とは裏の密約があり、計画の邪魔になると思い、急いでルザミーネへと報告に走った。
実はグズマにコスモッグ2号(ほしぐもちゃんとは別個体)を貸与し、彼にウルトラビーストをアローラに呼びこませる(これが判明したのはvol.4)。詳しい経緯は描写されていないが、本作のグズマはルザミーネではなくザオボーに利用されている模様。
vol.4では
スカル団とキャプテン達との抗争でコスモッグ2号が行方不明となり、痛手を負ったがコスモウムに進化した2号を連れて現れたプルメリと遭遇。ウツロイドによってウルトラホールに連れ去られグズマについてプルメリに問いただされ、更に2号を人質(ポケ質?)に脅迫される。しかしザオボーは
「低劣なおちこぼれが調子づくものではありませんよ。」
と喜々として自身のスリーパーにプルメリを直接攻撃させ、コスモウムを奪おうとする。後にグズマ捜索を脅迫の材料にしてプルメリを篭絡する。
上記のやり取りを国際警察のリラに見られ、しかもエーテル財団がUBをアローラに呼びこんだ件も知られ、同行を求められる。これに対し
「官憲の圧力に屈してはなりません! みなさん、戦いましょう!」
と部下を鼓舞し、その場に居合わせたムーンとプルメリ共々始末を決意。
ちなみに本来圧力とは法的な根拠のない不当な権力の使用を指し、捜査協力を求めただけのリラはこれに該当せず、完全な公務執行妨害である。そもそも一番権力欲に執着しているお前が言うな。
そしてルザミーネの目的であるUBの楽園には興味がなく、UBをも超える力を持つソルガレオとルナアーラを手に入れ、財団トップとなる事が目的だと判明する。
部下数人と共にリラに挑むもあっさり全滅させられ、拘束される。しかし今度はそこに1億円の貯金に成功したサンが現れ
「約束の金だ。受け取ってくれ。ひいじいちゃんの島、返してくれ。」
と要求される。
実はエーテルパラダイスがある場所は元は小島で、最初こそエーテル財団が所有していた。しかし財団の偉い人がサンの曽祖父の夢に共感して、譲ってしまう。その曽祖父が他界し、偉い人も行方不明になってしまったので、小島が再び財団に元に戻る。ここに駆け付けた幼いサンに小島を返す様に要求され、ザオボーは買い取りに1億円を提示する。
しかしそれから5年が経過し、既にエーテルパラダイスは完成しており、元の小島に戻す為に解体するだけでも1億円では足りず、受け取りを拒否。そもそも最初から受け取るつもりもなく「大好きな肉親を亡くした子どもが元気になるように、希望を与えてあげたんじゃないですか。」と悪びれもせず答えている。
その後のネクロズマの出現のドサクサに紛れ、その場を逃亡する。
vol.5では
実は最初の動機こそルザミーネへの恋慕だったと思われる。彼女から頼りにされ、ザオボー抜きにはエーテル財団はやっていけないとまで言われる位には有能で、しかも夫モーンに対する愚痴も聞かされていた。モーンはエーテル財団が東海岸のあの組織の様に暴走すると警戒し、更にエーテルパラダイスの建造も、モーンが反対していたので着工出来ずにいた。だからザオボーはモーンを……そうこの男こそがモーンを亡き者にしようと、ウルトラホールに突き落とした張本人である。
そして今章の事件の半分程度はこの件が元凶でもある。具体的には
・モーンの失踪
・ルザミーネの人変わり
・ルザミーネ一家の家庭崩壊
・グラジオとリーリエの心労
・ほしぐもちゃんへの実験
・エーテル財団の暴走
・エーテルパラダイスの建設
・サンの1億円貯金
等、これらの直接的もしくは間接的な原因を作った。
モーンの失踪を悲しむルザミーネを慰めようと近付き、ハンカチを渡そうとするが拒絶される。
「ありがとう、ザオボー。心配しないで。」
と丁寧な口調だったが、ルザミーネの顔は激しい嫌悪感に満ちていた。この時のルザミーネとザオボーはお互いの顔を見つめ合える位置にいたが、ザオボーの顔だけ描写されていない(そもそもザオボーが見ていた夢による回想の為)。人妻を寝取ろうとその旦那を殺害(厳密には未遂)し、獲物を前にした瞬間にどの様な顔で見つめていたのか想像に難くないだろう……。一応悪夢にうなされる程度には罪悪感はある模様。
現在の様に出世にしか興味がなくなったのは、ルザミーネから拒絶され、他に欲しいものがなくなったからなのかもしれない。
ルザミーネがポニ島にUB達の楽園を築いて以降、彼女がエーテル財団の職務を放棄したので、ザオボーが代表代理となる。
vol.6(最終巻)では
ウルトラホールに行っていたムーンが帰還し、気絶して倒れているところをリュウキに回収させ、エーテルパラダイスに拉致監禁。
監視カメラの映像からルザミーネがウツロイドと分離して正気に戻りつつある様子を確認。彼女に拒絶された事を根に持っており、彼女やその家族が元通りに、そして幸せになるのが許せないとの事。拒絶されたトラウマを消し去りたいのか、それとも今でも彼女に未練があるが、手に入らないなら存在を抹消して諦めたいとでも考えたのか、はたまた彼女が復権する事で代表代理を失脚させれらるのを恐れたのか、いずれにしろザオボーには都合が悪い。
グズマ救出の件で篭絡したプルメリを使い、彼女にムーンの姿に変装させ、リーリエの目の前でルザミーネを暗殺する様に命令する。これにはルザミーネを正気に戻したいと言う、ザオボーとは正反対の願いを持つリーリエの心を折ると言う目的もあった。しかもリーリエからすれば初めて友達になったムーンが実行犯だと言う、最悪のシナリオを用意して。更にムーンとルザミーネが帰還する前、それもルザミーネが正気を取り戻す前から計画していた様で、ザオボーはそれだけリーリエを警戒していた模様。ムーンを監禁したのも、暗殺中のプルメリと鉢合わせにならない様にする為である。
あと少しのところでルザミーネの抹殺と、リーリエの心を折るのに成功する所だったが……長男が帰還する。
「もう…、終わりだ。」
「グラジオぼっちゃん…! それに、ミス・ポイズン!! 警備はなにをやっている!? 侵入者だ!!」
「侵入者はどっちだ? ここはオレの家だ。オレとリーリエと母さんと…、間もなく帰ってくる父さんも入れて、オレたち家族4人の家だ。」
グラジオに居場所を突き止められ、解放されたムーンとも対峙。グラジオが簡単に侵入し、しかも報告されていないあたり、この時点で他の職員にも見放された模様。用心棒として雇っていたリュウキに丸投げし、自分1人でアローラからの脱走を計る。
しかし、そこにサンの手持ちだったダラー(アローラニャース)が現れ、ザオボーを襲撃する。ダラーは元はサンの曽祖父の手持ちであり、島を奪われた事を恨み、サンと共闘していたが、ウルトラホールからの帰還後にサンと離別した。島の買い戻しに失敗した事で見捨てられたとこの時のサンはとらえたが、ダラーの真の目的は諸悪の根源であり、何よりも
サンの気持ちを踏みにじったザオボーを単独で粛正しにやって来たのだった。
全ての手札を失ったザオボーにとって、ダラー1匹にも対抗する力すらもなく、命乞いし、ついにはエーテルパラダイスを解体して島を返還すると宣言。しかしそこに今度は大量発生していたウツロイドの群れが現れた。
ウツロイドに寄生された経験のあるルザミーネ曰く
「ウツロイドは人間やポケモンに寄生するUB。特に強い不安や緊張を持つものを選び取るのよ。寄生されたものは強い毒に冒(おか)される。毒によって、不安や緊張は幸福と快楽に変わるの。」
ザオボーはウツロイド達に寄生され、
「う…うひ。ひひひひひ。」
毒によって快楽の虜となり、そしてウツロイド達と共にウルトラホールへと消えていった。彼を追いかけて来たグラジオと、そして復讐を果たしたダラーに見届けられながら……。
後日、ザオボー失踪の経緯を知るグラジオが、リュウキと共にウルトラホールへ救出に向かった模様。
考察
そもそも最後にエーテルパラダイスを解体すると宣言したのは本当だったのだろうか?
この時点での財団の最高権力者とは言え本拠地の解体をザオボーの一存では決める事は難しく、しかも事件の首謀者である以上、敗北が決定づけられた状況で失脚は避けられない。そもそもその時々の己の都合で発言や方針を変えてしまうのがこの男である。ここだけ見ればいつもの嘘と思える。
しかしウツロイドが寄生する対象は強い不安や緊張を持つ者であり、つまり命乞い自体は本物だったと確定する。しかも引き寄せたウツロイドの総数は7匹で、決して偶然ではありえない。
なので感情に偽りはないが、論理が破綻し、非現実的な発言をしてしまったと言うのが正確だろう。
相当運がいいのか「100%でなくとも、望んだことはすべてかなってきている。」と発言し、大抵は「別の形で実現」している。しかも自身を運命に選ばれた存在だと信じている。
具体的には
・UBを呼び出す為のコスモッグ1号(ほしぐもちゃん)がリーリエと共に脱走し、スカル団に貸与したコスモッグ2号も失う。
→プルメリが2号を引き連れて戻ってくる。
・エーテル財団のトップの座を奪う為、ソルガレオとルナアーラを手に入れようとするも失敗。
→代表であるルザミーネが職務放棄したのでザオボーが代表代理となる。
・モーンの反対でエーテルパラダイスの着工が出来なかった。
→モーンが謎の失踪をし、同時期に土地の所有者だった老人も鬼籍に入ったので着工。
・敗北を悟ってアローラから脱走を計る。イッシュかカロスか、それともガ…。
→ウツロイドによってウルトラホールに連れ去られ、国際警察すら簡単に手出し出来ない場所に逃げる。
・ルザミーネに対する恋慕と、拒絶された事に対するトラウマを、彼女を抹消する事で消し去りたかった。
→ウツロイドの毒で快楽の虜となり、恋慕もトラウマも忘れる事に成功。ただし他の全てを失ったが。
不思議とルザミーネを手に入れられなかった件だけは「別の形で実現」したとする解釈が存在しない。そもそも自身のスリーパーで催眠術をかけるなり、職員に根回しをして、ルザミーネを好き勝手出来るチャンスはいくらでもあったので、単なるヘタレの可能性もある。そしてルザミーネを手に入らなかった事が最大の汚点となっていた模様。
終盤でルザミーネとプルメリは探し人の生存を知るとすぐに戦意を失っているのに対し、ザオボーは一貫して保身で動いていた。
ルザミーネ一家を裏切り、壊す覚悟を決め、エーテル財団の実権を握るまでに至ったが、グラジオと再会するとついグラジオをぼっちゃんと呼び、リュウキについて尋ねられてもいつもの丁寧語で質問に答え様とする。大物になる才能はないと思われる。
エーテル財団の情報工作により、UBをアローラに呼びこんだのはスカル団の独断と言う事になっている。情報工作が誰の指示とは言及されていないが、この時点でザオボーが実権を握っているので、把握していないはずはない。また、この件で住民がスカル団をリンチしている描写もある。
ゲーム同様エスパータイプを専門としており、毒タイプ専門のプルメリには高圧的で、逆に悪タイプのアローラニャースには戦おうともせずに命乞いする等、性格の悪さがタイプ相性にも反映されている。
ただし毒タイプであるウツロイドの群れには無抵抗で捕まっている。普通のトレーナーが持てるポケモンが6匹までなのに対し、この時に遭遇したウツロイドの総数は7匹である。
実はポケモンバトルで勝利した描写が1度も存在しない。毒タイプ専門のプルメリに対しても、いつの間にか彼女のエンニュートの毒によってスリーパーが瀕死になっていた。
ひげをいじる癖があり、不都合な問題が起きた際、その対処を考えている時にしている事が多い。
・傘下にしているスカル団のアジトにキャプテン達が集団で向った事を知った時
・幼いサンに島を返す様に要求された時
・モニターでルザミーネが正気に戻りつつある様子をムーンと眺めている時
ウツロイドに連れ去られるラストは一見すると鬱エンドとも、巨悪に対する制裁ともとれる。
しかしザオボーにとってはルザミーネへの感情の全てを失くす願いも、アローラからの逃亡の願いも同時に叶っている。
一方、グラジオにとって家族を壊したザオボーとウツロイドを家から排除したいと言う願いが叶っている。
そしてダラーにとってはザオボーへの粛正と言う願いが叶っている。
更にウツロイドにとっては上質な餌(不安や緊張)を手に入れている。
そう、この場に居合わせた全ての者の願いが同時に叶っている。なお、グラジオのシルヴァディの願いだけは不明。
なお、上述の通りザオボーがウツロイド達に連れ去られる場面で全員の願いが叶っている。しかしダラーの本来の目的はサンの曽祖父の島を取り戻す事だったはずだが、つまりこの時点でザオボーへの粛正のみが己の願いだった事になる。また、ウツロイド達にザオボーが連れ去られた時も、追撃する素振りをしていないので、ウツロイドの習性を理解し、最初から彼らに任せるつもりだった事になる。知ったのは、おそらくウルトラホールにサンと共に行っていた半年間。
やや深読みになるが、ウルトラホールにいた頃にウツロイドと交渉し、召喚に応じてもらった可能性もある。そしてこの復讐劇にサンを巻き込まなかったのは彼なりのけじめと親心だったのかもしれない。と言うか、今章屈指の策士である。
その後、ちゃっかりサンの手持ちに戻り、彼の運び屋の新しい手しt……仲間となった元スカル団員をこき使う日々を送っている。