ジェームズ・ダニエル・メイ(James Daniel May)は、イングランド・ブリストル出身のテレビ司会者、自動車評論家である。
テレビ番組の司会のほか、ジャーナリスト、コラムニストとして活躍。かつては自動車情報誌『AUTO CAR』の編集者でもあった。
『TOP GEAR』司会者として
BBCの自動車情報番組『TOP GEAR』の名物司会者の3人組の1人としてジェレミー・クラークソン、リチャード・ハモンドとともに2003年から2015年まで活躍した。
登場
初登場は2003年放送の「Series2 Episode1」より。
後に15年以上同僚として活躍するジェレミー・クラークソンからの紹介は
「さて、トップギアに新しい司会者が加わりました。名前はジェームズ・メイ。これから流す映像を見れば彼がアホなことは明らかです」
という辛辣なもの。
尤も、ジェームズの自己紹介とも言うべき件の映像というのは「大衆車の新車を買うよりも同じお金を出して往年の名車を買おう」という趣旨のもの。実際に彼が購入したベントレーT2を(好意的に)批評しつつベントレーの所為で私生活が苦しいという熱心な自動車愛好家ならではの苦悩を吐露していた。
確かに、”普通の人”には一生分からない苦労であるが、毒舌家のジェレミーならではの紹介である。
ごく初期は、お買い得な中古車の紹介や新車を安く買う方法(ディーラー毎の値引率や登録済み展示車など)の紹介といった、やもすればセコいキャラとも言われかねない立ち位置であった。
運転技術
キャプテン・スローと揶揄されるほどの安全運転で、元々スピードを出して運転する事が苦手なうえに方向音痴でコースを覚えるのも苦手であったため、公道・サーキット問わずレースで勝負する事が多い番組では一番割を喰う苦労人であった。
安全運転気味なのは彼の母が飛ばし屋だった反動らしい。
ところが、笑いとスピードとパワーを売り物にするトップギアでは彼の運転技術は問題視されたらしく、数度に渡ってジェームズに”教育”を施している。
最たるものは「(多くの名ドライバーを輩出した)フィンランドに送り込んで元F1王者ミカ・ハッキネンの指導を受けた後、地元の草レースに出場させる」(Series12 Episode3)といった具合。
遅い遅いと散々馬鹿にされているものの、ドイツの自動車番組との合同企画では白いSIMPSON DIAMONDBACKを被り、白いALPINE STARSのレーシングスーツを着込んで同じくALPINE STARSのグローブを嵌めて腹を凹ませて髪の毛を切った姿でF1ドライバー顔負けの華麗な運転技術を披露している。
批評の傾向
乗り心地が良く快適な車が好みである様子。
大衆車から高級車、特にサルーンなどの批評まで卒なく(一応常識的に)こなせる。
登場初期はスポーツカーの批評は苦手とされていたが「こういった車はジェレミーかハモンドが得意とするところですが、プロデューサーはジェームズを指名しました」と、無理やり指名されることも。
一方で、批評する車に対する考え方は他の2人の同僚以上に傾向がわかりづらい。
例えば、自動車としての品質(イタリア車以外)に対して辛口である点は他の2名の司会者と同じであるが、実用性が感じられないスポーツカーはよりスパルタンかつ鋭敏で過激であることを好むものの、実用性が感じられる=普段使いが出来るモデルの場合は、少しでも乗り心地を犠牲にして性能志向とする傾向を感じるや「乗り心地が悪く普段使い出来ない」と断じてしまうといった具合。
自動車メーカー各社が走行性能のベンチマークとしてドイツのニュルブルクリンクを挙げていることにうんざりしており、乗り心地の悪さなどの諸悪の根源と見做している。
嗜好
フェラーリの熱心な愛好家で新型のフェラーリが出ると購入している様子。
…が、フェラーリが新型車を発表するたびにジェレミーなどから「今度のフェラーリの新型は本当に素晴らしいな。〇〇(1代前の型)を持っている人が可哀相だ。確か持ってた人が…おや?」とイジられるのがお約束である。
ジェレミーが常々嫌っているオートバイに対しては好意的。ハモンドが苦手とする魚なども問題なく食べられるが、高所恐怖症とのこと。
実用車や大衆車にも関心があるらしく、『ジェームズ・メイの”世界の国民車”』という冠番組を持っていた。
重度の、それも話し始めると止まらなくなるタイプのミリタリーオタクでアルバニアスペシャル(Series16 Episode3)では、空軍基地跡に放置された大量のミグを目の当たりに語りだし、同行していたジェレミーを辟易させた。
ピアノが弾ける、作曲ができるなど音楽の心得はあるが…
ダチア・サンデロ
トップギア時代はルーマニアの自動車メーカー ダチアのサンデロというコンパクトカーの英国発売を心待ちにしていた。
ニュースコーナーで事あるごとにこの車の話題を紹介していたものの、造りの悪い大衆車は容赦なくこき下ろす作風だった番組で東欧製の£10,000以下の廉価な大衆車に異常な情熱を注ぐ彼に対して誰も本気で取り合わず、逆に他の司会者から発売延期などのネガティブなニュースを出されて誂われたりもした。
その後、番組内で最初にレビューする機会が与えられた際には感慨深げな表情で「この車に乗れるのを2年も待った」と心底喜んでいた(Series 14 Episode1)。
番組内でのキャラ付けかに思えたが、同じ時期にThe Telegraph(高級紙Daily Telegraphの電子版)に寄稿したレビューでも本気で渇望していた様子が窺える。
その5年後に放送されたSeries21 Episode3でも、コンパクトカーの特集でダチア・サンデロを選択している。
トップギア引退
トップギア Series22の収録中にジェレミーが暴力事件を起こしてBBCとの契約が打ち切られたため、Series22で放送予定であったVTRを同僚のリチャード・ハモンドと2人で解説しながら流した後、ジェレミーの後を追うようにトップギアから引退した。
現在では、Amazonが制作・配信する自動車情報番組「グランドツアー」で、ジェレミーを筆頭にトップギア時代のいつもの面子で司会者を務めている。(2024年を目処にトリオを解散する予定。)
余談
- 『AUTO CAR』では誌面に仕事の愚痴を隠しメッセージで仕込んだとして編集業務から外れている。
- 悪態をつくときに「Oh cock!」とごちる(こんちくしょう、的な意味合いのスラング)。日本ではAAとなっている上、Googleで「Oh cock」と画像検索するとほぼ100%本人の顔写真が表示される。トップギア関連の話題で『「料理する」』と書かれた場合も同じ(第11シリーズで来日時、翻訳機が「料理する」と訳したことが由来)。
- そのせいなのかは不明だが、Prime Videoで料理番組を担当することに。その名も「OH COOK!」(日本語表記は「ジェームズ・メイの料理に挑戦!」となっている)。
- 恐らくトップギアの3人の司会者の中では最も工作技術が高い。 が、発想が独特であるため結果に結びつくことは…
- 曰く「同性愛に理解がある」らしい。ジェレミーからあらぬ疑いを掛けられている。その上本人もノリノリでキワドいジョークを発する。が、実際は女性の恋人がいるとの事。
- 高速走行が不得手であることや、普段の言動のせいでほぼ常に年寄り扱いされている。
- とはいえ、トップギアの企画でブガッティ・ヴェイロンの最高速チャレンジに挑戦することに。ヴェイロンで407km/h、特別仕様車のヴェイロン・スーパースポーツで417km/hを記録している。
- 航空機の免許を持っている。ただし、有視界飛行限定。