概要
『スタンドUPスタート』は、福田秀による漫画作品。
『週刊ヤングジャンプ』にて2020年29号から2023年50号まで連載。全13巻。
過去の栄光にすがる中年や前科者、就業経験のない主婦、就職活動に挫折した大学生など、さまざまな事情を抱えた「訳アリ人材」へ投資する主人公を描くビジネスストーリー。
ストーリー
メガバンク「りその銀行」の次長を名乗る林田利光の前に、「人間投資家」を名乗る三星太陽が現れる。キャバ嬢にマウントを取っていた林田だが、太陽は、林田の名刺が偽物であることを看破。林田は次長時代に投資業務でミスをして、保険会社に出向(左遷)させられていたのだ。
過去の栄光にすがるしか楽しみのない林田に、太陽は「スタートアップしよう」と持ち掛ける。
キャラクター
サンシャインファンド
- 三星太陽(みほし・たいよう)
長身・総髪の男。「人は資産なり」をモットーに、社会の落後者などを相手に起業を持ちかける「人間投資家」。
実は、日本の経済の重鎮である三ツ星グループの創業者一族・三星家の人間であり、過去にある事情で三ツ星から離れている。
人たらしとも言われるほど他者の懐に入ることに長けており、様々な人に起業を持ちかけ、成功に導いている。他方、女性関係はあまり浮いた話がなく、投資相手の女性からは「うさんくさい」「誰にでも優しい」と、恋愛対象に見られないことが多い。
- M(エム)
太陽の秘書を務める人物。仕事のみならず、太陽の公私を完全にサポートする有能な存在。
サンシャインファンドの拠点はもちろん、太陽のそばには直接おらず、スマートフォンやパソコンなどを経由してコミュニケーションをとる、オンライン業務に徹している。
女性であるらしく、一度、太陽の投資先の女性のみを集めた懇親会を開いた際には、彼女たちに対して、いかに自分が太陽にとって必要な存在かを主張し、太陽に言い寄らないよう言い含めた。
三ツ星グループ
- 三星大海(みほし・たいが)
太陽の兄であり、三ツ星グループの御三家の一つ・三ツ星重工の社長を務める男。
太陽とは反対に、組織のために個人を切り捨てることを厭わない人物であり、一時赤字続きであった三ツ星重工を、リストラを伴う大規模な改革によって業績改善した。一方で、これまでの三ツ星の慣習に沿わない(融資先を三ツ星銀行にせず、外部の金融機関とするなど)施策も実行していることから、三ツ星の幹部からは問題視されている。
- 高島
三ツ星重工の社長室室長を務める。三星兄弟とは彼らが幼い頃からの付き合いであり、大海からは最も信頼できる右腕として思われ、太陽からはもう一人の兄のように慕われている。
大海のためなら自己犠牲もいとわず、「『大海にとって替えの効かない存在』であれば、『三ツ星にとって替えの効く存在』であっても構わない」と、誰が欠けても組織が回るシステム作りに貢献する。太陽に対しては、奔放で問題児な弟のような存在で、タメ口で会話する。
- 三星義知(みほし・よしとも)
三ツ星重工の先代社長・匡邦(まさくに)の実弟で、三星兄弟にとっては叔父に当たる。
両親から三星家として相応しくないとして外部に放逐されたが、役割を与えられなかったことで返って自由に行動できた結果、あらゆる国と業界の重鎮に強大なコネクションを構築。兄・匡邦の病死に伴って三ツ星の渉外担当として幹部の一人となる。当初は、甥である大海を解任して自らが三ツ星重工のトップとなることが目的と思われたが、真の目的は三星家への復讐であり、三ツ星から三星家を追放することだった。
取っつきやすい口調で話すが、相手を利用することや、目的のためなら外道な手段を取ることもできる。
- 古賀
三ツ星不動産の社長で、幹部会「明星会」の一員。
サンシャインファンドの投資先
- 林田利光(はやしだ・としみつ)
スタートアップ企業と銀行のマッチングを行う「スタートマッチ社」社長。
元はメガバンク「りその銀行」の次長まで上り詰めた人物だが、投資対応で将来性のあるスタートアップ企業を逃してしまったことで左遷させられた。太陽の勧めで、自分の経験を生かしたスタートアップ企業と銀行のマッチング事業を起こし、300件の実績をもって、古巣のりその銀行に新規事業融資を申し込み、かつて自分を叱責した元上司を納得させた。
テレビドラマ版
2023年にフジテレビ系列の水曜ドラマ枠で実写化。主演は竜星涼。主題歌はJUJUの「Bet On Me」。作者も公式Twitterでイラストを投稿するなど宣伝に積極的だったが、一方のYJ側が宣伝に消極的であったこと、最大のライバルである日本テレビ系列の水曜ドラマで同時期に放送されている「リバーサルオーケストラ」の好評、経済用語が頻繁に飛び交うという原作未読・経済用語に疎い視聴者には難しい作風、後述する主演俳優のイメージダウン等が原因で視聴率は低迷。同枠のワースト記録を更新してしまった。
だが、ストーリー展開は概ね原作通り(恋愛描写のみカット)であり、原作読破勢や経済関係の仕事に従事している視聴者にとっては参考となる部分、楽しめる部分も多く評価する声も多い。
なお、原作に登場する企業名などの一部は変更されている(例:りその銀行→みその銀行)。
登場人物
三星家
三星大陽
演:竜星涼
投資会社「サンシャインファンド」の社長。自身を「人間投資家」と名乗る男。かなりのお節介で、人間を「資産」と捉え、人の欲望や可能性を信じている。起業率最下位の日本の現状を憂い、「日本を起業先進国にすること」を目標に掲げている。「日本資本主義の父」である渋沢栄一を尊敬している。兄である大海を「海兄」と呼んで尊敬しており、「色んな人達と繋がっていき、その人脈で兄を支える」ことも一つの目標として掲げている。
第9話にて、自身及び三星家の人間を恨む義和の言葉に揺らいでしまい、自身の投資家としての価値を見失いかけていたが、友人である大木大吾のおかげで立ち直ることができた。
大海の社長辞任後、彼を誘って起業及び国土交通省が推進する「次世代インフラ長寿化技術」への参入、三ツ星重工との直接対決を提案。インタビューで堂々と宣戦布告し、見事三ツ星重工を下す大金星をあげた。
三星大海
演:小泉孝太郎
大陽の兄。家業である財閥系企業「三ツ星重工」の代表取締役社長。大陽とは性格が正反対で会社優先の合理主義者。会社のためなら平気で社員を切り捨てることもある。だが、他人のためなら自分のものを平気で差し出す心優しい性格の持ち主でもあり、大陽が三ツ星重工の社風に合わないと感じ、表向きは社内の不正の責任を取っての追放という形を取り彼を自由にさせた。また、経営戦略に行き詰まった際には大陽に「人の弱さも考慮に入れた上で経営戦略を考えることの大切さ」をアドバイスした。
だが、「山谷コンビ」が会社を去ったことを機にワンマン体制が悪い方向へと進み事業の停滞を招いてしまっており、非常に焦っていた。しかし、武藤が社長を務める「ワカラン」が自社の宅システムを利用してロボット開発の遅延問題を解決させる案を提案したことでそれに乗る形で了承し、解決させることが出来た。その後、武藤から大陽とは別人の謎の出資者の存在を聞き、その人物が自身を蹴落とそうとしていることに危機感を強めていた。
そして、義和の策略により不正の件が週刊誌に報道されることとなり、社長の座を引きずり下ろされた。
その後、大陽から「次世代インフラ長寿化技術」への参入を提案されるものの、自身の社長時代から推し進めていた計画がそう簡単に進むわけがないという考えから参加を渋っていた。しかし、高島と虎魂、隼人の懇願により、再び大陽に期待しようと決意し、協力を了承した。その後、「次世代インフラ長寿化技術」の成功及び義和の不正による辞任を受けて再び社長の座に返り咲いた。
三星義和
演:反町隆史
大陽と大海の叔父。「三ツ星重工」の代表取締役副社長。大陽にも大海にもどっちつかずの中立派である。だが、過去に三ツ星重工の不正を糾弾したことで大陽と大海の父親であり兄である前社長から「お前は価値のない人間だ!」と宣言された上に降格され、絶縁してしまった過去を持っており、その逆恨み故に裏で高島を社長室長の座を一時的に取り上げ、室長補佐に降格させる、新たな室長として自身と繋がりのある篠田を就任させるなど回を追うごとに不穏な動きを見せ始めており、大陽にははっきりと「君たち兄弟のような【価値・無価値で相手を判断する人間】には凡人の気持ちなんて理解できない。」「君のその性格が他人を不幸にすることだってあるんじゃないのか?」と敵意を剥き出しにし、大海にも「君たち兄弟は選ばれた訳では無い。私に守られていたのだ。」と言い放っていた。第9話にて、過去に三ツ星重工で起こった不正事件による大陽の副社長辞任は彼によるものだったことが明らかになった。つまり、三ツ星重工における不正の数々は全て彼の手で行われており、物語の黒幕でありラスボス。篠田が不正により辞職した後も大陽に彼の友人であり唯一スタートアップに失敗してしまった八神を利用して大陽の心を揺さぶろうとし、同時並行で三ツ星重工の不正の件を週刊誌にリークするなど三ツ星重工の乗っ取り及び兄弟の追放・社会的抹殺に向けて本格的に暗躍。第10話にてついに大海が社長を辞任し、その後任として社長の座に君臨。手段を選ばないワンマン経営を推し進め始めた。そのため、彼の経営方針に賛同できず退社する社員が後を絶たず、貴重な人材が流出する事態となったが、それすらも意に返さず態度を変えないどころか、改ざんだらけのデータで自治体・他企業との癒着を利用して審査を強引に通すという社長としてあってはならない不正に手を出した。しかし、それが更に社員の怒りを買ってしまい、2回目のプレゼンの際に自身の派閥だった副社長から堂々と不正を暴露された。その結果、特別背任の容疑で事情聴取を受けることとなり、社長を辞任。
その後、2年の刑期を終え、甥である大陽のもとでスタートアップすることになった。
三ツ星重工
高島瑞貴
演:戸次重幸
三ツ星重工の社長室長。兄弟が幼い頃から度々遊びに来ており、特に大海の性格に心打たれ、秘書として大海を陰で支え続けている。しかし、義和の手により社長室長の座を明け渡すことになり、室長補佐に降格してしまったが、新室長として就任した篠田の不正を暴いたことで室長へと返り咲いた。
その後、義和による暗躍で大海共々再び辞任に追い込まれるものの、「次世代インフラ長寿化技術」の成功及び義和の不正による辞任を受けて三度返り咲いた。
山口浩二
演:高橋克実
三ツ星重工の常務。三ツ星重工を最前線で引っ張る最強コンビ「山谷コンビ」の「山」の方。元々現場側の人間だったが、大海の推薦を受けて常務に昇進した。しかし、第3話で自身が担当する航空機部門の不適切会計疑惑が浮上したことでそれを見抜けなかった責任を負わされてしまうことになる。退職後、武藤の事業企画と彼の意思に賛同し、株式会社「ワカラン」を武藤、加賀谷と共に起業した。
加賀谷剛
演:鈴木浩介
三ツ星重工のグローバル推進事業部本部長。三ツ星重工を最前線で引っ張る最強コンビ「山谷コンビ」の「谷」の方。元々現場側の人間だったが、大海の推薦を受けて昇進した。
山口の退職を受けて、彼も「山口さんの居ない会社にいる意味がない」という理由で退職した。退職後、武藤の事業企画と彼の意思に賛同し、株式会社「ワカラン」を武藤、山口と共に起業した。
サンシャインファンド
M
CV:雨宮天
大陽の専属秘書。電話やリモートで大陽をサポートし、決して姿を現さない。かなり嫉妬深く、大陽が怪しい行動をした場合ビリビリ椅子や水鉄砲、ダーツ用の矢などで大陽に制裁を加える。
これまで海外で活動していたため、リモートで彼を支えていたことが最終話にて判明。最終話で日本へ帰国、大陽のもとを訪れた。
太陽の投資先
小野寺虎魂
演:吉野北人(THERAMPAGE)
ゲーム会社「ハイパースティック」の社長。
大陽を実の兄のように慕う。中卒の前科持ちで、経歴にコンプレックスを抱いている。
第4話で大手ゲーム会社・バンパーとのM&Aに応じたが、バンパーの経営方針が自身の経営理念に反することを契約完了後に知り、コンサルの野本に騙される形となってしまいM&Aをしたことを後悔するが、大陽に自身の心情を吐露したことで会社を取り戻す覚悟を決め、野本の両手取引を追及する形で何とか会社を取り戻すことができた。
名前は「虎魂」と書いて「ドラゴン」と読む。キラキラにも程があるって…。
林田利光
演:小手伸也
保険会社「リリーフ保険」の部長。メガバンク「みその銀行」融資部門の次長から左遷され、出向している。プライドが高く、銀行員時代の栄光にすがっていた。
大陽から「起業家と銀行のマッチメーカー」として起業を呼びかけられ、大陽が提示した課題を合格したことで自信がつき、「男のプライド・ケジメ」として大陽の投資を断った上で自分の力で這い上がることを決意した。そして半年後、成功件数300件を抱える一流マッチメーカーへと成長した。
羽賀佳乃
「みその銀行」の融資部門の行員。合理的で物事を白黒ハッキリさせたがる性格で、仕事ではテキパキと業務をこなす。パチンコ依存症の母親と暮らしているが、それが原因でパチンコを初めとする遊戯・娯楽に嫌悪感を示しており、左手に痒みが出て引っ掻き傷が多数できるほどのストレスを抱えている。大陽の説得によって「真っ白な世界」に囚われ続けた自分自身の過去の苦悩について吐露することができ、母親との関係も何とか修復することができた。その後、みその銀行を退社し、「ピースシップパートナーズ」を起業、M&Aのアドバイザーに転職した。第4話では、野本の両手取引を見つけて追及し、虎魂の「ハイパースティック」奪還に貢献した。
立山隼人
演:水沢林太郎
起業を目指す大学生。大学の起業サークルに所属。いつも取り巻きとして同級生の女子大生3人に囲まれておりチヤホヤされていた。突然大陽から投資話を持ちかけられ起業するチャンスを得たが、失敗を恐れて登記に躊躇していた。しかし、取り巻きの同級生3人が起業を決意したことや大陽からの激励を受け登記を決意し起業した。この件がきっかけで大陽を師匠と仰いでいる。
武藤浩
演:塚地武雅
「三ツ星重工」の元社員。造船所の現場責任者として貢献していたが、大海が断行したリストラで失業する。それに目をつけた大陽に誘われて新しい人生をスタートさせる。
「故郷・長崎の三ツ星重工造船所跡地を別の形で活用して地元を復興させたい」という思いがあり、大陽と共に無店舗型のネットスーパー事業を企画し、地元商店街の店主たちの賛同を徐々に得ながら株式会社「ワカラン」を加賀谷、山口と共に起業した。その最中で追微課税として1億4000万円を支払うよう税務署から通達されるが、自社の宅システムを三ツ星重工が利用する形でその使用料として1億4000万円を請求することでこの問題を解決することができ、無事に事業を成功させた。
音野奈緒
演:安達祐実
シニア向けマンションの管理人。就業経験ゼロの専業主婦。
夫の仕事でのストレスにより夫婦仲が悪化していたが、話し合いの機会を設けたことで夫婦仲が修復。自身は独立して新たなマンションの管理人となり、夫は以前勤めていた会社を退職し、新たなデリバリーサービスを開始した。
酒癖がかなり悪く、酔うとバカ力を発揮してしまう。
余談
作中に登場する企業グループ「三ツ星グループ」のモデルは三菱グループと言われている。
作中、三ツ星の幹部による最高意思決定機関「明星会(めいせいかい)」が登場するが、三菱グループにも幹部の懇談会「三菱金曜会」(毎週金曜日に開催されることが名前の由来)が存在する。
金曜の「金」は金星が由来であり、別名明星(みょうじょう)である。
- 主演の竜星氏は、昨年放送のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』での視聴者からヘイトを買うダメ兄貴っぷり満載の演技が記憶に新しかったため、主人公である大陽が醸し出す絶妙な胡散臭さも相まってか、放送前からイメージダウンが懸念されていた。
- 第1話では、投資先の林田と接触した際のキャバクラでキャバ嬢から「ニーニー」と呼ばれていたため、制作側も完全に狙っているようである。
- 第7話で、シークレットゲストとして天海祐希が出演。公式からは一切の予告が無く、完全にサプライズだった。