概要
17世紀の小説家ハンス・ヤーコプ・クリストッフェル・フォン・グリンメルスハウゼン氏著書の『阿呆物語』や詩人ホルヘ・ルイス・ボルヘス氏著書の『幻獣辞典』で言及される怪物。
『幻獣辞典』の記述によると16世紀のドイツのニュルンベルクで靴屋の親方(マイスター)を務めていたハンス・ザックス氏が、古代ギリシャの長編叙事詩『オデュッセイア』の一節である“プロテウスがメネラウスに追われながら様々に姿を変えて逃げている”というシーンから暗示を受けて創作した存在で、決まった姿を持たない連続的な怪物、時間の怪物であるとされる。
その名前の由来はドイツ語で“直ぐに”を意味する「Bald」と、“別のもの”を意味する「Anders」を組み合わせたもので、直訳すると「すぐに変身するもの」という意味になる。
その名が示す通り、人間などの生き物は勿論、石像といった無機物。挙句の果てにはソーセージ(ブラートヴルスト)といった食べ物やクローバー畑といったありとあらゆる様々な物へと姿を変える事ができる力を持つといわれる。
『阿呆物語』の中では、自分に触れた人間に対し、様々な姿を取った後に人間へと変身し、「椅子やベンチ、鍋や釜のような、生まれつき口がきけないものと話をする」術をその人物に教授しようとするも、その術は難解な暗号分で書かれていた為、それを解く鍵として姿を変えて、「われは始めにして終わりなり」というヨハネの黙示録の言葉を書き記し、最後に自身の紋章は変わりやすい月であると語ったとされている。