概要
ドイツおよびドイツ語圏で伝承されている妖怪で、日本においては黒い森に潜むという人狼や魔女、夢魔などのイメージが強い。
ドイツはローマ帝国とライン川やドナウ川を境界として対立していた地域「ゲルマニア」に紀元前から住んでいた諸民族・ゲルマン人が中心となり成立した国家で、北ゲルマン人と同じく北欧神話として知られる信仰を持っていたが、キリスト教化によって神格や精霊たちは、悪魔や魔物などの存在として語られるようになっていった。
また上記の魔物が棲むという黒い森「シュバルツバルト」や、魔女や悪魔が宴のために「ブロッケン山」に集まるワルプルギスの夜などが良く知られ、東部地域においては隣接している、古くはネウロイと呼ばれた人々が住む東欧の伝承の影響も大きいと考えられている。
近代になりゲーテが戯曲「ファウスト」を、グリム兄弟が各地の民話を収集した「グリム童話」を発表。魔性を題材としたホフマンの「砂男」や、H・H・エーヴェルスによる「吸血鬼」「アルラウネ」などの幻想的な小説なども著され以後の創作に大きな影響を与えている。
20世紀のナチスドイツ政権においては民族主義が強くなり、北欧神話をモチーフにしたワーグナーのオペラが広く上演され、国家主導でオカルト研究機関アーネンエルベを設立し、軍事教育の中においてもルーン文字が導入されるなどオカルト色が強く見られたのだという。
世界有数の工業国家であり、高度な医学や科学技術を持つ半面、そういった神秘主義的な文化を持つ国というイメージが持たれており、第二次世界大戦後には各種創作においてナチスドイツをモデルとしたオカルト的なキャラクターが量産されることになった。
ただしナチス礼賛にあたる行為は、創作であろうともドイツ本国では法で禁止されており犠牲となった人々も多いことから、その点は自重が必要である。
なおドイツ自体が内陸国家だったのでドイツ語は周辺国家で用いられるのに止まっているが、その語感の強さは中二病心をくすぐるのは事実で、やはり各種妖怪キャラクター名に採用されている。
一覧
この項ではドイツ語文化圏のオーストリア、スイスの妖怪についても記述する。
ポーランド、チェコ共和国、ハンガリーについては「外国の妖怪」「ロシアの妖怪」、ゲルマン神話の神格については「北欧神話」を参照。
ドイツ
- アウフホッカー(Aufhocker):「飛び掛かる者」という意味で、動物に化けたり姿を消して人を襲う悪魔。
- アグネス・エルツ(Agnes Eltz):エルツ城に現れる女騎士の幽霊。
- アナベルグ(Annaberge):鉱山を護ってる恐ろしい魔神。山羊や馬に姿を変えることができる。
- アプフェルシャーレ/林檎の皮(Apfelschale):大晦日の晩、綺麗に剥いた長い林檎の皮を右手に持って左の肩越しに後ろに放り投げると、その林檎の皮がアルファベットっぽい形になっており、それが未来の伴侶となる人物のイニシャルだという俗信がある。
- 嵐の精/ストーメン(Stormen):嵐を起こす精霊で、町の店の看板を入れ替えるなどの悪戯をする。
- アルラウネ(Alraune):刑死者の体液が垂れた地面で育つ
- アンネベルク(Anneberg):鉱山の悪魔。恐ろしい目をした馬の姿をしている。コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』に記述がある。
- イル・リヒト/イルリヒト(Irrlicht, Irlicht):惑わせる光という意味であり鬼火のこと。様々な理由で天国や地獄に行けない魂が変じるという鬼火。
- イァドフレムケン/イァドリヒト(Irdflämmken, Irdlicht):地上の炎。メクレンブルクに伝わる鬼火。
- イアルュヒテ(Irrlüchte):ヴェストファーレンとニーダーラインに伝わる鬼火。
- イルヴィッシュ(Irrwisch, Irwisch):惑わせる藁束。藁束が燃えているように見える鬼火。わんぱく小僧という意味でもある。
- ヴィップロェッチェ(Wipplötsche):鬼火の地方名。語源不明。
- エルフリヒト(Elflicht):妖精の光という意味であり鬼火のこと。
- クァドリヒト(Quadlicht):邪悪な光という意味。鬼火の地方名。
- シュテルテンリヒト/シュトルケンリヒト(Stöltenlicht, Stölkenlicht):ぎこちなく歩く光。中部ドイツのハノーファー近郊とハルツに伝わる鬼火。
- スマールゲンフューア(Smalgenfür):ヴェストファーレンに伝わる鬼火。
- ズンプフリヒト(Sumpflicht):沼地の光という意味。生者を沼地まで誘い込んで溺死させる鬼火。
- ツォイスラー/ツュンスラー/ツュントラー(Zeusler, Zünsler, Zündler):鬼火のこと。火で遊ぶという意味の動詞züselnやzeuselnが語源とされる。
- ツンゼルゲシュペンスト(Zunselgespenst):鬼火のこと。
- ディッケポット(Dickepot):アルトマルクとブラウンシュヴァイクに伝わる鬼火。
- トゥッケボーデ(Tukkebode):鬼火のこと。
- テュッケボルト(Tückebold):鬼火のこと。
- テュンメルディング(Tümmelding):北部ドイツのシュレスヴィヒ・ホルシュタインに伝わる鬼火。
- ドゥヴェリヒト(Dwerlicht):北部ドイツのシュレスヴィヒ・ホルシュタインに伝わる鬼火。
- ドヴェルリヒト(Dwellicht):彷徨う光という意味であり鬼火のこと。
- ドロェグリヒト(Dröglicht):鬼火の地方名。語源不明。
- フォイアーマン(Feuermann):燃える男、火男という意味であり鬼火のこと。ラウジッツの伝承では、フォイアーマンは森の樹上で遊んでいる鬼火だという。ルール地方の伝承では、フォイアーマンは祝祭日に礼拝するのを怠けたとある男の霊であり、司祭に祝福を与えられるまでずっと昇天することを許されず現世を彷徨い続けていた。
- フラッカーフュァ(Flackerfür):ちらちらするもの。メクレンブルクに伝わる鬼火。
- フレムシュティルン(Flämmstirn):炎の額。メクレンブルクに伝わる鬼火。
- ヘーアヴィッシュ(Heerwisch):藁束の群。ラインに伝わる鬼火。
- リュヒテマンヒェン(Lüchtemannchen):光の人。ブランデンブルク地方に伝わる鬼火。
- ヴァッサーガイスト(Wassergeist):水の精霊の総称。村外れの水場でも見られる身近な存在とされる。水の精霊の男性は人間の女性と結婚したがっており、村の娘を誘惑したり無理やり水中へと引き摺り込んだりして結婚するが、6〜7人の子を産んだら地上に返してもらえる。刺すような魅力のある眼を有しており、人間の女性を見つめるだけで病気にしてしまうという話もある。さらに、人間の子を連れ去って代わりに自らの子を置いていく取り替え子も行うといい、水の精霊の子は仔牛のような目をしており烏のような声で鳴く。水の精霊の女性は美しい姿をしているが、歌や音楽で人間を魅了した後に抱擁して水中の奥深くへと引き入れるといい、そして溺死した犠牲者は七日後に睡蓮を手に持った屍となって水面に浮かんでくる。水の精霊の世界は水底にあり、そこには人間の文明と同じように立派な宮殿や邸宅があるといい、さらに水の精霊の世界にある小石は持ち主に多くの幸福をもたらす宝だという。
- ヴァッサーニクセ(Wassernixe):グリム童話『水の精』に登場する水の精。
- ニッケルカーター(Nickelkater):滝の中に棲む水の精霊。蛇の姿をしており子供を水中に引き摺り込む。この精霊が棲む滝の中には魚の姿をした精霊も一緒に棲んでいる。
- ニクス/ニクシー:水の妖精。
- バッハバルバラ(Bachbarbara):水の女精霊。川のバルバラ様という意味で畏敬を込めた呼び名。それ以外の詳細は一切不明。
- ホウラート(Hourad):水の精霊の一種。ホウホウと鳴くのでホウラートと呼ばれるようになったが、それ以外の詳細は一切不明。
- ヴァルトマン/ヴァルトルオデル/ヴィルダーマン/ヴィルトロイテ(Waltmann, Waltluoder, Walt-Luoder, Wilder Mann, Wildleute):野人。
- ヴィルデ・フラウ/ヴィルデフラオ(Wilde Frau):長い髪をした美しい女性の精霊。もしくは野人の女性のこと。
- ヴェックマン(Weckmann):人型のパン菓子。
- ヴェルトフント(Welthund):“世界の犬”という意味。単眼の巨大な犬であり不作や疫病をもたらす。
- エッシェンフラウ/エッシェンフラオ(Eschenfrau):梣女。森に住む悪魔。
- エルヴェトリッチ/エルヴェトリッチュ(Elwetritsch, Elwedritsch, Ilwedritsch):プファルツ地方に棲むとされる怪鳥。鹿の枝角、女性の乳房、非常に長い嘴などを有する鶏のような怪鳥で羽根の代わりに鱗が生えている。
- エルトビベルリ(Erdbiberli):地下や樹下に住んでおり宝を守っている小さな大地の精霊。
- カッツェンヴァイト/カッツェンファイト(Katzenveit):バイエルン州フィヒテル山の森の妖怪。
- ギュービヒ(Gubich, Gübich):ハルツ山地の森の妖怪。
- キンダーフレッサー/キンダーシュレッカー/シュヴァルツェマン:ブギーマンのこと。
- クートート(Kutod):牝牛殺し。ホルスタインの名前の由来となったシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州に伝わる妖怪。長い角を有する巨大な牡牛、オーク材のように硬い体を有する三本脚の牡牛、巨人などの姿をしている。その姿を見たり、体を触られたり、力無く唸る虚ろな声を聞いたりした動物や人々はたちどころに死んでしまう。
- クネヒト・ループレヒト(Knecht Ruprecht):聖ニコラウスの従者の一人で、悪い子に罰を与える。
- クラバウターマン(Klabautermann):バルト海・北海に伝わる、船乗りたちを助けるという船に宿る精霊。
- クランプス(Krampus):クリスマスの怪物。
- クリストキント(Christkind):クリスマスの天使。
- グルーシュヴァンツ/グリューシュヴァンツ(Gluhschwanz, Glühschwanz, Gluswans, Glûswanz oder Gluuschwanz):光る尾を持つドラゴンのような幻獣で、魔女の家に煙突から入り込みミルクか金貨をもらいにくるが、断ると煙突に火を着けてしまう。
- ゲシュモルツェネスブライ/溶けた鉛(Geschmolzenes Blei):大晦日の晩、未婚の女性が溶かした鉛を水中に垂らして鉛が固まると、その鉛の形に似たものに関連する職業の者が未来の婿になるという俗信がある。
- シュトルヒ(Storch):ドイツ語でコウノトリのこと。ドイツを含めたヨーロッパの国々にはコウノトリが赤児を運んでくるという伝承がある。
- シュナーベルロイテ(Schnabelleute):鶴の首と頭部を有する怪人。
- シュラート(Schrat):樹木の精霊。
- シュランゲンハオト/蛇の抜け殻(Schlangenhaut):魔術でビールを酸っぱくさせられる事態を避けるためには、ビール樽の上に蛇の抜け殻を置いておけば良いという俗信がある。
- ツヴェルク(Zwerg):北欧神話のドヴェルグを起源とした小人でドワーフと同一視される。
- ウンターイルディッシュ(Unterirdisch):地下に住む人。北ドイツにおけるツヴェルクの呼び名の一つ。
- エルドメンヒェン(Erdmanchen):大地の小人。南ドイツにおけるツヴェルクの呼び名の一つ。
- クヴェルフ/クヴェルク(Querx, Querg):東中部ドイツ語でツヴェルクのこと。
- ドゥウェルガズ(Dwergaz):ゲルマン祖語でツヴェルクのこと。
- トゥウェルク/トゥウェルグ(Twerc, Twerg):古高ドイツ語でツヴェルクのこと。
- トヴェルク/クヴェルフ(Twerc, Querh):中高ドイツ語でツヴェルクのこと。
- トイフェル(Teufel):ドイツ語で悪魔のこと。グリム童話では『悪魔と悪魔のおばあさん』『悪魔の煤けた相棒』『神様の動物と悪魔の動物』『金の毛が3本生えた鬼』などに登場する。
- ウォーデン(Woden, Wōden):北欧神話のオーディンのこと。800年頃にキリスト教徒から悪魔(ウンホルダ)とされていた。
- ウンフルサ/ウンフルソ(Un-Hultha, Un-Hulþa, Un-Hultho, Un-Hulþo):ゴート語で悪魔のこと。
- ウンホルダ(Unholda):好意的でない者という意味。古期のドイツ語で悪魔のこと。
- ウンホルデレ(Unholdaere, Unholdære):中高ドイツ語で悪魔のこと。
- ウンホルト(Unhold):ドイツ語で悪魔、悪霊、怪物のこと。
- サクスノート(Saxnot, Saxnōt):ザクセン人の神。800年頃にキリスト教徒から悪魔(ウンホルダ)とされていた。
- ザントトイフェル(Sandteufel):砂の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- シュタオプトイフェル(Staubteufel):埃の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- ズネル(Thunaer, Thunær):北欧神話のトールのこと。800年頃にキリスト教徒から悪魔(ウンホルダ)とされていた。
- ゼートイフェル(Seeteufel):海の悪魔という意味でありアンコウのこと。
- トイフェルスツンゲ(Teufelszunge):悪魔の舌という意味でありサトイモ科の植物コンニャクのこと。
- トイフェルスフィッシュ(Teufelsfisch):悪魔の魚という意味。オニオコゼ属(Choridactylini)の魚類の総称。
- ドルントイフェル(Dornteufel):棘の悪魔という意味でありモロクトカゲのこと。
- ネーベルトイフェル(Nebelteufel):霧の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- フォイアートイフェル(Feuerteufel):火の悪魔という意味であり火災旋風のこと。
- ホイトイフェル(Heuteufel):干し草の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- コローンの悪魔:コローンの寺院建築を任された建築家と、すばらしい設計を教えるという契約を結ぼうとするが、欺されて設計図を奪われてしまう。その後素晴らしい寺院が完成したが、呪いにより誰が建てたのかの記録が一切残らなかった。
- ビーザム・ベルリの悪魔:金持ちの娘と結婚したい若者と、樫の葉が全て落ちたら魂をもらうという契約を交わし黄金を与えたが、樫は冬でも葉が落ちない常緑樹だった。
- ヒルデスハイムの悪魔:司教の元で真面目に働いていたが、召使いに侮辱されたので訴えるも放置されたことに怒り、人々を皆殺しにして去っていった。
- トート(Tod):死神のこと。死を擬人化した存在。
- クプファービッケル(Kupferbickel):銅のビッケル(人名)という意味。
- クラッパーバイン(Klapperbein):がたがた脚という意味。
- シュトレッケバイン(Streckebein):伸ばした脚という意味。
- ゼンゼンマン(Sensenmann):大鎌人という意味。
- デュールバイン(Dürbein):止まる脚という意味。
- ブレッケツァーン(Bleckezahn):黒い男という意味。
- ホルツマイヤー(Holzmeyer):木材管理者という意味。
- ナハトクラップ(Nachtkrapp):夜のワタリガラス。南ドイツやオーストリアに伝わる子脅しの怪物。
- ナレンシュヴァム(Narrenschwamm):馬鹿者キノコ。食べた者をおかしな馬鹿者に変えてしまう。
- ノッケン:北欧神話起源の水の精霊で「川の子馬」といわれる。
- バウムエーゼル(Baumesel):木の驢馬。森に棲む妖怪。
- バーカウフ(Bahkauv):アーヘンの鱗のある子牛の姿をした魔物。類似したものがオランダやベルギーなど広域に伝わる。
- ハーメルンの笛吹き男/パイドパイパー(Pied piper)
- ハンス・トラップ(Hans Trapp):騎士出身の聖ニコラウスの従者で、悪い子に罰を与える。
- ビーアエーゼル(Bier-Esel):ビール驢馬。酔っ払いの前に現れ、その酔っ払いの背中に乗っかり、酔っ払いが自らの家に到着したのを確認すると背中から降りて去っていく謎の驢馬。酒飲みには恐れられたが、飲み歩いて帰りの遅い夫を心配する妻には歓迎されていた。
- ビーアモルヒ(Biermolch):ビールのイモリ。ドイツ南西部のシュヴァーベンに伝わる妖怪。
- ピコリュス/ピクラス/パトロ/ピコッロス/ピコッルス/ポックルス(Patollo, Pikollos, Pikollus, Picollus):『地獄の辞典』で紹介される古代プロシア人が崇めたという魔神。ピ「フ」リュスと誤植されることも。
- ビルヴィス(Bilwis)
- ヴァイツェンオーパー/麦じいさん(Weizen Opa)
- ヴァイツェンオーマー/麦ばあさん(Weizen Oma)
- ファソルト(Fasolt):嵐をもたらす風の巨人。
- エッケ(Ecke):ファソルトの兄弟であり洪水や波の支配者。
- フェルトガイスター(Feld Geister):畑の精。穀物に魔法をかけ食べた者を病気にしてしまう。
- ロッゲンヴォルフ(Roggen Wolf):ライ麦狼。ライ麦を毒化させる悪魔。麦角汚染を魔物化したものであるといわれる。
- ロッゲンムーメ(Roggen Muhme):ライ麦婆さん。ライ麦狼の長である女悪魔で、鉄の乳首が付いた垂れ乳にはタールが詰まり、穀物を叩くことで汚染する。指には火を灯しており、花摘みに来た子供もさらうとされる。
- フォイアープッツ/ブリュンリン/グリューエンダー/ツスラー/フォイアーマン(Feuerputz, Feurputz, Brünnling, Glühender, Züsler, Feuermann):高温で光り輝く骸骨、火柱の中の黒い人間、燃えている騎手、燃えている犂使い、火の玉、流星などの姿をした幽霊。
- プッツモメル:フードを被った悪戯妖精の女の子。
- ブットマンドル:ベルヒテスガーデンにおける聖ニコラウスの従者である麦わらまみれの怪人。
- フリューゲルシュティーア(Flügelstier):有翼の牡牛。福音記者ルカの象徴。
- プルヒ(Pulch):ドイツ西部の都市トリーアに位置するカンマーフォーストの森に住む精霊。木を盗んだり傷つけたりした人間を懲らしめる。
- ブロッケンの妖怪(a specter of Brocken)
- ペーターメンフェン:ジュベリーン城に住む髭を生やした騎士のような格好の小人。
- ベルツニッケル(Belsnickel):毛皮で身を包み長い舌を持った、子供にお菓子か罰を与える訪問者。
- ボックマン(Bockmann):牡山羊の男という意味でありサテュロスのような姿の妖怪。森の中に住んでおり森に入っていきた子供たちを怖がらせる。
- ホッペディッツ:デュッセルドルフのカーニバルで灰の水曜日に火葬されるカーニバルの精霊。
- モース・ロウテ/モース・フロイライン/苔人/苔女(Moosleute, MoosFräulein):森に棲む苔を身に纏った不思議な人々。毛むくじゃらで服は着ていないという。
- ヴァルドロウテ(Waldleute):「森の人」と呼ばれる森などの自然の妖精。
- ヴァルドシュラート/シュラート(Waldschrat, Schrat):森のゴブリンといった意味の妖精。
- ヴァルドウィボ/ヴァルドフロイライン:苔女の別名で野生の妻、野生の乙女という意味。
- ブッシュグロスムッター:「小さな木の祖母」という意味の名の苔人の女王。
- ブッシュヴァイヒェン/ホルツヴァイヒェン:「小さな木の女」と呼ばれる背中に木で出来たかごを背負った皺だらけの老婆姿の妖精。
- ホルツヴァイバー:「小さな木の貴婦人」という意味で困っている人には焼いたケーキを与え、森の中を霧で覆う力を持つ。
- ホルツフラウ/ホルツフラオ(Holzfrau):木の女。全身が被毛や苔に覆われていたり、背中に樹洞のような穴があったりする。
- ホルツロウテ(Holzleute):木の民と呼ばれる服を着た森の妖精。
- リュッテルヴァイバー/リュッテルヴァイヒェン:ワイルドハントに獲物として追われるという「震える女」と呼ばれる苔女。
- リーゼ(Riese):巨人のこと。
- アンティ(Anti):西ゲルマン祖語で巨人のこと。
- ギガンティン(Gigantin):女巨人のこと。
- エトゥナズ(Etunaz):ゲルマン祖語で巨人のこと。食べる者という意味。
- エトゥン(Etun):西ゲルマン祖語で巨人のこと。
- ギガント(Gigant):巨人のこと。
- スリサズ(Thurisaz, Þurisaz):ゲルマン祖語で巨人、悪魔、怪物のこと。
- スリス(Thuris, Þuris):西ゲルマン祖語で巨人、怪物のこと。
- ヒューネ(Hune, Hüne):巨人のこと。本来はフン族を意味する単語だった。
- リシズ(Risiz):ゲルマン祖語で巨人のこと。
- リージン(Riesin):女巨人のこと。
- リゼ(Rise):中高ドイツ語で巨人のこと。
- リーゼンラート(Riesenrad):観覧車のこと。ベルリンのとある遊園地の観覧車は幽霊観覧車であり、遊園地は閉園してもう動かないはずなのに幽霊観覧車は今も動き続けている。
- リューベツァール/リベザル(Rübezahl)
- リンドブルム(Lindwurm):雷鳴や流星の化身ともいわれるワイバーン。
- レーヴェンメンチ(Löwenmensch):ホーレンシュタイン山のシュターデル洞窟で発見されたライオン人間の象牙彫刻。鬣が無いのでレーヴェンフラオ(ライオン女)と呼ばれていたが、当時のヨーロッパに棲んでいたホラアナライオンは目立った鬣を持っていないので必ずしも女性とは限らない。なので現在はレーヴェンメンチ(ライオン人)と呼ばれている。
- ローレライ(Loreley):ライン川の難所である同名の岩山に棲む精霊。
オーストリア
- アルバー(Alber):炎のように燃える巨龍の姿で山から下りてくる悪魔。疫病、戦争、飢饉をもたらす。
- アーレン・コーニゲン(Ahren Konigen):穀物王。ザルツブルクの収穫祭で刈り取られた穀物の最後の一束に宿るという精霊。この精霊が宿った束は人形にされ、収穫の後に宴会で祀られる。
- ヴィレンドルフのヴィーナス/ヴェーヌス・フォン・ヴィレンドルフ(Venus von Willendorf)
- ヴィルデ・メナー(Wilde Manner):チロルの山の中に住む巨人で、嵐で森の木が倒れるのは彼が暴れたためである。
- エッツィ/アイスマン:イタリアとの国境にあるエッツ峡谷で発見された5300年前の狩人の氷漬けミイラ。発見関係者が次々と不幸になり、呪いであると噂された。
- カスマンドル/ケースマンテル(Kasmandl):白髪でしわくちゃな小人で、高山にある酪農家の作業小屋に冬の間住み着くが、4月24日の聖ジョージの日に大きな音で追い出される。
- クラウゼ・ベルベル(Klause Bärbel):聖バルバラの日に現れ、子供たちを鞭で脅したり、飴を与えたりするという妖怪。
- クルツィミュゲリ(Kruzimügeli, Kruzimugeli):トム・ティット・トットの類話に登場する妖怪。
- ケングル(Känguru):カンガルーのこと。オーストリアの土産物屋などでは「オーストリアにカンガルーはいません」と書かれたTシャツなどが売られている。だが、2015年にはドイツから逃げ出したカンガルーがオーストリアに現れ、2018年にはキルヒシュラークという町にもカンガルーが現れている。また、隣国ドイツではカンガルー科のアカクビワラビーが野生化しているという。
- 殺人ベンツ/死神ベンツ:サラエボ事件で犠牲になった皇太子夫婦が乗っていた真っ赤なベンツの自動車で、その後の持ち主は次々と死ぬなど不幸に見舞われた。
- ハーバーガイス(Habergeiss, Habergeiß, Habergoass, Habergoaß):バイエルン州に伝わる山羊の頭、鳥の身体、三本脚の穀物の霊。
- プッツ(Putz):森に住む土の精で人に金貨などの宝物を与えるが、持ち帰ると木の実に変わってしまう。一方好物の団子を与えると本物をくれるという。
- フッフテルマン(Fuchtelmann):オーストリアに伝わる鬼火。炎を剣のように振り回すとされる。
- プルツィニゲレ(Purzinigele):トム・ティット・トットの類話に登場する妖怪。
- ペスト・ユングフラウ(Pest Jungfrau):疫病娘。オーストリアにおける黒死病を擬人化した存在。青い炎に身を包んだ女性の姿で空を飛ぶ。
- ペルヒタ(Perchta):鉄の斧と鎖を持ち、禁忌を侵した者を罰する民間伝承の女神。
- ムオーデルの軍勢/幽霊ムオーデル(Muhaudel):四つ辻の路上に白馬に乗った男が先頭に現れる、黒いもしくは燃え上がった馬車に乗リ合わせた亡霊の軍勢。30㎝ほどの高さに浮かぶが轍の音がするという。
スイス
- クロイス:アッペンツェルの大晦日に行われるシルベスタークロイゼンで練り歩く精霊で「美しい」「醜い」「自然の」の三体がいる。
- シュヌグーダ(La chenegouda):ヴァレー州に伝わる音だけの軍勢で、地域ごとに響き渡る音が異なる。
- チェゲッテ/ロイチェゲッタ/ロイチェゲッテ/ロイチェゲテ/ロイチェクタ(Tschäggätä, Roitschäggätä)
- ツヴェールガ(Zwäärga):灰色の毛むくじゃらで踵が前向きについている小人の姿をした大地の精霊。
- ベーグ:チューリッヒで行われる春の祭りセクセロイテンで丁度18時に燃やされる雪だるま型の人形。
- マルチネ:『地獄の辞典』で紹介されるスイス大使である悪魔。
- レ・ロヨン/モールスの幽霊(Le Loyon):ガスマスクにボイラースーツ、長いマントを着た怪人。
ルクセンブルク
- クロペマン(Kropemann):鉤男という意味。アテルト川に住む水の精霊。鉤のついた棒で人々を川に引きずり込む。
- ドラウリヒト(Draulicht):ルクセンブルクにおける鬼火のこと。
- メルジナ(Melusina):人魚。ルシリンブルフク城のジークフリート伯爵と恋仲だった。
- リース(Ris):ルクセンブルク語で巨人のこと。
魔女
- ヘクセ(Hexe):春の謝肉祭「ファストナハト」に登場する魔女。魔女全般も意味する。ドイツでは魔女の集会が行われる夜、若者が丘の上で大きな音が出るくらい鞭を強く振り回せばその音が聞こえる場所で魔女は悪さをできなくなるという俗信がある。
- ヴァルプルギスナハト/ヘクセンナハト(Walpurgisnacht,Hexennacht):魔女たちがブロッケン山で祭りを行うという夜。
- アリオルムナス:『地獄の辞典』で紹介される、ゴート族の王フェリメルに追放された伝わる魔女。
- イルゼ:ハルツのイルゼシュタインに住んでいたという美しい王女で、嫉妬した魔女によって岩山に閉じ込められてしまったが、秘密の扉を通り一年に数日だけ水浴びのために外へと現われる。
- ヴァーテリンデ:ターレのボーデ渓谷に住んでいた魔女で、薬草を摘みにきた乙女に襲いかかったが、十字を切り神の名を叫ばれた瞬間に強風に吹き飛ばされ岩にぶつかり死んだという。
- ヴェターヘクセ:悪天候をもたらす魔女。
- ヴェーヌス:騎士タンホイザーを誘惑して山へ連れ去ってしまった美しい魔女。
- ウルヘクセ(Urhexe):断食の前夜祭(ファスナハト)で魔女を指揮する大魔女。
- ドゥルーデン:ドイツ南部の方言で魔女のこと。
- ブターヘクセ:ミルクを盗み、質の悪いバターを広める魔女。
- フラオ・ホレ/フラウ・ホレ/ホレおばさん/ホレのおばさん(Frau Holle)
- ヘルゼーエン(Hellsehen):千里眼のこと。転じて予言者や魔術師のことを指す。
- ブラマ/ザバ/トレンドゥーラ:巨人族の長クルコの三人の娘で、トレンドゥーラのみキリスト教に改宗せず暴虐であったために天罰の落雷で穴だけ残し消え失せた。
人狼
- ヴェアヴォルフ(Werwolf):人狼のことで、ナチスドイツ時代には同名のゲリラ部隊が結成され連合軍に被害を与えた。
- ペーター・シュトゥンプ:悪魔と契約し人狼になった50歳の農民で、自身の息子を含めた16人を殺害し一部は食べたといわれる。1589年10月31日に処刑された。
- スザンヌ・プレボー:スイスで1602年に、彼女を含めた3名が人狼になって人々を襲ったと裁判にかけられた。
夢魔
- マラ/モーラ(Mahr):夢魔のこと。
- アルプ(Alp):北欧神話の精霊アールヴ起源の動物に化身して訪れる夢魔。
- インクブス/スクブス:淫らな夢を見せ誘惑する夢魔。
- ザントマン/砂男(Sandmann):魔法の砂で人を眠らせる妖精。
- ドルード(Drude):南部に伝わる夢魔で、逆五芒星や魔除けのナイフで祓う儀式で知られる。
- ナハトコボルト(Nachtkobold):悪夢を見せる夜の妖精。
不死者
- ヴァンピーア/ブルートザオガー(Vampir, Blutsauger):吸血鬼や高利貸しなどの搾取者を意味する。
- オルロック伯爵(Orlok):ルーマニア語で吸血鬼という意味のノスフェラトゥである伯爵。
- ゲシュペンスト(Gespenst):幽霊・妖怪や化物などの総称。ゲーム『ヒーロー戦記』や『スパロボ』では黒いロボットの名として採用されている。
- ガイスト(Geist):幽霊や精霊のこと。
- ギスキン(Giscin):古高ドイツ語で幽霊のこと。
- ギトロク(Gitrog):古高ドイツ語で幽霊のこと。幻を意味する単語でもある。
- ギドログ(Gidrog):古ザクセン語で幽霊のこと。
- シュプーク(Spuk):幽霊のこと。幽霊現象を意味する単語でもあり、さらに馬鹿騒ぎという意味もある。
- ファントーム(Phantom):幽霊のこと。古代ギリシア語で幽霊や幻影を意味するパンタスマが語源。
- ナハツェーラー(Nachzehrer):ドイツ南部で伝承される強力な不死者で、死後埋葬されたが蘇り、自身を包む布や肉体そのものを喰らうが、その度に親族は呪われ衰弱していく。
- ノインテーター(Neuntöte):ザクセン地方に伝わる、埋葬されてから9日後に蘇った者が転じる吸血鬼で、レモンを口いっぱいに含ませることができれば退治できる。
錬金術師
- アルヒィミスト(Alchemist)
- サンジェルマン伯爵:終の地がヘッセンであると伝わるヨーロッパ中を騒がせた怪人。
- パラケルスス:賢者の石を造りだしたとされる伝説の錬金術師。
- ファウスト
- メフィストフェレス(Mephistopheles):ファウストに召喚されたと伝承される悪魔。ゲーテの戯曲『ファウスト』で有名になった。
- ヘニッヒ・ブラント
- ベルトルト・シュヴァルツ
- ヨハン・クンケル
- ヨハン・ベッヒャー
- ヨハン・フリードリッヒ・ベトガー
グリム童話
- アインオイクライン/アイノイクライン(Einäuglein):『一つ目、二つ目、三つ目』に登場する眼球が一つの女性。
- ドライオイクライン(Dreiäuglein):『一つ目、二つ目、三つ目』に登場する眼球が三つの女性。
- アオゲンアオスピッケンデタオベ/目玉を啄み取る鳩(Augenauspickende Taube):『シンデレラ』に登場する鳩。シンデレラの二人の姉の両目を刳り貫いて失明させた。
- アルヴェッガース/アルウェッゲルス(Arweggers):『王さまの子どもふたり』に登場する小人たち。
- ヴァルヌスヴァーゲン/ヴァルヌスシャーレンヴァーゲン/胡桃の殻の車(Walnusswagen, Walnussschalen Wagen):『ならずもの』に登場するアイテム。胡桃の殻でできた引き車。
- エーアトメンネケン(Erdmänneken):『土の中の小人』に登場する小人。パーダーボルン地方の話。
- キュルビスヴァーゲン/かぼちゃの馬車(Kürbiswagen):『シンデレラ』に登場するアイテム。かぼちゃの馬車のことだが、正確にはグリム童話のシンデレラ(アッシェンプッテル)にかぼちゃの馬車は登場しない。
- グラースパントッフェル/ガラスの靴(Glaspantoffel):『シンデレラ』に登場するアイテム。正確にはグリム童話のシンデレラ(アッシェンプッテル)にガラスの靴は登場せず、代わりに銀の靴と金の靴が登場する。
- ゴルトシュー/金の靴(Goldschuh):『シンデレラ』に登場するアイテム。
- ジルバーシュー/銀の靴(Silberschuh):『シンデレラ』に登場するアイテム。
- グローセ・ベーゼ・ヴォルフ/大悪狼(Große Böse Wolf):『赤ずきんちゃん』に登場する狼。
- ゴルトエーゼル/ゴルデーゼル(Goldesel):『おぜんやご飯のしたくと金貨を生む騾馬と棍棒袋から出ろ』に登場するロバ。荷車を引いたり袋を運んだりはしないが金貨を生み出す力を持っている。
- ゴルデネ・フォーゲル/黄金の鳥(Goldene Vogel):『黄金の鳥』に登場する鳥。
- シュヴィムハビヒト(Schwimmhabicht):泳ぐ鷹。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は鷹が当然のようにライン川を泳いで渡るのを見たという。
- シュヴィンミュールシュタイン(Schwimmmühlstein):泳ぐ石臼。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、この話の語り手は金床と石臼が美しくゆっくり静かにライン川を泳いで渡るのを見たという。
- シュテルンターラー/星の銀貨(Sterntaler):『星の銀貨』に登場するアイテム。天上の星々が白銀色の銀貨になって降ってきたもの。
- ショレ(Scholle):『かれい』に登場するカレイ。魚たちの法と正義を執行する王を決める競争に参加したが、カレイは泳ぐのが遅かった。ニシンが一番速かったたと聞いたカレイは「裸のニシン(De nackte Hiering?)」と叫んだため、その罰として口を斜めに付けられてしまった。他の魚たちはニシンをHeringと呼んだのに対し、カレイはニシンを東フリジア語でHieringと呼んでいた。
- カルプフェ(Karpfe):『かれい』に登場するコイ。これといった見せ場の無い脇役。
- グリュントリン(Gründling):『かれい』に登場するヨーロッパカマツカ。競争では魚たちの中で三番目に速く、その泳力はパーチとコイを凌駕するがニシンやカワカマスには及ばなかった。これといった見せ場の無い脇役。ヨーロッパカマツカは『こわがることをおぼえるために旅にでかけた男』にも登場する。
- バルシュ(Barsch):『かれい』に登場するパーチもしくはスズキ。競争では魚たちの中で四番目に速く、その泳力はコイを凌駕するがニシンやカワカマスやヨーロッパカマツカには及ばなかった。これといった見せ場の無い脇役。
- ヘヒト(Hecht):『かれい』に登場するカワカマス。競争開始の合図を担当し、一番乗りで矢のように泳いだが、後発のニシンの泳力がそれ以上だったため一番にはなれなかった。
- ヘーリン(Hering):『かれい』に登場するニシン。魚たちの法と正義を執行する王を決める競争で一番だったため、おそらく王になったと思われる。魚たちの間では水中を最速で泳いで弱い魚を助けることのできる魚が王に相応しいとされていた。
- ジルバーナーゼンユンゲーゼル(Silbernasen Jungesel):銀の鼻をした仔驢馬。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は銀の鼻をした仔驢馬が二本足の兎を追いかけるのを見たという。
- ツヴァイゲブラーテネヒューナー(Zwei Gebratene Hühner):ドイツ語で“二羽のローストチキン”という意味。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、この話の語り手は二羽のローストチキンが逆さま(胸は天国に向けて背中は地獄に向けた状態)になって素早く飛んでいるのを見たという。
- テプフヒェン/小さい鍋さん(Töpfchen):『おいしいおかゆ』に登場する小さな鍋。この鍋に「テプフヒェン、コッホ(小さい鍋さん、煮て)」と言うと甘い黍粥を炊いてくれ、そして「テプフヒェン、シュテー(小さい鍋さん、止まって)」と言うと炊くのが止まった。
- ナッシュカッツェ/ナッシュハフテカッツェ/摘み食いする猫/摘み食い好きな猫(Naschkatze, Naschhafte Katze):一般的には甘党や間食する者を意味する慣用句。『猫とねずみとお友だち』に登場する猫。知り合いの鼠を騙し、冬越しのために貯蓄した牛脂を一匹で食べ尽くし、さらにそのことを知った鼠も口封じのために食べてしまった。正確には文中ではナッシュハフテカッツェ(摘み食い好きな猫)という呼び名が使用されている。
- ガンツァオス/みんなぺろり(Ganzaus):『猫とねずみとお友だち』に登場する猫が名付けた奇妙な名前の猫。黒毛だが足だけが白色になった仔猫、つまり俗に言う靴下猫であり作中で猫が語るには2〜3年に一匹しか生まれないという。
- ハオタプ/皮なめ(Hautab):『猫とねずみとお友だち』に登場する猫が名付けた奇妙な名前の猫。白と茶色の斑模様がある生まれたての牡仔猫。
- ハルバオス/半分ぺろり(Halbaus):『猫とねずみとお友だち』に登場する猫が名付けた奇妙な名前の猫。首回りに白い輪模様が付いた仔猫。
- ブレーゼルディープ/パン粉泥棒(Bröseldieb):『猫とねずみとお友だち』に登場する鼠が名付け親となって名付けた鼠の子。
- ファラダ(Pferde):『がちょう番の女』に登場する人語を話せる馬。斬首され頭だけになってもがちょう番のリーゼルに助言を与える。
- プフルーク(Pflug):ドイツ語で犂(英語ではプラウ)のことであり牛や馬などの動物に引かせる農具。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は犂が動物の力を借りずに独りでに大地を耕しているのを見たという。敢えてこの犂を通常の犂と呼び分けるなら、レーベンデプフルーク(Lebende Pflug)だろうか。
- フラオ・フュクシン(Frau Füchsin):『奥様きつねの結婚』に登場する牝狐。グリム兄弟の兄ヤーコプ・グリムはこの話を幼少期に聞いており、最も好きな話の一つとしていた。
- ノインシュヴェンツィーガーフクス(Neunschwänziger Fuchs):フラオ・フュクシンの夫だった尻尾が九本ある古狐。
- フリーゲ(Fliege):ドイツ語で蝿のこと。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、とある国では蝿が山羊と同じくらい大きいという。ドイツ語で巨大蝿はリーゼンフリーゲ(Riesenfliege)という。だが、山羊ぐらいの大きさの蝿が一般的に見られるような地域ではわざわざ巨大とは言わずに単にフリーゲと呼ぶのだろう。
- フロッシュケーニッヒ(Froschkönig):『かえるの王さま』に登場する蛙。
- ボーネ(Bohne):『わらと炭とそら豆』に登場するそら豆。
- ミュッケ(Mücke):ドイツ語で蚊のこと。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は二匹の蚊が橋を建設しているのを見たという。
- リンデ(Linde):ドイツ語で菩提樹のこと。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は大きな菩提樹にホットケーキが生えているのを見たという。敢えてこの菩提樹を通常の菩提樹と呼び分けるなら、ハイセフラーデンリンデ(Heiße Fladen Linde)だろうか。
- ルンペルシュティルツヒェン(Rumpelstilzchen):グリム童話に登場する小人。
文学作品
- ヴィルジナル/氷の女王:『英雄の書』に登場する妖精。
- ヴィルヘルム(Wilhelm):物語詩『レノーレ(Lenore)』に登場する男性。死後に生ける屍となって恋人レノーレの元へやってきた。
- ウルガーン/ウルガン(Urgân):ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタンとイゾルデ』に登場する巨人。
- エルケーニッヒ/アールキング(Erlkönig/Ar king):シュバルツバルト(黒い森)に住む邪悪な榛(ハンノキ)の王。ゲーテの詩にシューベルトが曲を付けた「魔王」に登場する。
- オイゲル(Eugel):叙事詩『角のようにかたいジーフリト』に登場する小人。
- オリンピア(Olimpia):E.T.A.ホフマンの小説『砂男』に登場する自動人形の女性。
- ガビルーン/ガンピルーン(Gabilûn, Gampilûn):叙事詩『王女クードルーン』に記述がある怪物。龍のようであり、猛禽類と関係があるらしいが、叙事詩の作中でもその姿を現していないため詳細は不明。
- クペラン(Kuperan):叙事詩『角のようにかたいジーフリト』に登場する巨人。
- ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン/鉄腕ゲッツ
- コリントの花嫁
- ザミエル:カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲のオペラ『魔弾の射手』に登場する魔弾を造りだした悪魔。
- フライクーゲル:狙ったところに必ず当たるという魔法の弾丸。
- ちびっこ吸血鬼(Der Kleine Vampir)
- もじゃもじゃペーター(Der Struwwelpeter):不品行の結果、不幸な目に遭う者、遭わせる者たち。
- ニコラス/トール・アグリッパ(Tall Agrippa):人種差別する者に罰を与える者。
- シュナイダー/グレイト・トール・テイラー(Schneider,Great tall tailor):親指を吸う癖が直らない者の指を切る仕立屋。
- バルトアンデルス
- ハルピーン(Harpîn):ハルトマン・フォン・アウエ『イーヴェイン』に登場する巨人。獅子の騎士イーヴェインを馬上に倒れ伏させる怪力の持ち主。
- フッケバイン(Huckebein):児童文学『ハンス・フッケバイン』に登場する悪戯カラスで、名前の意味は「醜い脚」。戦闘機Ta183の愛称や『スパロボ』に登場するロボットの名として凶鳥と訳され知られる。
- フランケンシュタインの怪物:医学生ヴィクトル・フランケンシュタインが、知的好奇心により死体を継ぎ合わせて創造した怪物。
- ブルトガング:『ディートリッヒ伝説』に登場する英雄ハイメが持っていた剣。
- ラウリン(Laurin):小人の王。叙事詩の英雄ディートリヒ・フォン・ベルンを魔法の指輪と腰帯で圧倒した。
- リントラッヒェ(Linttrache, Lintrache):中高ドイツ語の『ニーベルンゲンの歌』に登場する龍。リンは撓るという意味の単語で蛇を意味し、トラッヒェは龍を意味する。この龍を退治してその血を浴びた英雄ジーフリトの皮膚はどんな武器でも傷つかない不死身の甲羅になった。
その他
- アインホルンリーゼ/一角巨人(Einhornriese):昭和期の怪奇系児童書、佐藤有文の『世界妖怪図鑑』で紹介された妖怪。頭の上に一本角を生やした身長6mの人喰い鬼。
- アハツィヒ・アイン(Achtzig Ein):ドイツ語でアハツィヒは80、アインは1という意味。パブリックドメインの創作企画ゆらぎの神話に登場するやおいの女神。
- ヴァンピーアスケレット/吸血ガイコツ(Vampirskelett):昭和期の怪奇系児童書で紹介された妖怪。佐藤有文『ドラゴンブックス 恐怖と怪奇の世界 吸血鬼百科』によれば、ドイツの吸血ガイコツは骸骨の姿をした吸血鬼だという。鏡に映せば骸骨の姿である事が分かるが、肉眼ではどんな女性でも好きになってしまうほどの美青年に見えるといい、女性と接吻しながら血を吸い取り魂まで奪ってしまう。
- オストアンデル(Osto Andel):とある村の集まりで最も恐ろしいといわれたもの。
- カスパー・ハウザー(Kaspar Hauser):16歳まで幽閉されていたといわれる孤児で、1828年5月26日に発見されたがその正体は不明のまま暗殺された。
- カリガリ博士(Das Cabinet des Doktor Caligar)
- ギーガー:スイスの画家・家具デザイナー。死と性をテーマとした革新的なクリーチャーデザインを行ったので、氏をイメージさせるデザインの怪物の名に冠されることがある。
- キラーコンドーム
- クーヘンの妖精
- クラウチャン(Krautchan)
- キリストちゃん(Christ-chan)
- ゲルマンミヒャエル(German_Michel)
- プッチちゃん(Putsch-Chan)
- ポーランドボール
- AfDちゃん(AfD-chan)
- シュレディンガー・カッツ/シュレーディンガーの猫(Schrödingers Katze):量子力学的記述において、生きている状態と死んでいる状態が重なり合って存在している猫。
- グラト:昭和期の怪奇系児童書で紹介されたドイツの悪魔。蜘蛛の脚だけの姿をしており、毒液を出してあらゆる病気を撒き散らす。
- ゲルマニア:母なる大地を擬人化した女神。
- チルバン:昭和期の怪奇系児童書で紹介されるスイスの緑色の魔物で、牧師に化けて人々の油断を誘う吸血鬼であるが食べ物を食べない、足跡を残さない、十字架を持たないので見分けがつく。
- デュッセルドルフの吸血鬼
- ドドンゴ(Dodongo):姿が見えない悪魔ベヘモトの乗騎魔獣。
- ドルド:昭和期の怪奇系児童書で紹介された妖怪。佐藤有文『ドラゴンブックス 恐怖と怪奇の世界 吸血鬼百科』によれば、ドイツの吸血鬼ドルドは午後11時から午前3時頃に就寝中の人間の胸にのしかかり血を吸うといい、それに気づいて声をあげようとしても全身が痺れて動けないという。一週間ほど血を吸われ続けると完全に手遅れとなり死ぬしかなくなってしまう。
- パウル君:予言する蛸。
- バプステーゼル/教皇驢馬:宗教改革時にマルティン・ルターらのカトリック批判のパンフレットに描かれた、堕落した教皇と教会組織を揶揄した魔物。
- ミュンヒカルブ/メンヒスカルブ/修道士仔牛:上記のものと同じく修道士を揶揄した魔物。
- ブラックサンタ
- マリア
- 吉原千恵子/ヨシワラチエコ(Yoshiwara Chieko):チェーンメールの中で語られる怪談に登場する四歳の少女の幽霊。ナチスの残党が運営する研究所ヒューマンファームで生み出された人造人間だといい、様々な優秀な人物の遺伝子を有する。だが、その出自が祟ったのか誘拐犯に連れ去られた末に殺害され、たった四歳でこの世を去った。その亡骸は誘拐犯の手によって山の中に埋められたが、後にそこに建設された電波塔の電波を通じて念を送ることで事件の真相を発信し、それを広めることで誘拐犯とその子孫を探し出してからの復讐を目論んでいる。
- ラウヒェン(Rauchen)
- レヴェラー/ボーデンドリュッカー(Leveler, Bodendrucker)
- 腕章の少年/アルムビンデユンゲ(Armbindejunge):洒落怖で語られた怪談に登場するナチスの腕章をつけた少年。大阪府の吹田市で夕方から夜にかけてこの腕章の少年が街を徘徊すると噂された。その少年はナチスの腕章を着け、左手に警棒を持ち、片足が義足で、3~5匹の犬を連れている。目撃談によれば、異様に白い肌、痩せこけた頬、異様な光を帯びた鋭い眼光、枝のように細い腕という容姿だったという。
UMA
- アーヘノザオルス/アーケノサウルス(Aachenosaurus):アーヘンのトカゲという意味の幻の恐竜。正体は樹木の化石であった。
- ヴィルダーマン/ウォーモセルバティコ:欧州でワイルドマンとして知られる野人。
- ヴォルパーティンガー(Wolpertinger)
- ラッセルボック(Rasselbock)
- グーグル・アース・エイリアン・ジャーマン・バグ:衛星写真に写った全長40mほどの巨大昆虫。
- タッツェルブルム(Tatzelwurm)
- 秘密の動物誌:ペーター・アーマイゼンハウフェン博士の遺した資料に記述される、世界中で発見された奇妙な生物。
- Uボートに撃沈された怪獣:第一次世界大戦時に、U-28が撃沈したイギリス汽船イベリアン号の爆発に巻き込まれて沈んでいった深海ワニとでもいうべき怪獣。
ドイツ軍系
- アーリア人
- アフリカの星
- エルヴィラ・ティーガー
- 帰ってきたヒトラー
- ブラジルから来た少年
- 金髪の野獣
- クーゲルパンツァー
- 黒い悪魔
- クロエネン
- 最後の大隊/ラストバタリオン
- 砂漠の狐
- サントロンの幽霊
- 死の天使
- 空の魔王
- ディッケ・ベルタ
- 呪われた戦艦シャルンホルスト
- 呪われた潜水艦UB-65
- ハウニブ
- P1500モンスター
- ビヒモス
- Bv141
- ブーヘンバルトの魔女
- フランケンシュタインズ・アーミー(Frankenstein's Army)
- ブロッケン
- ヘルツォーク大佐
- ホルテン
- ボルマン
- 街中の怪物
- ミドガルドシュランゲ
- ラーテ
- ルドル・フォン・シュトロハイム
- レッドバロン
参考
外国の妖怪のドイツ語での訳名
ギリシャ神話やヨーロッパ全域の伝承含む。
- アイザーネユンフラオ(Eiserne Jungfrau):鉄の処女のこと。
- アインホルン(Einhorn):ユニコーンのこと。
- アオフライスムントフラオ(Aufreißmund-Frau):口裂け女のこと。
- インゼクテンメンチ(Insektenmensch):虫人のこと。
- ウンゲテューム(Ungetüm):怪物のこと。
- エクセンメンチ(Echsenmensch):リザードマンのこと。
- ガイスト(Geist):幽霊、お化けのこと。
- ポルターガイスト(Poltergeist):騒霊のこと。
- グライフ(Greif):グリフォンのこと。グリム童話『怪鳥グライフ』にも登場する。
- コボルト(Kobold):コボルドのこと。
- ザントヴルム(Sandwurm):サンドワームのこと。
- シャッテンフラオ(Schattenfrau):影女のこと。
- シュネーフラオ(Schneefrau):雪女のこと。
- シュネーメンチ/シュネーメンシュ(Schneemensch):雪男のこと。
- シュライム(Schleim):スライムのこと。一般的には粘液という意味であり、例えばナーゼンシュライム(鼻の粘液)という単語が格好良いドイツ語として紹介されることもある。
- シュラインメートヒェン/シュライムメートヒェン(Schleim Mädchen):スライム娘のこと。
- シュランゲ(Schlange):蛇もしくは狡猾で陰険な女性のこと。
- シルムガイスト(Schirmgeist, Schirm-Geist):唐傘お化けのこと。
- ゼーユングファー/ゼーユングフラウ(Seejungfer,Seejungfrau):人魚のこと。
- ツェンタオア/ツェンタオアー/ケンタオアー(Zentaur,Kentaur):ケンタウロスのこと。
- エーゼルスツェンタオアー(Eselszentaur):オノケンタウロスのこと。
- プフェーアデツェンタオアー(Pferdezentaur):ヒッポケンタウロスのこと。
- ドッペルゲンガー(Doppelgänger):自己幻視のこと。
- ドラッヘ(Drache):ドラゴンのこと。
- トラッヒェ(Trache):1100~1350年頃にかけて使用された中高ドイツ語でドラゴンのこと。
- トラッホ(Trahho):8〜11世紀半ばに使用された古高ドイツ語でドラゴンのこと。
- ナハトシュペルリン(Nachtsperling):夜雀のこと。
- ハイムヒェン(Heimchen):ワーム、イモムシのこと。
- フィーアズユンボーレン(Vier Symbolen):四つの象徴という意味で四神のこと。
- フィッシュメンチ(Fischmensch):半魚人のこと。
- フェー/ニュンフェ(Fee,Nymphe):妖精のこと。
- フォーゲルメンチ(Vogelmensch):鳥人のこと。
- フォルムヴァンドラー/ゲシュタルトヴァンドラー(Formwandler, Gestaltwandler):シェイプシフターのこと。
- フリューゲルプフェーアト(Flügelpferd):ペガサスのこと。
- ブロンツェーナーブレ(Bronzener Bulle):真鍮の牡牛、ファラリスの雄牛のこと。
- モンスターシュネッケ(Monsterschnecke):化けかたつむりのこと。
- リーゼンタオゼントフュースラー(Riesentausendfüßler):大百足のこと。
- レーゲンフラオ(Regenfrau):雨女のこと。