概要
ルーマニアの伝承に伝わる吸血鬼の一種。もしくはルーマニア語で『吸血鬼』の総称。及びこれを意識して命名された架空の人物等。
語源は更に古くスラヴ語からギリシャ語まで遡り、『病気を含んだ』を意味する"νοσοφορος"に由来する。
伝承によれば私生児の親から生まれた子供が死後吸血鬼化した存在とされ、死後すぐに吸血鬼として活動する為、事前に予防することは不可能に近いとされる。
普通の吸血鬼と違って吸血行為のほかに人間の苦しみを糧にするといわれる邪悪な一面を持ち、普通の家庭を持つ場合もあるが、ノスフェラトゥと人間の間に生まれた子供はモロイと呼ばれる半吸血鬼と化すとされている。
なおノスフェラトゥを滅ぼすには刃物でも弾丸でもよいので、とにかくその体を貫けばよいという。
誘導
カタカナでノスフェラトゥとした場合、主に以下のような意味がある。
- 吸血鬼、もしくはその亜種、あるいはより漠然と不死系のモンスター。
- 1922年のドイツ映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』(Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens)
- 上記の映画に登場する吸血鬼オルロック(Orlok)伯爵
- 1979年の西ドイツ映画『ノスフェラトゥ』(Nosferatu: Phantom der Nacht)。上記のリメイク。
- 1994年のSFCソフト『ノスフェラトゥ』。
- 『バイオハザード_CODE:Veronica』のキャラクター。→ノスフェラトゥ(バイオハザード)
- 『ファイアーエムブレムif』のキャラクター。→ノスフェラトゥ(FE) / ノスフェラトゥ(FEIF)
- 『女神転生シリーズ』のキャラクター。→幽鬼ノスフェラトゥ
- 『ベルセルク』のキャラクター、ゾッドの称号。
- 『ロザリオとバンパイア』のキャラクター、アカーシャ=ブラッドリバーの称号。
- 『エースコンバットシリーズ』に登場する架空機のペットネーム。→CFA-44
- 『劇場版GS美神』に登場するキャラクター
オルロック伯爵
『ノスフェラトゥ 恐怖の交響曲(1922年)』に登場する吸血鬼。
不死身探偵ではありません。
監督は
サイレント映画の巨匠・F・W・ムルナウ。
(Friedrich Wilhelm Murnau)
本来この映画は『吸血鬼ドラキュラ』を原作とするはずが著作権の問題をクリアできず、タイトルと人物名を変更し設定にも独自解釈を加え強引に作成・発表した。
原作のドラキュラ伯爵に相当するオルロック伯爵は禿頭、ギョロ目、犬歯ではなく門歯が長く尖っているという獣じみた風貌(メイン画像参照)で、舞台演劇で確立された『精悍で高貴なドラキュラ伯爵』とは対照的に、不気味で病的な印象の持ち主である。この、そこに立っているだけで恐怖感を与える不吉な風貌は、死の病であるペストを撒き散らすネズミをイメージして造形されている。
オルロックの怪物性と、これを最大限に引き出す演出の妙により、
ホラー映画、怪奇映画、ドイツ表現主義映画の傑作と言われている。
1925年、ドイツの法廷はこの映画が盗作に当たることを認め配給停止の判決を下し、『吸血鬼ドラキュラ』の版権元であるフローレンス未亡人(ブラム・ストーカーの奥方)によって全て差し押さえられ、一部を除き破棄された。
1932年の短編映画『Boo!』では断片的に引用されており、映画愛好家の間では知る人ぞ知る伝説の名作として語り継がれていた。
原作者の没後50年となる1962年に著作権が切れ、配給停止処分も無効となり、破棄を免れ保管されていたフィルムから復元され、再びその姿をあらわすこととなる。
この時点で登場人物名は『吸血鬼ドラキュラ』のものに改められている(パブリックドメインになっているため)。
なお、1922年当時の製作舞台裏をモチーフとしたアメリカ映画『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(2000年)では、オルロック伯爵を演じた俳優マックス・シュレックが本物の吸血鬼だったということになっている。
オルロック系キャラクター
上記のような事情により、このキャラクターは1962年の時点で正式に『ドラキュラ伯爵』として扱われるようになっている。
しかしベラ・ルゴシやクリストファー・リーに代表される正統派のドラキュラ像に対し、このキャラクターは異端のドラキュラ像、あるいはドラキュラの名に捉われない吸血鬼像を確立する上で重要な役割を果たしたともいえる。そのため、ここではあえてドラキュラとは別系統の『オルロック伯爵』として扱う。
なお、坊主頭とギョロ目・尖った耳の組み合わせは宇宙人キャラにもよく見られる特徴。
実際、『吸血鬼の正体は宇宙人』というパターンはそれなりに伝統のある定石の一つである。ヴァンピレラ / ドラキュラス / バットン / スペースバンパイアを参照。
カート・バーロウ(ブライヒェン卿)
Kurt Barlow(Breichen)
スティーブン・キングの小説『呪われた町('Salem's Lot)』およびトビー・フーパー監督による映像化『死霊伝説(Salem's Lot)』に登場する吸血鬼。
表向きは骨董と高級家具を扱う商人であり、また反キリスト系のカルト指導者としての側面も持つ。
原作小説のバーロウはどちらかと言えばルゴシやリーのドラキュラに近い姿で描写されているが、対してフーパー版では頭髪も眉もない、青肌の妖怪じみた姿で表現されている(演:Reggie Nalder)。さらに唸り声以外にセリフらしいセリフもなく、原作でのバーロウの発言も従僕のストレイカーが代弁している。
バーロウをご主人様として扱いつつ、巧みに飼いならして利用しているストレイカーの方が黒幕のような印象すらある。まあ、世の中には組織の中核を担う幹部よりも、一話限りの怪人の方が地位が高い組織もあるので。
2004年のリメイク版では原作に近いキャラ設定で、ルトガー・ハウアーが演じている。
wizardry
FC版のwizardry(1987年)において末弥純がデザインしたバンパイアロードが貴族的イメージの美形モンスターであるのに対し、その下僕として付き従うバンパイアは裸に皮衣・オルロック的なご面相と、ロードとの間に大きな落差がある。
更にベニー松山による小説版シリーズでは、KODに出現したバンパイアロードは偽者ということになっており、百年後に再出現した偽バンパイアロードがオルロック的な怪人として描写されている。
ドラキュラ(1992年)
フランシス・フォード・コッポラ監督による映画化。
設定と展開はストーカーの原作を高度に再現しており、ドラキュラ伯爵をゲイリー・オールドマンが演じている。
壁に映った伯爵の影が、本体と別個に動き回る演出は1922年の『ノスフェラトゥ』を連想させるものであり、また半獣人の形態も『坊主頭の吸血鬼』の系譜を継ぐものと言えなくもない。
ちなみにショッカー怪人の蝙蝠男をはじめ、コウモリの怪人は吸血鬼の能力・弱点とともにオルロックを連想させる容姿を持つものが多い。
悪魔城のオルロック
ドラキュラ伯爵の配下として、悪魔城上部を統括する中ボス。
魔力の刃、蝙蝠召喚、悪霊召喚を繰り出す。第二形態は緑色の巨人。
なお、『奪われた刻印』(2008年)にはバーロウも登場する。
脳須笛羅塔先生
わたなべわたるの作品に登場。名前はノスフェラトゥだが、容姿は女犯坊に酷似。
マスター(バフィー)
『バフィー 〜恋する十字架〜(Buffy the Vampire Slayer)』に登場する吸血鬼の一人。
小説版『聖少女バフィー』で、ハインリッヒ・ジョセフ・ネストという本名が明らかになっている。
スペースビースト・ノスフェル
殺害した人間を傀儡として操る能力、不死身に近い再生能力に加え、デザイン上のモチーフが(オオカミでもコウモリでもなく)ネズミであるという点が、まさにノスフェラトゥの怪獣化といえる。