曖昧さ回避
- ヨーロッパの伝承。本項目で解説する。
- 上記の伝承を元にしたメガテンに登場する仲魔。
- 『ニンジャスレイヤー』に登場するニンジャ→ワイルドハント(ニンジャスレイヤー)
- ゲーム版『ウィッチャー』シリーズ第三作→『ウィッチャー3 ワイルドハント』
概要
ヨーロッパに伝わる民間伝承の一つ。
各地に様々な伝承として伝えられ、ドイツの政治家で民俗学者でもあるヤコブ・グリム(有名なグリム兄弟の兄)によって1835年「ドイツ神話(Deutsche Mythologie)」の中でまとめられ、はじめて体系化、一つの概念になった。
ドイツ語では「Wilde Jagd」となり、他に「Wildes Heer(暴れる軍隊)」、英語でも「Chase」、「Furious Army(怒り狂った軍隊)」など、他に幽霊の軍団、苦しませる者たち、死者の狩りと呼ぶものもある。
大勢の妖精または死者が狩人となり、馬や猟犬と共に空や大地を行進するというもので日本の「百鬼夜行」に近い。
伝承の伝わる地域によって異なるものの異常な者達が「猟師」として猟犬、馬、その他の獣を伴って狩りを行う。狩人になるのは、妖精、魔女、死者、特に歴史上の人物、キリスト教以外の蕃神、聖書の人物等、多岐にわたる。
彼らの「狩り」は、生きた人間も対象とし、狩られた者の魂は、ワイルドハントの一員にされてしまう。
一応、スルーア(スコットランドの昔の言葉で「群れ」の意)と呼ばれる妖精は、犯罪者の怨霊とされ、「罪を償わない限り現生を彷徨う」とされる割に集団で各地を流離い人を沼へ引きずり込むためワイルドハントとされる説もある。
元来は天を駆け畑の農作物を成長させる豊穣神がキリスト教の流入とともに悪魔的なものとされた。
ワイルドハントをまとめたグリムは、これらの伝承をキリスト教以前の世界では、神々、女神や英雄たちが悪人を罰する為に地上に現れると信じられていたと考えた。その為、これは善良な者なら恐れる必要はなく福祉、幸福をもたらすものだとしている。
著作の中で彼は、これを「神の厳粛なる行進」と表現している。ワイルドハントにリーダーが居るのは、これが無秩序な怪現象ではない事を強調しているのだとした。
怪談レストランでは『闇のレストラン』内に『狩り魔王』として収録されている。
ワイルドハントの統率者
ワイルドハントを統率するとされた死者は、天国に行かなかった人物。
「天国では狩りが出来ない」と天国行きを自ら拒絶した狩り好きの人物がワイルドハントにされた伝承もあり、神隠しに似た要素があると言える。
北欧神話の神。典型的なワイルドハントのリーダー。
スカンジナビアではワイルドハントのリーダーは、オーディンであり、この超常現象も「オーディンの狩り」と呼ばれている。
- クネヒト・ループレヒト
ドイツの「黒いサンタクロース」。悪い子供を懲らしめる聖人。
- ペルヒタ
ドイツ、オーストリアの伝承にある魔女。元は異教の女神で怠け者を罰する。
- ヘラ
イギリスの伝説上の王。ギリシア神話の女神ヘーラー(Hera)ではなく、「Herla」(「ヘルラ王」とも書かれる)。
北欧神話のオーディンと混同されることがある。
ドワーフの妖精王の結婚式に招かれ、3日間、異界に滞在してからブリテンに帰ると現世では200年経っており、玉座を失ってワイルドハントを率いてさまよう狩人の魔王になった。鷹や馬、タカ狩りに必要なもの一式の他、従者の腕の中に小型のブラッドハウンドが抱かれており、彼らはこの犬が自ら飛び出していかない限り彷徨の旅を続けなければならない。
伝説上のブリテン王。キリスト教信者だが妖精モルガンによりアヴァロンに渡り、天国に行けなかった。
世界の海を一周し、没後は水葬にされた。彼はスペインの無敵艦隊を破る前に悪魔と契約していたとされ、今もダートムーアを、首のない馬に引かせる黒い馬車に乗り、12人のゴブリンと一群の犬を率いてさまよっているといわれる。
- ヘロデ大王
ユダヤ王国の統治者。『新約聖書』に登場する。王族ではなくローマ元老院と取引し、王位を得た。野心家で猜疑心が強く、家族さえ処刑し続けた。他にも幼児虐殺、無実の人を貶める、ダビデの墓を暴くなどの伝説を残している。ある年生まれ子の惨殺とそれを免れた「ナザレのイエス」が、はハリポタのような「当たる」お約束である。
『旧約聖書』『創世記』の人物。アダムの子、カインとアベルの兄で知られる最初の殺人者。
- ダンドの犬
悪魔のダンド犬とも。コーンウォール地方の伝承に出てくる伝説の猟師(ダンドーは一応聖職者だが、あまりにも狩り好きだった上に、狩猟のさなか悪魔に拉致されて地獄へ連れてかれてこうなった)ダンドが連れている猟犬。
黒犬伝承と関連がある。
- アヌアンの猟犬
ウェールズ地方の伝承にあるアヌアン王の9頭の巨大な、赤い耳を持つ白い猟犬(ウェールズの言葉で猟犬がCWN「クーン」)。
狩りを愛するノルマン人貴族の令嬢、猟犬の母(クーン・ママ)モール・イ・ノーズ(「Mallt-y-Nos」で「夜のマチルダ」)と共に現れることもあり、彼女の号令と共に罪人たちを追い回し、地に押さえつける。
特定の夜、あるいはクリスマスからの12日間の間だけ狩りに参加するという伝承もある。
天使。イングランド北部の伝承では、ワイルドハントに現れるとされる。 ガブリエル・ラチェット(嗅覚を頼りに獲物を追跡する猟犬)後にガブリエルハウンドと呼ばれる、人面犬の群れを率いて天空を飛ぶとされ、犬は死者の出る家の上空で旋回するといわれる。ただ死の予兆なだけで具体的な形は不明。
- ヘロディアス
中世に信じられた魔女あるいは女神。 ヘロデ王の妻。彼女は洗礼者ヨハネの(娘サロメが彼の首ほしいと言って旦那ヘロデ王がやらせた)斬首に参列したため永遠に天空を彷徨うことになった。ただ真夜中から夜明けにかけては木の上で休むことが許されている。彼女は後述するハルダルとともに、元来豊穣を司る女神であったらしいのだがその土着の神がまずディアナと習合し(この段階では「月に代わっておしおきよ」って怠け者や邪な人をやっつけるとされた)、キリスト教の流入とともに悪魔とされた。
- 聖グスラック(クロウランドのグスラック)
イギリスの聖人。
- ジャン・トリギゴール(Jan Tregeagle)
17世紀の人物。イギリス、コーンウォール公爵領の判事で悪魔と取引したという伝説を持つ。彼はウィッシュハウンド「Wish hound」あるいはイェス・ハウンド「Yeth hound」またはイェルハウンド「Yellhound」とか言われる無頭の犬(飼い主は悪魔と言われる。)に追いかけられている。なおコーンウォールには具体的な伝承がないチーニー(Cheney)率いる猟犬群の伝承もある。
- エドリック・ザ・ワイルド
野生のエドリック、またはイードリックあるいは「むこうみずエドリック」。
ブリテン中部のアングロ・サクソン王でノルマン人の征服者に抵抗したとされる伝承の王。
イードリックは、同時代、同じ地域に同名の人物が多く、判断が難しい。
- ヘリワード・ザ・ウェイク
用心深いヘリワード。
アングロ・サクソン王でノルマン人の征服者と戦い、領地を奪われたが後に許され、家臣となって帰順したとされる。
- 狩人ハーン
ウェールズの森に住む亡霊の狩人で森の番人。
牡鹿の角を頭に着け、鎖を振り回し、馬に乗って冬の深夜に駆けまわるとされる。
アングロ・サクソンの神、あるいはギリシア神話のパーン神と関連付けられる。
東ゴート王国の建国者。「ディートリッヒ伝説」に登場する英雄「ディートリッヒ・フォン・ベルン」のモデル。
- ハルダラ
ハルダラ夫人(フラウ・ハルダラ)。ドイツの伝承に出てくる女神、あるいは妖精。
ドイツ語の「感謝」、「親しみやすい」などが名前の由来とされ、またはホールド、ホルダとも呼ぶ。
夜に彷徨う幽霊たちを導くとされる。彼女は馬に乗って洗礼前に死んだ子供の霊を率いるほか魔女もつれて天空を走り、畑の収穫を伸ばす(『となりのトトロ』でトトロが空飛んで植物の発芽を促すみたいな)とされる。ホルダはトロールの人間サイズのもの「フルドラ(「隠れたもの」の意)」と関連する可能性がある。
アイルランド・ケルト神話に登場する英雄。
海の息子という意味。海の神で魂を船に乗せ、来世に運ぶとされる。
- ヴァルデマー4世
デンマーク王。
- グズルーン(グドルン)
北欧神話に登場するブルグント族の姫。英雄シグルド(シグルズ)の妻。
またはニーベルンゲンの歌に登場するジークフリートの妻クリームヒルト。
- グウィン
またはグイン。グウィン・アプ・ニーズ(「Gwyn ap nudd」でニーズの息子、グウィンの意)。
ウェールズの伝承に現れる伝説の王で戦争と死の神でキリスト教では悪魔とされる。(某鬼灯の冷徹の冥府の審判の補佐官殿が現世で彷徨うみたいなものらしい)