概要
1960年代のエレキブームのどさくさに紛れて販売された奇怪な形状のエレキギターの総称。テスコ、グヤトーンをはじめ、国内外の様々な会社がビザールなギターを製造していた。
ギブソン、フェンダーなどのメジャーな製品と比べて信頼性に劣る物が多いが、唯一無二のルックスとサウンドが現在でも愛好されている(ギブソンやフェンダーも変なギターを作った事はあるが、あまり「ビザールギター」とは呼ばれない)。
1990年代頃から音楽雑誌などで取り上げられる事が増えた。
書籍としては『60年代ビザールギターズ』(リットーミュージック)などが知られる。
主なビザールギター
テスコ(日本)
TG-64:ボディにグリップ穴が開いて、持ち易くなっている。『エレキの若大将』(東宝)で加山雄三が使用。スクエア・ポールピース(ポールピースの断面が四角)タイプのシングル・コイル・ピックアップを使用しているが、これはマニアの間で銘器として知られる。
TRG-1:アンプ、スピーカー内蔵で、ZO-3の先駆けといえる製品。「音は良いが、見た目はもっとどうにかならなかったのか?」と言われた。通称「ポテト・ギター」。
MayQueen:名前がジャガイモの品種「メイクイーン」。ティアドロップ型ボディの下に大きな木部を足したようなデザインだが、油絵を描く時のパレットをイメージしている。セミ・ホロウ構造で、サウンド・ホールが開いている。
Spectrum5:スプリット・ピックアップ×3、鮮やかに色分けされた切り替えスイッチ、ジャーマンカーヴを施したボディの華やかなモデル。実用性はないが先進のステレオ・アウトを採用している。
グヤトーン(日本)
テルスター:NASAのテルスター人工衛星をモチーフにデザインされた。ボディにグリップ穴が開いて、持ち易くなっている。
マロリー:ロリー・ギャラガーの協力を得て開発された高級モデル。メープル材で出来ていて非常に重い。
シャープ5モデル:「井上宗孝とシャープ・ファイブ」とのエンドース・モデル。ネックが細く薄く、弾き易い。
河合楽器(日本)
SD-4W:輸出用モデルで、ピックアップが4つ、切り替えスイッチが6つ、ノブが5つ付いている、ゴテゴテとしたデザイン。ハウンドドッグ・テイラーの使用で知られる。
ヤマハ(日本)
ブルージーンズ・カスタム:「寺内タケシとブルージーンズ」とのエンドース・モデル。ネックが細く薄く、弾き易い。ボディ形状から「なすび」と呼ばれる。
ファーストマン(日本)
リバプール:ヴァイオリン・シェイプを大胆に解釈したボディで、非常に幅が広い。「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」の三原綱木が使用。
ダンエレクトロ(アメリカ)
Model 3021:ボディはメゾナイトを型に流して作り、横の部分は壁紙みたいなのが巻いてあるという安価なギターだが、何故か指板には最高級ハカランダ材が奢られている。リップスティック・ピックアップのカバーは本当に口紅の容器を流用。ジミー・ペイジの使用で知られる。
ロングホーン・ギターリン:極端なカッタウェイを施したボディは竪琴をイメージしたもの。31フレットまであり、マンドリンの音域までカバーできるため「ギターリン」と名付けられた。
エレクトリック・シタール:ブリッジにカーブがついていて弦がビビるという仕組みで、本物のシタールとは全くの別物。
ナショナル(アメリカ)
グレンウッド:ボディはレゾグラス(FRPの一種)製でアメリカ合衆国の国の形をモチーフとしており、マップ・シェイプと呼ばれる。ブリッジの下にも「シルバー・サウンド・ピックアップ」と称するピックアップが埋め込まれている。
VOX(イギリス)
ファントム:ボディは五角形で棺桶をモチーフとしたデザイン。エコー社で製造しているモデルもある。
ティアドロップ:文字通り涙滴型のボディ。ブライアン・ジョーンズの使用で知られる。
エコー(イタリア)
ロック:通称「ロケット・ギター」。ロークス(イタリアで活動したイギリスのバンド)とエンドースしていた。ヘッドの先端が鋭く尖っている。
ハグストローム(スウェーデン)
F-11:ボデイの表はプラスチック、裏はビニール・レザーで覆われている。ピック・ガード上にコントロール・パネルがある。両ピックアップの間の金色のネット状の物は単なる飾り。