概要
ニューヨーク州のロングアイランド島のうち、マンハッタン島に隣接する下町地域で用いられる米語の一方言。
入植時の古風なイギリス英語の特徴を色濃く残しており、米語に分類される他の英語方言の多くとは一線を画す独特な英語である。
発音のクセが少ないため、数ある米語の中では日本人にとって最も馴染みやすい方言の一つ。
別名ニューヨーク弁(New Yorker's accent)。ロングアイランドで話されるからと言って長島弁、長嶋弁などと言ってはいけない。
似たような英語が細部で徐々に姿を変えながら、ニューヨーク以北のコネチカット州、マサチューセッツ州、メーン州を経て、カナダのプリンスエドワード島まで広く分布している。
音韻学的に極めて似ており、ほぼ同一方言の変種と言って差し支えのないボストン訛りと並んで、英語圏における方言萌えの代表格に選ばれることの多い米語である。
特徴
- carやcenterなどの母音に後置されるrの音が消失し、直前の母音が長母音化する。
- thの音は舌を噛まず、上の歯の裏側に舌を軽く当てて「dh」のように読む。
- 進行形の「〜ing」の最後のgは無声化し、「〜in'」のように読まれる(漫画などではブルックリン訛りであることを示すために実際にこのような表記が用いられる。例:How's you goin'?)。
- what、whyなどのhは脱落せず、発音上はwの前に飛び出て「ホワット」「ホワイ」のように読まれる。
英語に馴染んだ人ならお分かりいただけると思うが、これはイギリス英語の特徴。
そのため、言語学者の中にはブルックリン訛りを米国で飛地的に用いられるイギリス英語の一方言と形容する人もいる(あくまで形容であって、用いられる単語や綴りは米国式であるので、イギリス英語であるという根拠にはならない)。
一方、米語特有の特徴もわずかに見られ、water、betterなどのtの音がr化し、「wo:ra:」「bera:」のように読まれる(前述のように米語では語尾のrを省略しないため、一般にはそれぞれ「warar」「berar」である。イギリス英語は方言差が著しいため一概に言えないが、容認発音では「wo:ta:」「beta:」である)。
また、イギリス英語、他のアメリカ英語のどちらにもない独自の特徴もある。
- 富山弁などの北陸地方の変種関西弁に似た間投イントネーション(ゆすりアクセント)が、高低アクセントを強弱アクセントに置換したような形で見られ、「dog」「coffee」などが「du-wog」「cau-fii」のように読まれる。
- 語尾のrを読まないかと思いきや、逆に余計なrを引っ付けることがある(例:America is my home country.→Amerika riz mai houm kantri:)。
- 前述の無声化したgはその後の単語が母音始まりである場合に、リエゾンにより逆に悪目立ちするほどに復活することがある(例:It is a wrong idea→Ittza wron gaidiar)。
創作での使用例
メイン画像に示す虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の主要登場人物・ミア・テイラーがブルックリン訛りの話される地域の出身という設定になっている。アニメ版では時折流暢な英語を話すシーンが見られるが、この英語は実際のブルックリン訛りをかなり忠実に再現しているので、必見である(ただし、厳密に言えば彼女の「ブルックリン訛り風英語」はむしろイギリス英語の河口域方言やオージー訛りのジェネラルアクセントに近かったりする)。
ファイナルファイトタフのルシアは、原作においてこのブルックリン訛りの話者という設定であり、その後ストリートファイターVに追加キャラクターとして登場した際には日本語でブルックリン訛りを再現するために関西弁風のセリフが用いられた。
ライオンキングのブロードウェイ公演ではティモンとプンバァはブルックリン訛りで話し、日本の劇団四季の地方公演ではその土地に合わせた方言をしゃべる。