概要
『キラキラ☆プリキュアアラモード』において、放送前の宣伝段階から「肉弾戦の封印」が発表されており、それが本作のセールスポイントでもあった。
プレスリリースででも「本作は拳で戦う肉弾戦ではなくカラフルポップなバトルへシフト!」と明記されており、今までのプリキュアシリーズとは一味違う戦闘描写になることが告知されていた。
それに対しては賛否両論があり、不安視する声、期待する声、両方があった。
いわゆる「魔砲戦闘」的な形のあまり動かないバトルになるのではと大多数が思っていたのだが、いざ蓋を開けてみると予想外の展開となった。
第1話の段階から、確かに殴る蹴るの描写は殆ど無かったものの、体を使った激しいアクションや敵との近接戦闘はあり、そして第2話に至っては、キュアホイップが早くもキック技、3話ではキュアジェラートによるパンチの連打が繰り出されたのだ。
どう考えるべきなのか
実は今回のプリキュアたちは今までのプリキュアに比べて身体能力が劣るわけではなく、パンチやキックだってものすごいパワーとスピードで放つことができる。
だけど本作の敵である悪い妖精たちにはキラキラルの力でないとどんなに強力な打撃が加えられても微動だにしないという特性がある。つまり物理属性ダメージの完全無効化というチート設定になっているのだ。
なので、地面をえぐるようなパワーで敵を殴ろうが、それが物理的な打撃である以上は全く意味がない。つまり今回のプリキュアは「肉弾戦ができない」ではなく「肉弾戦では勝てない」というのが正しいのである。
そして物語の序盤では、プリキュア達はそういう敵との戦い方に慣れてないので普通にパンチやキックを当たり前のように行ってしまったというわけだ。
実際、キックは柔らかい敵の体に阻まれ、パンチの衝撃も低反発枕を殴るかかのように吸収された。
ならばどうやって攻撃するかというと、キラキラルの力を攻撃のために錬成したクリームエネルギーが使用される。
プリキュア達は流体状で変幻自在のこのエネルギーをある時は武器のようにある時は盾のようにして敵と戦うのだ。
これにより、通常のパンチやキックなどと言ったアクションとは全く異なる攻撃方法で敵と戦うことが可能になっている。それこそ「お菓子を作るかのような動き」で敵と戦うのである。
だがこのクリームエネルギーの最大の特徴は、パンチやキックと組み合わせても構わないことにある。
2話ではキックそのものは効かなかったが、キックを使ってクリームエネルギーを敵の体に叩き込むことは有効打となっており、3話のパンチも「素手では効かない」ことがペコリンからの助言でわかってからは、拳に氷に変換したクリームエネルギーを纏わせたことで敵と対等に戦えるようになった。
これらは肉弾戦ではないのかということについては、どうやらクリームエネルギーを敵に叩き込む時に、パンチやキックのような動きをしているだけで、パンチやキックで戦っているわけではないという扱いのようだ。うん、何もおかしくない。……多分ね。
ネタ抜きな真面目な話としては、確かにパンチやキックのような挙動をしているとは言え、物理的な打撃力でダメージを与えたのとは違うカラフルポップなエフェクトが重視された演出となっている。その意味では従来の肉弾戦とは全く異なっているのは間違ってはいない。
例えば3話での「怪物の懐に飛び込み、氷の拳を口の中に叩き込んで爆発させて、アイスクリーム頭痛を引き起こしてスキを作る」などのユニークな攻撃方法は一般的な肉弾戦というイメージとは異なるものだろう。
特殊なエネルギー攻撃を成立させる手段として格闘的アクションを組み込むというのは、ちょうど前年と逆のこと、つまり物理(魔法)が行われていると見ることもできる。
スタッフインタビューを見る限りは肉弾戦を避けようとしているというより「自由なバトル演出をしていく」という方が真意のようである。
その後も肉弾戦(のように見えるクリーム)は「自由なバトル演出」の一部として散見される(特にエリシオとの最終決戦)。