概要
プロリーグにおけるエド・フェニックスとのデュエルに敗北して以降に陥ったスランプで名を落とした"カイザー"こと丸藤亮が、非公式のリーグで行ったデュエルによって見出した新たな姿。
デュエルスタイルは"カイザー"時代の「相手の全力を引き出したうえで真正面から受け止め、それを捩じ伏せる」ものから一変、「自身が勝つための最速手を選び、相手の一切を考慮せず叩きのめす」苛烈なものとなった。
事の経緯
デュエルアカデミアにおいて、相手をリスペクトする高潔なデュエルスタイルに加え、圧倒的な実力から"カイザー"の異名で賞された丸藤亮。
卒業後、プロデュエリストとしても変わらず"カイザー"の異名に恥じないデュエルで順調に活躍していた彼だったが、エド・フェニックスとの対戦に敗北して以降は大スランプに陥ってしまう。
マイナーリーグでも敗北を重ねるその凋落ぶりは観客から「最下位ザー」呼ばわりされ、スポンサーも降りてしまう始末。
今までのようなデュエルができないことに意気消沈していた亮は、プロモーターを名乗るモンキー猿山から地下デュエル(非公式)の誘いを受ける。
この誘いに乗って「"ヘルカイザー"亮」のリングネームで地下デュエル場でのデスマッチに挑むが、衝撃増幅装置による過剰な身体的ダメージと徹底的な機械族メタを用いるマッドドッグ犬飼によって心身ともに追い詰められた亮は、ついにその本心を解き放つに至った。
「嫌だ……オレは……負けたくないィィィィ!!」
サイバー流の後継者として貫いてきたリスペクトデュエル。
相手の立場になって己を見つめ、己が恥じるようなデュエルはせず、自分らしいデュエルをし、相手への敬意も忘れない。
だが、プロの世界はそんな理想だけで渡れるほど生温くはなかった。
エド戦で敗北を喫した亮は本心では「勝ちたかった」「悔しい」と思っていたものの、リスペクトデュエルにおける「お互いに全力を出し切れたのなら、勝敗は関係ない」という教義に拘泥し、本心に蓋をした。
だが負ければ生命にかかわるデスマッチで追い詰められて進退窮まり、モンキー猿山から
「今まで勝とうと思ってデュエルをしてきたことがないのではないか?」
「デュエルとは本来、勝たなければ生き残れないもの。ならばどんな手を使ってでも勝たなければ」
と追い打ちを掛けられた亮は敗北への恐怖も相まって、ついにいちデュエリストとしての「勝ちたい」という本音に立ち返る。
デュエルをするなら誰だって勝ちたい、負けたくない。
それは勝敗以上に大事なものがあると信念を掲げていた亮もまた、例外ではなかった。
「わかったんだ、今やっと……。オレはエド戦以来ごまかし続けてきた……相手をリスペクトするオレのデュエル、それさえできれば勝敗は関係ないと……」
「だが違う!オレは飢えている!渇いている!勝利に!オマエの懐にある勝利を奪い取ってでも!オレはァ!!」
相手が全力を出すまで待つなんて悠長なことはしない。
相手の事情も理念も慮ることはしない。
品行方正な「"カイザー"らしいデュエル」もしない。
ましてや、対戦相手ですらない外野からどう思われ、何を言われようが関係ない。
「勝利する」。
理性で蓋をし、目を背けてきた本心に従うことで、ついに亮はスランプを脱出する。
「言っただろう、このターンでケリをつけると。オレは! 勝ァつッ!!」
「エヴォリューション・レザルト・バースト!グォレンダァ!」
直前まで拘泥していた「サイバー・エンド・ドラゴン」での勝利を捨て石にして呼びだした「キメラテック・オーバー・ドラゴン」の圧倒的破壊力で逆転勝利を掴むと、「"ヘルカイザー"亮」としてプロの世界に復帰。
復活以降は以前の低迷をまるで感じさせない圧倒的な強さで怒涛の連勝を重ね、対戦相手が病院送りになるほどの恐るべき強さを見せつけた。
上述したように、デュエルスタイルは品行方正だったアカデミア時代と打って変わった苛烈なものへと変貌。
この変わり様から力を求めて道を踏み外したと考えたサイバー流師範にして師の鮫島は、亮をかつての彼に戻そうとサイバー流道場に呼び出してデュエルを挑む。
しかし勝利を求めるヘルカイザーは鮫島の予想を裏切る形で返り討ちにすると、封印されていた「サイバー・ダーク」を入手した。
鮫島主催の国際デュエル大会「ジェネックス」には鮫島からのオファーや強いデュエリストとの勝負を求めていたこともあり、プロ枠でアカデミアに来校し参戦。
鮫島から依頼を受けた天上院吹雪や兄を地獄から連れ戻そうとする弟の丸藤翔と激突し、ダークネスの力をも使う吹雪や格段に成長した翔を「サイバー・ダーク」の力で難なく撃破した。
しかし決着の瞬間に亮の心に触れることのできた吹雪だけは、"ヘルカイザー"の本質・本心を理解するに至る。
今の亮にあるのはデュエリストとして最も根源的な「勝ちたい」という衝動。
つまり本心に正直になったことでデュエルに対して極端にストイックになった、いわば戦い方やデュエルへの姿勢を変えたに過ぎなかったのである。
ただ力を振り回すのでも格下をいたぶるのでもなく、「より強い相手を求め、己が納得できる最高の勝利を目指す」……それが"ヘルカイザー"亮だった。
ジェネックス終盤では早乙女レイに挑まれるも「夢のためなどという生温い理由では戦わない」と告げて対戦を拒み、メダルを差し出して大会も棄権してしまった(満足いく対戦者に出会うことができなかったようである)。
ジェネックス棄権後
ジェネックス終了後はしばらく出番がなかったが、異次元の穴を繋げられるレベルのデュエルエナジーを生み出せるデュエリストが求められた際、彼に白羽の矢が立てられる。
対戦相手となるヨハン・アンデルセンとは次元を超えた激闘を繰り広げ、異世界への扉を抉じ開けるのに貢献した。
Q.何故デュエルをすると異次元世界と繋がるの? それっておかしくないかな?
デュエルアカデミアの帰還後は遊城十代とユベルの因縁を盗み聞きし、ユベルを自身最後のデュエルの相手に見定める。
また、年長者故に十代の影響力や精神的な未熟さをただ一人理解しており、一歩及ばなかったエドに対してそれを説いていた。
ヨハン救出に逸る十代の様子を影ながら見に来ていたが、異世界への扉から溢れた光に巻き込まれてしまい、エドと共に異世界へ転送されてしまう。
本人としては結果オーライだったが心臓を病んでいることが発覚し、以降は病に苦しむ描写が増えていく。
※本人は(視聴者も)衝撃増幅装置が原因だと思っていた。
十代達とは別の地点に飛ばされていたようで序盤は未登場だったが、十代のもとから出奔した翔と万丈目準の「おジャマ・イエロー」が「デビルドーザー」に襲われているところに遭遇し、これを救出。
「疑」の感情を増幅された影響で十代を忘れようとしながらも苦しむ翔に対し、十代がいたから今の翔があるということを気づかせる。
これにより、翔は「何があっても十代の行く末を見届ける」と決意した。
なお心臓の状態が悪化しており、ごく短時間だが心停止に陥っている。
十代が覇王となった後はエドと共にとある廃屋敷を根城として情報収集に努め、あえて屋敷内に覇王軍の兵士を招き入れてデュエルで半ば脅しのような形で覇王に関する情報を引き出す(エド曰く「我々はダークヒーロー系」)。
ちなみに屋敷内でサイバー流道場をノリノリで開いていた。
覇王軍兵士の証言から
「覇王が遊城十代と名乗っていること」
「覇王のデッキから黒く染まったE・HEROのカードが目撃されたこと」
が明らかとなり、覇王=遊城十であると確信。
とある収容所でオブライエンと合流すると覇王城に乗り込み、打倒覇王を目指す。
十代救出後は融合を使えなくなった腑抜けの十代に喝を入れるため、強制的にデュエルを仕掛ける。
罪の意識から戦意が戻らず融合も使えない十代ではヨハンを救うことができないと判断してトドメを刺そうとするも、またしても一時的に心停止したことでデュエルを続行できなくなった。
デュエルが無効になった後の休息中、暗黒使徒ヨハン(ユベル)が襲来。
その場を離れていたとはいえ復調していない十代に戦わせるわけにはいかず、また自身の行きついた本懐を遂げるべくデュエルを挑む。
なおこの時、ヨハンの肉体がユベルに支配されていることを見抜いていた。
度重なるダメージや「アドバンスド・ダーク」と「A宝玉獣」による強固な防御、そして「究極宝玉神レインボー・ダーク・ドラゴン」の強大なパワーに阻まれ続けたことでついに心臓が限界を迎える。
最後は「自身の最高の魂の輝き」として攻撃力16000の「サイバー・エンド・ドラゴン」を呼びだし、十代達と視聴者を感涙させた。
そのターンのエンドフェイズに「パワー・ボンド」の効果によって敗北するが、最高の充実感を味わった後、十代に精神的な成長を促しながら光となって消滅。
勝利を求める"ヘルカイザー"でありながらも魂は高潔なままの"カイザー"として、有終の美を飾った。
第四部
…と思いきや、異世界編終了後に再登場を果たす。
いつの間にかアカデミアの砂浜に打ち上げられていたらしく、表向きは消息不明のままということにして、アカデミアの離れで療養生活を過ごしていた。
日常生活程度であればほぼ問題なく過ごせる程度に回復するが、サイコ流の猪爪誠から流派の存亡を賭けた勝負を挑まれる。
自身をここまでの高みに引き上げてくれた「サイバー流」「サイバー・ダーク」への感謝と勝利を求めるデッキからのプレッシャーに応えるべくデュエルに応じるが、心臓が耐えられずにデュエルを続行できなくなってしまった(デュエルそのものは3日後に翔が一から引き継ぐこととなった)。
ここで初めて発覚するのだが、心臓の不調の正体は衝撃増幅装置によるものではなく「サイバー・ダーク」が飽くなき進化を求めて使用者へ強烈なプレッシャーを衝撃波として発していたことによるものだった。
また、ヨハン(ユベル)とのデュエルで燃え尽き症候群を患い、求めるデュエルを見失っていたことも発覚する。
翔と猪爪のデュエルを観戦し、「サイバー流」「サイバー・ダーク」「ロイド」の混成によって新たな戦術を開発した弟の成長ぶりに驚き、「いつの間に自分を追い越していった」と喜びを零す。
決着後はデッキを返そうとする翔を制止してデッキを託すと、一から新たにデッキを作り直す決意とともに翔と一緒に新たなプロリーグを立ち上げる夢を語り、その出番を終えた。
サイバー流裏デッキ
「サイバー・ダーク」モンスターとそのサポートカード群(本来は裏デッキなる名称ではなかった)。
相手をリスペクトすることを理念とするサイバー流とは対極的に、ただひたすらに己の勝利のみを求めるアンチリスペクトなデッキであったことから、初代(流祖)に封じられて以降は歴史の陰に埋もれていた。
下級の「サイバー・ダーク」モンスターは共通の効果として、召喚時に互いの墓地に存在するレベル4以下のドラゴン族1体を装備してその攻撃力をプラスすることができる効果を持つ(アニメオリジナル効果)。
最上級である融合体「鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン」は装備可能なレベルの制限がなく、加えて自身の墓地に存在するモンスターカードの数×100ポイント攻撃力をアップさせることができる。
ドラゴン族限定とはいえ相手のカードを利用してでも勝利を望む性質からデッキそのものが常に進化を欲しており、絶えず使用者の心身に圧力を掛け続けている。
そのため、使用者はデッキからのプレッシャーに打ち勝つ精神力と地力が停滞しないよう向上心を持ち続ける必要がある。
ヘルカイザーデッキ
当初はサイバー流デッキ(俗にいう"表サイバー")のままだったが、裏デッキ継承後は「サイバー流」「サイバー・ダーク」「ドラゴン族」による混成デッキとなる。
"カイザー"としてのデュエルを捨て去り、勝つためなら下級「サイバー・ダーク」のみでデュエルを制することも厭わないスタイルは、変貌前の亮を知る者から見れば「相手へのリスペクトがない」ように見えるようだ。
勝つためならフェイバリットである「サイバー・エンド」すら容赦なく墓地へ送り、「サイバー・ダーク・ドラゴン」の攻撃力増強の布石とするために20枚以上のカードを躊躇なく墓地へ送ることもある。
以下、代表的なカード
※効果等はアニメ準拠
サイバー流の主力モンスター。
相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合にのみ手札から特殊召喚できる効果はもちろん、2000を超える攻撃力や融合体の種類によっては「融合解除」を使用した際にフィールドへ戻せる数が豊富となる隙のなさから、主力であり続けた。
サイバー流免許皆伝の継承者にのみ代々受け継がれる、サイバー流の象徴。
"カイザー"時代から引き続きエースカードとして扱われている。
第二期では「サイバー・ダーク・ドラゴン」に出番をとられることが多かったものの、第三期からは再びエースとして呼び出される機会が増えていった。
亮がヘルカイザー転向の契機となった融合モンスター。
攻撃力・守備力が融合素材の数×800ポイントとなり、素材の数だけ攻撃できる凶悪なカード。
それまで光属性で占められていた「サイバー」モンスター達と異なり、このカードは亮の闇堕ちを現すかのように闇属性である。
戦闘ダメージを受ける時に発動できる罠カード。
デッキの上から任意の数までカードを墓地へ送り、この時墓地へ送ったカードの枚数×100ポイントのダメージを無効にする。
"ヘルカイザー"デッキにおいてはダメージ軽減効果よりも、「サイバー・ダーク」モンスターが装備するためのドラゴン族を一気に墓地送りにするためのカードとしての意味合いが強い。
デッキから引き抜いたカードを空間に向けて盛大にバラ撒く演出が鮮烈な印象を残した。
下級「サイバー・ダークモンスター」の1体であり、竜の頭から首を模したモンスター。
召喚時に互いの墓地からレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を選択して装備し、装備したモンスターの攻撃力ぶんだけ追加で攻撃力を上げる効果を持つ。
加えて貫通能力を備えており、並大抵の下級モンスターでは壁の意味をなさない強みがある。
下級「サイバー・ダーク」モンスターの1体であり、竜の翼含む胴体を模したモンスター。
互いの墓地からレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を装備する共通効果に加え、相手にダイレクトアタックできる効果を持つ。
ただしダイレクトアタック効果を使用すると、その時のみ攻撃力が半分になってしまう。
下級「サイバー・ダーク」モンスターの1体であり、竜の尾を模したモンスター。
互いの墓地に存在するレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を装備して攻撃力を上げるだけではなく、戦闘によって相手モンスターを破壊した場合に相手ライフへ300ポイントのダメージを与える効果を持つが、アニメではその効果を発動する機会がなかった。
互いの墓地に存在するモンスターを発動時に宣言した種族に変えることができる罠カード。
早い話が墓地版の「DNA改造手術」である。
相手の墓地を制限するのはもちろん、高い攻撃力を持つ「サイバー」融合体を「サイバー・ダーク・ドラゴン」に装備させるためには欠かせないキーカード。
上記した3体の「サイバー・ダーク」モンスターが融合した、ヘルカイザー亮の新たなるエースモンスター。
「サイバー・エンド・ドラゴン」と対極の立場に位置する裏のエースカード。
レベルの制限なく互いの墓地に存在するドラゴン族モンスターを1体装備し、その攻撃力ぶん自身の攻撃力を上昇させる。
加えて自分の墓地に存在するモンスターカードの数×100ポイント攻撃力を上げる効果も持ち、墓地が肥えれば肥えるほど力を増す強力な融合モンスターである。
ヨハン(ユベル)戦で起死回生の一手として呼びだした融合モンスター。
自身が攻撃する際に発生するダメージをすべて0にする(つまり戦闘ダメージと戦闘破壊が発生しない)効果に加えて融合素材の数だけ攻撃でき、攻撃するたびに400ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える効果を持つ。
このバーン効果でヨハン(ユベル)のライフを削り切ろうとした。
発言集
「これが生き残るための、オレの足掻きだ!」
「鬼にならねば、見えぬ地平がある!!」
「俺は!勝利をリスペクトする!」
「勝つためなら、無様にもなろう、汚くもなろう!人から何を言われようが構わん!」
「勝つのは俺だ!消えろ!敗者は!」
「甘い!サイバー流にとって攻撃力の制限など無意味!」
「たとえ未来がなくとも、今この瞬間をもっとも充実して生きなければならない……そうだろ?教諭」
「今でも立派な先生だよ、クロノス教諭。俺に目的を思い出させてくれた。『最強の敵と最高のデュエルをする』…俺にとって、それが生きる目的」
「俺は今まで、ただ勝利することだけに意味を見出していた。しかし今、その拘りから脱出することができた。ヘルカイザーとなって地獄を彷徨い、やっと今、勝利の喜びのためでも、敗北の恐怖のためでもない、この瞬間を輝かせたい……そんな心境に達することができた」
「これが強さだけを求めてデュエルしてきた者の末路か……。瞬間の喜び。地獄まで見て、オレがたどり着いた結論だった。笑うなら笑え」
「十代……お前はもう、子供じゃない」