一人の男性が不幸にも命を終えた。しかし、彼は瞑想の中で神と邂逅し、異世界へ“自身を望むがままにする”権能を与えられて送り込まれることとなった。遠大な神が考えることは分からない。与えられた福音は、ただ「汝が為したいように為すがよい」との形なき代物であった。
「TRPGだコレ」
しかし、主題を与えず、キャラビルドに制限を設けない権能を与えてはいけない人種が一つ存在した。それはマンチキン、データマンチや和マンチとも呼ばれる、データさえ存在するなら神殺しにさえ興じる変人。彼はデータを隅から隅までなめ回しながら、世界を巡る旅に出る。
ヘンダーソンスケール行方不明のハイファンタジー冒険譚、ここに開幕。
概要
「ヘンダーソン氏の福音を」とは、小説家になろうで連載されているライトノベル作品。著者はSchuld氏。
Web版は2019年1月19日より、2023年9月現在連載中。
2020年2月には書籍化が決定し、同年4月25日に書籍版1巻が発売された。
書籍版の表紙・挿絵はランサネ氏。
本作の正式タイトルは『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す~ヘンダーソン氏の福音を~』だが、Pixivの作品タグでは文字数の関係で使えないため、略称タグとなっている。
旧題は『ヘンダーソン氏の福音を【データマンチが異世界に転生してTRPGをする話】』。
書籍版発売に当たって現在のものに改題された。
異世界転生した主人公が神より授かった恩寵を使い、様々に活躍していく冒険譚作品。
緻密に練り込まれた設定や重厚でシリアスなシナリオながら、TRPGネタをふんだんに盛り込んだ作品。
また余談として主人公が重大な決断を迫られる際に「もし別の選択を選んでいたら」というifルートを様々に描いているのも特徴。
あらすじ
病によって命を落とした男が、数多の世界を管理する神から「自身を思い通りに成長させる権能」を与えられて、異世界へと転生した。
農家の四男坊・エーリヒとして新たな生を受けた男は、TRPGのデータマンチとして、理想の強キャラになることを目標に人生を再び歩み始める。
登場人物
エーリヒ
主人公。人間の比較的裕福な自作農家の四男。金髪碧眼で母親似の柔らかい顔立ち。
五歳の時に明確な自我が芽生えると共に現代日本での記憶が蘇り、自身が転生者であることと転生時に神より恩寵を与えられたことを思い出す。
神より与えられた「自身を思い通りに成長させる権能」は、端的に言えば自身の経験や練習といった成長を「熟練度」という形でストックし、それを任意の能力に振り分けすることができるというものであり、理論上「草むしりを続けていても剣聖になれる」という代物。
作中では上述の権能を利用して、剣と魔法が大きな役割を果たしている異世界において、英雄譚に謳われるような冒険者を目指して行動していくこととなる。
前世のTRPGをプレイしていた頃から運が悪く、持ち前の面倒見の良さや好奇心の強さなどと相まって典型的な「巻き込まれ体質」と化している。
更待朔
読みは「ふけまち さく」。現代日本の、転生する前の主人公の氏名。それなりに高学歴らしい。商社の管理職として働き、それなりに幸せな人生を送っていたが、若年性の癌によって命を落とす。
学生時代からTRPGに入れ込み、様々なシステムをプレイしている。
単なるTRPGマニアというだけではなく、それを取り巻くオタク・サブカル文化や歴史、地理にもある程度親しんでいる様子で、時たま思考中にネットスラングが出てくる。
なおエーリヒに転生してからは何らかの力が働いているのか、そういった知識はすんなりと思い出せるにも拘らず、「更待 朔」時代の記憶は徐々に薄れつつある。
固定値の信奉者。
マルギット
上半身が人間で下半身が蜘蛛のアラクネの亜人。エーリヒの二歳年上の幼馴染。
幼少期の遊びを通じてエーリヒに好意を抱いて以来、朴念仁でも気付くようなモーションをかけてくる大人びた少女。種族的な特性によって成人しても上半身の見た目が童女のままだが、女性超優位の種族である為か非常に肉食系でもある。
先祖代々狩人の家系であり、幼い頃から母親より狩りの英才教育を受けて育ったため、本人も非常に優秀な狩人として成長している。
エリザ
エーリヒの五歳年下の妹。金髪のロングストレート。
六歳になるまで非常に病弱で、布団で寝込んでいた時間が長かった為か、年齢の割に言動が幼くつたない。家族皆が大好きだが、中でも兄のエーリヒには非常に懐いており、遊びに来たマルギットに敵意を見せるほど。
とある理由から非常に魔法への適性が高いが、コントロールの仕方が分からないままでは最悪の場合、村一帯を吹き飛ばしかねないとして、アグリッピナに強制的に弟子入りさせられる。
ウルスラ
褐色肌に白髪をもつ常闇の妖精。エーリヒを気に入っており助力してくれる。
ロロット
風の精霊。エーリヒを気に入っており助力してくれる。
アグリッピナ・デュ・スタール
長命種(いわゆるエルフ的な種族)の貴族で魔導士の女性。長く尖った耳に編んだ銀髪で、目はヘテロクロミアである。
隊商に付いて訪れた村でエリザを見つけ、その保護と教育を名目に強制的に弟子入りさせた。その際、エーリヒの特異性にも薄っすらと気づき、丁稚(小間使い)として雇い入れる。
非常に能力値が高く(手段はともかくとして)指導者としても優れており、エーリヒ・エリザ兄妹の大きな成長に一役買う。
超が付くほど優秀で政治的な手腕にも長けた才女なのだが、とんでもなく怠惰で自堕落かつ引きこもり体質であり、エリザを弟子として半ば無理やりに引き取ったのも、その主目的は再び引きこもり生活へと戻る為という、かなり自己中心的な性格。
それ故にエーリヒからは内心で「外道」と思われているが、実は性格の根幹部分では彼と通じる似た者同士で非常に相性が良く、ifルートでは彼と結婚しオシドリ夫婦っぷりを披露している。
マグダレーネ・フォン・ライゼニッツ
アグリッピナの師匠にあたる死霊の女性。アグリッピナの行動に頭を悩ませている。
恋愛のもつれで謀殺された過去を持つ。
アグレッピナに勝るとも劣らない優秀な能力を持ち、知性と美貌を兼ね備えた包容力のある巨乳の女性なのだが、ロリコンでショタコンの変質者であり、エーリヒは苦手意識を抱いている。
ミカ
魔導院で魔法を学ぶ学生。エーリヒと友人なる。
容姿、名前共にどちらともとれる中性的な人物。
ツェツィーリア
赤い瞳と栗毛が特徴の修道女。夜陰神を信仰している。
エーリヒは家の都合で修道院に入れられた身分の高い家の出身と予想している。
吸血種の為、人間を遥かに上回る怪力と再生力を持つ。
フランツィスカ・ベルンカステル
ツェツィーリアの大叔母に当たる女傑。政治から退いた現在は詩人、劇作家として生活している。
ナケイシャ
百足人(百足の亜人)の少女。母方が暗殺者のためその教育を受けたが父はドナースマルク侯である。庶子だが親子関係は良好。自分の片腕を切り落とし追い込んだエーリヒに惚れてしまった。
ディードリヒ
国外からやって来た馬肢族(所謂ケンタウロス)の少女。
それなりに実力のある戦士だが粗暴でお世辞にも頭が良いと言えず見兼ねたエーリヒと一時の間行動をとる事に。
ヘンダーソン氏
タイトルにもあるヘンダーソン氏とは、オールドマン・ヘンダーソン氏より由来する。
プレイヤーを全滅させる気しかない殺意マシマシのGMが主宰する卓にカチ合った際にテクニックの限りを尽くしてシナリオを脱線させ、見事キャンペーンを大団円へと持ち込んだTRPGプレイヤーである。
彼に因み、TRPG用語として「物語が事前のシナリオからどの程度脱線したか」を示すヘンダーソン・スケールと呼ばれる指標が存在する。
外部リンク
関連タグ
マンチキン:本作の主人公は「データマンチ」と呼ばれ、ルールブック上可能なことを突き詰め、異常な能力を発揮できるキャラクターを作るタイプの人種である。データ至上主義者。
モンスター娘:本作では様々な異種族が登場する。エルフやドワーフのみならず、ヒロインのマルギットのように昆虫を由来とするキャラクターも多数。
ゴブリンスレイヤー:同じくTRPGを世界設定の元ネタとした作品。