概要
ベッコウバチとは、膜翅目 細腰亜目 スズメバチ上科 ベッコウバチ科に分類される蜂の総称。
またはその一種「Cyphononyx dorsalis」の和名。
だったのだが……現在はクモバチに改名されている。
その理由は、ベッコウバチという名前の由来が翅がべっこう色をしている事に由来するにもかかわらず、種としてのベッコウバチ以外には翅がべっこう色の種があまりいないことであり、これならベッコウバチという名前は不適切ではないか?と議論され、幼虫の餌に蜘蛛を狩る事からクモバチに改名された。
これにより、科の名称もクモバチ科となった。
種としてのベッコウバチもベッコウクモバチに改名されている。
日本国内には100種類以上が分布する。
また、蜘蛛を専門に狩るという生態故かベッコウバチは体格が大きく、世界最大の蜂であるタランチュラホークことオオベッコウバチに至っては、一般的に大型の蜂として知られるオオスズメバチとその女王蜂をも遥かに凌ぐ程の大きさを誇る。
生態
成虫の食料は花の蜜だが、蜘蛛の巣にかかった獲物を奪い取り、体液を吸う行動が観察されている。
クモを探して地上や葉上を歩き回る姿がよく見られる。
様々な生態のクモを超スピードと巧みな戦術で翻弄して仕留める強力なハンターであり、クモの主要な天敵の一つである。
捕獲可能と判断するとすぐさま背中側から飛びかかり、急所に毒針を刺して麻酔作用を持つ毒を注入し仕留め、巣に運び込む。
卵はクモの腹部に産み付け、産まれた幼虫は麻酔されて動けないクモの体液を生きたまま吸って成長する。
クモからは天敵として警戒されている様で、ベッコウバチが近づくと、一目散に逃げ出す事が多い。
蜂はそれを逆手にとってわざと素早く動き回り、隠れたクモをおびき出しているのではないか?という考えもある。
体表の毛が蜘蛛の糸がひっつきにくい構造になっている種も存在する。
人を襲うことはないが、掴むと刺されることがあり、ものすごく痛い。
蜘蛛狩り戦術例
造網性のクモ
①
空中から巣にいるクモに飛びかかって仕留める。
②
蜘蛛の巣周りを素早く飛び回り、クモを驚かせて巣から落下させ、落下したクモに飛びかかって仕留める。
③
わざと糸を振動させて巣に掛かった振りをし、おびき寄せて仕留める。
徘徊性のクモ
①
空中や背後から飛びかかって仕留める。
一度目に失敗した場合や獲物が大きい場合は何度も攻撃する。
②
蜂に気づいて逃げ出したクモを追いかけ回して疲労した所を仕留める。
主な種類
ベッコウクモバチ/ベッコウバチ
翅がべっこう色をした、最も著名な種。
イオウイロハシリグモやコアシダカグモなどの徘徊性のクモを狩る。
日本国内では本州中部以南で見られる。
キオビクモバチ/キオビベッコウ
メスはベッコウクモバチに似た姿をしているが、オスはアシナガバチに似た黄色と黒の縞模様が特徴。
コガネグモやオニグモ、ジョロウグモなど、大型の造網性クモ類を狩る。
日本国内では本州~沖縄まで見られる。
ツマアカクモバチ/ツマアカベッコウ
腹部先端が赤いことが特徴。
日本国内では本州~南西諸島で見られる。
アケボノクモバチ/アケボノベッコウ
湿地帯に棲む漆黒の種。希少種で生息地は極限される。
水辺に棲むハシリグモの仲間を狩り、水上や水中でも活動可能なターゲットを捕獲する為に潜水能力を獲得した。
マエアカクモバチ/マエアカベッコウ
体の前半が赤く、後半が黒い特徴的な姿をしている。
セアカゴケグモやハンゲツオスナキグモなどの不規則網を張るヒメグモ科のクモを狩る。
元々は東南アジア原産だが、近年分布が北上しており、現在は本州でも見られる。
ナミヒメクモバチ/ナミヒメベッコウ
黒い小型種。国内では本州~南西諸島で見られる。
ヤドリクモバチ/ヤドリベッコウ
褐色の小型種。
キバネトゲアシクモバチが運搬中のクモに飛び乗って産卵、幼虫は巣の主の子が食べるはずだったクモを奪い取って成長する労働寄生の生態を持つ。
オオベッコウバチ/ドクグモオオカリバチ
アメリカに分布するPepsis属またはHemipepsis属に分類される種の総称。
体長は6cm以上と、オオスズメバチよりも巨大な体躯を誇る。
英名はタランチュラホーク(Tarantula hawk)と呼ばれるように、タランチュラ(オオツチグモ)を狩ることが知られている。