芳文社の4コマ漫画誌『まんがタイムジャンボ』にて連載。
連載期間は2004年3月号から2013年1月号まで。現時点における著者の一雑誌最長連載作品。
1990年代まで『月刊少年ジャンプ』(集英社)『月刊少年キャプテン』(徳間書店)を主領域に両雑誌におけるスタイリッシュストーリー&ドタバタスマートギャグの最前線作家として活躍していたあろひろしが4コマ転向した初の作品。
両雑誌の相次ぐ休刊によりマイナー誌の読切によって発表の場を繋ぐ流浪の作家と化して事実上の埋没へと至ってしまった、あろひろしの復活を印象付けた作品でもある。
単行本は「まんがタイムコミックス」から全6巻。
ちなみに1巻では師匠・秋本治から応援のメッセージを貰っている。
同作者による後発作品である『よめヨメかなたさん』『妖こそ!うつつの分校』『いにしえや浪漫堂』とは世界観を同じくしている。(作者の作品群の特性を考えれば、それ以外の作品とも世界観が繋がっている可能性があるが、そちらに関しては出版社が違うためか明言は避けられている)
あらすじ
総合商社「羽衣商事」に入社した新人社員の小森タケルは、入社1日目で即日、秘書課に配属され社長秘書となる事を命じられる。人事に促されて社に到着した社長を出迎える小森であったが、そんな彼の前に社長として姿を現したのは小学生の少女・羽衣天女であった。
実は羽衣商事、前社長であった天女の父が母もろともに事故で急逝していた。そして会長へと退いていた祖父の直接指名により天女が社長へと推挙されてしまったのである。
小学生が社長などとは誰もが不安に思うところだが、そこはそれ天女もまた経営者一族のサラブレッド。小学生女子であるという不利を「守ってもらえる(多少の無茶は「子どもだから」と目こぼししてもらえる)」というアドバンテージへとあざとく巧みに転化させ、赤子の頃から祖父両親の付き合いに積極的に顔を出していた事も功を奏し、時に血筋に裏打ちされたとんでもない轟運によって、多少は危なっかしくもありながら、羽衣商事を盛り立てていく。
そして小森もまた、そんな社長の側で、彼女の見かけによらぬ剛腕に驚きながらも、一方でお嬢様ゆえの世間知らずもフォローし、上司の素晴田秘書課主任に鍛えられまくり、秘書として人間として成長を遂げていく。
血縁(コネ)で社長となってしまった「美少女小学生社長」と、社会人としてのイロハもままならない「新人秘書」。ともすれば無謀この上ないコンビであるが、しかし二人はそれゆえの天衣無縫な発想と活躍で、羽衣商事を盛り立てていくのであった。
登場人物
- 小森タケル(こもり たける)
- 入社初日で社長秘書に抜擢されてしまった新入社員。心優しく面倒見が良い、お人好し。
- 実は入社試験で道に迷い、羽衣商事に遊びに来ていた(まだ当時は社長ではなかった)天女を助けている。
- 羽衣天女(はごろも あまめ)
- 祖父の指名(先祖代々の厳正かつ公平なる選出法)によって総合商社・羽衣商事の社長にされてしまった少女。小学生にしても小柄だが、精神的な度量は大人顔負けにデカい。
- 羽衣商事の社長と同時に、自らが通う学校の理事長職も受け継いでいる。
- 前述のように以前、会社内で迷子になったところで入社試験を受けに来たタケルと会っており、彼に助けられた過去がある。また、その際に乙女として見られたくない姿をタケルに見られてしまっており「こうなっては、この人のお嫁さんになるしかない」と思いつめた挙句、タケルを自らの秘書へと抜擢した。
- 素晴田北江(すぱるた きたえ)
- 音長飯俊(おとなが いいとし)
- 大槻(おおつき)
- 音長専務の片腕と呼ばれる男性社員。専務の大人げなさには呆れているが、それでも彼に付き従い、いつかは会社のトップに立って欲しいと願う忠義の青年。保育士の妹がいる。
- 元は羽衣商事(音長専務)と取引のあった町工場の長男。しかし音長が某国の支社長として海外に行ったのと前後して実家の経営が立ち行かなくなり、父は資金繰りの果てに過労死し、自らは退学の危機にさらされる。しかし責任を感じた音長の援助によって退学は回避され、妹にも十分な教育を受けさせる事ができた。
- 学生時代は空手の選手でもあり、全国大会への出場および入賞経験がある。この腕っぷしの強さから、音長専務に関する「荒事・裏事」も自ら望んで担当している。
- 緒掛(おかけ)
- 羽衣商事電算課係長、社内報制作担当。天女のファン。のちに天女をネットアイドルへと推し上げた。
- 羽衣商事のネットワーク系を担当する、スゴ腕のハッカー。社内報予算を流用して羽衣商事のネットワークを米軍とすら渡り合える設備にしてしまった、限界ヲタ。そうして組み上げたオーバーテクノロジーは、全て我らが社長にして現人神たる羽衣天女様の素晴らしさを世に布教し、広く世界中に信者を量産させるために使われている。(そして電算課の経常予算と融資額がとんでもない事に……)
- 卯佐木りんす(うさぎ りんす)
- 藍按芭亜人(あいあん はあと)
- 羽衣商事の常務。羽衣の無責任男。あるいはあろひろし界のタイラー。
- 部下に仕事を丸投げし、物事を全く考えず相槌とC調で生きている男、とよく言われるが人を見る目だけは確か。「できない人には任せない」が口癖で、それは裏を返せば「できる人には仕事を全面的に任せてくれる」という意味でもある。また、その無責任男ぶりから「鋼鉄の心臓とガラスの上司を持つ男」とも呼ばれる。
- 音長専務の大学時代からの腐れ縁。音長からは邪見にされているが、藍按はそんな事はお構いなしにフランク&フレンドリーに接している。
- りんすを自らの秘書に抜擢してからは、彼女の方向音痴のせいで世界中を放浪するハメになるが、それでも放浪する先々で今まで以上に成果を挙げている。