概要
2007年「FREE COMIC BOOK DAY:THE AMAZING SPIDER-MAN #1」にて初登場。キングピン(初登場1967年)・グリーンゴブリン(初登場1964年)など、古株の多いスパイダーマンのヴィランの中ではかなり新しいキャラクターである。
本名(別人格の名前)はマーティン・リー。
二重人格であり、ミスターネガティブが悪と闇の性質を持つのに対し、もう一方の人格であるマーティン・リーは善と光の性質を持つ。二人は互いの存在を認知してはいるが記憶はほぼ共有していない模様。
ミスターネガティブはニューヨークのチャイナタウンを支配するギャング「デーモン」の長であり、公正な取引の為なら命を奪うことも厭わない冷酷な犯罪王である。
マーティン・リーはニューヨークで成功した実業家で、「F.E.A.S.T.プロジェクト」を立ち上げ、身寄りのないホームレス達を助け、支援する施設(シェルター)を運営している慈善家でもある。ちなみにこのF.E.A.S.T.プロジェクトではスパイダーマン(ピーター・パーカー)のおばさんであるメイ・パーカーが働いている。また、マーティンは自覚していないが光のエネルギーによる治癒能力を持っており、これによりF.E.A.S.T.では万病が治るという奇跡が噂されていた。
能力
ミスターネガティブは写真のネガが反転したような見た目をしている。(つまり、マーティンの目の色が黒ならばミスターネガティブは反転して白になる。)
超破壊的な闇のエネルギーを生み出し、そのエネルギーを剣などの武器に纏わせることができる。身体能力も高く、スパイダーマンを一撃で建物2棟分ほど吹き飛ばしたり、銃弾を避ける反射神経も備わっている。
また、他人に触れるだけで心を堕落させ、洗脳し意のままに操ることもできる。過去にこの洗脳能力でスパイダーマンなどのヒーロー達やヴィラン達を操ることに成功しているが、洗脳を解かれたり、洗脳そのものが失敗するケースも多い。対象者の精神力が洗脳の可否を左右するようである。また、一度洗脳にかかりそれを解いた者には二度と洗脳は効かない。
自身と同じ闇エネルギーを与えた忠実な仮面の部下・インナーデーモンズを多数従えている。インナーデーモンズは串刺しにされたり銃で撃たれてもすぐに治癒するほどの再生能力と高い身体能力を持っている。
経歴
彼の過去についてはこのように説明されている。:
マーティン・リーは中国からアメリカへ違法渡航をするため、中国のギャング「スネークヘッド」の運営する奴隷船に乗っていた不法移民だった。しかし船はアメリカ沖で嵐に見舞われ沈没。ギャング達はマーティンら不法移民を船に残し脱出。マーティンは唯一の生存者となった。この出来事の後、マーティンは事業を成功させ億万長者となり、困っている人々を助けるため活動を始めた。
しかしこの話、ほとんど嘘である。
これまでの彼の経歴に関しては、マーティンの記憶にはかなりの改変があり、ミスターネガティブの持つ記憶の方が正しい。
実は“マーティンとなる人物”は奴隷船に乗っていた不法移民ではなく船を運航していたギャングの一員だった。船が沈没し、たった一人の生き残りになったのは本当だが、この際“マーティンとなる人物”は死亡した不法移民の身元を盗み、この不法移民になりすましている。この時盗んだ身元こそがマーティン・リーという名前である。(つまり、ミスターネガティブとそのもう一方の人格の本当の名前と身元は不明。)
その後マーティンはニューヨークのマフィア「マッギア」に捕虜とされ、マッギアのボスであるシルバーメインと科学者サイモン・マーシャルに新薬の実験台にされる。この新薬「D-Lite」によりマーティンは光と闇の力を得、また人格も善良なマーティン・リーと邪悪なミスターネガティブとに分裂した。
力を得た彼(彼ら)はマッギアから脱出。
そしてマーティンは慈善活動に邁進し、ミスターネガティブはニューヨークのチャイナタウンの犯罪王を目指してギャング「デーモン」を組織する事となる。
コミックス版
以下、主要な登場作品を述べる。
2008年
「THE AMAZING SPIDER-MAN:BRAND NEW DAY」
とある日、マッギアの幹部たちが次々と謎の毒ガスにより死亡する事件が起こる。ミスターネガティブは、「デビルズ・ブレス」という特殊な生物兵器を使いマッギアを崩壊させようとした。最終的に、ミスターネガティブはマッギア家の人質の命と引き換えにスパイダーマンの血液を要求し、「デビルズ・ブレス」でスパイダーマンを殺す手段を得た。
2008~2009年
「THE AMAZING SPIDER-MAN:EXTRA!#1」
「CIVIL WAR (2007)」のストーリー中に頭を打ち砕かれて瀕死の状態となったスパイダーマンの宿敵の一人であるハンマーヘッドをアダマンチウム製骨格を提供する事で助けている。これによりハンマーヘッドとの協力関係が始まった。
「THE AMAZING SPIDER-MAN:NEW WAYS TO DIE」
末期ガンの治療資金の為、自らのシンビオートを売り払いF.E.A.S.T.で支援を受けていたエディ・ブロック(またの名をヴェノム)のガン細胞を、マーティンが自身の光エネルギーによる治癒能力で無意識的に治療してしまい、さらにエディの体内の残留シンビオートと光エネルギーが結びついたことでアンチヴェノムが誕生した。
「THE AMAZING SPIDER-MAN:EXTRA!#2 BRACK&WHITE」
ミスターネガティブとアンチヴェノムが衝突し戦いを繰り広げた後、エディはミスターネガティブがマーティンに変化するのを目撃してしまう。エディは彼らの二重人格に初めて気づいた人物となった。のちにマーティンはアンチヴェノムにミスターネガティブとの関係を世間に暴露され追われる身となるが、物語的にはアンチヴェノムを生み出した功績は大きい。
「DARK REIGN:MISTER NEGATIVE」
ノーマン・オズボーン(グリーンゴブリン)が権力者として君臨するようになった時代の下で、ミスターネガティブはフードが率いるギャング集団と領地をめぐり全面戦争に突入していた。最初は不利だったもののスパイダーマンを洗脳して敵を一掃させ、形勢逆転する。最後にはハンマーヘッドにノーマン・オズボーンを脅させ、オズボーンにフードらを強制的に撤退させた。一方、直接戦ったフードの精神にはフードの能力が干渉して洗脳が効かない、スパイダーマンのような精神力の強い人物に洗脳が破られるなど、洗脳能力に条件と限界がある事が明白になった。
2010年
「THE AMAZING SPIDER-MAN#621:OUT FOR BLOOD」
スパイダーマンはブラックキャットに協力してもらい、過去にミスターネガティブの手中に入った自分の血液を奪還し、動物の血と秘密裏に入れ替えることに成功した。
「THE AMAZING SPIDER-MAN:SHADOW LAND」
スパイダーマンと共に戦うシャン・チーの洗脳に成功する。しかし例に漏れずシャン・チーも強靭な精神力の持ち主だったので洗脳が破られた。
2011年
「THE AMAZING SPIDER-MAN#664:The Return of Anti-Venom part2:Revelation Day」(storyline:BIG TIME)
ミスターネガティブはアンチヴェノムとレイス(ユリコ・ワタナベ)の標的となってしまう。彼らがスパイダーマンと共にデーモンのヘロイン密輸を阻止した後、レイスはニューヨークすべてのテレビ放送をジャックしミスターネガティブとマーティンの関係を暴露した。ミスターネガティブはこれにより撤退し、マーティンはデーモンに拘束され世間から姿を消した。
「CLOAK AND DAGGER:SPIDER-ISLAND」
ヒーローコンビ・クローク&ダガー二人を洗脳することに成功する。クロークとダガーもそれぞれ光と闇のエネルギーをもつが、彼らもミスターネガティブと同じ薬の実験台とされた結果能力を手に入れた経歴がある。
2015年
「THE AMAZING SPIDER-MAN:DARK KINGDOM」
舞台は日本と香港。「シークレット・ウォーズ」のストーリー中に逮捕されていたマーティンをインナーデーモンズとクローク、ダガーが解放する。ミスターネガティブはパーカー・インダストリーズ(スーペリア・スパイダーマンが設立した会社)の日本支社を襲撃した後、マーティンを説得して、自身が過去乗っていた奴隷船を支配したギャング「スネークヘッド」の元リーダー殺害に協力させようと目論む。この作戦の為、ミスターネガティブはピーター・パーカー(スパイダーマン)を洗脳して利用しようとする。しかし一回洗脳を解かれた相手には洗脳は二度と効かないらしく、ピーターがスパイダーマンだと知らないミスターネガティブはピーターに裏切られる形で失敗した。
この時洗脳され作戦に加担させられていたクロークとダガーも正気に戻り、ミスターネガティブと彼自身の片割れに協力せざるを得なくなったマーティン・リーを止めるため香港に留まることを決意する。
2019年
「CLOAK AND DAGGER:NEGATIVE EXPOSURE」
ミスターネガティブはマーティンとの分離を図り、闇のエネルギーの神デヴォウラー(Devourer)の協力を得るためデヴォウラーのいる超次元空間をつなげる能力をもつクロークを無理矢理利用する。
精神体となりマーティンと離れる事に成功したミスターネガティブだったが、またもダガーに邪魔される。結局元の肉体に戻り、自分の居場所がマーティンと共有する肉体しかないことを思い知ったようである。
2020年
「THE AMAZING SPIDER-MAN:THE SINS OF NORMAN OSBORN#1」(SINS RISING)
ニューヨークで他者の能力を奪う能力を持つシンイーターが暴れ回る中、マーティンはシンイーターに自身の能力を奪うよう懇願する。シンイーターは願いを受け入れ、マーティンから能力とミスターネガティブの人格全てを奪い去った。
2021年
「THE AMAZING SPIDER-MAN:NEGATIVE SPACE」
シンイーターが倒された後、シンイーターが奪っていた能力は化け物の形をしたスピリチュアル体(Sins)となり各々の本来の持ち主の元へ帰っていった。マーティンも例外では無く、ミスターネガティブが戻ってくるのを恐れ久しぶりにF.E.A.S.T.へ逃げ込み、メイおばさんに秘密で匿ってもらう。
Sinsは能力と同時に罪・悪の集合体でもあり、F.E.A.S.T.のような善なる場所には近づけないという。そこへボスの復活を望むミスターネガティブの部下、インナーデーモンズが襲撃する。スパイダーマンも駆けつけるも、メイおばさんを人質に取られたマーティンは自らの罪(Sins)を受け入れ、ミスターネガティブが復活する。
「THE AMAZING SPIDER-MAN#59」
ミスターネガティブはキングピンに「死とエントロピーの石板(the Tablet of Death and Entropy)」を提供し(ミスターネガティブは「BRAND NEW DAY」にてこの石板を手に入れていた)、かわりにニューヨークのチャイナタウンとロウワー・イーストサイドの支配権を得る。
その他登場回
・「THE AMAZING SPIDER-MAN#558 Freak the Third」2008年7月
・「THE AMAZING SPIDER-MAN#591:Face Front part2:'Nuff Said!'」2009年6月
・「THE AMAZING SPIDER-MAN#618 Mysterioso part1:Un-Murder Incorporated」2010年3月
・「Web of SPIDER-MAN v2,#10 'The Extremist:Conclusion'」2010年9月
・「THE AMAZING SPIDER-MAN#642 'Origin of Species part1'」2010年11月
・「X-MEN: To Serve and Protect」2011年
・「The Avengers v4,#30 'Ready! Aim…'」(storyline:Avengers vs. X-MEN)2012年11月
・「THE AMAZING SPIDER-MAN v3,#5」(storyline:Original Sin)2014年10月
・「Superior Spider-Man #1」(2023〜) 2023年11月
コミックス版 その他
2018年
「INFINITY WARPS」
二人のキャラクターが融合したというバース世界では、ミスターネガティブはダガーと融合した「ダガー・リー」なるキャラクターとなっている。
2022年
「Spider-Ham Hollywood May-ham」
スパイダーハムの作品内ではミスターネガティブはMister Negatigerというトラのキャラクターになっている。
アニメ版
・2012年~2017年まで放送されたアニメ「Ultimate Spider-Man vs. The Sinister 6」に一度登場しているが、なぜか能力が触れた相手を石に変えるというものに変更されている。
・2017年のスパイダーマンのアニメ「Marvel’s Spider-Man cartoon」のseason2・episode20「A Brand New Day」に(こっちはだいたい原作通りで)登場する。
ゲーム版
2014年
「THE AMAZING SPIDER-MAN 2」
登場はしていないが、ミスターネガティブのコミックス中の台詞がゲーム内の建物の壁に殴り書きされているのが発見されている。
2017年
「LEGO MARVEL SUPER HEROES 2」
クローク&ダガーDLCでプレイアブルキャラクターとして登場する。
2018年
「MARVEL’S SPIDER-MAN PS4」(PS4スパイダーマン)
(演・英語版CV:Stephen Oyoung/日本語版CV:宮本充)
スパイダーマンが主役のオープンワールドアクションゲーム。ボスキャラとして登場。原作コミックスと出自・能力にかなりの違いがある。
慈善家のマーティン・リーとしては原作とほぼ変わりないが、マーティンが自発的にミスターネガティブの犯罪に加担しているような仕草が見られる。その理由はゲームオリジナルの過去にある。
まだ幼少の頃、マーティンはノーマン・オズボーンとオットー・オクタビウスの新薬の人体実験に参加する。いち早く研究結果を得たかったノーマンが秘密裏に無理やり薬の量を増やし、結果マーティンは薬の力を制御できずに暴走、実験に付き添っていた両親を殺してしまう。それから、責任もほとんど取らずのうのうと生きているノーマンに強い復讐心を抱くようになった。(人体実験に参加した理由については作中で語られないが、マーティンのアジトに「オズボーンが病床の子供を救う」という趣旨の古い新聞が貼られている事から幼少のマーティンも何らかの病気だった可能性がある。)
実験後闇のエネルギーを生み出し操る能力と邪悪な別人格を得たマーティンは、億万長者の慈善家と、ニューヨーク市長まで上り詰めたノーマン・オズボーン殺害をもくろみ地下活動するテロリストとの二重生活を生きていくこととなる。
時は流れノーマンの市長再選がかかる選挙が訪れた時期、キングピンがスパイダーマンにより逮捕されたのを良いきっかけとしてノーマン殺害に向け本格的に動き出す。数多くのインナーデーモンズにあちこちでテロを行わせ、市庁舎で爆破テロを実行してノーマンの権力失墜を狙う。さらにノーマンの会社オズコープから奪った毒ガス「デビルズ・ブレス」をグランド・セントラル駅で使用しバイオテロをするとノーマンを脅迫した。最終的に電車内でのスパイダーマンとの決闘に敗れ監獄ラフトに投獄されるも、一日も立たずオットー・オクタビウス(ドクター・オクトパス)の助けで脱獄。「デビルズ・ブレス」の解毒薬を巡りスパイダーマンと再び対決、敗北した。その後投獄されたようだが詳細は不明。
2023年7月21日に公開されたMarvel's Spider-Man 2のストーリートレーラーにてゲーム版での再登場が確定した。
洗脳、剣や銃火器に闇のエネルギーを纏わせるなどの能力に変わりはないが、追加でエネルギー自体を手からビームのように撃てるようになっていたり、巨大な悪魔を召喚したりできるようになっている。また、マーティンの光エネルギーによる治癒能力は見られない。
人格について、作中でマーティンは彼の別人格の事を「悪魔」などと呼びミスターネガティブという名前は使われない。J・ジョナ・ジェイムソンが自身のラジオ番組でマーティンを揶揄し「ミスターネガティブ」とジョーク混じりに命名したぐらいで、スパイダーマンも作中通して「リー」と呼んでいる。
それぐらいPS4版はマーティンとミスターネガティブの境界が曖昧である。ただ、ゲームの字幕にはミスターネガティブの名が表示され、ミスターネガティブがマーティンの姿を他人を見るように眺めている描写があることから二人の区別はあるようだ。
コミックス版とは違い復讐心という負の感情をもつマーティンはミスターネガティブに乗っ取られつつあると考えるのが妥当であろう。
コミックス版との違いが生まれた点について、開発のインソムニアックゲームズは「ゲームのオリジナリティーを象徴するキャラクターとなるようにした」と語っている。
2021年
「MARVEL CONTEST OF CHAMPIONS」
iOS・Android向けにリリースされたアクションゲーム。200体目のプレイアブルキャラクターとして2021年5月にシャン・チーと共に実装された。
2022年
「MARVEL STRIKE FORCE」
2022年9月にプレイアブルキャラクターとして新たに登場した。
「MARVEL SNAP」
2022年6月にリリースされたデジタルコレクションカードゲーム。リリース当初はコスト4/パワー4の設定だったが、9月のアップデートでナーフが入りコスト4/パワー1に変更、さらに10月アップデートでもナーフされコスト4/パワー-1に変更された。
MCU
・映画「スパイダーマン」(トム・ホランド版)にはF.E.A.S.T.が存在している。これによりMCUにミスターネガティブが存在していてもおかしくはないが、2022年12月現在はっきりとした事実情報はほとんど不明。
その他
・英語名はMister Negative、Mr.Negative、Mr.Nなどと表記揺れがある。
・コミックスにおいて、ミスターネガティブのセリフの吹き出しは黒背景白文字になっており、通常の白背景黒文字の色反転バージョンになっている。
関連URL
・英語版ウィキペディア
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Mister_Negative
・Fandom
https://marvel.fandom.com/wiki/Mister_Negative_(Earth-616)
・MARVEL公式(英語)