モーリアン
もーりあん
その名は「大いなる女王」を意味するが、「夢魔(Mor)の女王(rigan)」が転じたものと言われる。「亡霊の女王」という解釈もある。
「モリガン(大いなる、夢魔、亡霊の女王)」という語はもともと固有名詞とは見なされていなかったようで、
9世紀のウルガータ(ラテン語訳聖書)写本につけられた注釈ではリリスの事を「女の形をした怪物、すなわちモリガン」と書いている。
『アイルランド来寇の書』ではアナンド(Anand)とも呼ばれている。
日本ではあるキャラクターの名の由来となったなった影響もあり、その代表格として知られる。
残りの二人はヴァハ(マッハ)、バズヴ(ネヴァン)で彼女たちとは姉妹である。
のちのアーサー王伝説では彼女をモデルにしたモーガン・ル・フェイが登場する。『マーリンの生涯』では姉妹は彼女含めて九人おり、他の物語でもモルゴース、エレインという姉妹の存在が語られている。
いずれのパターンでもヴァハやバズヴに似た響きの名前を持つ姉妹は出てこない。
長身かつ灰色の長髪を持つ絶世の美女とも、恐ろし気な老婆であるともされる。
戦場では二本の槍を武器とし、二頭の赤い馬に牽かせた戦車を駆り、鎧と赤いマントを身にまとって戦場を征く。
ヴァハやバズヴのように軍神としての性質を持つ。
ただバズウと混同される節があり、勝利をもたらす善神ではなく破滅や混沌をもたらす死神としての側面が強い。一方で見初めた戦士には寛大で、カラスに変化して好みの戦士を戦場で探しだすと誘惑し、それを受け入れた者に様々な恩恵をもたらすとされる。
変化の達者で、様々なものへ変幻自在にその身を変えて行動する。
クー・フーリンを見初めたことがあるが、クー・フーリンからは「今は恋に浮かれている時ではない」と袖にされ、さらにせめて助力をと進み出ると「女の力は借りない」とそれさえ拒まれる。
ここまで徹底して拒絶されたことに女神の矜持を傷つけられたモーリアンは、様々なものへ変化してクー・フーリンに復讐すると宣言。
幾度となく追い詰めるも二度にわたって返り討ちに遭い、片足と片目を失ってしまう。
しかし返り討ちの傷をクー・フーリンに治療され、その縁から最期の戦いで助力し、石柱に自らを縛って果てた彼の最期をカラスの姿で看取って一鳴きしたという。