概要
ある者同士に共通点が多い、それを匂わせる手掛かりがある、明確な証拠、明言はないが同一人物だと考えられる事。
…なのだが、歴史上考えられる同一人物仮設は物的証拠もなくただ同時代を生きただけで提唱された論拠の乏しいこじつけであることが多く、たいてい根も葉もないうわさ話が一人歩きしたパターンが多い。中には陰謀論と結びつき、特定の理論に誘導するための方便として濫用もされる。
著名な例で言えば源義経=チンギス・ハーン仮設が大正の頃に流布したが(江戸時代の段階では、清朝の祖は源義経だったという説だった)、やはりこれも論拠となるのは同時代を生きたという点だけで、生存説を前提に「悲劇によって謀殺された義経が実は生きていて、大陸に渡り大王に出世し日本に復讐しに来た」という判官贔屓や「大陸進出の正当性を中世日本の動向に求めた」為という意見もある。どちらにせよ、大陸事情に疎いはずの義経が海を渡って出世するという初手の段階でご都合主義も良いところなので、当時から既に眉唾物の与太話として好奇の目で見られてきた俗説であるが、こういった「〇〇同一人物設」が歴史創作、あるいはファンタジーの揮発材料として持て囃されたことは言うまでもない。
他方、学術的に資料の乏しかった出来事や人物が後年新たに発掘された資料を精査していく間で同一人物、あるいは同一事象の別の視点であった事を示唆する例は希に存在する。一例としてあげるならば匈奴=フン族説という物があり、これらは活動地域こそ中国とヨーロッパで分かれているが、ほぼ同時代の地球寒冷期に資源を求めて活発化し始めた。そこから両者が馬に慣れ親しんだ遊牧生活を生業とするモンゴロイド系遊牧民であり、戦闘能力が高くかなり好戦的であることなどの共通項を見出され、この仮説は提唱された。これらの共通項は両文明の文字資料にて残されていたためかなり以前から真実度の高い俗説として歴史学の間で取りなされてきたが、現代では子孫のDNA解析や考古学的資料から仮設の裏付けを進めている最中である。
他のトンデモ同一人物説
⋯決闘で死亡したプーシキンがアレクサンドル・デュマと改名し、その後も生きているというトンデモ説。年代的に長生きしすぎである。
- アレクサンドル1世生存説
⋯アレクサンドルが死去してから10年以上経った1836年のこと、モスクワから約1400キロ東にあるペルミの近くにフョードル・クジミーチという老人が現れた。彼はナポレオンと戦った祖国戦争について、アレクサンドル1世しか知り得ないような情報を数多く知っていた。また流暢なフランス語を話しており(当時のロシアではフランス語を話せるのは貴族ぐらいだった)、クジミーチ=アレクサンドル1世だと証明も否定もできない。未だに同一人物説が根強い。参考
- アドルフ・ヒトラー生存説
⋯ヒトラーはベルリンの地下壕で自殺し、遺体は焼却して遺灰を湖へ捨てたというのがソ連側の証言。
ナチス関係者多くが亡命していた南米では、ヒトラー生存説が多く残されている。だが「私はアドルフ・ヒトラーだ!」と名乗った老人がタダの認知症だったりと信憑性は薄い。
関連項目
関連タグ
別人説 対義語