ピクシブ百科事典

天下一蹴今川氏真無用剣

てんかいっしゅういまがわうじざねむようけん

天下一蹴とは蝸牛くも氏による時代小説……ではなく、ライトノベル。
目次[非表示]

概要

原作者:蝸牛くも
イラスト:伊藤悠
漫画:湯野由之

事の経緯は、蝸牛くも氏が自身のやる夫スレ作品『ゴブリンスレイヤー』を小説にリファインし、富士見ファンタジア文庫大賞に応募した事から始まる。
三次選考落ちしたものの、わりと行けると創作意欲が湧いた作者は様々な小説を執筆・投稿を繰り返した。作者はふと、近頃のラノベの事を考え、

  • 一発でわかりやすいタイトル
  • 主人公は強い
  • でも世間からは認められていない
  • 信じた己の道を行く
  • ヒロインとラブラブ

これらの要素が『売れる』『面白い』の条件だという結論に至った作者は、今川氏真が嫁さんの早川姫とイチャイチャしながら、織田信長と蹴鞠しに行くついでに京都へ旅行し、同時に徳川家康から頼まれた密命を何とかしつつ、道中襲いかかってくる甲賀忍者とチャンバラするという内容の本作をGA文庫大賞に投稿した。

友人氏「時代小説だこれ!?」
作者「似たようなタイトルの作品は無いだろうという自信だけはあった!」
友人氏「残当!」

いや、確かにテクスチャはともかく概ね間違っちゃあいないとは思いますが……
結果は最終選考まで残ったものの『面白いけど、流石に時代劇ハンデは覆せない』という理由で落選。
しかし、作者の投稿履歴を見ていた編集部が『ゴブリンスレイヤー』に目が留まり、声がかかってゴブリンスレイヤーが出版される運びとなった。

そして2018年8月に本作品がコミカライズが決定され、遅れて書籍版も出版決定された。
漫画版は2018年11月から連載開始され、書籍版は2019年1月に刊行。

なお、実在の人物が登場し、実在する地名が舞台となっているが、架空人物が登場したり、本作の数十年後に建てられたはずの矢作大橋が登場するなど、虚々実々入り乱れたフィクション作品になっている。
まあ、歴史上の人物を題材にした物語にはよくあることである(原作者曰く、『時代小説』はフィクションで、『歴史小説』は史実準拠だと捉えているとのこと)。
ちなみに、原作者の目標は信長の野望の今川氏真のステータスがアップされる事

あらすじ

第六天魔王・織田信長が桶狭間で討った今川義元。その義元の佩刀、「義元左文字」は「それを持つ者は天下を取る運命にある」という。
信長のいる京までその刀を届ける密命を徳川家康より授かったのは、義元の息子―――大名として今川家を滅ぼしたとされる天下御免の無用者、今川氏真であった。
「己は駿河彦五郎。飛鳥井流と、新当流を少々」
今は彦五郎と名乗っている氏真は、和歌と蹴鞠を愛し、その妻、蔵春とともには京へと向かう。
その旅路を阻むのは「甲賀金烏衆」。
剣風吹きすさぶ京への街道に剣聖直伝の彦五郎の剣が、鍔鳴る!

登場人物

本作の登場人物は、室町時代後期から安土桃山時代までの実在の人物がモデルとなっている。

駿河彦五郎

本作の主人公。今川氏真その人。蹴鞠の達人。
歴史上では暗愚、凡夫、天下一の無用者と蔑まれている。
子供の様な無邪気な性格であり、事あるごとに和歌を詠む。
家康とは幼なじみであり、幼名(元康)で気安く呼び合うほどに仲が良い。
彼からの危険を伴う密命を蹴鞠を報酬に引き受ける程のお人好し且つ、蹴鞠大好きな蹴鞠馬鹿。
しかしその実、剣豪塚原卜伝より『新当流』の免許皆伝を許されるほどの剣腕を持ち、『飛鳥井流』なる技にて砂や石、などを軽々と蹴り上げるほどの実力を持つ。
実際の鞠に至っては、軽く蹴り上げて梢に当て、それを見ていた童女の手中に落とすといった見事な技量を見せている。
作中に襲いかかった敵はほぼ全て峰打ちで撃退しており、殺しを良しとしない。
自身が剣士や趣味人としてはともかく、大名に向いていないことも自覚している節があり、
今川が滅んだのを自分を含めた全員の咎と考え、部下の離反も己の因果、そのため今川への悪口も道理だと思っている。
父の仇である信長に思う事はあるものの、敵討ちをしようとは思わず、むしろ信長と蹴鞠しに行く事を喜ぶくらいである。
なお、作中の登場人物のほとんどが『飛鳥井流』の事を知らないのは、『飛鳥井流』が体術でも忍術でも武芸でもなく、蹴鞠の秘技だからである。
そのため、飛鳥井流を剣術ではないと知っていた草深甚四郎を警戒した。
余談だが、本作で彦五郎が詠んだ和歌には今川氏真が実際に詠んだものと、原作者が考えたものが混ざっている
なお、今川氏真の和歌は全部で2000くらい残っているらしい
幼なじみとはいえ今川を裏切った家康と仲がいいのは、家康を始めとした離反者達は義理を果たした末での離反であり、そんな彼らのために氏真は各方面に紹介状を送り、再就職を支援したという説があるからである(ただし、武田側についた裏切り者達については、信長に追い詰められて助けを求められても「お前らは許さん。そこで乾いていけ」とぶった切ったらしい。是非もなし)。
また、桶狭間はいいとして、自分の嫡男殺して嫁である氏真の妹を返品して嬉々として裏切ってきたヤバい男そのせいで失敗した事の尻拭いを押し付けられた息子同じく嫡男排除しようとして国内から総スカン食った男、その他もろもろの事もあり、氏康が自主的に大名を辞めたのはそんな殺伐とした修羅場から一抜けしたとも捉えられる(家康も豊臣家との対立や、直系の孫がボンクラなどの諸々の問題に翻弄されており、どちらかと言えば『やりきってやったぞ!』的な最期である)。
結果的に周囲から無能と蔑まれたものの、嫁さんと仲睦まじく平和的に隠居生活を送っていたと考えれば数多の戦国武将の中でも充実した人生を楽しんでいた勝ち組とも捉えられる。
なお、生活費については家康から小遣いを貰っていたらしい
史実での時系列的を踏まえると年齢は30代半ば~後半と推測される。

蔵春

本作のヒロイン。北条氏康の娘『早川姫』『蔵春院』にして、彦五郎の妻。
膝を露出させた朱色の小袖と金糸の腰帯、黒地に昇り龍の陣羽織といった派手な着物を好む婆娑羅者であり、寝る時は長襦袢を着る(天正の頃、婆娑羅者は非常識とされる事が多かった)。
気が強く、何かと馬鹿を仕出かす夫へのツッコミ役を務めると同時に、政略結婚でありながら自分を愛してくれる彦五郎を深く愛し、周囲から中傷される彼の姿に心を痛めている。
風間出羽守主水正から忍びの技を習っており、何里も先から自分達を狙う者の気配を察したり、僅かな隙間から隠れた敵を注視したりできる。騙し討ちも行う。
武器として苦無の他、唐国渡りの輪燧銃二挺拳銃を使う。
柏餅や白玉、キジ麺など旅の最中によく食べており、漫画版おまけの『ゆるゆる一蹴』では彦五郎にその様子をリスに例えられた。
史実では生年不詳だが、本作中では北条氏政(彦五郎と同年生まれ)の姉と明言されていることから、つまりは氏真より年上

徳川家康

彦五郎の幼なじみにして三河を治める大名。
彦五郎が気安い口調で接しても怒るどころか、逆に親しげに会話を楽しむなど、おおらかな人物。ただし、腹黒い描写がある(特に漫画版)。
彦五郎に、信長の元へ義元左文字を届ける密命を与える。その真の目的は義元左文字を餌に信長に敵対する者達を釣り上げ、彦五郎に討たせること。
とは言え、大名としての気苦労やしがらみを感じることなく、一個人として付き合える彦五郎のことを大切に思っていることは確かなようだ。
『ゆるゆる一蹴』では、密命と言う名のおつかいを彦五郎にやらせる(流石の彦五郎も戸惑っていた。しかもメモの内容からして献立はカレーライス)。
和歌について悩む彦五郎に家康がアドバイスする場面は史実として実際にあったらしいやり取りであるが、捉え方によっては古今伝授という和歌の奥義の正当伝承者である氏真に和歌について相談され、家康が胃痛を覚えながら上手く切り抜けたとも言える(原作者はケンシロウに『伝承通り北斗神拳するの難しい』と相談されるジャギと例えている)。
そして、幼い頃に今川家に人質にされ、今川を裏切ったにも拘わらず彦五郎と友好的な関係になっているのは、
元々徳川家は今川の重鎮であって人質と言うには語弊があり、実態としては息子の代の幹部候補として、エリート教育を受けていたとの事。
また、裏切ったといっても信長に催促されるまで武田と戦っていたという、義理を果たした末での離反である。

万千代

十七歳という若年ながら、家康の小姓を務める美少年。
一介の牢人でありながら殿と親しく会話し、密命を受けた彦五郎に反感を抱いている。
義元左文字は、元々は彼が主君から預かっていたものである。
しかし、その心を利用され、鈴蘭の術にかかり密命の内容を漏らしてしまう。
後の徳川四天王の一人にして、井伊の赤染で有名な井伊直政である。
漫画版おまけの『ゆるゆる一蹴』では、嫉妬から上記のおつかいを自分がやると進言するが、家康から『はりきりすぎて毎分転んでそう』と一蹴されてしまった。
なお、本作で万千代がいじられキャラになっているのは、原作者曰く、数十年後に島津の蛮族にボコボコにされるからという理由とのこと。
しかも、本編では描かれてないが、彦五郎に嫉妬している様を訳知り顔の服部半蔵に笑われながら見られていたらしい。

疋田虎伯

疋田新陰流の開祖を自称する、絢爛豪華な装いを纏う廻国修行中の女武芸者。上泉信綱の姪。
己の首級に百石・二百石は下らぬと豪語し、彦五郎からの「天稟がある」との評に違わぬ腕前を持つ。
性格は豪放磊落にして自由闊達、己への自負より来る飄々とした遊び心を忘れぬ武辺者。
武器は青貝螺鈿の大槍と、朱塗りの拵えを持つ打刀。
モチーフは疋田景兼。史実では男性。伯父御とエピソードが混同されている説はあるものの、柳生相手に3タテ食らわしたやべーやつである。

甲賀金烏衆

本作の敵。義元左文字と彦五郎の命を狙う。

黒式尉

甲賀金烏衆を率いる、翁の面を被った謎の人物。
家康を『焼き味噌垂れ』と呼び、同時に部下に殺害を念押しするほど彦五郎に対して激しい憎悪を抱いている。
善住坊から『昔から使えそうなのはがらくたでも拾っておいて、いらんとなれば人さえも捨てる』と言われるように冷酷な性格でもあり、失敗した部下を容赦なく処分する。

乾壁蝨丸

甲賀金烏衆の最初の刺客。常人の三倍もある長い手足『八束脛』で蜘蛛のように壁や天井を移動し、口から五寸ほどの仕込み針を飛ばして攻撃する。ただし、これは小手先の技であり、彼の真価は長い手足を駆使した体術である。
本作では珍しい架空の人物。漫画版後書きの原作者のコメントで『忍法帖でニンジャスクロールでバジリスクですよ』と甲賀忍法帖を想起しそうな発言をされており、甲賀忍法帖にも長い手足で蜘蛛の様な動きをする忍者がいるが関係性は不明。
『ゆるゆる一蹴』では仲間からダニーという渾名で呼ばれている。

杉谷善住坊

甲賀金烏衆の刺客。火縄銃の名手であり、織田信長を狙撃するが南蛮鎧に阻まれて失敗し、捕らえられて処刑されたはずの男。深編笠を被った虚無僧の様な姿をしている。
女好きで特に少女を好み、更にリョナ好きの変態であり、蔵春を狙う。
金瓢箪が吊られた奇妙なほどに細い杖を持つが、正体は気砲であり、圧縮した気を膨らませて風を起こして弾丸を飛ばす武器である。これにより、熱もなく、光もなく、風切り音だけを残して相手を狙撃する術『天狗礫』を得意とする。
黒式尉とは昔からの付き合いで、彼の正体を知っているようだが、なぜ彼が彦五郎を殺すことを強要するほど憎んでいるかは知らない。
『ゆるゆる一蹴』では笠の下のヘアスタイルまでデザインされていたらしいが、リテイクされても公開されなかった事に不満を抱いていた

鈴蘭

甲賀金烏衆の刺客。肌けた着物を着る妖美な女。
彼女の吐息『時砂』には相手の意識を朦朧とさせ、幻を見せる効果を持つ。また、それによって周囲から認識されずに動くこともできる。
夫である甚四郎の剣の腕に惚れ、彼の背後ほど安らかに落ち着ける場所がないと思っている。

草深甚四郎

甲賀金烏衆の刺客で、鈴蘭の夫。笠を被り、背中に『快刀乱麻』と書かれた陣羽織を着た、無精髭の侍。
自分の剣術の腕を見せるために理由なく座頭達の首を斬り落とすほどの危険人物。
彦五郎の飛鳥井流を、名前を聞いただけで剣術ではなく蹴鞠の技と看破すると同時に、戦いの場を蹴り飛ばせる物がない矢作大橋を選んだりと、彦五郎の蹴鞠の腕を警戒している。
鍔鳴によって生じる超音波で相手を両断する、不可視の剣閃を得意とする。
なお、史実においては深甚流の開祖であり、塚原卜伝を相手に引き分けに持ち込んだり、盥の水をぶった切ったら遠くの敵が両断されてたりと、本作以上の超人的逸話を持つ剣豪
事実は小説より奇なりとはよく言ったものである。

土屋貞綱

元・今川家の家臣にして、武田信玄の裏切りの際に武田に降り、長篠の戦いで戦死したはずの海賊衆。
現在は甲賀金烏衆の刺客として登場し、彦五郎のみならず、かつての主君である武田勝頼も『無能』と呼んで蔑んでいる。
(彦五郎は『己はともかく、武田勝頼殿は暗君でもあるまいに』とツッコんだ。史実において勝頼が無能だという話は、彼の優秀さを恐れた信長が広めたデマであるという説がある。また、信長が『武田が滅びたのは信玄が不義理だったから』と吐き捨てたように信玄が今川家を裏切ったのが原因である説や、勝頼自身の経緯から家臣が不満を抱き足を引っ張ったという説もある。いずれにせよ、勝頼は泣いていい
筋骨隆々とした赤銅色の肌と、要所のみを守った具足を身につけた荒武者であり、長柄の大熊手を武器にする。雷の様な大声が特徴。

義元左文字

本作において重要にされている刀。刃渡り二尺六寸余り。鞘には小柄(日本刀に付属する小刀)が仕込まれている。
刀匠正宗の十人の高弟・正宗十哲の一人、左衛門三郎源慶が鍛えた刀の一振り。
左衛門三郎が鍛えた刀には『左』の銘を刻むため、『左文字』と呼ばれている。
『左文字を持つ者は天下を取る運命にある』と謂われ、事実、三好宗三武田信虎今川義元と、いずれも天下への道を歩んだ。
そして、最後の持ち主が今川義元であったため、『義元左文字』と呼ばれている。
ただし、天下の道は破滅と表裏一体であり、宗三は合戦の中で孤立してしまい籠城するも討ち死にし、信虎は嫡男の信玄に追放され、義元は桶狭間の戦いで信長に討たれている。
この刀を信長に届けるのが、彦五郎に与えられた密命である。

関連作品

ゴブリンスレイヤー:今作がきっかけで書籍として(先んじて)刊行された作品

関連タグ

GA文庫

コメント