水木(鬼太郎シリーズ)
みずき
鬼太郎シリーズに登場するキャラクターで、鬼太郎の育ての親。
前史である『墓場鬼太郎』、及び『ゲゲゲの鬼太郎』でも「鬼太郎誕生」のエピソードがリライトされるごとに再登場するが、それぞれ独立した作品となっているため細かな設定等には違いがある。
ただし登場するすべての作品(アニメ含む)において、
- 昭和30年前後の東京郊外に、母一人子一人で暮らしている
- 血液銀行に勤めている
という基本設定は共通している。
原作者との関係
- 基本的には「キャラクターの水木≠原作者の水木しげる」であるが、小学館の「鬼太郎大百科」における「鬼太郎誕生」エピソードの記述では、水木しげるとの関係も暗示されていた。
- アニメ6期のスピンオフ小説「ねずみ男ハードボイルド」で言及された命日や埋葬場所の設定は、水木しげるご本人と同じものとなっている。また、6期をベースとしてその前日譚を描いた劇場版では、原作者の経歴やエピソードと共通する部分が多く存在する。詳細は水木(鬼太郎誕生ゲゲゲの謎)を参照。
原作での水木
『墓場鬼太郎』
各シリーズで描かれる「鬼太郎誕生」の基となるエピソード。
ここでの水木は、勤務先に度々遅刻するなどいい加減な部分があるものの、その分大らかで「自分に甘いが他人にも甘い」性格の持ち主として描かれている。しかしその甘さが仇となって、想像もしなかった運命を辿ることになってしまう。
ある日、出社早々に社長に呼び出された水木は、自社製品に「幽霊の血」が混入していたことを聞かされ、その調査を命じられる。その血液を輸血された人は、意識があり、正常な人間のようにふるまうにもかかわらず、心臓は停止し体温はなく「医学的には死人」と言う状態になっていた。
水木が供血者のデータを調べたところ、その住所は水木の家と同じものであり、彼は最近隣の古寺に引っ越してきた怪しげな夫妻を疑う。
その夜、古寺を訪ねた水木は不気味な夫妻から事情を聴く。彼らは自身を幽霊族と名乗り、問題の血液は妻のもので、重病に罹った夫の治療費を捻出しようとしてのことだったと話す。
夫からは幽霊族の悲劇を聞かされ、また妻からは身ごもっている子供が生まれるまではと懇願された水木は、夫妻を恐れる一方で、同情の念も感じていた。そこで子供が生まれる8ヶ月後までという約束で、会社への報告を伏せる。
約束の期限が訪れ、改めて古寺を訪ねてみると夫妻は息絶えていた。哀れに思った水木は、溶け崩れた夫の方はあきらめて放置したものの、せめてもと妻の方は墓穴を掘り、埋葬した。
その3日後、産声を聞きつけて墓場に駆け付けた水木は、異様な雰囲気を持つ赤ん坊(鬼太郎)が墓穴から這い出してきたのを目撃する。その得体のしれない様子に恐怖を覚えた水木は、一度は見捨てて自宅へ逃げ帰った。しかし鬼太郎は目玉おやじとなった父に導かれて水木宅へ這ってくる。自分を頼りにする鬼太郎に情を覚えた水木は、それ以上突き放すことができなくなり、育てる決心をするのだった。
その後、水木はなんとか鬼太郎の養育を続けるが、次第に奇怪なふるまいを見せるようになる鬼太郎の面倒を見切れなくなり、普通の子供として暮らせないなら出ていくよう言い渡す。そんな折、鬼太郎が隠しておいた「地獄の片道切符」を発見した水木は、それを手にしたまま墓場へ行く目玉おやじを追跡したために、生きながら地獄へと流されてしまう。
- ガロ版『鬼太郎夜話』では地獄に行くことになった経緯が異なっており、鬼太郎親子を家から追い出した後、警察とともに2人を追ってきたところを目玉おやじによって地獄流しにされている。
その後、水木は血液銀行の社長を地獄へ連れてきた鬼太郎親子と再会し、鬼太郎を育てた恩もあるとして現世へと戻される。しかし体温や脈はなくなり、身体からは死臭がするという、まさに生きた屍と化してしまった。
地獄から帰った後は「いっしょに暮らすのがかえって安全」という理由から、下宿「ねこや」の2階で鬼太郎親子と同居を始める。
具体的な活躍はここまでで、以降は完全にサブキャラクターとなり、水神様に関わる物語の導入部分で物価高騰を理由にいきなり家賃を倍にされ、苦悩する姿が描かれたのを最後に、作品から姿を消す。
佐藤プロダクションから出版されたリライト版である『おかしな奴』は、水木が冒頭で鬼太郎の誕生を改めて回想する形でストーリーが始まり、鬼太郎の活躍譚も水木の語りで展開される。しかし導入部以降は作品から消え、雑誌連載となり『ゲゲゲの鬼太郎』と改題した後も、水木の消息は不明なままとなっている。
TVアニメでの水木
アニメ版『墓場鬼太郎』
大らかで自分にも他人にも甘く、小市民な性格は原作通り。
前半のうちはメインキャラクターとして描かれ、全体的な出番も増えた。しかし何かと鬼太郎に苦しめられ金づる扱いされたうえ、最後にはあっさり見捨てられるといった、酷い役回りである。また、佐藤プロダクション版がベースであるため、鬼太郎が隻眼になった理由が水木の行動によるものとなっている。
- ただしこの末路は、いつも物語の途中で存在が消えてしまう彼に、はっきりとした結末を与えて見せ場を作ってやりたいという、言わばスタッフからの餞であった。
- 生まれて早々、墓から這い出てきた(人間の赤ん坊には不可能な行動)鬼太郎に脅えた水木が、恐怖のあまり振り払った(あるいは突き飛ばした)ために墓石に目をぶつけてしまった。貸本版およびガロ掲載のリライト版では、生まれつき左目は欠損している。
設定についても多少の変更が行われている。
- 放送コードの関係上、患者に起こった異変の原因を売血とすることができず、幽霊族の妻が激痛に苦しむ患者を見かね、善意で妖力を使ったことが原因とされた。これに伴い、水木の勤務先も「病院の系列会社」とぼかされている。
- 原作での水木は、勤務先への遅刻を繰り返す、だらしない面のある男として描かれている。これが原因で、たびたび社長からお小言をいただいていたために顔を覚えられており、「幽霊の血液」について内密の調査を命じられるのだが、アニメではこの部分がカットされている。
TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(6期)
6期1話において、目玉おやじのセリフとして「水木という青年が昔鬼太郎を育ててくれた」と言及され、ワンカットのみ登場。
アニメ『ゲゲゲ』シリーズにおいて、水木の存在(と鬼太郎の出生)について具体的に描写されたのはこれが初となる。
33話では、鬼太郎が「(依頼に応えて人間を救うのは)約束みたいなもの……だからな」とも語っており、水木青年と鬼太郎の間に、原作とは異なる絆のようなものがあることが示唆された。
42話では、百々爺の策略により妖怪大裁判で有罪判決を受けた鬼太郎を救うべく仲間たちが奔走する中、刑の執行を引き延ばすため目玉おやじが語る思い出話に、水木青年が登場する。
裁判長である大天狗に遮られたため話は途中で終わってしまい、その後の消息ははっきりとしない。
なお、最終回において、第1話の「水木青年が赤ん坊の鬼太郎を抱いたカット」が再び登場。
鬼太郎が人間を守り仲間であるはずの妖怪と戦う理由が、水木青年との絆にあることが改めて強調される。そしてその絆が閻魔大王曰く「死よりも辛い地獄」という状態にあった鬼太郎を救う事につながる、という展開を見せた。
彼らが共に過ごした時間について、作中で具体的に語られることこそなかったが、きっと水木青年の魂も浮かばれたことだろう。
劇場アニメでの水木
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
上述の6期TVアニメ版の「エピソード0」として2023年に公開された本作では、なんと物語の主役として登場。全シリーズにおいて初めて水木に本格的なスポットが当てられた。長年に渡る不遇がついに報われたと言うべきか。
水木しげる生誕100周年プロジェクトの一つとして6期の映画化が立ち上げられたとき、作中でしばしば触れられていた水木青年の存在が自然と浮上し「鬼太郎の父たちの物語」というコンセプトに結び付いたという。
劇中のネタバレを多く含むため、詳細は「水木(鬼太郎誕生ゲゲゲの謎)」を参照。
番外その2:悪魔くん(令和アニメ版)
原作者を同じくする『悪魔くん』の令和版アニメに、制作会社が異なるためあくまでファンサービスとしての要素ではあるが、『ゲ謎』の彼と共通する特徴を持ち水木と名乗る老人が登場している。
詳細は「水木老人(令和悪魔くん)」の項目を参照。
舞台版での水木
基本的な設定は第6期と同様。「水木」の発音は『ゲゲゲの謎』と同じ。
彼の視点から物語は始まる。『墓場鬼太郎』同様、「幽霊の血」について調べているうちに、鬼太郎の父母と出会い、彼らの死後、鬼太郎を育てる。
母親と共に幼少期の鬼太郎を育てており、鬼太郎に学校へ行く為のランドセルをプレゼントするなど、実子のように可愛がっていた。
穏やかな上に心優しい性格で、母親や隣人の人間たちから気味悪がられている鬼太郎を庇い続け、人間と妖怪の共存を望んでいた。
結果的に鬼太郎は妖怪たちとの生活を選び、水木の家から出て行くが、水木は笑顔で彼を送り出す(その後、鬼太郎は初めて涙というものを体験し、絶叫した)。鬼太郎たちが水木家を出た後も住居を変えることなく、彼らがいつ帰ってもいいよう待ち続けていたとされている。
- 原作「墓場鬼太郎」初登場時の姓は「秋山」であった。
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