プロフィール
概要
『ヴィジランテ』における主人公。冴えない個性を持ち、冴えない大学生活を送るアルバイト青年。
人物
かつてはヒーローを目指していたが、あるトラブルでヒーロー科高校の入試を受けることができず、そのまま普通の大学生となった。
夜になるとストレス解消のために、オールマイトなりきりパーカー(公式通販限定版)を纏いマスクを着けて『親切マン』に扮し、困っている人を"個性"を非合法に使い助ける。非常に狭い地域ではあるが認知度は高く、人々からも好意的に受け入れられている。
ただし、この活動も"個性"の無認可使用であるため違法行為にあたる。
そんなある日、悪質なゴロツキからナックルダスターに助けられた際、強引に巻き込まれる形でヴィジランテ活動を始める事に。彼の奨めで新たに『ザ・クロウラー』を名乗るが、街の人々にはあまり定着せず、専ら『苦労マン』と呼ばれてしまう。そのおかげで真の"個性"に引っかからずに済んだが…。
基本的には気弱で温厚だが、人のピンチには咄嗟に体が動く性格。一方、ヴィランやゴロツキ、犯罪者などのいわゆる「悪」に対して憎しみをぶつけることはなく、むしろ同情的であることが多い。この点は「半端な善」すら容赦なく殺すスタンダールとは対照的。
大学進学の際、都心駅近くの古いビルの屋上にあるペントハウスを改装して住むが、その廃墟のような外装のせいで怪しまれ、大学生活では孤立する。
しかし、関係者以外誰も来ないし居ない・そこそこ広いビルの屋上で個性や戦闘の訓練を行えるので現状からすると結構都合のいい場所である。
その後、ポップ、ナックルダスターの二人が入り浸るヴィジランテチームの拠点となる。
大学デビューの際は周囲からのウケも良かったが、家賃が安かった理由に全く気づかず前述の家を紹介した結果、性犯罪者と誤解される程にドン引かれてしまい、悪い噂がたって大学内でぼっちになってしまう。通称:東鳴羽田の"廃墟の怪人"。
そのため履修で分からなくなった時は危なかったが、顔が広く要領のいい真とのツテのおかげでノートやら過去問やらが手に入り助かった。
昼は大学、夕方はコンビニでアルバイト、夜はパトロール、休日は特訓と割と充実してる。加えてヴィジランテ活動の中で様々な人と出会った事により、多くの人と友好的な関係を築き、学外においては「ぼっち」を脱している。
また、その信頼に値する人柄をしっかり評価されて、真やポップからははっきりと好意を示されるようになった。
人助け時の衣装はオールマイトグッズのパーカーに、口元を覆う黒いマスク。
ナックルダスターと出会ってからは、手足に彼から与えられたバイク用のプロテクター、額にサンバイザーを装着する。
航一もまた緑谷を思わせる熱烈なオールマイトマニアであり、毎年出る限定版パーカーを「シルバーエイジver.正規カラー版」を除き全て所有しており、そんなパーカーたちを身につけることでヒーロー活動への勇気をもらっている。
個性の性質もあって、スパイダーマンをオマージュしたと思わしき、腰をかがめた低い姿勢で地面に手を触れるのが決めポーズを決め、登場時にも「俺は~~男! ザ・クロウラー!」という名乗り上げを行う。
実は呑み込みが早く成長性が高く短期間のうちで成長したことからヒーロー科へ進めばプロヒーローとして活躍できたのでは?と、話すが進むにつれその才覚を読者からは評価されている。
過去
母親曰く、昔は空を飛び、歩くより先に空を飛んだらしく、そのままどこかへ飛んで行ってしまうのではと心配するあまり、その度に母親に"個性"で静止されていた。
雄英高校入学を目指していたが、溺れていた子供を助けようとしたことで結局入試に間に合わなかった。ポップとは5年前のその時に1度出会っているが、航一は助けた子供を少年と思い込んでいるため気付いていない。
個性
個性は『滑走』。
「三点以上の接地」を発動条件とし、地面の上を滑るように移動することができる。
摩擦をなくすのではなく、反発力のようなものでわずかに宙に浮いており、前後左右に自在に移動できる他、地面だけでなく壁面など、ある程度の平面さえあれば吸着するように「接地」して走行できる。劇中でその性質を強めるコツを掴んだ事で、走る新幹線にもへばりつける様になった。
また、スキージャンプのように跳躍することもできるが、着地は普通に受け身を取るしかない。
いくらでも加速できるが、自身で制御できるスピードは自転車(ママチャリ)程度まで。しかしブレーキの問題をジョギング仲間として偶然知り合ったインゲニウムからの「反対方向に加速して急制動をかける」というアドバイスで解決する。
インゲニウムのサイドキックの誰よりも速いらしく、実際に暴走バスに追い付いているため、相当の高速だと考えられる。また最高速度でも壁にぶつからず閉所でターンできるなど、ジャンプや壁走りと異なり完全に使いこなしている。
パッと見は地味だが、かなり応用力が高い個性のため、インゲニウムからも「高速移動から現場の小回りまで対応できる」と評された。また日頃のボランティア活動で日常的に個性を使ってるのもあってか個性については器用で、上記のスピード相殺技術も発想を教えてもらってすぐに実現、使い熟した。
ただ性質上「滑走」の攻撃手段は足払いor体当たり的なしかないため、個人での決定力に欠け、飯田家のように急加速も出来ず姿勢の自由度も無いため、読まれやすく当たらない。
現状だと戦闘では回避盾と進路誘導&足払い等タンク役。救助では怪我などで動けない人の運搬を担っている。
ナックルダスターがいた頃は彼がアタッカーをやってくれていたが、いない現在は弱い人相手なら航一1人で、強い敵は時間稼ぎしつつ伝のあるヒーローを呼び対処している。
なお正確には「手足から斥力を放出する」個性であり、登録上は「滑走」だがその本質は異なるもの。母親も掌から力場を飛ばす個性なため、恐らくは遺伝性。
赤ん坊の頃は立ち上がるより早くふわふわ空を飛んでいた程だったが、その自由度を性格もあって危険視した母親がやらないよう執拗に躾けていたため、大人になった現在は上手くできない。
両足の「二点」でジェット噴射のように瞬間的な「飛行」を行った事もあるが、幼少期のそれを再現できるほど使いこなせてはいない。ジャンプは最大で連続二回、三回やると吸着力が無くなるとの事。
後に反発力を活かして空気砲『KGD(気合をギュッとしてドーン)』が撃てるようになったが、人体にダメージを与える様な威力はなく、最大威力でもそれなりに溜めが必要な割に攻撃技にはなり得ない。
というのもこれはポップと相談した上で、人を殺傷しないような威力にセーブし、最大威力を禁じ手としているため。全力なら金属缶を貫通するほどの威力を発揮する。それでも本編に登場する戦闘系個性に比べると威力は低い。
なお、主に対物で使用する高威力版KGDは、劇中の表現を見るに銃弾程度の威力は出る模様。ある程度の精密狙撃もできるらしく、入院したポップの姿をレンズに収めんと業者に扮して病院への侵入を試みたカメラマンの携帯する工具箱(に偽装したカメラ)を病院の向かいにあるビルの屋上から正確に狙撃し、破壊した。
一応ナックルダスターにある程度の訓練を受けているため身体能力自体は低くなく、個性を駆使した機動性は言うまでもなく、また修羅場において臆しながらも迷いなく行動できるため、あくまで平時の威力不足がネックなだけである。
余談
- キャラ設定としては「オールマイトに出会えなかった緑谷出久」「大人になりきってないが少年というには育っちゃってる」がコンセプト。普段はあんまり押しは強くない性格でオールマイト好きな行動派オタク、自分が危険になっても他人が危険だと突っ込んで行くところ等の共通点がある。それでいて個性持ちの大学生ということで無個性だった緑谷より陽気、というか少しお調子者な面すらありつつ、やや諦観があるものの自分の中にあるヒーロー願望にも自分なりに答えを出してうまく?付き合っている部分もある。
- ポップやナックルダスターなんかのグレーゾーンの人種から、プロヒーロー・その協力者等ともコミュニケーションが取れる変な人徳?許容性?が彼自身の「ヒーローの資質」。ある程度話が通じる敵なら会話から始めることもある。
- 初期は目つきがやや悪く目の下に隈があったが自警団の活動を始めてから徐々に薄くなってきているる。
- 航一個人で見れば法的には積極的に個性で相手に攻撃してる訳でもないので一応ギリセーフだが、同時に暴力的な敵に対して解決力もないので「非合法」とも「ヒーロー」とも言い難い「善意の協力者」が現状。……だと思われていたのだが。
英雄とは
トリガー事件の一旦の収束とナックルダスターとの別離、私生活の充実に伴い、もともとボランティア的な活動に終止していたヴィジランテ活動を、大学卒業と就職を機に引退しようと考えていた。
しかし「蜂」の能力者によって操られたポップがヴィランに変貌して大規模な破壊攻撃を繰り広げ、静止に向かった航一はなすすべもなく叩き落されてしまう。
警察に行って、全てを話して、助けを求めるべきなのでは?
どうすべきか迷う航一の下に、ナックルダスターからの手紙が届く。
「お前をヒーローにしてやろうと言ったが、あれは嘘だ」
その手紙には、ある一人のプロヒーローが、想定以上の巨悪に遭遇して敗北を喫し、全てに絶望して自暴自棄に陥り、通り魔的に暴れるまでになった経緯が記されていた。
しかしそんな彼にも、全く無関係なのにもかかわらず、ささやかな善意を差し伸べる者との出会いがあった。
どんな過酷で不遇な状況にあっても、人間が善性を保ち続ける事は困難だ。
しかしその困難を乗り越える者こそが英雄なのだ。
「お前をヒーローにしてやろうと言ったが、あれは嘘だ」
「俺が指図するまでもない。おまえは自分が何をするべきかを自ずとわかっている」
「揺るがぬ善意を持って生まれてきた稀有な人間。真の英雄」
「俺のヒーローだ」
「飛べ、コーイチ。飛んでいけ、ヒーロー」
『僕のヒーローアカデミア』は、出久という少年が「ヒーローになるまでの」物語である。
しかし『ILLEGAL』な主人公である航一は、すでに第一話の段階から「ヒーローだった」のだ。
「ここまで」と「ここから」
全ての事件の黒幕であり、ポップの犠牲を悲劇として演出、華々しくデビューを飾ろうとしていたオクロックⅡ。
結果的に航一によってその企みを打ち砕かれた彼は、逆恨みからポップと航一を殺すことを宣言する。
航一はポップを守るため、これまで出会ってきた仲間たちの協力を得て、ザ・クロウラーとして最後の戦いに挑む。
そしてその中で航一の異常性が発露していく。
過去数年間の非合法自警活動で培ってきた経験、個性の熟練度から、オクロックⅡの攻撃を尽く回避。
さらに常に説得から入る無防備な性格のせいで先制攻撃を受け続けた結果、相手の攻撃を無意識のうちに即時回避する驚異的な反射神経を獲得していた事が明らかになる。
負傷し骨折しても、全身を斥力で包み込んでギプスとする事で平然と動くようにもなる等、その個性もより拡張。
だが、逃げ回っているばかりではどうしようもない。
やがて個性によって巨大なエネルギーの塊と化したオクロックⅡの攻撃を受けた航一は、自分の時間稼ぎによってプロヒーローが出動するだろうし、ポップもどうにか守れただろうことを確信。
ここまでよく頑張ったと、そう言って道連れにされるのを受け入れようとする、が……。
「悪党を殴るとスカッとするぞ!!!!」
ザ・クロウラー KNUCKLE STYLE
巨大なエネルギー体と化したNo.6と戦ううちに徐々に不利になっていく中、上記の師の言葉、師の姿から着想を得て発現、習得したスタイル。これまで手足等に一つづつ展開していた力場を、小型化(或いは凝縮)し拳頭に4つ、メリケンサックのように並列展開する。拳打のモーションから強烈な空気砲(斥力による衝撃波?)を放つ。その威力は巨大エネルギー化したNo.6の体の一部を消し去る程。
航一本人も威力を見て「これは絶対だめなやつ」と認識しており、発現当初は圧倒的劣勢における起死回生の手段であるにもかかわらずNo.6に対して使用する事を大いに躊躇っていた。
師匠の薫陶を受け、街の一角を吹き飛ばす程に至った自身の全力空気砲をオクロックⅡに叩き込み、遂に彼を倒しきり何とか生き残った航一。
それはかの巨悪をして、特別変異型の強力な"個性"、相当な戦闘力と言わしめ、更にそれが特別な生い立ちや境遇・才能に由来せず、今の超人社会の誰にでも至り得るという事実は、彼の計画を変更させる程の影響をもたらす事になる。
決戦後はヴィジランテとしての大規模な戦闘行為が原因で逮捕されかけるが、キャプテン・セレブリティを連れて来た真の取りなしで、「ずっと前から彼のサイドキックの一員だった」という建前にされる形で救われ、"本物のヒーロー"として共に渡米することになる。
かくして、地を這う苦労人は"空を駆ける英雄"となったのだった。
セレブリティ同様、悪気のない失言だらけなへっぽこヒーローという、彼らしいオチと共に。
本編にて
424話にて彼と思わしきヒーローの姿が登場している。