概要
中国にて伝承される猿の悪魔。
雄だけの単性社会を営んでおり、繁殖期になると人間の女性を拐い、被害者が孕むまで行為に耽る。
被害女性が不運(幸運?)にも妊娠すると、攫猿は無事に出産を終えるまで群れで伴侶を守るのだが、出産を終えると不可解な行動を採る。
それは産まれた子供を母親と共に人里に解放するのだが、その理由に関する伝承は残念だが存在しない。
伝承
「玃猿」の読み方は“かくえん/ジエユァン/チュエユェン(Jueyuan)”で、「玃」の字は常用漢字では無いため、pixivのタグを含めた日本の創作や書籍では「カク猿」など片仮名や平仮名混じりで表記されることがある。
なお上古中国語ではクヮッグヮン(Kwaggwan, kʷaɡɢʷan)と呼ぶ。
中国の『本草綱目』によると猴(猿)に似るがそれよりも大きなものであるとされ、『抱朴子』には800年生きた獼猴(アカゲザル)が猨(類人猿)となり、さらに500年生きたものが変化したものであると記述される。
『捜神記』『博物志』では猳国(カコク/チアクオ/Jiaguo)や馬化(バカ/マーホワ/Mahua)とも呼ばれ、蜀の西南の山中に棲んでおり、猿に似るが青黒い毛色で身の丈は7尺(約1.6m)、人と同じように歩くという。
匂いで女性を見分けて住処に攫い、自らの子を産むまでは人里には返さず、子を産まない者は10年もすると身も心も同化してしまうとされる。
産まれた子供は人とほとんど変わらず、人里に解放された女性たちはしっかりと子育てしないと不思議な力で死ぬ事になるために、蜀の西南地方では女性が必死に子供を育てる様子が見られたという。
なお、玃猿の子は父親の姓がないために全てが「楊」と名乗るとされ、蜀に住むこの姓の者はこの妖怪の子孫なのであるといわれる。
その他玃(カク/チュエ/Jue)、猳玃(カカク/チアチュエ/Jiajue)、玃父(カクフ/チュエフー/Juefu)とも表記され、未確認生物である「野人」とも同一視される。
日本では覚や飛騨の黒ん坊と同一視され、「やまこ」と呼ばれている。
綢(ちゅう、しゅう)
攫猿と同様に中国にて伝承される驢馬ほどの大きさの猿の悪魔。
『捜神記』によると、こちらは西方において雌による単性社会を営んでおり、繁殖期になると人間の男性を拐い、繁殖場所である墓地で自らが孕むまで行為に耽る。
妊娠から出産の期間は人間と同じ約10ヶ月らしく、その間の綢は被害男性と共に群れで暮らしている。
尚、被害男性の末路に関する伝承はほぼ存在しない。
創作では
詳細は →カク猿(魔物娘図鑑)
- 女神転生シリーズ
伝承の悪魔が多数登場する女神転生シリーズの派生作品『ソウルハッカーズ』にて初登場。
種族は『妖獣』で見た目は『人間の頭髪そのものの鬣に、どこか京劇の化粧めいた紋様のある顔面をした紫の体毛の猿』である。
物理技を得意とする素早さや攻撃力が高いイメージのダーク悪魔として、『ストレンジジャーニー』や『真・女神転生Ⅳ』などの2D戦闘作品に登場している。
余談
ホビージャパンから出版された書籍『萌える!淫魔事典』にて “何故、雌の綢と雄の攫猿が互いに繁殖しようと考えないのか?(要約)” とツッコまれている。