概要
もとは中国で作られた『盂蘭盆経』に基づき、苦しんでいる亡者を救うために行われていた仏事。7月15日に行われていた。それが日本に伝わって、初秋の魂祭りと混ざり合い、祖先の霊を供養する仏事となった。
お盆の頁もあわせて参照のこと。
起源となったエピソード
『盂蘭盆経』によると、釈迦の弟子の一人目連が自身を産み死別した母に恩返しをしようと神通力で世界を見た。すると母が餓鬼に転生していた事が判明する。食べ物がとれず骨が浮き出た姿になった母に対し、鉢に飯をついで食べてもらおうとしたが、口に運ぼうとした途端に焼けた炭になってしまう。
既に阿羅漢として悟っていた目連だったが、この事態に大声をあげて取り乱してしまう。そんな彼に釈迦は過去の罪によって母親はいまその境涯に居るのであって、目連の力ではどうにもならないと言う。
そして様々な用具とお供え物を用意して行う盂蘭盆の儀礼について教示する。これを行った事で目連の母は餓鬼の身を脱する事ができた。
『盂蘭盆経』はインド以外の地で成立したいわゆる「偽経」にカテゴライズされる文献だが、上座部仏教に伝わるパーリ三経に収録された『餓鬼事経』にも骨子の似たエピソード(舎利弗母餓鬼事)が記されている。
こちらでは釈迦の別の弟子である舎利弗が、四つ前の過去生の時の母親が餓鬼になっていた事を釈迦の口から伝えられる。
ここでは母親の悪行が具体的に書かれており、バラモンが沙門や貧しい人々に衣食住を限りなく提供していたが、彼女はそうせず貧者や旅人をひどい言葉でなじった。
そうして業の力で転生した彼女は、舎利弗を守護する天人にお願いをし、そのツテで過去生での息子と再会、彼に対し自分を指定して布施をしてほしい、そうすれば膿や血を喰わねばならない餓鬼の境涯を抜け出せる、と言う。
これを聞いた彼は目連を含む三人の長老と相談、仏教徒であるビンビサーラ王に事情を説明して協力をとりつけ、過去生での舎利弗の母を救うための儀礼への全面協力をとりつける。
四方の比丘サンガ(修行者の集団)に布施する儀礼が行われ、指定される事でその効果を受ける形となった彼女は餓鬼の身を脱し、天人へと転生した。
日本の盂蘭盆会
必ずしも定まったものでないが、全国に比較的広まっている風習として、迎え火・送り火をたき、精霊棚に食べ物を供え、仏僧に棚経(精霊棚で読むお経)を読んでもらう事が多い。
現在、一般には中暦に合わせて8月13日から15日に行われるが、7月に行う地域も多い。この差は多摩丘陵等を始めとした農村では7月が農繁期に当たるためである関係で前述地域を除く首都圏や静岡県、北海道南部、石川県と言った新暦で盆を祝う場合は7月の連休を盆の休暇扱いする職場も存在する。
盂蘭盆会に相当する他国の祭日
パーリ経典に似た記載があることから、上座部仏教圏にも盂蘭盆会、お盆に相当する祭日が存在し、対応する儀礼が執り行われる。
太陰暦の10月における満月の日から15日間行われるカンボジアの「ボン・プチュン・バン」、ラオスにおいて旧暦の9月の新月に執り行う「ワン・ブン・ホー・カオ・パダップ・ディン」、旧暦の10月の満月の「ワン・ブン・ホー・カオ・サラーク」、タイ王国南部で旧暦10月に行われる「十月祭(太陰月祭)」が該当する。この地に限らず同時期のタイ全土にて祖先の霊を慰める祭りが行われる。
語源
盂蘭盆は、サンスクリット語の「ウランバナ(ullambana)」の音写語。これは倒懸(さかさづり)という意味である。
関連画像
別名・表記揺れ
盂蘭盆 盆会 初盆 新盆 旧盆 精霊会 魂祭 / 魂祭り 歓喜会
お盆 … 他の意味でも使用されているタグ