概要
紫が『東方憑依華』に登場した際のものである。
『憑依華』での登場は弾幕アクション作品としては『東方緋想天』以来、STG作品も含めた東方Projectのゲーム作品全体としては『弾幕アマノジャク』以来の登場となる。
本二つ名はゲーム中では他キャラクターにはない特殊な表記をもち、「裏」と「表」の語を境界にカラーが異なるものとなっている。前半の「神出鬼没で裏-」の部分は他キャラクターの表示同様黒色のフォントカラーであるが、後半の「-表のある妖怪」の部分は紫色の系統のフォントカラーとなっている。
二つ名を構成する十二語のカラーが中央を境界に、前半六語と後半六語で分かれている。
英語表記では先述の通り「 An elusive and two-faced Youkai 」。
こちらでも中央の節を境にフォントカラーが変更されており、「 and 」までが黒、「 two-faced 」からが紫系統のカラーとなっている。
『憑依華』の紫
『憑依華』作中での初登場は、博麗霊夢&茨木華扇ルート最終話である。
霊夢が華扇と共に異変調査に乗り出し完全憑依の実態と広まりを目にしてから日の落ちた博麗神社へと戻ってきたところに、空間を割り開いて紫が現れる。
霊夢は紫の出現に異変への関与を疑うも紫はこれを否定し、さらに「 強制的に身体を乗っ取れるようにする 」完全憑依について「 悪魔の所業 」、さらには「 邪道の極み 」として不快感を示している。そして真相に至らない霊夢を弾幕戦をもって教育する。
「 憑坐は悪意で学べ! 弾幕馬鹿達よ! 」(紫、『憑依華』※)
※「 憑坐 」には「 よりまし 」、「 悪意 」には「 だんまく 」のルビ
霊夢&華扇の物語は『憑依華』の導入であり、紫はこれ以後、霊夢たちだけでなく他の様々な面々の完全憑依コンビの前に現れ、紫独自の思惑もあって「強すぎる前座」として立ちはだかることとなる。このときの紫は「 わざと負けるつもり 」ともしている。
完全憑依異変のストーリーは基本的に二名(あるいは三名)コンビで物語が進むが、CPU時の紫は誰ともコンビを組まず単独でこれに臨んでいる。プレイアブルの時にはスペルカードでその力を行使することもできる八雲藍や橙ともコンビを組むこともなく、CPU時は藍も橙も姿を見せないため、本当に一人である可能性もある。
これも紫なりの意図があってのことであるが、紫が単独であることについて古明地こいしは「 友達がいないからでしょ? せつなーい 」としている。無意識怖い。
飄々とした様子、どこか喰えない様子、心の内がどこまでも読み取れない様子は本作でも見られており、時には普段は他人を化かす二ッ岩マミゾウをからかってみたりとお茶目な一面も見せている。
「 二対一なんて卑怯だわー 」(紫、マミゾウ&藤原妹紅に対して、『憑依華』)
本作でも紫は悪い方向にも一目置かれているようで、先述のように霊夢は紫の出現を見て完全憑依異変などということを成すのは紫の仕業だろうと思いこんだり、霧雨魔理沙も紫の登場に事の真相に相当近づいていることを実感したりしている。藤原妹紅からの評価も辛辣。聖白蓮には信頼のおけない相手、豊聡耳神子には心底失望したとされるなど、敬遠されたり拒否されたりしている。
一方でその心の内は完全憑依異変打破への清廉で真摯な想いの一念であり、人々からの怒りや忌避を受けながらもそういった人々が集めた情報を確かに得ながら事の真相へと紫なりに近づいていくこととなる。
そしてついに得た勝利の方法を手に、霊夢と共にかつては攻めあぐねていた異変の首謀者へと挑むのである。
「 そいつが出てきたら
必ず異変は解決するのですから 」(紫、霊夢について。女苑らに対して。『憑依華』)
各ストーリーではプレイアブルの面々を通して完全憑依の性質が徐々に明らかになるが、それを集約するのは「 前座 」として登場する紫であり、紫でなければ通常果たし得ない出会いを通して得ることとなる夢の世界にみる異変の影響の情報などもあってゲーム中の登場こそNPCながら実質的には主人公の一人とも言える中核を成す存在である。
「 歓喜せよ!
人生を変える スペシャルライブの始まりだ! 」
(紫、女苑らに敗北を以て真の「幸福」への道を拓かせるとして。『憑依華』)
この他紫を通しては一度だけ作中で「スレイブ」に「 奴隷 」の語があてられることがある。これは先述のように完全憑依に従属せざるを得なかった幻想郷の面々が絶対的な敗北を味わわされた完全憑依から解放される第一歩をついに見出した紫の言葉であり、紫にとっても雌伏の時の終わりを宣言するものである。
「 完全憑依は見切ったわ! もう奴隷 (※) は自由だ! 」
※「 奴隷 」に「 スレイブ 」のルビ
異変に立ち向かう紫という以外で紫に特徴的な場面としては比那名居天子との再会がある。
天子とは『緋想天』以来因縁を持ち、本作でも紫と天子の対峙が見られるものとなっている。
再会のシーンが紫にとって大事なタイミングであったこともあって本作でも紫は天子を快く思わず、他方の天子はおそらくは『緋想天』時のリベンジを果たす機会が巡ったとして再会に心を躍らせている。本作の紫はなかなかに苦労人であるが、異変に向かう苦労ばかりでなく困ったタイミングで困った相手に絡まれるといった苦労も得ることとなっている。
アクション面や物語周辺では
アクションでは本作でも空間に境界を開いて弾幕を発射したり標識や電車を飛び出させたりと変幻自在な応用を行う。さらに空間を介して本来なら届かないところにも手足を伸ばしたり上半身と下半身を分離させて襲い掛かったりとそのトリッキーな様はさらに発展している。
本作の紫にも見られる境界を操る戦法は「 反則技の数々 」ともされ、「 スキマの向こう 」から何が飛び出すか分からない「 予測不能 」なアクションともされている(黄昏フロンティア、『東方憑依華』公式ホームページ)。
本作で紫が関わったオカルトは「テケテケ」(ZUN、『東方外來韋編』)。
なお、本作の紫が開く境界の一部は、『憑依華』に先立つ『深秘録』やPS4版『深秘録』でも霊夢が同種の方法で空間を操る様子が描かれており、例えば<結界「至る所の青山」>では紫と同様に開いた境界から複数の卒塔婆を飛ばし、<幻想「バウンダリークラック」>(PS4版『深秘録』)などでは境界に潜みつつ攻撃を行うといった紫にも通じるスタイルを披露している。
ZUNによれば『憑依華』の紫は「 偉そうにしてるけど結局自分もどうしていいいかわからない 」こともあって「 珍しく凄い頑張ってる 」。作中でも語られる紫の手探りの様は「 今回のテーマ 」でもある(ZUN、『外來韋編』)。
「神出鬼没の妖怪」
紫の二つ名において、本二つ名の構成と共通する要素をもつ二つ名として、『東方茨歌仙』登場時の二つ名である「神出鬼没の妖怪」がある。
「神出鬼没」の語は稗田阿求を通しても紫を象徴するものとして登場しており、(「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)、紫は二つ名の部分でも実際の作中でも「神出鬼没」の存在として語られる存在となっている。
一方『憑依華』にも近い時間としては『東方鈴奈庵』では紫は「幻想郷のゲートキーパー」との二つ名でも語られており、単なる「神出鬼没」の存在ではなくその心の内や行動の背後には紫なりの幻想郷に対する想いや姿勢がある様子も見て取ることが出来る。
『憑依華』での「裏表」の理由にそういった紫の想いの存在を感じるとき、紫のストーリーはまた違ったものにも映ることだろう。
紫に見る『神出鬼没』の語を『憑依華』と『茨歌仙』で共有する構図は霊夢についても見られており、霊夢の場合は「自由奔放」の語が両作品で共通している。霊夢の二つ名は『憑依華』では「自由奔放で無計画な巫女」で、『茨歌仙』では「自由奔放な人間」。
服装・髪型
紫を含めた本作の立ち絵デザインは『東方深秘録』に続いて春河もえによる。
春河デザインによる紫は『憑依華』に先立って『鈴奈庵』でみられている(「鈴奈庵紫」記事も参照)。ただし『鈴奈庵』時とは異なる本作ならではのアレンジもみられている。
『憑依華』での紫の服装は『東方永夜抄』や『緋想天』などの登場時にみる中華風の前掛けと白のフリルドレスによるもの。『憑依華』でのデザインではこの服装パターンをベースに、袖に独自の意匠があるなどの新しい要素が見られている。これは袖先に幅のある黒の帯状のラインとその上に白の線による中華風の模様が入ったもの。
髪型については『永夜抄』時のものに近く『緋想天』時のような後ろ髪をアップにして帽子の中にまとめたものではない。
ドットデザインでは開いた境界に腰掛けた状態で移動する紫が弾幕アクション作品としても表現されている。本作では腰かけた状態ばかりではなく寝そべって移動したりとこちらも応用が広がっている。
『憑依華』以前に紫が登場した弾幕アクション作品である『緋想天』ではデフォルト位置は地面に立つ接地のものであったが『東方心綺楼』以後の接地がない常時空中戦を基本とするシステムを受けた『憑依華』では、紫もまた紫らしい形で空中に浮かび、移動するものとなっている。
また『緋想天』同様本作でも「境界を開く」シーンそのものもドットで表現されており、例えば出現時や戦闘開始準備時などにそれをみることができる。
海原海豚によれば紫のグラフィックは「 担当の人の渾身の作 」(『外來韋編』)。
これに関連してはpixivにも氏による紫と天子のバトルシーンを描いたうごイラも発表されている。
スペルカード
紫はプレイアブル時の霊夢を除いて他の誰ともコンビを組むことがないため、最終節でのみプレイアブルとなる依神女苑と依神紫苑のコンビを除いた他キャラクターに比べるとストーリー中で登場するスペルカードのパターンが少ない。
PC時
名称 | cost | 備考 |
---|---|---|
「無人廃線車両爆弾」 | 1500 | |
式神「八雲藍&橙」 | 800 | |
境界「溢れ出る漂流物」 | 1100 | |
*その綺麗な足をくれ!* | ラストワード |
NPC時
名称 | 完全憑依コンビの相手 | 備考 |
---|---|---|
「憑坐の憂鬱」 | (なし) | 「憑坐」には「 マスター 」のルビ |
「完全憑依と夢想封印」 | 霊夢(スレイブ) | |
「憑坐と神霊の境界」 | 霊夢(スレイブ) | 「憑坐」には「 マスター 」、「神霊」には「 スレイブ 」のルビ |
紫のスペルカード全般については「八雲紫」記事を参考。
他作品での活動と『憑依華』の紫
先述の通り紫の『憑依華』での登場は弾幕アクション作品としては『緋想天』(またはストーリー本編の登場ではないものの『東方非想天則』)以来の登場であり、STG作品としても『弾幕アマノジャク』から久しぶりの登場となる。
この他の一部のゲーム作品でも顔を出すことはあったものの本編中以外の登場であるなど周辺の活動にとどまっていた。紫の活動は書籍作品で語られることがあり、例えば『東方茨歌仙』では外の世界との関わりを通して幻想郷に関与しており、『鈴奈庵』では人間と妖怪の境界を踏み越えようとする者に接触し霊夢も介して導くなどした。
文々春新報の取材(『東方文果真報』)に対し霊夢と今の幻想郷を静かに肯定するなどの様子には『憑依華』で唯一完全憑依の紫がコンビを組んだ霊夢への眼差しも見ることが出来る。
また『茨歌仙』で本人不在の場所ながらその来訪のために紫も力を注いでいた宇佐見菫子とは『憑依華』でついに対面の機会を得ることとなり、同じ道を行くものであると認めた華扇とも弾幕を初めて明確に弾幕を交わす機会ともなるなど各書籍作品での紫の歩みは『憑依華』にも結ばれている。
特に華扇は『憑依華』最初のストーリーでは先述の通り霊夢とコンビを組んでおり、その後霊夢(NPC時)は数名の他の面々を経て最後には紫とのコンビで異変解決に臨むなど霊夢が慣れないとこぼしていたスレイブ側での完全憑依を鍛えた華扇と、後には戦略上スレイブ側での霊夢を必要とした紫という道の交わりもまた象徴的である。
二つ名の組み合わせ
『憑依華』の自由対戦モードでは任意の完全憑依のコンビを設定することが出来、その際にはコンビのメンバーとなるキャラクターの『憑依華』作中の二つ名をベースにコンビごとに個別の二つ名が設定されるというシステムがある。
マスターとスレイブごとに参照される二つ名の節も異なり、マスターの場合は前段の節、スレイブの場合は後段の節が二つ名に組み込まれる。
自由対戦モードにおける、紫に関連する完全憑依コンビの二つ名は次の通り。
紫がマスターの場合での完全憑依コンビの二つ名
スレイブ側キャラクター | 日本語表記 | 英語表記 |
---|---|---|
博麗霊夢 | 神出鬼没で無計画な二人 | An elusive & unplanned duo |
霧雨魔理沙 | 神出鬼没で星好きな二人 | An elusive & ster-loving duo |
雲居一輪&雲山 | 神出鬼没で巨体怪力な三人 | An elusive & super-strong trio |
物部布都 | 神出鬼没でお皿を割る二人 | An elusive & dish throwing duo |
河城にとり | 神出鬼没で守銭奴の二人 | An elusive & miser duo |
聖白蓮 | 神出鬼没で悟りを開く二人 | An elusive & enlightened duo |
豊聡耳神子 | 神出鬼没で人の為に動く二人 | An elusive & serving duo |
秦こころ | 神出鬼没で感情的な二人 | An elusive & emotional duo |
古明地こいし | 神出鬼没で心を閉ざした二人 | An elusive & guarded duo |
茨木華扇 | 神出鬼没で動物好きな二人 | An elusive & animal-loving duo |
藤原妹紅 | 神出鬼没で不死身の二人 | An elusive & immortal duo |
少名針妙丸 | 神出鬼没でお椀に乗る二人 | An elusive & bowl riding duo |
二ッ岩マミゾウ | 神出鬼没で喰えない二人 | An elusive & cunning duo |
鈴仙・優曇華院・イナバ | 神出鬼没で波長の合わない二人 | An elusive & incompatible duo |
宇佐見菫子 | 神出鬼没で扱いに困る二人 | An elusive & troublesome |
ドレミー・スイート | 夢を見せる二人 | A dream revealing duo |
比那名居天子 | 神出鬼没で浮世離れした二人 | An elusive & unwordly duo |
依神女苑&紫苑 | 神出鬼没で不幸をもたらす三人 | An elusive & misfortunate trio |
紫がスレイブの場合での完全憑依コンビの二つ名
マスター側のキャラクター | 日本語表記 | 英語表記 |
---|---|---|
博麗霊夢 | 自由奔放で裏表のある二人 | A carefree & two-faced duo |
霧雨魔理沙 | 高火力で裏表のある二人 | A fire yieding & two-faced duo |
雲居一輪&雲山 | 頑固で裏表のある三人 | A stubborn& two-faced trio |
物部布都 | 風水で裏表のある二人 | A feng shui & two-faced duo |
河城にとり | 商売上手で裏表のある二人 | A business minded & two-faced duo |
聖白蓮 | 超人的で裏表のある二人 | A superhuman & two-faced duo |
豊聡耳神子 | 全能で裏表のある二人 | An almighty & two-faced duo |
秦こころ | 能面で裏表のある二人 | An expressionless & two-faced duo |
古明地こいし | 意図せず裏表のある二人 | An aimless & two-faced duo |
茨木華扇 | 神仙思想で裏表のある二人 | A Taoist & two-faced duo |
藤原妹紅 | 自暴自棄で裏表のある二人 | A desperate & two-faced duo |
少名針妙丸 | お伽噺的で裏表のある二人 | A mythical & two-faced duo |
二ッ岩マミゾウ | 変幻自在で裏表のある二人 | A surreal & two-faced duo |
鈴仙・優曇華院・イナバ | 月面思考で裏表のある二人 | A lunatic & two-faced duo |
宇佐見菫子 | 神秘主義で裏表のある二人 | A mystic & two-faced duo |
ドレミー・スイート | 夢を見せる二人 | A dream revealing duo |
比那名居天子 | 緋想的で裏表のある二人 | A scarlet & two-faced duo |
依神女苑&紫苑 | 最凶最悪で裏表のある三人 | A cursed and evil & two-faced trio |