概要
てんとう虫コミックス27巻及び、藤子・F・不二雄大全集19巻に収録「かがみのない世界」に登場。
内面に鏡が貼られた大きな箱で、鏡がなくなった世界で人間が初めてそれを見た場合どういう反応をするのか実験するための道具。
ストーリー
のび太は鏡で自分の顔を見ながら、「鏡を見る度に嫌になっちゃう」と言いどうして自分の顔は漫画みたいなのかドラえもんに尋ねた。すると「人間の値打ちは顔じゃない。顔だ!力だ!」と励ましてくれたが、思い当たる節がなかったのび太は元気をなくして部屋へと戻って行き、寝そべりながら「鏡なんかあるから悪いんだ」とつぶやき始めた。
そして誰も自分の顔を知らなければ、ひけめを感じる者もうぬぼれる者もいないはずだと主張したため、ドラえもんは試しに「もしもボックス」を取りだし、のび太はこれに「誰も自分の顔を見たことがなかったら」と注文。1階へと降りてみるとママが鏡がないまま化粧をしていて、苦労していたためドラえもんは「もっと右へぐーっと」と、のび太は「眉をもう少し濃く描かなきゃ」とアドバイスしたが、同じく鏡がなく髭を剃るのに苦労してたパパと、互いにその顔を見てびっくりし合っていた。
一方ドラえもん達はガラスにも顔が映らないことを確かめると外出し、カメラも存在が消えていたため女子達がスネ夫に似顔絵を描いてほしいと頼みに来ていて、スネ夫は少女漫画のような美女に描いてあげ、その後しずかも頼みに来ていた。すっかり人気者なスネ夫にのび太は面白くなかったが、一方空地ではジャイアンが自分の顔を手で撫でまわし、男らしい立派なは顔、高い鼻、引き締まった唇と取れ惚れしていて、終いにはタレントになるとまで言い出していた。
そこでのび太はジャイアンに鏡を見せることを提案し、鏡を見たことない人間が初めて鏡を見たらどうするか実験してみようと言うと、ドラえもんは面白いと賛成し「箱入りかがみ」を取りだした。そしてこの中に入ったジャイアンは、鏡に映った自分の姿をゴリラみたいなひどい顔と大笑いし、映った方の自分が大笑いすると怒って鏡に殴り勝ったのでドラえもんとのび太はこれを見て大笑い。
するとそこにスネ夫としずかもやって来て、スネ夫はジャイアンに言われるまま鏡を見たがそこに映っていたのはずるそうな感じの悪い奴で、ゴリラかキツネでジャイアンと口論になったが、次に箱に入ったしずかが見たのは可愛い女の子だったため、3人で論争になり、ドラえもんとのび太は更に大笑い。だがそこに通りかかった男性が、鏡に映った自分を10年前に家出した双子の兄と勘違いし、硝子の檻に閉じ込められていると思い込み持って行ってしまった。
箱がないことに気付いたドラえもんとのび太は慌ててタケコプターで後を追ったが、その頃男性は交番にいた警官に助けを求めていて、警官も男性に言われて鏡に映った自分をニセ警官だと思い込み、ついには鏡に向けて拳銃を発砲。これを見たドラえもんは慌てて野比家へと引き返し元の世界に戻るよう注文し、これで警官も男性も正気に戻ったが、ドラえもんはのび太と共にそろりその場から去ろうとし「鏡がなくなってもいいことなかったね」と言っていた。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1983年2月11日に、水田版は2007年3月9日及び、2017年11月24日にそれぞれ放送している。
1983年版
- ドラえもんから人間の値打ちは頭や力だと言われ、のび太は勉強机の椅子に体育座りをして「ぼくにはそれもない」とつぶやいていて、「ドラえもんはいいな。その顔だったら諦めがつくもん」とも言っていた。そして寝ころんだ際の台詞は「どうして鏡なんかあるんだろう?」に変更されていた。
- 化粧をしているママへのドラえもんとのび太のアドバイスは、言っている者が逆になっている。
- しずかはスネ夫に似顔絵を頼みに来てはいなかった。
- ジャイアンが目指すと言ったのは俳優で、アランドロンを目標にしていた。そしてこれを小ばかにしたことで「これは世にも珍しい漫画みたいな顔した2人だな。世の中には不幸な人間もいるもんだ」と言われ腹がったので、実際に鏡を見せることにした。
- 警官は眼鏡をかけておらず、割れた鏡を見て「罰金者だな」と言っていた。
- ラストでドラえもんとのび太は物陰に隠れていて、原作のラストの台詞はのび太が言っており、これに続けてドラえもんが「普通のままが一番いいのさ」とばてながら言っていた。
- 本編終了後のショートアニメは、ドラえもんが鏡の前で立ち止まると、鏡に映った方が一旦通り過ぎたが慌てて戻っていて同じポーズをし、本物が呆れた顔をするというものだった。
2007年版
- サブタイトルには「お前は誰だ!俺だ!」の煽り文句が追加されていた。
- のび太は鏡を見ながら少し手で顔引っ張らりしていて、ドラえもんは単に「人間の値打ちは中身だ」としか言っていなかった。だがのび太は0点の答案やジャイアンに踏みつけられている場面を想像してしまった。
- のび太がした、もしもボックスへの注文には「鏡がなかったら」も追加されていたので、野比家の鏡も消滅し、道にできた水たまりや町の窓ガラスにも人物は映っていなかった。そしてスネ夫は自分のニュアンスを言いながら散髪をしてもらっていて、ガードミラーも単に注意の文字や絵が書かれた程度だったため交通事故も起こりそうになっていた。
- 始めに女子2人の似顔絵を描いていたのは出木杉で、非常に写実的に描いたものの彼女らが理想としている顔ではなかったため、文句を言ってスネ夫の元へ行ってしまった。そしてスネ夫は家の前には女子の大行列ができていて、しずかもこれに並びに来たがのび太が顔の特徴を言ってあげ喜んでいたが、自ら自身の顔のと特徴を漫画みたいと言い当てたのび太は、彼女にもそう思われていたため泣き始めてしまった。
- のび太は皆に箱入り鏡に映ったのが自分達の本当の姿であると明かしていて、これにジャイアンは怒り始めてのび太とドラえもんを追いかけ、しずかはそれを止めに入り、スネ夫は自分の顔に惚れ惚れしていた。そしてドラえもんとのび太は最終的には土管の中に押し込められてしまったが、この騒動中に男性がこの鏡をもって行ってしまった。
- 警官は弾丸で割れた鏡を見て、向こう側の警官が増えたと思っていた。
- ラストで気まずくなったドラえもんとのび太はその場から走って逃げており、この後のび太から皆の顔が自分と同じになった世界を提案されたが、それを想像したところ恐ろしかったので「それだけはやめてー!」と叫び飛び跳ねていた。
2017年版
- ママは鏡がなくなった三面鏡に化粧をした女性の絵を貼って参考にしていた。ちなみにママの化粧は、まつ毛も太く長くなっていた。
- 外へ出たドラえもんとのび太は、自分の服装が似合っているかどうかを確かめ合う女性も目撃していて、この後写真屋が似顔絵屋に変化しているのも目撃している。ちなみにスネ夫に似顔絵を頼みに来た女子の片方は、口の尖りが小さくなっていた。
- ジャイアンが目指したのは二枚目スターだった。
- スネ夫が鏡で見た自身の特徴には、「前髪がツンツンとして全く嫌みな奴」も追加されていた。
- 男性が鏡を見て勘違いした際の台詞には、「ちょっと年を取ったようだけど」も追加されていた。
- 警官が鏡を撃った時、2007年版の時のようにバックミラーなどが見えないため交通渋滞が発生してしまい、車から出て来た女性の化粧がひどかったため、ドラえもんはポケットからもしもボックスを取りだし慌てて元の世界に戻した。
- ラストでのび太は割れた鏡の破片を覗いて「こんな顔でも見られるだけましってことか」と思い、ドラえもんが「そうそう、こんな顔でもね」と言ったため、ドラえもんの顔も引っ張って遊び、ラストでは2人そろって大笑いし帰って行った。