概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。初登場エピソードはTC5巻収録「ひらりマント」。
いわゆる「闘牛士のマント」を模したひみつ道具。こちらへ向かってくる物体を遮るように構え、マントを「ひらり」と振りかざすことで、物体の軌道を変えてこちらには当たらないようにする防具(参考として、アニメ版『ドラえもん』公式サイト「ひみつ道具カタログ」では「あらゆる攻撃を回避出来る」と明言されている)。
その性能は凄まじく、殴りかかって来た相手による物理攻撃はもちろんのこと、レーザー等の光学兵器、原理が不明な魔法、実体を持たない衝撃波、マントの大きさを超える隕石(正確に言えば大長編版『魔界大冒険』にて、迫り来る隕石の大群をこの道具で防いでいるが、明確に隕石を跳ね返す描写はない)等、体積や質量、物理法則を無視して、どんな攻撃や物体でも跳ね返すことが出来る。ただし『宇宙漂流記』では航宇宙艦ガイアの軌道を変える際「この大きさじゃ足りない!」とドラえもんが悲鳴をあげており、制限自体はある模様。ちなみにその直後のび太に「ビッグライトがあるじゃないか!」と突っ込まれている。
大長編版『魔界大冒険』の作中におけるドラえもんの解説によると、電磁気の反発を利用した道具であるらしい(作中で説明しかけるが途中でやめてしまう)。
更に、跳ね返したい攻撃や物体をマントに触れさせる必要はなく、攻撃がこちらに向かって来る途中でマントを振っても効果を発揮する。
実際に上記の初登場エピソードでは、のび太のパパが家の中へ入ろうとした際、玄関の前にひらりマントが落ちていたのだが、作中の描写を見る限りパパとマントが接触していなかったにもかかわらず、彼はマントの効果で身体が弾かれてしまっている。
それだけでなく大長編版『恐竜』及び大長編版『宇宙開拓史』でも、ドラえもんがひらりマントを使用して敵の光線銃攻撃を跳ね返しているが、作中での描写を見る限りマントに光線が命中していない状態でも問題なく跳ね返している(『恐竜』にて熱線を発射する銃を使用した黒マスクは2314年に住むドルマンスタンと手を組んでいる未来人なのだが、ひらりマントは22世紀の技術で開発されたにもかかわらず、24世紀の技術で開発された武器による攻撃を跳ね返したことになる)。
その一方、上記の初登場エピソードの作中では、雨が降って来た際にドラえもんとのび太がひらりマントを使用して雨粒を回避したのだが、家に着いた時にはマントが濡れてしまっていた。
反対に、マントを床に置く等して静止させ、そこに向かって突き進んで行ったとしても自分が跳ね返されてしまう。実際に上記の初登場エピソードでは、のび太のパパはこの仕様が原因で家に入ることが出来なかった。
派生作品
原作版以外の派生作品では、ひらりマントの性能が強化されている場合と、原作版より弱体化している場合がある。ここではその一例を記述する。
- 前者の例
2009年版「のび左エ門の秘宝」では、立ち止まっている敵に対しドラえもんがひらりマントを振ることで敵を後方へ吹き飛ばしており、静止しているものに対しても効果を発揮する様子が描かれている。
水田わさび版アニメ「ぼく、桃太郎のなんなのさ2008」では、敵が放った矢を跳ね返す為にドラえもんとのび太がひらりマントを使用した際、矢とマントの距離が明らかに離れており、マントが矢に触れていなかったにもかかわらず、マントを軽く振るだけで矢が自動的に敵がいる方向へUターンしている。
同アニメ「子犬イチの国 ~キボウ編~」でも、降り注ぐ火山弾から身を守る為にドラえもんがひらりマントを使用したのだが、突然の火山弾に慌てたドラえもんはマントを無我夢中で振り回しており、マントが火山弾に触れていなかったにもかかわらず、火山弾はマントの効果で別の方向へ吹っ飛んでいった。
大山のぶ代版アニメ「謎の四次元カバン」では、ジャイアンが放った「空気砲」の弾をひらりマントで跳ね返している他、2008年版「スネ夫の無敵砲台」では「無敵砲台」の砲撃を、2009年版「未来世界の怪人」では時間犯罪者による光線銃攻撃をひらりマントで跳ね返しており、これらの作品では他のひみつ道具による攻撃を跳ね返す様子が描かれている。
映画版『魔界大冒険』では、迫り来る隕石をひらりマントで跳ね返している。また『宇宙漂流記』では、複数の「ビッグライト」を使用してひらりマントを巨大化させ、宇宙船の軌道を変えて天体との衝突を防ぐ様子が描かれている。
一方『新・宇宙開拓史』では、マントの大きさを遥かに超える大型宇宙船が迫って来た際、マントを巨大化させることなくそのまま跳ね返す様子が描かれている。
また『宝島』では、ドラえもんが生まれた22世紀よりも未来の技術で開発されたロボットによる光線銃攻撃をひらりマントで回避する様子が描かれている。
『怪盗ドラパン謎の挑戦状!』では、悪役が放ったドリル型の巨大ミサイルを跳ね返しており、『ドキドキ機関車大爆走!』では、マントの大きさを遥かに超える巨大岩石を跳ね返している。
『ザ・ドラえもんズ百科』収録「宇宙の旅」では、自分達が乗っている宇宙船が小惑星と衝突しそうになった際、宇宙船の外に出たエル・マタドーラがこの道具を使用し、小惑星の大群を跳ね返している。
『ドラえもん』を題材としたゲーム作品『恐竜2006DS』及び『新魔界大冒険DS』ではカードバトルの際、ダメージを無効にするひみつ道具カードとして登場しており、使用すると1ターンだけ相手からの攻撃を全て無効化することが出来る。
- 後者の例
水田版アニメオリジナルエピソード「どら焼きが消えた日」、映画版『海底鬼岩城』、『南極カチコチ大冒険』では耐久限界があり、一定量のダメージを受けるとマントが損傷して使用不能になってしまう様子が描かれている。
また、スピンオフ作品『ドラベース』でも、高速で迫って来るボールをマントで跳ね返そうとした際、逆にマントがビリビリに破れてしまう様子が描かれている(ただし原作版〈短編・大長編〉の作中では、ひらりマントが明確に破損する描写は一切存在しない)。
同じくスピンオフ作品『ザ・ドラえもんズスペシャル』4巻収録「ロストワールド」、『ロボット養成学校編』3巻収録「謎の化石の正体は」及び「こまっている人をさがそう」では、重過ぎるものや大き過ぎるものは跳ね返すことが出来ず、逆に使用者が吹き飛ばされてしまう様子が描かれている(ただし上記の通り『怪盗ドラパン謎の挑戦状!』及び『ドキドキ機関車大爆走!』では巨大なミサイルや岩石を跳ね返しており、『ザ・ドラえもんズ百科』収録「宇宙の旅」及び『新・宇宙開拓史』では小惑星の大群や大型宇宙船を吹き飛ばしているが)。
また、作品によっては使用時に「ひらり!」もしくは「ひらりマント!」と発声することで効果を発揮するかのように描写されていることがある(前者は『怪盗ドラパン謎の挑戦状!』、後者は映画版『海底鬼岩城』及び映画版『翼の勇者たち』等)。
ただし原作版(短編・大長編)の作中では、そのような描写は基本的に存在しない(最も近いケースとして大長編版『日本誕生』の作中にて、ツチダマが放った衝撃波をドラえもんが跳ね返そうとした際に「ヒラリマント!」と道具名を叫びながら使用する描写があるのみであり、上記の初登場エピソード及び大長編版『海底鬼岩城』では無言で使用しても効果を発揮している)。
エル・マタドーラ仕様
ザ・ドラえもんズのエル・マタドーラが使用するバージョン。牛の絵が書かれており、周囲にヒラヒラが付いている。
関連道具
上記の「ひらりマント」以外にも、攻撃を回避・無効化することが出来るひみつ道具は複数存在する。
大きな袋型のひみつ道具。
このカバーの中に入ると、外からの攻撃や衝撃を全て防ぐことが出来る。それだけでなく、カバーの中に入った状態でも自由に動き回ったり、物を掴むことが可能。
カバーは非常に頑丈で、バットで殴られたり土管を投げ付けられる等、カバーの外で何が起こったとしても、中にいる者には一切影響がない。むしろ投げ付けられた土管の方が粉々になってしまう。ドラえもん曰く「何が来ても使用者を傷付けることは出来ない」とのことで、TC11巻収録「ドラえもん大事典」では「原爆が落ちても平気」と説明されている。
参考として『ドラえもんのひみつ道具使い方事典2』では、カバーは「ウルトラスーパーポリマー」、「超硬質ゲル」、「生命維持環境設定シート」の三重構造になっており、ウルトラスーパーポリマーはどんなに強いショックにも耐えられる防御力を誇り(ただし水と空気は遮断しないようになっている)、カバー内は生命維持環境設定シートのお陰で非常に快適であると解説されている。
この中に入ると、外からの攻撃を全て遮断することが出来る。詳細は項目を参照。
- 痛みはね返りミラー
手鏡型のひみつ道具。
これを持っていると、誰かに攻撃されても痛みを一切感じなくなる。それだけでなく、ミラーを持っていた者が本来感じるはずだった痛みを2倍に増幅し、攻撃してきた相手に跳ね返すことが出来る。
ただし、これを持っている者が誰かに攻撃した場合、相手は無傷で自分が2倍の痛みを感じてしまう。
- バリヤーポイント
小さなボール型のひみつ道具。
ドラえもん曰く「警官が使う道具」とのことで、これをズボンのポケット等に入れてスイッチを押すと、自分の周囲に半径2mの見えないバリヤーが張られ、外からの攻撃を全て防いでくれる(作中では攻撃に限らず、雨等の自然現象に対しても効果を発揮している)。
ただし、バリヤーの中に入れたい物がある場合、その名前の頭文字を言えばバリヤーの中に入れるようになる(例えば「ジのつくもの入れ」と言えば、じゃがいもやジャイアン等、名前の頭に「じ」が付く物は一定時間だけバリヤー内に入れるようになる)。
- 四次元若葉マーク
初心者マーク型のひみつ道具。
これを貼った物は四次元空間に入った状態となり、三次元空間に存在する物なら何でもすり抜けてしまうようになる。ただし同じ道具を貼り付けた物同士は衝突してしまう。
- 追い払いごへい
大長編版『ふしぎ風使い』に登場したひみつ道具。
この御幣を振ると、向かって来る攻撃を全て回避することが出来る。それに加えて「ひらりマント」と同様に、跳ね返したい攻撃や物体を御幣に触れさせる必要はなく、攻撃がこちらに向かって来る途中で御幣を振っても効果を発揮する(実際に作中では敵が風の弾を放った際、ドラえもんが御幣を一振りしただけで弾が自動的に敵がいる方向へUターンしている)。