安全カバー
あんぜんかばー
藤子・F・不二雄大全集2巻に収録「世界平和安全協会?」に登場。
大きな透明ポリ袋のような外観の道具で、この中へ入ると、あらゆる衝撃から身を守ることができる。バットで殴られたり、土管を投げつけられたり、原子爆弾を爆発させたとしても中にいる者は無傷でいることができ、逆に投げつけられた土管の方が壊れたりする。
カバー内の者は全身をカバーで覆った状態でも、歩き回ったり手で物をつかんだりできる。カバーで包まれている者を、誰かが無理に攻撃したりつかみかかったりすると、カバーが電気のような衝撃を放って外敵を吹き飛ばしてしまう。
『ドラえもんのひみつ道具使い方事典2』によると、カバーは「ウルトラスーパーポリマー」、「超硬質ゲル」、「生命維持環境設定シート」の三重構造になっており、ウルトラスーパーポリマーはどんなに強いショックにも耐えられる防御力を誇り(ただし水と空気は遮断しないようになっている)、カバー内は生命維持環境設定シートのお陰で非常に快適であると解説されている。
ちなみに下記の1981年版では、ドラえもんは「ミサイルが飛んできても平気」と言っていて、電撃を発したりバウンドしたりする描写は描かれていない。
必死にママにせがるのび太を見てパパがどうしたのか尋ねると、一年分の小遣いを前借りしたいと言っていることをママが説明。どうしてもいるんだと泣いて言うのび太にパパは、だから何に使うのか言うよう言ったが、のび太は「もういいよ!」と走り去って行ってしまった。後を追いかけたドラえもんは、自分にだけでも聞かせて欲しいと言い、これにのび太は喋りかけたもののやっぱり喋れないと走り去って行った。
その後のび太は、安雄やはる夫、しずか、スネ夫らも同じバッジを胸に付けているのを見て、スネ夫から「君もぐずぐずしてると危ないぞ」と言われて震えあがり、この場にやってきたドラえもんがそのバッジが何か尋ねて来ると、皆も慌てて走って行ってしまった。
そこでドラえもんは「探ってやる!」とのび太の後を追って行ったが、ネズミと言われ悲鳴を上げながら逃げ出して行った。その隙にのび太は「クズレ荘」という家に入って行き、この家に設けられた「世界平和安全協会」という部屋を訪ね、そこにいた男子学生2人に半年分の会費を持ってきたが聞かれたが、言葉を濁すと学生2人はのび太の安全を守ってあげられなくなることや、となり町で入会しなかった子供が飛んできたバットに当たって全治3週間の大けがをしたことを話し始めた。
これにのび太が顔を青くしていると、ジャイアンが会費を持って学生2人に歓迎されたが協会のことは秘密にしておくこと、前に先生に告げ口した子供が大きな看板が倒れて全治一ヶ月になったことを言われ、「誰にも言わない」と言って急いで帰って行った。
そして怯えたのび太は自分も入会させて欲しいとお願いし、会費は今日中に渡すと言うことになったがまるで当てがなかったため、空地の土管に座りどこか遠くへ家出しようかと思っていたが、そこへドラえもんが「白状ガス」を吹き付けたためペラペラと本当の事情を説明。これにドラえもんは、そんな奴らに脅されるなんてだらしないと断固戦うよう発破をかけ、それでものび太がまだ弱気な態度だったので「安全カバー」を取りだした。
するとこれに身を包まれたのび太は、ドラえもんが投げた土管に当たってもノーダメージだったため、ドラえもんから言われた通り入会をはっきりと断りに行くことに。その後のび太から話を切り出された学生2人は逆上して殴りかかったが、カバーのおかげでのび太にダメージはなく、バットで「全治六か月の刑」を宣告したが、これも同様に効果はなかった。
疲れ果てた2人はのび太に「入会しなくていいから帰れ」と事実上の降伏宣言をするが、友達の払った金を返すまでは帰れないと言われたため強引にカバーを剥がそうとしたものの、今度は電撃にやられてしまった。諦めた2人は勝手にするよう言ったが、のび太が部屋を散歩した際に自分たちにバウンドしてきたり、ラーメンを食べようとした際にはほこりを入れられたりしたため逃げ出して行った。
それでものび太は後を追いかけ上空から水をかけて来たため、2人は観念して協会を解散すること、金を皆に返すことを約束し、このことをのび太から聞いた皆は喜んでいた。
大山版は1981年12月4日に放送されたが、現在のところ水田版では、まだアニメ化されていない。
1981年版
- サブタイトルが「世界平和安全バッヂ」に変更
- 冒頭では、ママは机で茶を飲んでいてパパは新聞を読んでいた。またのび太は「野比のび太一生のお願いです」と言って頭を下げていて、自室の机に座って頭を悩ませており、ドラえもんもここで訳を尋ねた。
- ドラえもんはタケコプターを使って皆のもとへやってきた。
- のび太がネズミと嘘をついてドラえもんを追い払う場面はカットされ、のび太は合計で391円の入会費を持ってきていて不足分は毎月の小遣いで少しずつ納めるつもりだった。ちなみに持ってきた貯金箱はドラえもんの姿をしていた。
- 看板が落ちて来た子供は全治3か月だった。
- のび太は近くに線路が走って石垣がある坂道でドラえもんにガスをかけられた。このため、ドラえもんがのび太に土管を投げつける描写はカットされている。またドラえもんは、のび太から協会の入会書も見せられたが、読み終わると腹が立って破り捨てていた。
- 悩みながら歩いていたジャイアンが犬に追いかけられ、トラックに引かれそうになる下りや、空地で悩む皆に早くそんなバッジを返すよう言う下りが追加され、これにジャイアンが同意したため、皆もそれに勇気づけられ次々にバッジを捨てた。
- 学生たちがカバーの電撃にやられたりする一連の下りは、その代わり逃げ出した彼らが、階段の前で待ち伏せしていたドラえもん達とのび太に挟み撃ちにされ観念する下りに変更されている。
- ラストでドラえもんは、皆で協力すれば何だってできると言っていて、のび太も皆から賞賛の声を浴びていた。そしてのび太が手に持っていたドラえもんの貯金箱がアップになり、スマイルする場面で本編が終了している。
序盤から漂う不穏な雰囲気が他の作品とマッチしなかったこと、そして直球なカツアゲ行為が描かれたことが問題視されたのか、当エピソードはてんとう虫コミックスの単行本には未収録となっている。
実際、「金を払わないと痛い目に遭う」「他人に話しても酷い目に遭う」といった脅しで子供たちの財布を付け狙う不良学生の生々しい犯行が描かれているため無理はないだろう。
また、同じく不良学生が子供を支配下に置く「がんじょう」というエピソードも単行本未収録になっているため、広い世代に読まれる子供向け作品の単行本にカツアゲの話は向かないと判断されたのかもしれない。こちらものび太が防御特化のひみつ道具を使って不良を撃退するなど共通点も多い。