概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。別名「お医者カバン」及び「お医者ごっこカバン」。初登場エピソードはTC20巻収録「お医者さんカバン」。
聴診器を体に当てるだけで、どんな病気や怪我でも一発で正確に診断し、それを治療する為の薬や器具を鞄から出してくれる。更にレントゲン機能や顕微鏡も兼ね備えている。
上記の初登場エピソードでは、ドラえもんは「未来の子供がお医者さんごっこに使う玩具で、簡単な病気なら治療出来る」と言っている。
しかし玩具にしては非常に高性能で、風邪や火傷、おできや虫歯といった通常なら完治に数日かかる症状や、病院に通院しないと治せないような症状を瞬時に完治させることが出来るのだ。
これだけでも十分凄いのだが、TC30巻収録「昔はよかった」の作中では結核を瞬時に完治させている。更にTCカラー作品集1巻収録「お話バッジ」では人間以外の動物の怪我も問題なく治療している。
大長編及び映画版でも高性能振りを発揮しており、『創世日記』ではドラえもんとのび太が「創世セット」で創った地球で伝染病が流行していたのだが、カバンが出した薬と消毒ガスの力で伝染病の流行を見事ストップさせた。それだけでなく地球に存在しない生物の怪我を完治させており、『雲の王国』では意識を失った少年を診察した際、カバンは「空腹と寒さで疲労したことによる気絶」(病気及び怪我ではない)と診断したのだが、特に治療不可能ということはなく少年を回復させる為に栄養ドリンクと多数のカイロを出している。
一方、TC43巻収録「宇宙戦艦のび太を襲う」では、宇宙からやって来た謎のウイルス型宇宙人達がのび太の体内に入り込み、彼はその影響で高熱を出して倒れてしまう。ドラえもんはお医者さんカバンで原因を突き止めたのだが、その際「ウルトラスーパーオールマイティワクチン」を使用して宇宙人を撃退している。このワクチンはお医者さんカバンが出した薬品なのか、それともドラえもんが独自に取り出した道具なのかは作中で説明及び描写されていない。
前者の解釈が事実だと仮定すれば、お医者さんカバンでは(少なくとも原作版の作中では)治療出来なかった怪我及び病気は存在しないことになる。しかし後者の解釈が事実だとすれば、お医者さんカバンではウイルス型宇宙人による症状は治療出来なかったことになる(ただし作中で「治療不可能」と明言された訳ではないが)。
参考として『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』では、ウルトラスーパーオールマイティワクチンはお医者さんカバンとは別の道具として扱われている(ただしこの書籍は藤子・F・不二雄が監修しているとはいえ、F氏が直接手掛けた作品ではなく、それが原因なのかは不明だが、原作版と矛盾している設定及び解説も存在する)。
欠点
唯一の欠点として、薬や器具が無くなってしまうと治療不可能になってしまう。上記の初登場エピソードでは、10回程度使用した時点で薬が無くなってしまい治療不可能になってしまった。
一方『創世日記』では、町中の伝染病が無くなるまで消毒ガスを空からばら撒き続けているが、途中で薬が無くなったという描写はない。その為、どれほどの使用量で薬や器具が無くなってしまうかは不明。
派生作品
原作版以外の派生作品については、お医者さんカバンの性能が強化されている場合と、治療出来ない例が描かれている場合がある。
- 前者の例
『翼の勇者たち』では上記の『創世日記』同様、地球に存在しない生物の怪我を完治させている。それだけでなく『月面探査記』では宇宙人の怪我を完治させている。
2012年版「おおかみ男クリーム」では、恐怖により気絶した人間に対し、気つけ薬で意識を回復させている。このことから、水田わさび版アニメにおけるお医者さんカバンは精神面の病気や症状も治療出来ることが分かる。
更に、水田版アニメオリジナルエピソード「のび太と星を流すクジラ」では、22世紀出身のドラえもんでさえ存在を把握していなかったホシナガスクジラが、敵の攻撃により瀕死の重傷を負っていたにもかかわらず、小さな錠剤一粒で怪我を完治させている。それだけでなく、同アニメオリジナルエピソード「ドラえもんの青い涙」ではロボットの怪我まで治療している。
2020年版「のび太シンデレラ」では、ドラえもん達が「絵本入りこみぐつ」を使用して『白雪姫』の世界へ入り込み、毒リンゴを食べて昏睡状態に陥った白雪姫を治療し、昏睡状態から回復させている。このことから、水田版アニメにおけるお医者さんカバンは現実世界に存在しない病気や症状さえ治療出来ることが分かる。
『ドラえもん』を題材としたゲーム作品『魔界のダンジョン』では、複数回使用出来る消費アイテムとして登場している。使用するとHPを完全回復し、更にはアイテムの使用で治る状態異常も全て完治させる。また、こちらの作品では混乱(目を回してしまい正常に移動出来なくなる)、目つぶし(視界を封じられてしまい周囲が暗闇になる)、口チャック(一部のアイテムが使用不可能になる)といった、病気以外の症状(状態異常)に対しても効果を発揮している。
『グランブルーファンタジー』とのコラボイベント『ドラえもん のび太の空飛ぶ船』におけるのび太のフェイトエピソードでは、異世界の魔物の怪我を完治させている。
- 後者の例
『ザ・ドラえもんズスペシャル』1巻収録「妖界大決戦」では、裏山で倒れていた妖怪をお医者さんカバンで治療しようとしたのだが効果が表れず、何故か王ドラが調合した漢方薬で回復していた(しかし上記の通り『創世日記』や『翼の勇者たち』では、人間ではない生物の怪我を完治させている。それだけでなく『ザ・ドラえもんズスペシャル』は、原作者である藤子・F・不二雄が鬼籍に入られた後に描かれた作品であり〈F氏が直接手掛けた作品ではなく〉、それが原因なのかは不明だが、ひみつ道具の設定及び描写が原作版と明確に矛盾しているケースも一定数存在する)。
水田版アニメオリジナルエピソード「コスモガンファイターのび太(後編)」では、怪我をした宇宙人を治療しようとした際、ドラえもんが「お医者さんカバンでもどうにもならない」と言っている(しかし上記の通り「のび太と星を流すクジラ」では、瀕死状態に陥った宇宙生物の怪我を完治させており、『月面探査記』でも宇宙人の怪我を治療しているが)。
同アニメオリジナルエピソード「真夜中の巨大ドラたぬき」では、宇宙生物に寄生されてしまったドラえもんがお医者さんカバンを使用した際、カバンが「治療不可能。諦めましょう」と診断してしまった(これについては上記の「宇宙戦艦のび太を襲う」の後者の解釈が事実だと仮定すれば矛盾しないが、前者の解釈が事実だと仮定すれば矛盾している)。
『ギガゾンビの逆襲』で登場した際は、多くの状態異常を回復出来るものの、上記の『魔界のダンジョン』とは異なり、HPの回復は出来ないという設定になっている。
関連道具
これを使用すると、あらゆる病気を完治させることが出来る。詳細は項目を参照。
飲むだけでどんな病気でも治療することが出来る。詳細は項目を参照。
- 薬製造機
筒型のひみつ道具。
この道具に物を投入すると、その物を粉薬に作り替えることが出来る。作り出された粉薬の効果は投入した物によって変化する。例えば団扇なら風邪薬になり、虫取り網なら虫歯を治療する薬になる。
上記の名称は『ドラえもんのひみつ道具使い方事典2』及び『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』にて設定されたもので、原作版における正式名称は不明(作中では「なんでも薬にする機械」と呼ばれるのみ)。
- ウルトラスーパーオールマイティワクチン
ワクチン型のひみつ道具。
あらゆるウイルスや黴菌を撃退し、それらによって引き起こされる症状(伝染病)を完治させることが出来る。
上記の「宇宙戦艦のび太を襲う」の作中にて、のび太の体内に侵入したウイルス型宇宙人達を容易く撃退している。
参考として『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』では「人間以外には効果がない」と説明されている(ただし原作版の作中では、そのような設定及び描写は存在しない。それだけでなく上記の通り、この書籍は藤子・F・不二雄が監修しているとはいえ、F氏が直接手掛けた作品ではなく、それが原因なのかは不明だが、原作版と矛盾している設定及び解説も存在する)。
負傷している部分に貼り付ければ、どんなに酷い怪我でも完治させることが出来る。詳細は項目を参照。
余談
大全集2巻収録「ペタリぐつとペタリ手ぶくろ」では、ドラえもんが「僕らの時代の科学では、治せない病気なんかないんだ」と明言しており、上記の「なんでも治す注射器」(正式名称不明)を使用し、生まれた時から一生歩けない身体だった少年の病気を完治させている。
また、22世紀では「お医者さんカバン」を含む様々なひみつ道具が子供の小遣いレベルの金額で一般販売されており、その中には全知全能の力を行使出来る道具さえ存在する。