概要
吉良吉影は勝利を確信した。
東方仗助達とのギリギリの攻防に打ち勝ち、バイツァ・ダストのスイッチを押したからだ。つまり、吉良はきっかり1時間前の通勤途中に巻き戻り、発動時に「情報」を聞いた者たちは何も知らずに1時間後に爆殺される。もうだれも吉良の平穏を脅かすものはいない。
そう思っていた。
1つ、吉良がまるでそこにいないかのように、野鳥が通り過ぎていった。吉良の体を貫通していた。
2つ、巻き戻ったはずのそこは、いつもの通勤路ではない見慣れない小道だった。
3つ、巻き戻る前に早人が猫草によって破壊した腕時計が、壊れた時間「8時29分」を指して止まったまま直っていなかった。
状況を飲み込めない吉良の前に、1人の少女と1匹の犬が現れる。彼女は吉良を見るなり
「 露伴ちゃんの撮った写真に写っていた「川尻浩作」が…… 「吉良吉影」だったのね…… 」
「 そして……とうとう終わったのね?……… 」
「 みんなが…… ついに「吉良吉影」……… あんたを追いつめたのね… 」
と呟いた。少女に吉良は何者かと問うが、彼女は「 あたしの事覚えてないの?でも あたしの事なんかよりずいぶんすさまじい事が起こったみたいね?」と答えた。吉良の混乱をよそに…
「 気づかせてあげるわッ! 」
「 すでに自分が死んでしまっているということを!! 」
「 どうやって「自分が死んだ」のかを! 」
吉良吉影は思い出した。
「 限界だ 押すね!今だッ! 」
スイッチを押す寸前、広瀬康一のエコーズにより手を重くされ、阻まれた。その状況下でも押そうと足掻くが、ついに空条承太郎のスタープラチナの射程圏内に入ってしまう。時間を止められ、圧倒的なパワーのラッシュを叩き込まれた。
吹き飛ばされ、瀕死の状況。それでもなお、スイッチを押そうとして……、現場に駆けつけていた救急車に轢かれ、吉良吉影は即死した。
思い出した。では、目の前の少女は何者なのか。再度吉良は少女に問うた。彼女は答えた。
「 15年前 あんたは『スタンド能力』を持っていなかったので 死体を消せなかった… 」
「 だから『あたしが死んだ事』新聞にも載ったわよ… 」
「 この『背中の傷』に見覚えはない? 」
「 それとも初めての「殺し」だったんで「手」を持って行きそこねちゃったからあたしの事 印象 薄いのかしらッ?! 」
彼女は、吉良吉影が初めて殺した女「杉本鈴美」であった。
鈴美はわざわざ傷を見せて正体を明かしてきた。それはなぜか。吉良は勘付いた。ここは、父から聞いていた「「ふり向いてはいけない」とかいう「場所」」だと。鈴美はわざと「背中の傷」を見せ、吉良を自分より前に出してふり向かせようとしていたのだ。そこで吉良は、ふり向いたらどうなるのか、そしてその小道で幽霊として暮らすのもいいと、逆に鈴美にふり向かせようとする。
「 おまえがふり向いてみろ?ン? 」
「 さあ!ふり向けよッ! 」
「 おまえがふり向くのだ────ッ! 」
だが、鈴美はそれを予想していた。15年もの年月、吉良が来るのを彼女「たち」は待っていた。
「 アーノルドッ! 」
その名は、鈴美の一家を殺害した際に同時に殺した、鈴美の愛犬の名である。吉良はアーノルドに手首に噛みつかれ、その勢いで倒れ込むように「ふり向いた」。
「 何ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイ 」
吉良吉影は、無数の手によって「安心なんてない所」へと引き摺り込まれてゆく。
「 裁いてもらうがいいわッ!吉良吉影 」
早人の「 あいつを誰かが「裁いて」ほしかった 」という願い通り、町を蝕んだ殺人鬼は最後の最後に町に裁かれた。