概要
第65話「不死身の赤毛」より登場。
若山輝一郎はそれ以前に「馬主のヤクザの親分さん」、「札幌世界ホテルに若い男と泊まった中年の男」として存在が示唆されている。また、第62話「替え玉騎手キロランケ」で「俺があの子にいうとでも思ってんのかッ」と言っている杉元佐一の背後に……
二人はキロランケとタコ坊主が赤毛のヒグマに追われて逃げ込んだ家屋にいた謎の人物だった。しかし、若山輝一郎はたまたま泊まれるところを紹介してもらっただけだと言い、仲沢達弥は自分の家だと言うなど話のつじつまが合わず、「ヤクザの親分さん」から八百長を指示されていた調教師と厩務員の生首が発見されるなどした結果、若山が苫小牧の競馬場で八百長の指示を無視して快勝したキロランケを恨み、追ってきたヤクザの親分であることが露見した。
若山は杉元一味とやり合おうとしたものの、複数のヒグマに襲われている状況だったため、アシㇼパの忠告を受けて一時休戦とした。ヒグマに対抗するため、杉元佐一が家の外で落としてしまった弾薬盒をだれが取りに行くかで争い、若山の提案で丁半賭博で決めることになる。壺振りを仲沢に任せ、タコ坊主は丁、キロランケがそれを打ち消して半、若山は丁に賭けて勝負とし、結果は果たして半で杉元一味の勝利。若山は思わず仲沢を蹴飛ばした。
壺がひっくり返り、そこに仕込まれた高等ないかさま技術「毛返し」を見たタコ坊主は、若山と仲沢の二人がグルであり、それでいながらいかさまを失敗したことを笑う。だが、若山は仲沢の壺振りが超一級品であり、失敗などすることがないと知っていた。
若山は仲沢が家を自分のものだと言い、調教師と厩務員の生首をわざと目につくように置き、挙げ句の果てに命のかかった勝負においてイカサマで負けさせるなど、困ることばかりする理由を問いただす。
仲沢達弥は叫ぶ。「親分が浮気するからだ!!」
若山輝一郎も叫ぶ。「あれは金で買った男だと言っただろう、まだ根に持ってるのかッ」
二人はグルだっただけではなく、愛し合う恋人同士でもあったのだ。
雑談好きな杉元一行もこれには真顔で沈黙、「男娼と寝るなんて便所に行くようなもんじゃねえか」と開き直って言う若山と「不潔だ!!親分は不潔だ!!触らないで!!」と言う仲沢の間の溝は哀しいほどに深く、杉元に「痴話喧嘩はどうでもいいから約束を守れ」と促されヒグマのいる屋外へ這い出る若山を仲沢は「親分なんかヒグマにチンポ食われちまえばいいんだ」と口を極めて罵り、若山も「お前なんて札幌に置いて来るんだったわ!!」と吐き捨てるなど険悪な空気だった。しかし、いざ若山がヒグマに狙われ窮地に陥ると仲沢達弥は一転して泣いて心配しだし、二人の愛を見せつけた。若山輝一郎はついでに下半身の刺青も見せつけ、彼が杉元一味の追う刺青囚人であることが判明。
その後、仲沢達弥は杉元佐一に服をめくられ色っぽい尻を叩かれ、若山輝一郎はヒグマに土饅頭にされたが、たがいに思いあう心はけっして変わることはなかった。仲沢は家に残された若山の長ドスを大切に携え、土饅頭から脱した若山は花嫁姿のアメリカ人牧場主エディー・ダンからマキシム機関銃を借り受け、車に乗って、愛する者を救うためにヒグマのいる戦場へと舞い戻った。
若山輝一郎は叫ぶ。「姫~!!」
仲沢達弥も叫ぶ。「おやぶぅん!?」
親分の愛の弾丸は二人を裂こうとしたヒグマを屠り、二人は奇跡の再会を果たした。しかしその喜びもつかの間、姫は落としてしまった愛する親分の長ドスを拾おうとして車から落下、ヒグマに首を噛まれてしまう。
それを見た親分は、姫を救うべく行動に出る。車から飛び降りると、長ドスを拾ってヒグマに斬りかかったのだ。ヒグマの爪に腹を裂かれてもひるまず、手と鼻先を斬り落とし、ついには逃げ出すヒグマの肛門処女を奪った。
親分は死に瀕しながらも、倒れた姫のそばに近付き、座り込む。それを見た姫はざまあみろと笑い、「もう私に隠れて浮気できないね」「これで私は親分の最後のひとだからね」と愛おしそうに囁き、親分もまた笑みを浮かべて「バカ野郎ッ……」と愛をこめて呟いた。
ーそれが愛し合う二人の最期だった。
強く指を絡め、寄り添うように倒れた親分と姫の姿を、ハート形の雲が浮かぶ日高の雄大な夕陽があざやかに照らし出していた。
そしてこの美しい物語は、主人公杉元佐一の以下の一言で締めくくられる。
「皮剥いで来る」
本誌掲載時、このシーンのアオリ文「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」
馴れ初め
姫こと「仲沢達弥」がいた賭場に親分こと「若山輝一郎」が偶然やってきたのが二人の愛のはじまり。姫の壺振りに惚れ込んだ親分は、姫を引き抜こうとするが拒まれてしまう。しかし、姫は次第に親分の男の色気に惹かれていく……ついには組を裏切って親分のもとへと走り、二人は熱い夜をすごすが、すでに外には組の追手が迫っていた。
(公式Twitterゴールデンカムイ質問箱Q&A.047参照)
余談
親分の「便所に行くようなもんだ」というセリフは作者の友人が実際に話したことらしい。
また、姫の乳首は親分のせいで大きいとの事。
アニメ版に関するあれやこれや
ゴールデンカムイはアニメ化しているが、二期の宣伝内容を見るに、親分と姫の美しい愛の物語は飛ばされてしまう可能性が高い。これはアニメスタッフが二人の真実の愛に嫉妬し、全道が泣いた感動のストーリーを隠蔽するためと目されている。このような行為は許しがたい蛮行であり、親分と姫の愛に涙した者たちは、姫のためにヒグマに立ち向かう親分の心を持って断固抗議していくべきである。
………という過激派な考え方もあるが、ぶっちゃけ親分のモデルと姫のモデルの本人(姫のモデルは存命)とご家族に配慮してのアニメ版カットとなった。
アニメやるってよ
「ゴールデンカムイ」親分と姫の恋物語など展開されるモンスター編がアニメに - コミックナタリー
というわけで、DVD同梱版コミックという形でアニメ化された。
また、アニメ第4期放送前の2022年9月にテレビ放送&配信が決定し、アニメDVD同梱版を入手できなかった人にも親分と姫の美しい愛の物語を見ることができるようになった。
まさかの実写化
ゴールデンカムイの実写ドラマの特報の際に熊と対峙している刺青の彫られた男の下半身というシーンが写り、あの「親分と姫」もやるのではないかと話題になっていた、そして7月21日に新キャストとビジュアルが公開され、「親分と姫」が実写化されることが確定となり、原作愛と再現度の高さが評判の実写版ゴールデンカムイだったが、他のキャストも含め今回も期待を裏切らず、特に姫のビジュアルが発表された際は「本物だ」と大騒ぎになった。
そして次回予告では「親分と姫」がトレンド入りを果たし、放送当日は2人の愛をこれでもかと見せつけられ、再びX上でトレンド入りし、この2人の愛を日本中に広めた。また、姫を演じたキャストの愛に溢れたポストも話題となった。
関連タグ
ゴールデンカムイ 若山輝一郎 仲沢達弥 公式カップリングの一覧
北海道三毛別村で実際に起こった日本史上最も有名な羆害(ゆうがい)事件を元にした小説。
死傷者7名(胎児を含めると8名)の大きな被害を出し、後々まで全道で語り継がれた。
北海道にはこのようなヒグマによる悲劇が度々起こっておりゴールデンカムイでもよく紹介されるが、ピクシブ百科事典にはこれしかリンク先がない。
余談だが、同性間の愛を描いたアニメに「ユリ熊嵐」があり、これと併せて二人の関係を誰が呼んだか「薔薇熊嵐」。