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概要編集

鋼の錬金術師』の世界で、錬金術の最高峰と呼ばれる伝説上の術法増幅器。他にも「哲学者の石」「天上の石」「赤きティンクトゥラ」「大エリクシル」「第五実体」など様々な呼び方がある。

その外見は一般的には血のように赤い石として認知されているが、形状はその様々な呼び名と同じく決して石や固体とは限らず、流体状や半固体状など様々な形態がある。


凄まじい規模のエネルギーの集合体であり、爪の先程の微量でも絶大な力を発揮し、永久的に決して壊れる事はない「完全物質」であるとされている。それ故にこれを手にした者は、錬金術の基礎である「等価交換の原則」をも超えた自由自在な錬成が行えると市井では噂されている。

エルリック兄弟は、人体錬成を行い「真理」を見た代価として「真理」に持っていかれた肉体を取り戻す為の手段として、この石に関する情報を得るべく国家錬金術師になる道を選んだ。


正体(原作/2009年版(FA))編集

……とされているが、その正体は人間の魂を錬金術によって抜き出し、凝集加工させた「実体化したエネルギー」であり「物質化した魂そのもの」

人間の魂はそれ自体が膨大極まるエネルギーである為に、それを無数に寄せ集め結びつける事で賢者の石を錬成する事ができる。等価交換の原則を破れるという噂は厳密には正しくなく、錬金術師が錬成の際に支払う代価を賢者の石内部の魂で支払っているというのが正確な実情である。

そもそも賢者の石を錬成する為に、複数人の人間の魂という大きな代価を支払わなければいけないという時点で、等価交換の原則を超越する事などできてはいないと言える。


おぞましい事に、錬成された魂は意識を残しており、肉体を失った苦しみに永遠に苛まれ続ける地獄を味わう事になる。救われる事のない魂達はやがて全てに対する怨嗟に取りつかれ、自我を失って言葉にならない叫びを上げるだけの何かになり果ててしまう(通称:魂の暴風雨)。

ちなみに残された肉体と精神は崩壊し、ただの搾りカス同然になってしまう。


錬成に必要な人間の魂に際限はなく、より多くの人間の魂を使う程に強大で純度の高い賢者の石が錬成できる。逆に使い捨てのような物でもよければ、1人分の魂で1個の賢者の石を作る事も可能であり、人形兵達に使われていた賢者の石がこれである(後述する事情から、キング・ブラッドレイの核の賢者の石も結果的に魂一つの物になっている)。これと自身を人体錬成する技術と、自分の生命力を使う技術を合わせた応用で、終盤にエドは自分の魂を一時的にプライドの中の賢者の石の一部に錬成する事で、プライドの中に逆に侵入してプライドを倒す事に成功している。


これらの事実を知ったエルリック兄弟は、肉体を取り戻す為に賢者の石は使わないと決意を新たにし、エドは入手する機会があっても最後まで戦いに使う事はなかった(グラトニーの腹の中から脱出する為に一度だけ使用した)。アルの方はハインケルキンブリーから奪った賢者の石を渡された際に、彼等のその決意を了承した上で「お前らの為じゃなく、世界を守る為に使えばいい」「一緒に戦わせてやってくれ」とハインケルから頼まれた事で、一度だけ戦いに使用している。

それ以外の面々は、主に賢者の石そのものの力ではなく、それが「万能の代価」として使える利便性に着目しており、リン・ヤオランファンが回収していた流体状のものを、自身が皇帝になる為の手段としてシン国に持ち帰り、ロイ・マスタングは「真理」から視力を取り戻す為の対価として、マルコーから譲渡された賢者の石を利用する事で、視力を取り戻す事に成功している。


お父様とホーエンハイムの正体編集

お父様」とヴァン・ホーエンハイムは、自らを人体錬成する事で、クセルクセスの全国民を使って作った賢者の石を自身の魂と融合させた上で自らを再構築して、事実上の「人間の姿形をした賢者の石」と化した存在である。

「お父様」は自らの体内にあったホーエンハイムの血の情報を使って人体錬成を行い真理の扉を開けた為に、ホーエンハイムも人体錬成に巻き込まれ、クセルクセス国民の半数である約50万人分の賢者の石と強制的に魂を融合させられて再構築された。

それ故に「お父様」とホーエンハイムは事実上の不老不死であり、等価交換を無視した絶大かつ自由自在な錬成をノーモーションで行う事ができるなど、作中世界でも完全に規格外の存在である。


そしてお父様が、自らの賢者の石とその核になる自分自身の感情や魂を切り分けて、それに賢者の石を核にして作った肉体を与える事で生み出した存在がホムンクルス達であり、さらにお父様から切り分けられた魂と賢者の石を、人間に注入する事で誕生した人間ベースのホムンクルスが、作中のグリリン(2代目グリード)とキング・ブラッドレイラース)である。

ただし、この人間ベースのホムンクルスの場合、肉体を求める魂達によって肉体の主導権の奪い合いとなる「内在闘争」を行う事となり、自らの存在をこの「暴風雨」に打ち据えられ削り取られていく為に、最終的には先に肉体が崩壊して賢者の石が定着せずに失敗する例も多い。

これによって誕生したグリリンとブラッドレイの実情も異なっており、前者は肉体の持ち主であるリン・ヤオが、グリード自身の魂も含めた賢者の石内部の魂を全て受け入れた為に、全ての魂がリンの肉体の中で共存している状態であるので再生能力がある。逆に後者は魂の内在闘争の結果、魂が一つだけ生存した上でホムンクルスとして完成した為に再生能力がなく、また、この1つだけ残った現在の「キング・ブラッドレイ」の人格を司る魂が、どこから来た誰の物なのかは最早分からなくなっている(人間時代の記憶は一応あるが、自分がその記憶と肉体の持ち主の魂なのか、あるいはそれを引き継いだ賢者の石の中の誰かの魂なのか、お父様の魂から切り離されたラースの魂なのか、彼自身にも分からないとの事)。


さらに「お父様」は、自分の賢者の石をアメストリス地下全体に広げる事で、国中の錬金術師達の錬金術を制御していた。アメストリスの錬金術はかつてお父様が広めたもので、表向きは錬成に必要なエネルギーは地殻エネルギーを利用しているとされており、実際にそういう仕様の錬金術だったのだが、実際は地殻との間に存在する賢者の石のエネルギーを使ったものであり、国内の錬金術師達の錬成力も制御されて本来可能な錬成力より低く抑えられていた。これがシン国錬丹術も学んだスカーの兄が気付いた、アメストリスの錬金術に対する疑問の正体であり、人の魂の気配を感じる事ができるシン組の者達が、アメストリスに入国してから感じていた違和感の正体である。

この地下に敷かれた賢者の石を使って、「お父様」は自分が広めたアメストリス式の錬金術を使う国内の錬金術師の力を自在に操り、完全に封じて錬金術を使えなくしてしまう事も可能だった。しかし、ホーエンハイムがかつてシン国で広めた錬丹術は、アメストリス式のものとは方式も使うエネルギーも異なる為に(錬丹術のエネルギーは地脈に流れる力)、アメストリス国内でも地下の賢者の石を無視して錬成が行えるので、「お父様」の錬金術封じも効かない(スカーが使う錬金術も、彼の兄が錬丹術の技術を取り込んで開発したオリジナルの錬金術である為に、お父様の錬金術封じは効かない)。

最終決戦時には、スカーの兄が用意していた「逆転の錬成陣」が発動した事で、国中の地下の賢者の石を無効化して直接本来のエネルギー原である地殻エネルギーを使えるようになり、お父様の制御を受け付けずに今まで以上のエネルギーでアメストリス式の錬成が行えるようになった。


一方でホーエンハイムは、不老不死故の膨大な時間を利用して、自身に融合した賢者の石内部の魂達一人一人と粘り強く対話を続ける事で、最終的には「いつか『お父様』を倒す」という目的の為に彼等と一致団結する事に成功しているなど、魂が自我を取り戻す事も一応は可能らしい。


賢者の石の実態編集

賢者の石は前述通り、錬金術師に無限の錬成力を与える完全物質であるとされている。

しかし実際は、賢者の石の魂のエネルギーを対価として使って無尽蔵に等しい錬成力を得られるというだけで、エネルギーそのものは有限であり、等価交換の原則を無視できる訳でもない。


ホーエンハイムにしても「お父様」にしても、あくまで数十万人のクセルクセス人を対価にした賢者の石のエネルギーで、法則を無視した錬成や永遠に近い命を得ているだけであり、錬金術を使ったり致命傷を負わされる事で、少しずつではあるが魂のエネルギーは代価として支払われて消耗していき、完全に尽きれば自身の魂も尽きてしまう。即ち本当の意味での完全なる不老不死ではない


これは賢者の石そのものも同様であり、作中ではいつエネルギーが尽きるか分からない不完全な純度の低い偽物の賢者の石と、ホムンクルス達が本物とする純度の高い賢者の石が登場したが、使用可能期間は両者では圧倒的に違うものの(前者は数年などの短期間で後者は半永久的)、いずれにせよ内部の魂のエネルギーが尽きれば最終的には石が崩壊・消滅する事には変わりはない。

更に、石の製法・構造を熟知した錬金術師であれば錬金術を用いて石を「破壊する」事も可能である。


結論を言えば「完全に等価交換の原則を無視できる決して壊れない完全物質の賢者の石」は、あくまでも伝説上の物質に過ぎず、ハガレン世界には最初から実在しない。


2003年版編集

原作の賢者の石の設定と殆ど変わらないが、材料が大きく異なっており、原作では賢者の石の材料は人間の魂のみだったが、本作の賢者の石は人間の肉体も材料としている。

賢者の石の錬成が行われると、その錬成陣の効果範囲にいた人間は肉体ごと分解されて材料として消費され、それに半端に巻き込まれてしまった者は肉体の一部を持っていかれる。


終盤に、ゾルフ・J・キンブリーによって爆発物に錬成されたアルフォンス・エルリックを救うべく、スカーがアルを生きた賢者の石に錬成した。これによってアルは血印という弱点を克服し、水中でも活動できるようになるが、錬金術師が触れると錬成反応が起きるなどの不都合も発生するようになり、さらに錬成の代価として消費されるとエネルギーだけでなく鎧も物理的に削れるなど、原作のヴァン・ホーエンハイムや「お父様」ともかなり違う。


ちなみに、一応はFAの派生作品扱いである劇場版・嘆きの丘の聖なる星で登場したアイテムの「鮮血の星」は、作中では原作及びFAの賢者の石と同一の物として扱われているが、実際は魂だけでなく人間の血肉(特に血液)を材料として錬成されるなど、むしろ2003年版の賢者の石に近い事実上のオリジナルアイテムになっており、原作及びFAの賢者の石とはよく似た別物である。


関連リンク編集

天の杯:TYPE MOONシリーズに登場する魔法(科学、魔術などあらゆる法則を用いても再現不可能な現象を起こす能力。例・空を飛ぶのは科学で再現可能なので“魔術”、並行世界への干渉は科学でも魔術でも出来ないので“魔法”)の一種。「魂の物質化」を司る。

 また物質化された魂は永久機関となり壊れる事も死ぬ事もなくなる(あり方としてはお父様やホーエンハイムに近い)、真の意味での賢者の石と呼べよう(型月作中内には賢者の石が別で存在するが)。

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