概要
幾何学的な対称の一種であり、特定の部分に鏡を差し込んでも同じになるような性質のことである。
「鏡映(鏡映操作)についての対称」のように表現される。
「鏡像対称」「鏡面対称」「反射対称」とも呼ばれ、英語では「reflection symmetry」「mirror symmetry」等と呼ばれる。
鏡映対称であることは、「アキラル(アカイラル、非キラル、非カイラル)」とも表現される。
例としては、二等辺三角形や等脚台形、凧形、半円、偶関数の形、多くの動物や乗り物の外見の他、文字やシンボルにおいても「A」「E」「山」「巨」「♡」など、当てはまるものが非常に多い。
鏡映対称な平面図形を底面とした錐体の内、頭頂点からの垂線が対称軸と交わるものも、鏡映対称となる。
鏡にあたる部分は、二次元なら鏡映軸、三次元なら鏡映面と呼ばれる。
対称な点同士を結ぶと平行な直線が現れる所や、一次元以上で定義できる点は、並進対称と共通している。
いかなる図形も、1つ上の次元の中に置いた場合は鏡映対称となる。
例えば平面図形は、三次元空間上では、その図形を含む平面が鏡映面となっている。
別名が多いが、「回映対称」や「映進対称」という表現と整合するのは鏡映対称のみとなっている。
また、鏡映は鏡面や鏡像と比べると動詞的であるため、「回転対称」「並進対称」という表現とも整合している。
反射も動詞的ではあるが、他の意味合いも含まれがちかもしれない。
向きによる呼び分け
「左右対称」「上下対称」「前後対称」はこの一種であり、鏡の向きによる呼び分けとなっている。
先の例の中では、動物の外見と「A」「山」「♡」は左右対称、「E」「巨」は上下対称に該当し、特に左右対称に該当するものが多い。
次元による違い
二次元においては線対称と同じだが、三次元においては面対称、一次元においては点対称となる。
n次元空間においては「n-1次元体(超平面)に対する対称」と言える。
同様のタイプのものに回転対称があり、そちらは同様の表現では「n-2次元体に対する対称」となる。
これらについては詳しくは「対称」を参照。
鏡に映しても同じだが鏡映対称では無い例
単に「鏡に映しても変わらない(平行移動と回転移動で重ねることができる)」と言ってしまうと、その性質を持ちながら鏡映対称では無い事例も存在するため注意が要る。
映進対称や回映対称の図形がその例であり、これらは鏡像と一致するが、鏡映対称ではないものも存在する。
下イラストの図形はその例であり、この場合は2回回映対称にあたる。
複数の鏡映対称を持つ場合
「H」の文字の形のように、左右対称かつ上下対称である場合は、回転対称の内の2回対称の性質も兼ねる。
逆に2回対称なものが鏡映対称とは限らないが(「Z」などは2回対称ではあるが鏡映対称ではない)、左右対称かつ2回対称である場合については、上下対称にもなる。
この時、三次元の場合ならば、対称軸は鏡映面上にある必要がある。
二次元の場合なら2回対称である時点で点対称でもあるが、三次元の場合は(左右対称と上下対称に)前後対称も加わわることで点対称となる。
左右対称かつ上下対称である例としては、長方形や菱形や楕円、およびそれを底面に持つ直錐が存在し、左右対称かつ上下対称かつ前後対称である例としては、直方体や楕円体、および楕円を底面に持つ直柱などが存在。
長方形や菱形、楕円に、斜めの対称も加わると正方形や円となる。
左右対称と上下対称の組み合わせは、鏡が垂直に交わった形となるが、垂直以外で交わる場合も考えることができる。
鏡の交わる角度を120°にした場合は、三枚の鏡を一つの軸で交差させたような形となり、3回対称を兼ねる。
正三角形はこれに該当する。
以上の場合は、鏡となる線や面を互いに垂直に組み合わせた場合であるが、平行に組み合わせた場合についても考えることができる。
これはちょうど合わせ鏡によって現れるような、無限の長さを持つものとなり、並進対称を兼ねることになる。