「さすがヘル・エンジェルの娘さんだ… よく似てらっしゃる…」
概要
『名探偵コナン』の降谷零(安室透)と宮野志保の非公式NLカップリング。
本編での関わり
降谷(安室)は元々、「キール(水無怜奈)の一件でシェリー(志保)と関わっている可能性のある毛利小五郎に張り付く」目的で、コナンたちの前にバーボンとして現れた。
『灰原の秘密に迫る影』にてシェリーの情報を入手し、続く『漆黒の特急』でベルモットと共に作戦を決行する。
だが、志保を生きたまま組織に連れ戻そうとした降谷の意思に反し、ベルモットは是が非でも志保の命を絶つ計画を立てていた。結局、目の前で志保を乗せた貨物車が爆発し、降谷は彼女の奪還を断念せざるを得なくなる(もっともこの時の志保の正体はこの人だったわけだが)。
その後公式LINEにて降谷はこの時の志保のことを「守りきれなかった」と発言しており、まだ志保が生きているということは認識しておらず、依然として死なせてしまったと思っていることが分かった。
志保(灰原)からしても『安室透』と『バーボン』としての彼しか知らず、『降谷零』が過去に自分の家族と親交があったことに関しても何も知らされていない様子が窺える(母の録音テープ内で『降谷零』について触れている可能性は残されているが)。
また、安室=バーボンの正体が公安のスパイだということをコナンなどから教えられている描写も見受けられないため、黒の組織の人間である安室は灰原にとって依然警戒対象である模様。
しかし単行本99巻収録の1054話にて「灰原は抜け目ねぇし」と子どもらしかぬ信頼を寄せるコナンに対し、安室は「その灰原哀って子… 以前どこかで会った気がするんだけど…」と俄かに存在を気にする素振りを見せる。
コナンの誤魔化しに一応納得したような微妙な言葉を残したが、この時灰原が彼と接触する時は「いつも帽子を目深に被って」おり、それゆえに顔の印象の薄い「シャイな子」と思っていたことが安室の口から語られている。
また単行本102巻ではかつてシェリーに扮した怪盗キッドと降谷が直接対決を果たしており、他に特に因縁もないはずの降谷がキッドが間近にいた事実に妙に気迫のこもった顔つきをしていたり、キッドと対峙した時にはそれまで丁寧語で話していたのに「君のその感じ… どこかで会った気がするんだが…」と、この台詞の時だけ素の口調を発している。
対するキッドもまたシェリーに変装しバーボンと顔を合わせた時のことを思い浮かべながら、「さぁ…覚えてねぇな… 女の子の顔なら忘れないんだけどね…」と返した。
さらにこのシリーズでは風見の参加していた音楽フェス会場での参加客のTシャツに「HALLOW SHERRY」とも読める単語(CHERRYかSHERRYか、頭の字は微妙に隠れている)が映り込んでいたり、降谷(安室)の被る帽子にはイチョウらしきマークが入っている。
翌シリーズでは灰原もまたフサエブランドらしきイチョウ柄のキャップを被っており、コナン・高木刑事・佐藤刑事らが事件の推理を展開する中で灰原が見解を示した際に降谷が意味深に彼女のいるテーブルを見つめるコマが挟まれた。
出会いそうで出会っていない2人の今後が気になるところ。
共通点
物語の中ではまだ明確な接触のない2人であるが、降谷零の過去や言動が明らかになるにつれ、似た生い立ちや境遇の描写、共通点が増えていっている。
・名前が3つある(安室透と灰原哀、バーボンとシェリー、降谷零と宮野志保)
・発言が似ている
「バーボン… これが僕のコードネームです…」
「シェリー… これが私のコードネームよ…」
「あれ程の男なら自決させない道をいくらでも選択できただろうに」
「あなた程の推理力があれば、お姉ちゃんのことくらい簡単に見抜けた筈じゃない!」
・ハーフとクォーターで、異国の血が混じっている。過去にそれが原因(髪の色・顔立ち)で周囲から嫌がらせを受けたことがある。
・五人組(警察学校組・少年探偵団)の中で最後に残った者と最後に入った者。
他にも赤井に対する複雑な心境や初恋が叶わなかった者同士であること、闇と正義が綯交ぜの立ち位置(白を正義、黒を犯罪者と暗示する傾向のある作中において「灰原」の偽名と公安スーツがグレーの降谷)、身内を何人も喪っていること、自分自身が大切な人(親友、家族)の死の原因の一端を担っていることなど、重なる要素が多分に描かれている。
ゴドフリーとアイリーンの示唆?
ダ・ヴィンチ(2014年 05月号)インタビューより、原作者曰く「哀」の名はアイリーン・アドラー(ホームズを知性で出し抜いた唯一の女性)をもじったもので、平成のシャーロック・ホームズたるコナンとの関係性からも灰原哀(宮野志保)はアイリーンのポジションであると論じられている。
物語におけるホームズは言わずもがなコナン(新一)であるが、降谷もまたジンの発言から「シャーロック・ホームズのような探偵」と評されたことがあり、ホームズと同じくボクシングが趣味。
(ただしこの台詞がバーボンの推理力を指したものか、赤井を見つけるための変装捜査の件を揶揄したものか、そもそも降谷に関してではなく赤井の生存の可能性を疎んでの言及か(殺しても死なないホームズを喩えたか)、真意は一切明らかにされていない)
ちなみに世間一般にはホームズとアイリーンの関係に恋愛的な要素はなく、『劇場版 ベイカー街の亡霊』において蘭がアイリーンを「ホームズが唯一愛した女性」と紹介したことについても賛否両論であった。
それでも両者の間に恋愛的な側面があったものとして解釈する層も確かに存在するため、アイリーンとその部分で惹かれ合ったホームズの要素を担うのが降谷ではないかと見られている。
そしてこのアイリーンの婚約者であり、作中で実際に結婚した相手はゴドフリー・ノートンという男性。近年では「He is dark」の翻訳が「黒髪」と直されているが、旧い版では長らく「浅黒い肌の美男子」と訳されており(『ボヘミアの醜聞』)、降谷は志保(アイリーン)にとってのゴドフリーとして展開してゆくのではないか、と目下考察がなされている。
幼馴染ではなく、初恋でもない二人
青山作品の恋愛描写において幼馴染かつ初恋は勝ち確とすら言える伝家の宝刀的設定であるが、降谷と志保は互いにそのどちらにも該当しない。
だが本来ならエレーナの縁で二人が年の離れた幼馴染として出会っていた可能性は十分にあり、黒の組織に運命を歪められたがために”幼馴染になり損ねた”という、もしもの関係性が萌えどころでもある。
『SDB(スーパーダイジェストブック)90+』では、志保の母・エレーナが降谷の初恋の相手であると言及されており、原作者が直々にネームを切ったゼロの日常・警察学校編ではエレーナを見つけるために警察の道を志したことが明かされた。
本編でもエレーナに会いたいがためにわざと怪我をして宮野医院に通っていた幼き日の降谷が描かれており、当時エレーナが2人目の子供(=志保)を妊娠中であったことも示唆されている。
そして作中およびインタビュー等でも明言されてはいないが、志保の初恋はあの鈍感探偵と見ておよそ間違いないため、志保の初恋の相手はホームズであり降谷の初恋はアイリーンなのである(アイリーン・アドラーは英語読みで、ドイツ語読みだとエレーナ・アドラー)。
最上部の降谷の台詞にもあるように、宮野母子の容姿(ないし、他人を巻き込むまいとする自己犠牲精神)や他者を遠ざけがちだが懐に入れた相手には愛情深い面、人体構造学や薬学の知識、外傷の見立てを行うなど、志保とエレーナは似通った部分が多く見受けられる。
また、上記の項で挙げたように降谷は探偵であることはもとより、コナンの持ち得なかったホームズの要素(ボクシングの趣味、様々な顔を使い分ける変装(潜入)の達人であるなど)を取り入れられていると考えられ、メタ的な意味で第二のホームズと言えるキャラクターでもある。
初恋の先で出会うであろう二人がどんな想いを抱くか、可能性は満ち満ちている。
なお、エレーナは志保に遺したカセットテープの中で11歳の志保へのメッセージとして「初恋」という話題に触れている。そして29歳の降谷と18歳の志保の年齢差は11。降谷が当時29歳のエレーナに出会ったのも11歳の時である。
劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』
公安警察・降谷零がメインキャラクターとして活躍する劇場版作品。
冒頭で国際会議場から謎の爆発が起き、現場の監視カメラの映像をテレビで観ていたコナンと灰原であるが、一瞬だけ映った安室の姿に灰原だけが気付き、それをコナンに伝える描写がある。
状況的にコナンが気付いてもおかしくないシーンであるにもかかわらず、降谷零メインの作品の最序盤で彼女に指摘させた采配に制作側の意図を深読みするクラスタが噴出したとかしないとか。
また灰原が推しているサッカー選手は「恋人はサッカー」と語っており、ほのかに降谷の名言を彷彿とさせるものがある。
関連イラスト
関連タグ
名探偵コナン 安室透/降谷零/バーボン 宮野志保/灰原哀/シェリー
以下劇場版最新作 黒鉄の魚影 ネタバレあり |
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劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』
黒の組織がシェリー=灰原哀の核心に触れる劇場版作品。
シェリー生存の可能性
原作でも降谷の中でシェリー生存および灰原哀=宮野志保の真実に勘づいているのでは?と読者が考察している状態で、今劇中においても未だ相見えることはなかった。
だがベルモットが奪った直美・アルジェントのUSBから"シェリー=灰原"の情報が明らかになったその場にバーボンが同席しており、ウォッカから報告を受けたジンから「拉致しておけ」との指示が出るや、警戒の心理を表すことで知られる腕を組む仕草が見られた。
そして組織の一部に"シェリー=灰原"の可能性が伝わったこと、ウォッカとピンガによる灰原強襲を事前にコナンへ連絡しようとするも一度目の電話は惜しくも繋がらず、灰原は攫われてしまう。
ベルモットをして"開けてはならない玉手箱"と評された認証システムは紆余曲折を経て組織の人間に精確性に欠ける欠陥品と思い込ませられることとなり難を逃れたが、エンドクレジット後の後日談において、降谷だけがベルモットが提示したシェリー似の画像はダミーである(=認証システムの精度に欠陥はない)ことをコナンに話している描写が示された。
これにより(劇場版は原作のパラレル的な位置づけではあるものの)、少なくとも降谷はコナンのそばにいる少女(灰原哀)がシェリーであり宮野志保であることを把握していることが言外に確定したと言える。
ハートの光明
志保の偽名「灰原哀」の下の名前が「愛」ではなく「哀」であるのには意味があると作者インタビューでも語られており、灰原哀=宮野志保にハートを連想するファンは少なくない。
上記の降谷からのコナンへの連絡はウォッカとピンガが灰原を攫いに向かった夜が一度目、そして二度目のコナンへの通告の際、降谷の背景に見える東都タワーの展望台の光が何故かハートマークを象っていたことから一部のクラスタの間で物議を醸している。
この時、さりげなくはあるが車のハンドルを指で叩くような仕草も見られた。
ちなみに降谷のスマホの背面には欠けたスペードが描かれており、二人はともにトランプの絵柄で暗示することができる要素を持ち合わせているとも考えられる。
それを踏まえてみると上記のキッドと降谷が邂逅したシリーズの序盤で安室が披露した手品にハートのAのカードが使われ、キッドによる種明かしではスペードのAが使われていたが果たして…?
重なる面影
予告映像で流れ、本編でも重要なシーンで使われた「バイバイだね… 江戸川コナン君…」は言わずもがなかつて降谷零がエレーナから告げられた「バイバイだね… 零君…」と酷似した別れの言葉であり、二人の台詞は対句のごとく表現されている。
本作品公開直前に地上波で放送された劇場版「ハロウィンの花嫁」の終了後に流れた特別映像【シークレットメモリー編】では降谷視点によるエレーナの記憶、そして「この少女は…まさか…!」とあたかも降谷が志保の正体に気付いたかのように見える演出が取られた。
劇中においてもアメリカ留学時代の志保の過去が描かれており、そこでクラスメイトの直美の回想と述懐から、当初から志保は人種による差別を見て見ぬフリをせず、虐められている者に衒いなく手を差し伸べるという、エレーナを想起させる慈愛を秘めていたことが窺える。