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青騎士(鉄腕アトム)

あおきし

手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の1エピソードと同エピソードに重要キャラクターとして登場する反乱ロボットである。
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概要編集

鉄腕アトム』の1エピソード。ロボットのみによる独立国の建国を叫び、人間とロボットの激しい対立を引き起こす「青騎士」なるロボットの主張にアトムが同調していくというストーリー。

鉄腕アトム』の中でも極めて問題意識の高いエピソードであり、『ケロケロエース』誌上で姫川明によるリメイク『青騎士 鉄腕アトム 青騎士より』(単行本全1巻)が連載されている。なおこの手のエピソードでは恒例のことだが、天馬博士が非常に重要な役回りで登場している。

漫画原作とその後に作られたアニメやそのリメイク等、それぞれに青騎士の設定が異なるが、基本的に青騎士の本名がブルーボンという所だけは共通する。


背景編集

この「青騎士」編が作られた背景には当時の社会風潮が深く関係している。

当時は左翼闘争や学生運動が盛んになっていた時期であり、既存の正義や道徳を軽蔑する風潮が蔓延していたため、それらをテーマにしていた鉄腕アトムは人気に陰りが見え始めていたのである。そこで時流に合わせて作り出されたのが「青騎士」編だったのだが、それまでのアトム像からかけ離れた展開に読者が離れてしまい、結果的に『鉄腕アトム』という作品自体にトドメを刺すことになってしまった。

手塚氏にとっても悔いの残る内容ではあったものの、「差別や迫害に対する弱者の蜂起」というテーマはしっかりと描かれているためか単体のエピソードとしては完成度が高い。

原作での青騎士編集

元々はロッス博士が造った3人の兄弟ロボットだった。しかし、その2番目に当たる女性のロボット・マリアがロボット嫌いでありながら彼女の美貌に惚れ込んだブルグ伯爵に嫁ぎ、そして虐待の末に破壊されてしまう。そのとき助けに入った末弟ロボット・トントも破壊され、最後に残った長兄ブルー・ボンが後の青騎士である。妹弟を殺され怒りに支配された彼は、伯爵の居城を襲撃するというロボットには不可能なはずの暴挙に走ってしまう。


一方、二人の破壊を嘆いたロッス博士はブルー・ボンの体に妹弟の顔と空気を出し入れすることで体を伸縮させる変身機構を組み込み、三人一体のロボットとして改造を施した。だが、この体を恥じたブルー・ボンは青い鎧と兜を着用して博士の下から出奔。ロボットを横暴に扱う人間たちを襲撃・殺害すると同時に、ロボットだけの国「ロボタニア」の建国を提唱する。世界各地で暴れる彼の姿は、人々から「青騎士」と呼ばれるようになっていく(ブルー・ボン自身はこの呼び名を快く思っておらず、アトムに対しても本名を名乗っているのだが何故か無視されている)。一方でブルー・ボンはトントとして小学校に通い、家ではマリアとして生活するという三重生活も送っていた。


やがてロボットの中にはブルー・ボンと同様に「人間への敵対心を抱く素質」を持った個体がいることが発覚。ブルグ伯爵や田鷲警部らは「青騎士型ロボット狩り」と称し、素質を持っているというだけで何の罪も犯していないロボットたちをも収容・解体し始めた。

こうした迫害にたまりかねたアトムはついに青騎士のロボタニア建国に協力。二人は伯爵率いる人間軍と戦い勝利するも、アトムは捕虜をも殺そうとする青騎士を制止、彼と再び対立してしまう。更にその場へロッス博士が駆け付けた。青騎士は自らの秘密を語ろうとする博士を殺そうと槍を投げつけたが、槍はロッス博士をかばったアトムに命中し、彼を完全に破壊してしまった。


不本意な形でアトムを破壊した事、そしてアトムの人間への無償の愛を見せつけられ反省した青騎士はロッス博士に自らの生い立ちを語ることを許し、お茶の水博士にアトムの修理を託してその場を去ろうとするが、自身の正体を明かす過程で鎧を脱いでいたことが仇となり、伯爵が不意討ちで投げつけた槍が腹を貫通。あっけなく爆発四散してしまった。


伯爵の卑劣さに怒ったお茶の水博士は、伯爵をその大きな鼻でしこたま殴り「ロボットどころか殺人鬼以下」と罵った。この後、破壊されたアトムはお茶の水博士には修理できず、生みの親である天馬博士が修理したものの、人間を軽蔑し身勝手に振る舞う冷血漢に豹変しまった。その変わりようはウランが戸惑うほどで、あたかも青騎士の怨念が乗り移ったかのような有様だった。


人間に家族を奪われ、生みの親に望まぬ身体を与えられたブルー・ボンの境遇は、お茶の水博士の評する通り「犠牲者」だったと言える。一方で彼の行動は人間のロボットに対する差別感情、敵対心を煽る結果となり、結果的にブルグ伯爵の思い通りの状況を作り出してしまった。安易な暴力の応酬の末、怨敵に殺された彼の末路は、あまりに皮肉なものだったと言うほかない。


なお、ブルー・ボン、マリア、トントのデザインはマグマ大使とその妻子であるモル、ガムのデザインが流用されている。



アニメ第1作での青騎士編集


声:金内吉男


アニメ第1作では人間軍との戦いまでは原作と同様だが、誕生の生い立ちは自ら語り、人間軍との決戦後に対立して破壊したロボットはアトムではなく、インカのロボット・クスコだった。当のアトムは青騎士が伯爵を殺そうとして投げつけた槍を受けたものの、右腕がもげた程度で原作のように致命傷を負うことはなかった。なお、アニメ版の伯爵は青騎士が弟妹に変形したことに慌て、原作と同様に槍を投げつけて青騎士を破壊したものの、その後足場の崖が崩れて転落死してしまった。


アニメ第3作『アストロボーイ鉄腕アトム』での青騎士編集


声:田中秀幸


青騎士


物語後半より主要的なキャラクターとして登場。ロボットが人間に虐待されている現場に現れては、ロボットを救う謎の青い騎士の姿をしたロボット。ロボット馬アオに乗って行動する。武器はサーベルを使用し、電撃を集めることでビームを発射できる。

元はハム・エッグが主催する闇ロボットクラッシュにて、選手ロボットを修理するロボット「ブルー・ボン」であったが、ハム・エッグの為にロボット達が傷つけられていくことに耐えられず、反抗するようになった結果、宇宙に廃棄されてしまい、そこに現れたシャドウに改造される形で青騎士に生まれ変わっている。過去の経緯から、ロボットが人間に服従することに疑問を感じており、自分の意志に同調するロボット達を同士として集めている。

当初とはアトムとも共闘するが、意見の違いから次第に対立していき、遂にはレッド将軍の元で働いていたAIロボット・キップの冤罪事件を決定打に我慢の限界を迎え、人間達のエゴで解体処分されようとしていたキップと同型のロボット達を救出。南極にて、自らが集めたロボット達と共に、ロボットだけの理想郷である独立国家「ロボタニア」の建国を宣言する。以降はロボットの理想郷の為ならば、人間との全面戦争も辞さない覚悟で、レッド将軍率いる精鋭部隊「ユリシーズ」と激しい戦闘を繰り広げるが、アトムの必死の説得を受ける上、人間との共存を望んだキップを始めとするロボタニアの一部のロボット達の意思を見て、人間の中にも自分達ロボットを愛してくれる理解者がいる事を理解し更生。シャドウの太陽系外宇宙への旅立ちに賛同し、ロボタニアに残ったロボット達と共に旅立っていった。


PLUTO』における青騎士編集


声:田中秀幸


青騎士だったらしい・・・


本作ではブルー・ボンではなく、ブラウ1589という名で呼ばれている。

名前こそ異なるものの『世界で初めて、自分の意志で人間を殺害したロボット』であること、外見が原作における青騎士の内部基礎フレームに酷似していると同時に、槍を主武装とすることや、その槍が腹に刺さっていること、1589年がフランスのブルボン王朝の成立年である等、青騎士をモチーフとしたキャラクターであることが要所で示唆されている。

ネットフリックス版アニメでも、上述したようにアストロボーイでの青騎士を演じた田中秀幸が演じている。


その存在を恐れた人間たちの手で半壊状態のまま地下に幽閉されているが、ロボット連続破壊事件の情報を求めるゲジヒトとの面会に応じ、優れた洞察力で事件の真相を解明していった。


なお、原作での「青騎士」編は「地上最大のロボット」編の後なので、ゲジヒトと青騎士が対峙する展開は原作に存在しない。



関連タグ編集


鉄腕アトム

青騎士


アトラス(鉄腕アトム)

原作での青騎士は「人間を殺害したロボット」としては二番目の存在であり、作中でも比較するような発言がある。しかし、アトラスが意図的に悪の心を埋め込まれた存在だったのに対し、青騎士は通常のロボットが憎しみによって人間と敵対・殺害するという考えに至った点で大きく異なる。また、アニメ第二作においては、慕っていた女性型ロボット・リビアンが破壊されたことでアトラスが自我に目覚めたという類似した展開があり、改造後は馬型ロボットに騎乗して人間と敵対する点など、原作における青騎士の立ち位置を兼ねたライバルキャラクターとして描かれている。


マグニートー

主な活動目的が「差別や迫害に対するミュータントの蜂起」で、青騎士と似ている。


ハンニバル・レクター

『PLUTO』での立ち位置はこのキャラクターに近い。

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