説明
「食い尽くし系」とは、家庭などの内向の場において、食べ物を独占して一人で食べ尽くしてしまうこと、またそれをする人を指す言葉である。「食べ尽くし系」とも言う。
日本のインターネット上では2017年頃から確認されており、広く使われるようになったのは2023年頃からと見られる。
他人のものを力尽くで奪うことからハラスメント、あるいは(配偶者やこどもなどの)同居家族の食べ物やストックしている食糧や菓子類を、その家族のものと認知していても横取りする場合にはDVの一種ともされる。
さらに、食べ尽くしを咎めたり食べ物を隠そうとすると逆上したり、虐待・嫌がらせを受けていると吹聴したりする人もいるとされる。
食い尽くすものは人それぞれで、文字通り「食べ物なら何でも食い尽くす」人もいる他、「肉ばかり」「濃い味付けのものばかり」「甘いものやお菓子ばかり」など自分の好きなものを狙って食い尽くす人も多い。
また、食い尽くし方もさまざまで「取り分け用の大皿に載っている分」や「箱に入っている分」といった「『取り分けられていないもの』の全てを『自分の食べる分』と認識して手を付けてしまう」タイプの他、「他人が既に手を付けている分まで横取りする」「贈答用であってもそこにあれば食べる」タイプまでいる。
インターネット上では男性に多いとされる。
また外食や、パーティーのような複数人の会食等では目立たないという意見が多い。
食い尽くし系は単なる大食い、食いしん坊と同一視されることもあるが、食い尽くし系は「自分以外の人の食べ物までをも奪って食べ尽くす」という点が特異とされる。
このため、自分で自分の食事を大量に作って(または買って)一人で食べ切るような人は「食い尽くし系」とは言わず、また勘違いで手を付けてしまった、相手から頼まれて食べ残しを片付けたような場合も同様に除外される。
また、食い尽くし系は「自分では買ったり頼んだりしない」「自分では作らない(調理をしない)」者が多いとされ、他者が買った(作った)食べ物を奪ってまで食い尽くす行為がインターネット上では批判されている。
亭主関白と食い尽くし系との違い
もともと一般的に男性は女性より多く食べ(個人差あり)、また家長として「肉や魚の一番良いところ」を食べて子ども達に威厳を示すケースがある。
これは亭主関白としての行動であり、腹を満たすためでなく自尊心を満たすためにやることであり、子どもから食べるものを取り上げたりはしないしそもそ威厳に関係ない甘味やお菓子等には手を着けない。
しかし、食い尽くし系は明らかに亭主関白を通り越した異常な行動を取る。
奥さんがハンバーグを四つ焼いたとしよう。
亭主関白は一番大きいハンバーグを要求するが、食い尽くし系は四つ全部のハンバーグを勝手に食べる。
食い尽くし系に至る背景
疾病または障害によるもの
強迫性障害や過食症(摂食障害)を抱える人の中には「飢餓感や『食べないといけない』という不安に駆られている」という人がいる。目の前の不安を解消するために無我夢中で食べてしまって、気がついた時には他人のものまで奪う形になっていた…ということが推測される。
ただし強迫性障害は他者との関係性の中で発揮されるものというよりはマイルールの徹底と言うべきもので、家族や友人関係の場のみで食い尽くしてしまうというのはやや違和感がある。
また過食症の場合は大まかな傾向として「隠れて食べる」「本人に強い罪悪感や後悔がみられる」というものがあるため、食い尽くし系の印象とはややずれると言える。
逆に言うとこの傾向がみられた上で本人も苦痛を感じていたり社会生活において重大な障害となっていると思われる場合は医療機関への受診を勧めたい。
適切な診断と適切な治療を受ければ落ち着く可能性がある。
他にも、知的障害や発達障害によって、その時々の欲求がうまくコントロールできない、自分のものと他人のものの区別がつきにくい人もおり、この場合も医療機関の協力により改善する可能性はあるだろう。
高齢者の場合では認知症、脳腫瘍などによる脳機能障害が原因のこともしばしばあり、それまで「食い尽くし」の傾向がなかったような人が急にするようになったときには医療機関への相談が推奨される。
また、そもそも満腹中枢に異常を抱えている人(食べても食べても脳が満腹を感じないため、幾らでも食べてしまうケース)もいるが、「他者の食べ物を奪ってでも食べたい」と考えるのは何か別の問題を抱えていると見た方がよいと思われる。
本人の性格、もしくは育った環境によるもの
- 「自分が食べたい量食べられれば他人はどうでもいい」という自己中心的な思考
- 貧困家庭や兄弟の多い家庭で幼少期を過ごしたため「食べられる時に食べられるだけ食べる」「早い者勝ち」といった考え方が根付いている
- 逆に、好きなものを好きなだけ食べても良い環境にいたため「他人の分」という感覚がない
- 食べることに集中するあまり他人のペースに合わせられない
- 「腐らせたくない」「余り物は食べたくない、食べさせたくない」などのマイルールが行き過ぎている
…などが挙げられる。
また、大皿料理の取り分けなどで順番を譲られたのを「自分は見ていないが相手が食べる分をすでに取り分けたのだろう」「相手はあまり食欲がないのだろう」と思い込んで平らげてしまったり、用意された「1人分」の量が不服でおかわりした結果他人の分まで食べてしまったりなど、そもそも一緒に食事をする相手や、作ってくれた人との相互確認を怠ることで起こっているケースも少なくない。
自分の気持ちをコントロールできないという問題、コミュニケーションや気遣いの不足をはじめとして、時には共に食事をしたり用意してくれたりする相手への軽視が原因となりえる他、育った環境やそれによって形作られる性格自体も、あくまで「食い尽くし」という行動に至る一つの原因に過ぎない。
創作における「食い尽くし系」
家庭における食事という身近な題材なためか、WEB漫画やYouTubeのスカッとする話(スカッと系)動画などで様々な「食い尽くし系」の話が投稿されている。
ただインターネットの常として嘘や誇張が含まれているものもあり、中には家のものを片っ端から食い尽くしているはずの夫が痩せていたり(これは極度の貧困家庭だったり、ヘビースモーカーで健康状態が悪かったり、過食と拒食を繰り返す病気だったり等のケースがある)、そもそも「いつもの量」とする食事の量が他人から見ても少なかったりと、単に食い尽くしている方が悪と断ずることが難しいものもある。
相互のコミュニケーション不足が一因となるのは先に述べた通りであり、また他人の家庭の事情やそこへ至るまでの経緯を書き込みひとつから正確に推し量れないのも当たり前のことであるため、あくまで創作として楽しむに留めたい。
反論
反論として、一部の男性(特にアンフェをはじめとする男尊女卑志向の強い者達)からは「夫や恋人などの男性が食べ尽くし系になるのは、食事を用意する女性の側が、男性の食事量(必要摂取カロリーや塩分、タンパク質などの栄養素)を低く見積もっているから」という声が見受けられる。
事実、男性の一日の摂取推奨カロリーは同等の運動習慣をもつ女性のそれと比して500〜600kcalの差があり、約1.2〜1.3倍のカロリーの摂取が推奨されていることとなる。
例えば、おかずは同じ量としてご飯の量で調節するとなると、この差を埋めるには一合ものご飯が追加で必要となるが、実際にそうするのはやや無理がある上、栄養バランスの観点で望ましくないことは言うまでもない。
ご飯を大盛りにして解決という問題ではなく、まして夫婦や恋人同士で同程度の食事量であれば男性に不足が生じるのは当然と言える。
が、だからと言って他者の食事や取り置きまでもを無断で食い尽くして構わないということにはならない。「足りない」と感じているのなら自分で食べたい分を用意するか相手にその旨をきちんと伝えて用意してもらうべきであり、そういった努力も抜きに相手を一方的に非難すると却って自分の立場を悪くしかねない。
また同様に、一方的に「食い尽くし系」と断ずることも論外である。「相手が食い尽くし系だから」と自らを被害者の立場に置く前に、相手がどのような理由で何を感じどう考えてその行動をするに至ったかを考えることが必要だろう。
文字通り同じ釜の飯を食うほどの仲であればまず対話ができない関係性ではないだろう(対話すらできない関係性なら食い尽くし系云々以前の問題である)から、まずは食事量のすり合わせをはじめとした価値観の共有をすべきだろう。
対策など
食べ尽くしをしている人に対しては、基本的に「あなたは他人の分まで食べてしまっている、食べられて困る人がいる」ということを伝え、「満足する量はどの程度か」などのすり合わせを積極的に行った方がよい。
食べて欲しくないものを別の棚に置き、そこにあるものには手を出さないとして認識を一致させておくのもよい。
病気や障害などの本人には改善の難しい要因がある場合には、医療機関を受信した上で、治療やカウンセリング、トレーニングなどそれぞれに効果的な方法で「食事」について見直すことで改善を目指していきたい。
しかし、食い尽くしを指摘しても全く改善しない、それどころか逆上して暴力に発展したという場合は即座に距離を置くべきだろう。夫婦など家族間の場合は公的機関や弁護士などに相談したうえで、第三者を挟んだ形での話し合いの場を設けることが効果的である。
そして、他者が一方的に「食い尽くし系」「ハラスメント」「DV」と決めつけるのは望ましくない。パチンコにハマる配偶者から財布を取り上げたのを経済DVと、あるいは暴れる配偶者を取り押さえたのを身体的DVと弁護士に相談し、弁護士が困り果てるというケースも少なくない。あくまで一方からの情報発信として認識し、冷静な判断を心がけたい。
まずはあくまで当事者間のものとして、相互のコミュニケーションを勧め、解決を促すべきだろう。
最後に
これらの問題で当事者同士の話し合いで解決が難しい場合は公的機関に相談することをお勧めする。
「腹は立つけどこんなこと相談するのは恥ずかしい」と思っているあなた、もしあなたの住む町で災害が起きたらどうする?
平時でさえ自分を律することが出来ない人間が非常時にどうなるかは火を見るより明らかである。
実際、震災で避難所生活をしている時に配給される食事を配偶者が分けずに食べ尽くしてしまったケースでガチの離婚になった案件もある。
医療機関に相談したことで何らかの疾患が見付かり改善の糸口が見つかるケースもある。
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- 認知症:高齢者の場合このケースも。