鵯越えの逆落とし
ひよどりごえのさかおとし
平家の本拠地であった「福原京」に源義経らが攻め入ろうとした際、西側の防衛拠点であった「一ノ谷」を突破するために起こした戦闘。
「逆落とし」とは「逆さまに落ちるように急な斜面を駆け下りる」の意とされる。
福原京は現在の神戸市「兵庫区」から「中央区」にかけて、一ノ谷は同「須磨区」の西端付近に造営されていた。
この一帯は六甲山系と瀬戸内海に挟まれた狭い平地が広がっており、特に一ノ谷は海岸間際まで険しい山々の迫った天然の要塞であった。これより西は現在でも隣の「垂水区」に入るまでほとんど人の居住が無く、道路と線路だけで平地が埋まるレベルである。
ちなみに東側の防衛拠点は「生田川」という川。氾濫や治水による変化はあったものの、こちらも近代に至るまで集落の境界になっていたほど人の往来を阻んでおり、武士らしい非常に強固な都市計画をしていたと言える。
そこを山を強行突破して敵陣の背後に回り込み、奇襲を仕掛けて一気に陥落させたというのがこの戦闘の要旨である。
『平家物語』によると、元々義経は奇襲を画策しており地元の猟師に道案内をさせようとしたが、「馬が通れるような山ではない」という理由で反対されてしまった。
しかし、詳しく尋ねると鹿は通っているという。
そこで「鹿が通えるならば、馬も通えよう」とこの戦術を決断したとの話である。
予想外の所から現れた源氏軍に一ノ谷の平家軍は大混乱に陥り、垂水側に展開していた源氏の分隊と挟み撃ちになる形で瓦解したと伝わる。
この救援のため、優勢だった東側からも兵を回さざるを得なくなり、戦局は急速に悪化。最終的に平家は福原京を放棄して、船で中国地方方面へと敗走してゆく事となる。
これまで一度も「鵯越え」という単語が出てきていないが、これには地名として取り上げにくい事情がある。
同じ神戸市内には、「鵯越」として今も呼ばれる地域も存在してはいる。ただしそこは、現在の「兵庫区」から「北区」にかけての一帯で、一ノ谷から8kmほど北東の内陸部である。
この付近を源氏軍が通過した記録自体は残されているものの、「鵯越」を駆け下りてしまった場合、それはもう福原京中枢を直接叩きに行った方が圧倒的に早い位置関係になってしまう。
実際そのような動きをした分隊はあり、「夢野口の戦い」などと呼ばれる戦闘を起こしているものの、義経の活躍として伝えられている内容とは全く異なるものになる。
こうした事から、一連の伝説には『平家物語』の成立過程で追加された創作が多分に含まれているのではないかとする指摘も存在している。
| 以下、解説に性的な表現が含まれます。 |
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プロレスなどにおいて、「文字通り相手を逆さまに落とす技」の意で「逆落とし」が用いられる事もある。
大変危険な行為であるため、特別な訓練を受けた人間以外は絶対に行ってはならない。
また、四十八手（48手）の一種としても両者の中間的なニュアンスで伝わっている。
そもそも四十八手には「鵯越え」という技があり、現在の「後背位」に相当する。
その状態から結合を解き、攻め手が受け手の下半身を持ち上げてゆき、最終的に顔の高さに股間を持ってきて舐める行為とされている。
・・・別の意味で上級者向けである。
しかも肝心の身体を持ち上げる理由がはっきりしておらず、「逆落とし」と言いたいがためだけの一発ギャグという可能性すらある謎の伝承となっている。
