進化する恐怖
最大の特徴は、感染した生物が突然変異を繰り返すことにある。
T-ウイルスも遺伝子に作用するが、主な効果は肉体の強化と狂暴性の増大であり、外部からの刺激がない限り大きな変化はほとんどなかった。
しかし、このG-ウイルスにそんな制限はない。
感染した生物の遺伝子そのものを、“短期間に”、“何度も”、“自発的に”変異させ、全く別種の生物へ『進化』させるのである。
変異後の姿形は誰にも予測できず、どんな手段をもってしても制御することはできない。
進化を繰り返した末に「最終成体」となるのかもしれないし、あるいは崩壊して消滅するのかもしれない。
その不安定さゆえに兵器としては全く適さないはずだったが……
開発の経緯
発見されたのは、アンブレラがアメリカでのウイルス研究拠点としていた「アークレイ研究所」。
ここには設立当初から人体実験を受けつつ生き永らえている『女の実験体』がいた。
どんな実験にも耐えてしまう生命力以外は有用なデータを取れない「デキソコナイ」と呼ばれていたが、“ある実験”をきっかけに驚愕の事実が判明。
その体内ではこれまで投与されていた実験用ウイルス全てが共存、変異し続けており、20年以上の時を経て新たなウイルスへと進化していたのである。
これに気づいた主任研究員ウィリアム・バーキンはこれを抽出して特性を極限まで高める「G-ウイルス計画」を立案し、スペンサー会長はそれを承認。バーキンは妻のアネットと共にラクーン市内の地下研究所へ転属し、そこでこの神の如き力を持つウイルスの研究に明け暮れるようになったのである。
その先に待つのが全ての破滅であることなど、知る由もなく……
大災害
こうしてG-ウイルスを完成させたバーキンだったが、その研究成果を独占しようとするあまり上層部と対立してしまう。
再三にわたる成果の提示を拒まれ、業を煮やした上層部はついに工作部隊を研究所に派遣。同行を拒んだバーキンは撃たれ、助からない傷を負ってしまう。
しかし死の間際、彼は自らの身体にG-ウイルスを投与して、異形の怪物『G生物』に変貌。部隊を壊滅させてウイルスを取り戻し、二度と奪われないよう喰ってしまった。
そして、その際に流出したT-ウイルスがネズミやゴキブリに感染し、下水道を通って拡散。ラクーンシティは未曾有の生物災害に襲われることとなった……
G生物
G-ウイルスによって生み出された怪物の総称。
感染した生物はウイルスが産み出す「G細胞」に身体を侵食されて異形の姿に変貌してゆく。
身体の表面はいびつで赤黒い筋肉組織がむき出しとなり、また皮膚のどこかに巨大な眼球が生えるのが特徴。
素体となった生物の意識は徐々に消失し、他の生物に胚を植え付けて繁殖する欲求に支配され、近い遺伝子の生物を無差別に襲うようになってしまう。
身体能力はT-ウイルスで産まれたゾンビなどとは比較にならぬほど高く、重火器による攻撃を受けても致命傷には至らない。それどころか受けた傷を引き金としてさらに強靭に、戦闘に適した形態に身体を変形させてゆく。
ただし胚の定着率は極めて低く、遺伝子が親子ほど近くないと安定しない。大抵の場合は拒絶反応を起こして宿主の身体から飛び出し、不完全な姿のまま急速に巨大化。繁殖能力も持たぬまま彷徨い、一生を終えることになる……
以下、G生物と化した者の紹介。
G(ウィリアム)
G-ウイルスの開発者であり、皮肉にも自身の身体をもって研究の成果を披露することになった者。『バイオハザード2』で登場し、怪物と化して実娘シェリーを付け狙い、その過程で主人公レオン、クレアと死闘を繰り広げる。
第1形態
ウイルスを投与したばかりの状態。一見ゾンビのように見えるが、ウイルスを打ち込んだ右胸から手先がG細胞に侵食されており、戦闘が始まる前にその部分が肥大して肩から赤い眼球が覗く。右腕はすさまじい怪力を発揮し、鉄柵を引きちぎって武器として使用。反面、身体が左右非対称になって重心が狂い、よろめきながら歩くため移動は遅い。
『RE:2』ではいきなり変形した状態で現れ、距離があると走って接近してくる。またゲームシステムが変わったことで頭部や右肩の眼球が弱点となっている。さらに時おり「殺してやる」、「助けて」としゃべる所から辛うじて意識が残っている模様。
第2形態
さらに侵食が進んで、G生物独自の器官が作られ始めた状態。左腕を除く上半身にG細胞が行き渡り、身体が一回り巨大化。右手には長大な5本の爪が生えており、『RE:2』ではなんとタイラントを斬り裂いて倒している。さらに腹部にも腕らしきものが見える他、脊椎から新たな頭部が生えて、不要となったウィリアムの頭部は体内に埋没している。
ガンシューティングゲーム『ダークサイドクロニクルズ(以下DC)』では後述の第4形態までの連戦になる。
第3形態
左腕も右腕と同サイズになり、代わりに腹部の補助腕が本来の腕の位置に移動した。全体像はまるで翼を持つ悪魔のようで、不気味ながらもスマートで整った姿は全形態の中で一番好きというプレイヤーも多い。さらに胸部が盛り上がるほど心臓が発達し、左太股にも眼球が生えるほどG細胞が下半身を侵食。強靭な脚力で跳躍し、爪で何度も切り裂く他、『DC』ではスタイリッシュな回し蹴りを披露。
『RE:2』ではより巨大かつ歪んだ体型になり、威圧感が増大。4本の腕で研究所の柱や壁の鉄板を引き剥がして投げつけるなど別次元的な怪力を見せる。また背中にも眼球があり、3つ全て破壊しないと胸の中にある核が現れない。
第4形態
最初は第3形態に似ているが、胸の部分が裂けており、戦闘中にダメージを受けると一気に変異。わずか十数秒で骨格まで組み変わり、四足歩行の獣型に変貌。頻繁に高台へ跳躍したり、壁を蹴って三角跳びしながら襲いかかってくる。さらに『DC』では壁に張り付くことも可能。下顎は大きく裂けて胸部と一体化し、鋭い牙で生物を手当たり次第に噛み砕く。
『RE:2』では姿形が大きく異なり、ダメージで崩壊しかけた身体を補食によるエネルギー補充でどうにか繋ぎ止めている状態。身体が縮んで補助腕を失い、全身の筋繊維はほつれたように隙間だらけで、所々に未消化のゾンビの腕が見える。動きも鈍重だが遭遇する場所が狭いため、高台からの強襲や腕を振り回しながらの突進は回避が困難。
そして、これを倒しても……
第5形態
ダメージを回復するために手当たり次第に生物を取り込んだ結果、身体が急速に膨れ上がり、原型をとどめぬ肉塊と化してしまったG(ウィリアム)。あまりにも大量に取り込んだため、所々に未消化の生物の身体が残っている。軟体動物のような身体で狭い隙間にも自在に入り込み、元は腕だった触手を振り回して獲物を引き寄せ、巨大な口で噛みつく。その巨体はロケット弾が直撃しても死に至らず、不死身とも思える生命力を持つ。
ラクーンシティ脱出中のレオンとクレア、シェリーが乗る列車に入り込み、執拗に彼らを追い詰めるが、最後は列車の自爆装置に巻き込まれ、完全に消滅した。
だが、もしこの怪物がラクーンシティから生き延びて、さらに進化を続けた場合……アメリカを、そして世界そのものを飲み込んでしまうのかもしれない……
『DC』『RE:2』では口内の眼球が弱点。また『DC』ではなんと記憶が残っているらしく、シェリーの名を叫んだりする。
G成体
Gの胚が植え付けられた人間の遺伝子と拒絶反応を起こし、体外に飛び出した後に急速に巨体化したもの。その際に宿主は身体を大きく引き裂かれて確実に絶命する。顔に目鼻口があることと手足の一部は人間と似ているが、それ以外は似ても似つかぬ醜悪な肉塊のごとき怪物と化している。G(ウィリアム)と比較して身体の強度ははるかに劣るが、それでもゾンビよりはずっと危険で、丸太のような片腕で殴りかかってくる。
『RE:2』ではさらに奇形となり、なんと顔が十字に割れ、そこからミミズのような細長い口を伸ばし毒液を吐き出す。さらにG(ウィリアム)が手当たり次第に胚を人間に植え付けたのか、下水道に大量に出現する。
- G幼体
- G成体が口から吐き出す幼体。楕円形の身体から6本の触手と1本の尻尾が生えており、身体の裏にある人間と同じ歯が並んだ口が非常にグロテスク。獲物の身体の柔らかい場所を狙って噛みつく習性があり、人間が取り付かれた場合はすぐに剥がさないと頸動脈を噛み切られて絶命してしまう。なお、本体が不完全であるため、これにも生殖能力は備わっていない。
- 『RE:2』ではこれも毒性を宿しており、獲物に接近した後、自爆して毒液を撒き散らす。
G変異体
バイオ初のオンラインゲーム『アウトブレイク』に登場。すでにある程度育っていた胚が、さらに他の人間の体内に寄生したもので、再び拒絶反応を起こして飛び出し、推定3メートルの巨体に変貌。通常のG成体と比べてやや人間に近い姿をしているが性質は狂暴で、鋭い爪を持つ長い腕でなぎ払い、酸性の体液を撒き散らす。女性に寄生したためか、背中の大きく膨れ上がった肉塊が長髪に見えなくもない……
感染力と治療
伝染性については全くの不明で、感染者は全て注射器で直接ウイルスを体内に投与されたか、胚を植え付けられている。
体内に保菌しているはずのG生物に殺害された者は誰も変異していないため、T-ウイルスのような体液を介しての感染力は低いのかもしれない。
しかしG生物自体の危険性から、後に世界規模で設立された対バイオテロ部隊ではG-ウイルスによるバイオテロ発生を確認した場合は全支部で警戒レベルが最大に引き上げられるほどに対策を徹底している。
治療法については、アンブレラの地下研究所で「DEVIL(デビル)」という名のワクチンが開発されている。現状これのみが対抗手段で、大量のG-ウイルスを自ら投与したバーキンは即座に発症してしまったが、胚を植え付けられて徐々に症状が進行していた一人の少女はかろうじて命を救われている。
改良型
上記の通り、兵器運用には全く適さないシロモノだが、アンブレラの科学力と人の欲望はすさまじく、研究を繰り返して改良型が産み出されている。
T+G-ウイルス
『バイオハザード HEROES NEVER DIE』で登場。
アンブレラの幹部モーフィアスが開発したもので、『T』と『G』二つのウイルスを遺伝子レベルで融合させて産み出された。
適合者はなんと電気を発することが可能で、自身の周囲に銃弾を寄せ付けないほど強力な電磁バリアを作り出すことができる。
C-ウイルス
『バイオハザード6』で登場。
アンブレラの壊滅後、新たに表出した組織「ファミリー」が開発したもので、開発者はカーラ・ラダメス。
『G』と、それの原型である『始祖』、もう一つの改良型ウイルスである『T-Veronica』と、三つものウイルスを利用して開発された。
感染者はT-ウイルスと同じようにゾンビ化しながらも人間としての知性を残しており、武器を用いて人間を襲うようになる。
さらに時間が経つと蛹(Chrysalid)に変態し、孵化すると宿主の遺伝子ごとに異なる姿の完全変異種となる。
関係者
ウイルス作成、他深く関わった人物。
余談
名前の由来は長らく不明だったが、設定資料集などからプレイヤーの間では「GOD(神)」や「Golgotha(イエス・キリストの処刑された地)」等ではないかと噂されていた。
そして2019年、バイオ2のディレクター神谷英樹氏が海外のとあるゲーム実況動画に出演した際、実際にこれらの重要な単語の頭文字から取ったと説明された。
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