概要
Apple社の小型デスクトップパソコン。近年のパソコンで流行しているミニPCの元祖的存在であるが、Mac mini自体はミニPCには含めないこともある。
現行Macintoshの中では最小かつ最も低価格な製品ラインで、初代モデルは5万円台、現在でもローエンドは10万円未満をキープする。
ディスプレイをはじめキーボード、マウスなどは別売りで、ユーザーが揃える必要がある(BYODKM;bring your own display, keyboard and mouse)。別の言い方をすると、(Windows向けに作られたものも含めて)好みのキーボードやディスプレイ、ポインティングデバイスを使い回せる。他のパソコンとキーボードやマウスを共有し、切り替えて使うユーザーもいる。
よく知られているように、Appleは自社製品の品質について厳しいこだわりのある会社である。オールインワンモデルであるiMacやポータブル製品(MacBook Air、MacBook Pro)は、ディスプレイの色の再現性にしても、スピーカーの音質にしても、付属のキーボードやトラックパッドの使い勝手にしても、実にAppleらしい世界観が貫かれた仕上がりになっているが、Mac miniは「本体だけを用意したからあとはサードパーティ製品を選んで組み合わせて」という、ある種Appleらしからぬコンセプトに基づいたパソコンである。もちろんApple純正のアクセサリを組み合わせてもよい。このように、低価格だからといって必ずしも入門機というわけではなく、どちらかというとコスパ重視のユーザーや、独自のこだわりのあるPCユーザーの取り込みを狙っている。
Apple独自SoCであるAppleシリコンに移行後は、(特にGPU性能において)他社のミニPCを突き放す圧倒的な高性能を実現しており(ただし、メモリやSSDなど一切の内部増設が不可)、M2世代以降はさらなる高性能を求めるユーザー向けにProモデルも用意している。他社の同等製品に比べて性能が良くかつ消費電力が少ないことから、サーバーに使われることもよくあり、過去には純正のサーバー用モデルが販売されていたこともある。
各世代
Mac mini(ポリカーボネートボディ)
2005年の1月に発売。発表時にはそのデザインと5万8590円という低価格が話題となった。本機のような弁当箱サイズのミニPCは今でこそWindows機でも一般化しているが、当時としては画期的な存在であった。ボディこそ16.5cm角と小さいものの電源は外付けであり、これが結構かさばったが、当時の技術的制約からやむを得ないものであった。CPUは型落ちになりかけていたPower PC G4プロセッサ、低容量なノートパソコン用の2.5インチハードディスクなど、当時としても決して性能が高かったわけではなかったが、同価格帯のWindowsマシンではあまり例がないようなFireWire 400ポートや独立GPU(ATI Radeon)を搭載してフルHD出力に対応していたり、まだデスクトップパソコンでは搭載が一般化していなかった無線LANやBluetoothを搭載したモデルがあったりと、随所に尖った仕様も見受けられた。
2006年にデザインはそのままに、Intel Coreプロセッサに切り替えた。この頃のアルミニウムとポリカーボネートを組み合わせたボディはユーザーによる内部拡張を前提とした設計にはなっておらず、メモリ増設やハードディスクドライブの換装は可能だが分解にコツが必要である。
Mac mini(アルミユニボディ)
2010年06月にアルミニウム削り出しの新ボディとなった。19.7cm角とサイズは大きくなったが厚みは3.6cmと薄く、アルミ製の弁当箱を思わせるデザインである。このボディは底面のフタを簡単に開けてメモリを交換・増設することができる。また電源を内蔵し、すっきりとした外見になった。新たにHDMI出力に対応、SDカードスロットを搭載した。
2011年の7月のMid 2011から光学ドライブが廃止(サーバモデルはそれ以前から光学ドライブ無しだったが)され、Thunderboltポートが搭載された。2014年10月のLate 2014では4Kモニターをサポートしたが、メモリが基板に直付けになり、購入後の増設ができなくなった。その後Mac miniは4年間モデルチェンジがないまま放置され、モデル廃止の噂が飛び交った。
2018年に4年ぶりに登場したMac mini(2018)は、色がそれまでのシルバーから黒っぽいスペースグレイに一新され、従来のUSB-Aに加えてUSB-C(Thunderbolt3)ポートを搭載。5Kモニターをサポートし、最大で3台まで外部ディスプレイを接続できる。また、(Spudgerと言われる工具を使って蓋をこじ開ける必要があるが)メモリが再びアップグレード可能となった。内蔵ストレージはハードディスク非対応になり、SSDが標準となった。SDカードスロットは廃止された。性能が大幅に引き上げられた代わりに、価格も8万9800円からと値上がりしたが、それでも最も安価なMacである。
2020年、ボディデザインはそのままにAppleシリコンを搭載したM1モデルに移行。ボディカラーはシルバーに戻った。外部ポートなどはMac mini(2018)を踏襲するが、外部ディスプレイ接続が2台までに減っている。先代モデルと同様、底面のフタは比較的簡単にこじ開けることができるが、メモリ拡張やSSD換装など一切の内部拡張ができなくなったので意味がない。Appleシリコンは発熱がとても少なく、基板も冷却機構も小さいので内部はスカスカである。
2023年1月にApple M2及びApple M2 Proを搭載したモデルに移行。M2 Pro搭載機は同時に発売されたMacBook Proに匹敵する性能を誇り、8K出力と最大3台のマルチディスプレイに対応、4K240Hzの高リフレッシュレートのモニター駆動にも対応した。折からの円安でApple製品の価格も軒並み値上げされる中、M2 miniの価格は(わずかにだが)引き下げられ、8万4800円からとなった。それでいて同じくM2プロセッサを搭載するMacBook Airより性能は高く、miniのコスパが際立つ形となった。
Mac mini(現行)
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2024年11月8日発売。M4プロセッサを搭載し、12.7cm角のコンパクトボディに生まれ変わった。厚みは5cmと以前よりは少し分厚くなり、初代のMac miniを彷彿とさせるコロンとしたプロポーションに回帰した。このサイズで電源まで内蔵したミニPCは異例であり、発熱の少ないAppleシリコンの強みが生かされる形になった。背面にはThunderbolt 4(USB-C)を3基とLANポートを搭載したほか、前面にUSB-Cポートを2基とステレオミニジャックを搭載する。
M4 Proモデルも用意され、こちらは外部ポートがThunderbolt 5となる。価格はM4、M4 Proモデルとも前世代からほぼ据え置きであるが、ローエンドは9万4800円からと少し値上がりした(ただ、標準搭載メモリが16GBに増えたので、コスパはむしろ良くなったと言える)。
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