概要
『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2002年27号 - 2005年39号 / 全12巻
鎌倉を舞台にした、新人類を巡る一連の争いを描いていく作品。
単行本の表紙を見れば、たいていが萌えキャラの一枚絵ばかりで「女の子がたくさん登場するラブコメか?」と思うだろうが、残念ながらそれはこの作品の極一部の要素に過ぎない。
この作品の基本設定はSFであり、そこに萌えとすさまじいグロ、児童虐待などの差別問題をぶち込み、どこかずれた連中によるナンセンスギャグで味付けした文章で伝えるのが非常に難しい作品となっている。どこかしらに『ラブひな』やら鍵ゲーなどの影響が見られるが、それでいてなぜこんな作品になったのかは誰にもわからない。
「表紙詐欺漫画」「ハートフルボッコアニメ」といえば、たいていこの作品が候補に挙がります。
余りのグロさに検索してはいけない言葉の一つになっている。
また、展開の読めなさにも定評があり、例えば重要そうなキャラが次のページでいきなり首チョンパ!というのはよくある展開である。ゆえに、誰が助かって誰がいきなりピンチになるのかまったく予想できないところがある。
だが、この作品の登場人物はみな差別や劣等感などによる孤独や不幸を抱えており、彼らが救われ報われるのか?ということがこの作品のメインテーマと言えるだろう。
冨樫義博のお気に入り作品で、岡本倫が短編集を出したときには推薦文を寄稿している。
作者・岡本倫のデビュー作となった読み切り漫画も『エルフェンリート』だが、タイトルが同じだけでまったく別の内容(主人公の男性ピアニストと、バイオリンに転向して一流の奏者となった元天才ピアニストの女性の友情物語)を扱っている。
ストーリー
離島に建つ国立生態科学研究所。その地下には重厚な扉の中に警備員と拘束具によって厳重に隔離された少女がいた。ルーシーと呼ばれる彼女は人類(ホモ・サピエンス)の枠を越えた突然変異体であり、側頭部の対となる角とベクターと呼ばれる特殊な能力を持つ二觭人(ディクロニウス)のオリジナルであった。
新たな種が既存種を淘汰する可能性を怖れ、国家機密に等しい研究が秘密裏に行われる中、ルーシーは移送の隙を突き、捕獲に迎え撃つ警備員や居合わせた室長秘書をグチャグチャにしながら屋外へ脱走。岸壁に佇んだ際に対戦車用徹甲弾の衝撃を頭部に受け、海へ落下する。
大学進学のため親戚が経営していた楓荘に下宿が決まったコウタは、迎えに来た従姉妹のユカと再会。8年ぶりなためか記憶の曖昧なコウタだったが、ユカの案内がてら由比ヶ浜を散策中に海の中から現れた全裸の少女と邂逅する。「にゅうにゅう」としか口にしない彼女は頭部から出血し、その側頭には角のような何かが2本見えていた。
明らかに訳ありな少女を放っておけず、2人は連れ帰って保護する。彼女が人類滅亡の脅威であることを、コウタもユカもそして記憶障害を起こし「にゅう」と名付けられた少女自身も知らないまま、奇妙な同居生活が始まったのだが…。
登場人物
CV:小林沙苗
すべてのディクロニウスのオリジナルとも言える存在で、彼女らディクロニウスのベクターを受けた人間から生まれる子供は、早熟で生殖機能を持たないディクロニウスの女(ジルペリッド)となる。ベクターは一種の生殖器官で、上記の現象を起こすレトロウイルスを人間に植え付ける。おまけに人間には不可視で、高周波振動によっていろいろな物(主に人間)をぶった切るという物騒な代物。
ルーシー人格の時は凄惨な人生を送った経緯もあって、旧人類を撲滅せんとするDNAの声に突き動かされるように人を殺し続ける殺人鬼である。
例外は犬とコウタと蔵間。特にコウタに関しては、今で言うツンデレ&ヤンデレの傾向あり。
にゅう人格の時は、純粋無知で「にゅう」としかしゃべれずに色々やらかしちゃったりしていたが、8巻以降は普通のキャラに。
コウタ(耕太)
CV:鈴木千尋
本作の主人公…かもしれない。
本人は覚えてないがルーシーとは浅からぬ関係にあるようだ…。
CV:細井治
本作一の狂言回し。国立生態科学研究所室長。
妻には先立たれるわ、生まれてきた子供が危険すぎるディクロニウスだわ、その娘を人質に取られるわ、ルーシーに因縁つけられるわ、ナナに慕われても使い捨て扱いにせざるを得ないわと酷い不幸とジレンマの中にいるかわいそうな人。
CV:能登麻美子
コウタの従姉妹。コウタLOVEで焼きもち妬き。
…出番もそれなりにあるけど、他の面子が強烈過ぎてあまり書くことがない。
CV:松岡由貴
蔵間を父親と慕うディクロニウスの少女。名前は研究所のコードナンバーからの自称。
ルーシー戦でそこそこいい勝負をするが、最終的には両腕両足をぶった切られる。
その後は義肢をベクターで動かして日常生活を送る事に。
基本的に人懐っこく、健気でディクロニウスの本能にも飲み込まれなかったため、読者からはすごい人気者。
なんか、連載のネームで唐突に生まれたキャラらしいよ!
マユ
CV:萩原えみこ
母親の再婚相手の養父に性的虐待を受け続け、下着セーターで家出した女子中学生。
由比ヶ浜のボートハウスにわん太と共に住み着くが、後に楓荘の住民に。
坂東さんとは何だかんだいって仲良しである。
わん太
犬みたいな不思議生命体。
アニメでは岡本倫がデザインに口出しした影響なのか普通の犬になっていた。残念…?
CV:中田譲治
警視庁特殊急襲部隊(通称:SAT)の隊員。
左右片手でマグナム銃を扱う戦闘力を持ち、「合法的に人を殺せるのでSATに入った」と自称する危ない人。
逃亡したルーシーを捕獲するために、由比ヶ浜へ向かい本人と交戦。
漫画版ではマシンガンで岩真っ二つという人間を超えた曲芸を見せるも、あっさり敗北。
他のメンバーと右腕両目を失うという惨々たる結果に。ルーシーひどいよ…。
その後、義眼義手を入手し、由比ヶ浜で敗北の一因となった浜辺のゴミ拾いにせっせと勤しむ日々を過ごす。
色々あって、念願のルーシーとのリベンジ戦が成立するが…結果は自分の目で見てほしい。
アニメ版では出番的な意味でかわいそうだった人である。
CV:川上とも子
蔵間の娘でもっとも危険なディクロニウス。
5歳という若年齢ながら、驚異的な射程のベクターを誇り、子供らしい無邪気な残酷さで人を殺していくため、全身数箇所に爆弾を埋め込まれ専用の部屋に隔離されていた。
父親の蔵間に対しては愛憎織り交じる複雑な感情を持っているようだ。
ルーシー戦の途中でルーシー→にゅうみたいな人格変化を一時的に起こすが、ネーム上の苦肉の策であり、流石の岡本倫も『「みゅ?」ってなんだよ!!』と自問自答したとか…。
荒川
CV:石原絵理子
研究者のお姉さん。忙しくてお風呂に入れないことをいつも気にしている。
物語上ではベクターウイルスワクチンの開発を引き継ぐという重要な役割を与えられているが、基本的に読者からはネタキャラ扱いされている。詳しくは原作を読んでほしい。
蔵間の秘書。東大出身の才女だがスーパードジっ子でもある。
通称3分ヒロインで1話の時点でマミられてしまう。
角沢長官
国立生態科学研究所のトップに立つ男で本作の黒幕的存在。
本来総理大臣の特権であるSATの出動を命じることができるなど凄まじい権力を持つ。
頭に角が生えている人類をディクロニウスだと思っており世界を支配せんと言わんばかりのトンデモナイ奴。ちなみにヅラでとったら角がある。
角沢教授
コウタとユカの通う大学に赴任している教授で角沢長官の実子。元国立生態科学研究所の研究員で室長。
ベクターウイルスのワクチンの研究をしている。
頭脳こそは抜きんでて優れているが人間性にはかなり問題のある人物でそれ故僻地に飛ばされたという噂もある。
大学で偶然見かけたにゅうを捕まえることに成功し、新人類を生むべく情事に及ぼうとするが覚醒したルーシーにより首チョンパされてしまう。通称タコボウズ
ちなみに親父と同じくヅラで頭に角が生えている。
元研究員。蔵間の部下だったがベクターウイルスに感染し娘がディクロニウスになってしまう。
ソンナコトボクニケツダンデキルワケナイデショー!
アニメ
そんな今作、まさかのアニメ化を果たしている。監督は神戸守。放送は2004年7月から10月まで全12話。
連載初期の絵の酷さが嘘みたいな綺麗なキャラデザと能登ボイスによる予告編にわくわくした視聴者を、「ドジッ娘開幕5分で首チョンパ!」という強烈な幕開けで歓迎してくれた。
一応、R-15アニメという事前通知やグロバージョンのCMもあったのだが、とても同じ作品によるものだと思ってくれなかったようだ。後述のPV参照。
構成的には尺の関係で、7巻までの内容を職人の力技で12話で終わるように纏め上げた作品である。
どちらかというと、グロとルーシー無双が大ウケしたガイジソの知名度・人気度が異常に高い作品となっている。
ニコニコ動画的には幼ルーシーのあるシーンが「明るい歌を歌って欲しかったシリーズ」の元ネタとして有名。
番宣PV
能登ボイス
R-15
スタッフ
監督 - 神戸守
シリーズ構成・脚本 - 吉岡たかを
キャラクターデザイン・総作画監督 - きしもとせいじ
メカデザイン - 大河広行
音響監督 - 清水勝則
音楽 - 小西香葉 / 近藤由紀夫
プロデューサー - 田村学 / 森尻和明 / 越中おさむ
アニメーション製作 - アームス
プロデュース - ジェンコ
製作著作 - バップ / ジェンコ
主題歌
オープニングテーマ
- 「LILIUM」
作詞・作曲:小西香葉、近藤由紀夫/歌:野間久美子
エンディングテーマ
- 「be your girl」
作詞:日向めぐみ/作曲・編曲:加藤大祐/歌:河辺千恵子
関連タグ
時の国のエルフェンリート:1997年にバンダイから発売されたPCゲーム。名前は似てるが、こちらは世界観が全く違う別作品でありSFではなく、ファンタジー作品になっている。なお、作者はバンダイ在籍時にこの作品の制作にかかわっていた。
評価タグ
エルフェンリート50users入り エルフェンリート100users入り エルフェンリート500users入り