概要
前作「vsビオランテ」の成功を受けてvsシリーズが上層部によって決定され、ゴジラのライバルとして名高いキングギドラを本作で再び登場させた上、キングギドラをサイボーグ化した「メカキングギドラ」が登場する。なお、昭和から平成シリーズまで通してゴジラとキングギドラが一対一の勝負をするのは本作のみである。
また、キャスト面でも「メカゴジラの逆襲」以来となる佐原健二の出演や伊福部昭が音楽を担当するなどゴジラシリーズでお馴染みの顔ぶれが再び結集することとなった。
また、東宝特撮史上初のタイムトラベルおよびタイムパラドックスが中心となった映画でもあり、作中の随所にアメリカSF映画へのオマージュが見られ、戦争中パートには「スピルバーグ少佐」がUFOを見て子供にそのことを話そうとするシーンもある。
内容はバブル時代の日本に対する警鐘を鳴らす物語であり、新宿の決戦シーンは都庁のセットが東宝特撮史上最大の石膏ビルになるなど、高層ビルの立ち並ぶ中での戦いになっており、前作、前々作でゴジラがビルに対し見劣りする大きさになってしまったという点を改善するべく本作よりゴジラの身長が当時としては過去最高の100mになった。
あらすじ
突如東京に飛来したUFOは23世紀からやってきたタイムマシンであり、それを操る未来の地球連邦機関の使者はゴジラが21世紀の内に日本を壊滅させてしまうという運命を語り、それを阻止するべくゴジラの誕生についての有力な仮説を考察したノンフィクションライター:寺沢と接触し、彼と共に戦時中まで遡ってラゴス島に住んでいたゴジラの元になった生物:ゴジラザウルス(恐竜)を水爆実験の影響を受けない地へ逃がすことでゴジラ誕生を阻止する計画を立てる。
計画は実行され、ゴジラは現代で消滅した。しかし、代わりにキングギドラが出現し、日本に襲い掛かる。未来人の語った運命は嘘であり、バブルが衰える事無く発展した23世紀の日本が世界の覇権を握ることになっていた未来を変えるため、現代日本を彼らの下僕であるキングギドラを用いて破壊する策略だったのだ。
これを受けて、かつて軍人時代にラゴス島でゴジラザウルスに救われた一大企業帝洋グループの会長:新堂靖明はゴジラザウルスを逃した地に自社が保有する原潜より核ミサイルを打ち込む事でゴジラを復活させ、キングギドラに対抗させようと目論む。
しかし、ゴジラザウルスは既に原潜事故で未回収になっていた核兵器や放射性廃棄物等の影響を受けてゴジラになっていた。そして、帝洋グループの原潜をも襲い、更なるパワーアップを遂げたゴジラとなって日本に、そしてキングギドラに襲い掛かる。
スタッフ
脚本 - 大森一樹
製作 - 田中友幸
音楽 - 伊福部昭
撮影 - 関口芳則(本編) / 江口憲一、大根田俊光(特撮)
編集 - 池田美千子
配給 - 東宝
公開 - 1991年12月14日
上映時間 - 103分
製作国 - 日本
キャスト
エミー・カノー:中川安奈
寺沢健一郎:豊原功補
森村千晶:原田貴和子
土橋竜三内閣安全保障室室長:小林昭二
ウィルソン:チャック・ウィルソン
林田総理大臣:山村聡
藤尾猛彦:西岡徳馬
新堂靖明:土屋嘉男
矛盾点
今作では未来人の策略によりこれまでのゴジラの存在がなかった(=前作、前々作、そして初代の事件も起こらなかった)ことになり、代わりに新たなゴジラが誕生したということになっているが、これにより、以下のようないくつかの矛盾が生じてしまっている。
1. 権藤吾郎の死
前作までの出来事がなかったことになっているため、本来ならば、権藤吾郎一佐の殉職もなかったことになっているはずである。しかし、実際には権藤一佐は死亡したままであり、『VSスペースゴジラ』では、彼の親友であった結城晃が仇を取ろうと躍起になっていた。
2. スーパーXシリーズの開発
前作までの出来事がなかったことになっているため、スーパーXおよびスーパーX2の出撃・撃墜もなかったことになっているはずである。しかし、『VSデストロイア』では、ちゃんと後継機が開発されている。
3. スペースゴジラ誕生のルーツ
スペースゴジラは何らかの原因により宇宙空間へ飛び出したG細胞が元になって誕生した生命体とされる。このG細胞は宇宙へと飛散したビオランテの細胞か、ゴジラとの戦いを終えた後、宇宙へと飛び去ったモスラの体に付着していたものに由来するとされる。スペースゴジラの外見を見る限りでは、元になったG細胞はビオランテのものである可能性が高いが、『VSビオランテ』までの出来事がなかったことになっていると考えた場合、辻褄が合わなくなってしまう。
4. オキシジェンデストロイヤーの使用
54年の事件が起こらなかったことになっているということは、芹沢博士によるオキシジェンデストロイヤーの使用並びに芹沢博士の死もなかったはずである。しかし、『VSデストロイア』では初代ゴジラの襲撃が起きていたことになっており、芹沢博士も従来通りオキシジェンデストロイヤー使用の際に死亡したとされている。さらには、オキシジェンデストロイヤー使用の影響により、太古の地層に眠っていたデストロイアが復活してしまったことになっている。
これらの矛盾点について公式からの言及は今のところ存在しない。