概要
この事件はマスコミの不祥事のひとつとされているもののひとつであり、朝日新聞が平成26年8月5日に「慰安婦が「女子挺身隊」の名で戦場に動員された」という記事と、いわゆる吉田証言、すなわち吉田清治氏が行った済州島において従軍慰安婦を強制動員したという証言、に対する報道を取消しを行った物であり、この取り消しの後を追う形で北海道新聞およびしんぶん赤旗も同様の報道を取り消し、謝罪を行った。
背景の概要
女子挺身隊に関しては報道当時はまだ大韓民国国内の慰安婦問題の調査が進んでおらず、韓国においてもこの言葉は誤解されており、根拠のないものとしては扱われていなかった( その後の調査により真相が明らかとなった面がある )。
吉田証言に関しては平成3年に報道された当初から、「証言は虚偽ではないか」という声が複数の専門家から(その中には吉見義明など、従軍慰安婦の強制はあったとする学者なども含まれる)上がっており、証言した本人も後に証言に虚偽が含まれることを認めている。
沿革
この項目ではこの「報道の取り消し」までの経緯を各々の項目に関し年代別に説明を行う。
吉田証言
吉田清治氏が「軍の命令により朝鮮人女性を強制連行し、日本軍の慰安婦にしたと「告白」」した件を事実として報道、後に当人物は証言を虚偽であったと認めたものの、朝日新聞をはじめとする新聞などのメディアはその時点で訂正や記事取り消しなどをを行わず、朝日新聞が取り消しを行った後に取り消しを行ったり、いまだ取り消しや謝罪をを行っていない報道機関も存在する。
昭和57年
第一次サハリン裁判(「樺太残留者帰還請求訴訟」と呼ばれ、樺太に残留した韓国人に対する日本の責任を問う裁判、後に提訴取り下げ)にて、吉田清治氏が「済州島において朝鮮人を強制連行した」旨の虚偽を含む証言を行う。
昭和58年
吉田清治氏により『私の戦争犯罪』三一書房刊が出版される。この著者の従軍慰安婦関連の2冊目の著書であり、吉田清治氏はこれ以降謝罪碑を建立したり、朝日新聞やしんぶん赤旗などのインタビューを受けるなど活発な活動を行う。
平成元年
従軍慰安婦問題において左派および同調するマスコミは政府、政権与党を攻撃することがあった。
一方朝鮮語に翻訳され出版された『私の戦争犯罪』の内容のでたらめさ、たとえばそのようなことが済州島では発生していなかったことが現地メディアの済州新聞(現・済州日報)や金奉玉氏( 済州島の郷土史家 )の調査で明らかにされている。
平成3年
朝日新聞をはじめとするメディア各社が「従軍慰安婦は強制であった」と吉田清治氏の証言や他者の各種証言等を元に記事等を作成。直後に大韓民国( 以下韓国 )において”軍隊に強制連行された元従軍慰安婦”を募集、相次いで「元従軍慰安婦」が名乗りだし、内32名が東京地方裁判所に提訴し、さらには提訴しなかった慰安婦も公演や証言等を行うようになった。なお、これらの特に記事に掲載された証言等に関し正確でなかったり年代の差異の存在等一部には問題のある証言等が含まれ、報道や出版された証言が裁判にて行われた証言と異なる場合も存在した。
平成4年
韓国において慰安婦と挺身隊の混同による誤報が報道される。
同年、元慰安婦の推定数が増加傾向を見る。産業経済新聞社が発行する月刊誌『正論』6月号で、秦郁彦教授が済州島での実地調査を発表、これにより、吉田清治氏の証言に虚偽が含まれる可能性が高くなった。
平成5年
河野談話、すなわち慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話、当時内閣官房長官であった河野洋平長官がいわゆる従軍慰安婦問題に対し「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」と発表。
また、日本側の譲歩によりこの問題は”従軍慰安婦”が正式な呼称とされる。
平成10年
『諸君!』( 文藝春秋が発刊していた月刊誌 )11月号において、「吉田清治氏は秦郁彦教授との電話のやり取りで、自身の著作『私の戦争犯罪』がフィクションであることを認めた」と掲載した。
平成12年
7月30日にこれらの証言を行った吉田清治氏が死去。
平成26年
以前より朝日新聞等のマスコミを苦々しく思っていた安倍晋三内閣による河野談話再検証の結果、当時の河野洋平内閣官房長官と韓国側による談話のすり合わせが発覚し、実は談話の内容に「軍による強制性は一切無かった」という記述が存在することが発覚、官邸の公式ホームページに検証結果の報告書が全文掲載された。
平成26年8月5日
朝日新聞はこの日の朝刊において「従軍慰安婦問題に関し、吉田証言を元とした記事が事実無根の虚偽報道であった」ことを認め、記事の取り消しを行った。
挺身隊関連
挺身隊の本来の意味に関してはwikipediaの女子挺身隊を参照されたし。
昭和18年
女子挺身隊、ここでは14歳以上25歳以下の女性が公的団体等の協力により構成する勤労奉仕団をさす、以下挺身隊と記述、が各地で成立する。
昭和19年
国家総動員法、すなわち総力戦遂行のため国家のすべての人的・物的資源を政府が統制運用するための法律、に基づき発令された勅令女子挺身勤労令により、「女子勤労挺身隊」が結成され、これまでは奉仕であった労働が雇用に変わったものの、この法令は内地のみの施行であったと推測される。
また、朝鮮半島においては3月より官斡旋、つまり朝鮮の統治機関である朝鮮総督府に必要人数を伝えそれを地方に割り振る方式であり、拒否等による罰則はないものの各種圧力もあり拒否は困難であったと推測、の「女子(勤勞)挺身隊」が徴募され、主として日本国内にて勤務し、一応給与等を付与される形式で行われた。朝鮮半島においては朝鮮王朝よりの伝統により婦女の動員が忌避された可能性が存在する。
また、国民徴用令が8月に施行されたものの、女子は除外された。
昭和20年代
韓国においてこの時点で「挺身隊」が「慰安婦」と混同されたという事例はわかる範囲でも昭和21年( 西暦1946年 )の報道が存在し、実際には戦中にはすでに混同されている可能性が存在する( これは統治権力への不信および慰安婦募集業者の虚偽の説明から両者を同一視し、恐れる風潮が戦時期から存在していたものと思われる。
昭和45年( 西暦1970年 )
韓国の新聞、ソウル新聞が「挺身隊が日本と朝鮮合わせて20万人、うち朝鮮半島で5~7万人」と報道、ただしこの件数には後の検証により疑問が呈されており、その検証では朝鮮半島の挺身隊の人数は4000人程度とされている。
昭和48年
『従軍慰安婦 正編』(千田夏光氏)において上記の記事を誤読、「挺身隊が朝鮮半島で20万人、うち慰安婦が5~7万人」と記述する。なおこの人物は元毎日新聞の記者であり従軍慰安婦という言葉を考案した人物であるが、著作には問題が存在しているといわれる。
昭和50年代
ソウル新聞の記事は韓国においても誤読され、「挺身隊が朝鮮半島で20万人、うち慰安婦が5~7万人」という説が韓国においても広まる。
昭和61年
平凡社刊「朝鮮を知る事典」に『従軍慰安婦 正編』を根拠としてこの数字が記載される。
平成2年
韓国挺身隊問題対策協議会、この組織は日本軍による韓国国内の慰安婦問題を解決するための団体、が結成される。この団体が結成されるきっかけの一つして「女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦のうち、一人が名乗り出た」という報道がされたこともあるとされる。
平成3年~4年
朝日新聞は事実調査をおざなりにし、「朝鮮を知る事典」などを根拠として「第2次大戦の直前から『女子挺身隊』などの名で前線に動員され、慰安所で日本軍人相手に売春させられた」、「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」などと報道。
平成7年
村山富市総理大臣の肝いりで財団法人「女性のためのアジア平和国民基金」設立。この団体は慰安婦に対する補償および女性の名誉と尊厳に関わる今日的な問題の解決を目的として設立された財団法人であり、略称:アジア女性基金。募金により運営資金がまかなわれた団体であり、平成19年に補償事業が「完了」し解散、活動のアーカイブは「慰安婦問題アジア女性基金デジタル記念館」に存在する。
平成11年
アジア女性基金運営審議委員高崎宗司氏の調査結果により「朝鮮半島出身の挺身隊5万から7万人が慰安婦にされた」が誤解であったことおよび実際の挺身隊の人数は4000人程度と推測されること、および「誤解のもととなったソウル新聞の記事」も明らかとされた。
ただし「挺身隊=慰安婦」という内容が流言であったかどうかは韓国国内にも資料がないとして十分に検証されておらず、朝鮮半島のその後の戦乱の結果行われたか、それとも業者の方便だったのか、日本軍が本当に集めていたかは不明のままである。
平成26年
8月5日、朝日新聞は朝刊において「従軍慰安婦問題に関し、朝鮮人慰安婦が女子挺身隊の名で戦場に動員された」という記事は事実無根の虚偽報道であった」ことを認め、記事の取り消しを行った。
ほかメディア
同様の内容を取り上げていた赤旗もまた、平成26年9月27日に吉田証言に関する記事を取り消している。また、北海道新聞も平成26年11月17日に記事取り消しを行った( リンク先である47Newsは共同通信と地方新聞の記事を扱うPress Net Japanが運営するニュースサイト)。
他のメディアに関しては吉田証言や挺身隊の慰安婦徴用を取り上げていなかったはずはないのであるが、真実として報道しなかったかは不明であり、真実として報道していたマスコミはほかにも存在するはずであるが、彼らは謝罪および記事の取り消し等は行わなかった模様である。
そのほか
- この件は「国内メディアにおける不祥事」として取り上げており、従軍慰安婦問題の存在や実態に関する問題は別の項目で行うものとする。
- なお、ネトウヨおよびサヨクはこの項目をイデオロギーの発散場所として用いている節が存在し、直接関係しない「従軍慰安婦の存在」や「従軍慰安婦に対する政府の立場上の活動」など関してこの項目を使い議論している面が見られる。
- また、陰謀論として「朝日新聞はほかの誤報のもみ消しを目的としてこの謝罪を行った」との意見が存在する。
- 2007年よりアメリカ合衆国のクリントン・ブッシュ両政権下で8年かけて日本やドイツなどの戦争犯罪の大規模再調査を行っていたが、この不祥事の発生した2014年時点において韓国の主張する従軍慰安婦問題を裏づける証拠は何一つ発見できなかったことが、産経新聞より報じられている。
関連項目
参照
wikipedia:朝日新聞の慰安婦報道問題およびリンク先