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AH-64の編集履歴

2016-08-23 00:10:59 バージョン

AH-64

えーえっちろくよん

アメリカ陸軍の対地攻撃ヘリコプター。1970年代に入って増強された、ソ連戦車隊への対抗として生み出された。新型のAGM-114「ヘルファイア」を運用できるように設計され、『空飛ぶ対戦車砲』である。複雑・高価な機体であり、AH-1ほど採用国は多くない。また、整備の複雑さを嫌った海兵隊ではAH-1を使い続けている。

ソ連戦車の脅威

現在、アメリカ陸軍はこのAH-64を主力と位置づけている。

開発のきっかけは、1970年代のワルシャワ条約機構ソビエト含む)戦車隊の大幅増強であり、NATO軍は数の上での劣勢が予測されたからである。


そのため、AH-64は『空飛ぶ対戦車砲』としての機能が期待され、最初から「撃ちっぱなし能力」を持つAGM-114ヘルファイア空対地ミサイルの運用能力を持つ事が決まっていた。


当時の陸軍主力攻撃ヘリコプターであるAH-1には、有線誘導であるTOWミサイルを運用していた。

これは『命中するまで照準スコープで狙い続ける必要がある』という欠点があり、発射して自分の位置が露呈しても、照準スコープを覗き続ける危険を冒さなければならなかった。

だが、新型のヘルファイアは違う。

地上の兵士や他のAH-64が照準用レーザーの照射を行っているのであれば、母機はミサイルを発射すればそれだけで良く、後は隠れるなり逃げるなり自由に動けるのだ。

(AH-64の訓練項目にハンター・キラーと言うものが有り、これはペアで行動する際、一機《ハンター》がレーザーで目標をロックし、もう一機《キラー》が自機のミサイルで攻撃を行うというもの)

また、発射後にロックオンする事も可能であり、遮蔽物に隠れたまま機首部のTADS/PNVSのみを露出させての照準も可能なので、高い生存性を持っている。

(複数目標の同時照準は不可能であったが、後述のアパッチ・ロングボウではその能力を獲得している)


この能力で「神出鬼没の対戦車砲」として戦場を駆け回り、戦車隊の脅威を抑えるのが本機の役割とも言える。


AGM-114ヘルファイア

「ヘルファイア」とは"HELicopter Launched FIRE-and-forget"の略称であり、「ヘリコプターから発射可能な撃ちっぱなしミサイル」という意味である。(少々強引だと思うが)

殆どのモデルはレーザー誘導を必要とするミサイルではあるが、L型ロングボウ・ヘルファイアでは完全な撃ちっぱなし能力を得ている。


アメリカ陸軍の主力攻撃ヘリコプター

・・・と、当初はこのような目論見であった。

だが、実際には「アメリカとソ連の最終戦争」は起こらず、それに伴いAH-64は活躍の場を失ったかに見えた。


冷戦が終結しつつある1990年、イラククウェートに侵攻により、国連は事態の鎮静化の為に多国籍軍(国連軍ではない)の派遣を決定する。

いわゆる1991年の湾岸戦争勃発である。


第2世界でも随一の軍備を誇るイラクに対し、アメリカをはじめとする多国籍軍はドイツに集積していた「最終戦争」用の装備を持ち出した。

それは主にM1エイブラムス戦車の精鋭部隊だったのだが、その中にはAH-64も含まれていたのである。


この戦争でAH-64は本来の能力を存分に発揮し、イラク軍の戦車・装甲車を800台以上撃破したという。

他にもレーダー施設や防御陣地の攻撃に投入され、大きな戦果を記録した。

反面、砂漠での運用は想定されていない為に故障が頻発し、すぐに整備し直さなければならなかった。


後のイラク戦争(2003年)では、戦争初日にAH-64の集団(30機)がイラクの防空陣地に接近しすぎた為に全機が攻撃を受けて損傷し、1機などは不時着する被害を受けている。


また、農夫の目の前で不時着したAH-64が「農夫の撃墜」として報道された事もある。

テレビカメラの前で古い小銃を手に取材を受ける農夫の後ろには、ほぼ無傷のAH-64が映っていた。

実態はこちらもエンジントラブルだったようだ。(パイロットは不時着後に徒歩で逃亡している)


兵器の定型

これらの戦争を通して攻撃ヘリコプターとしての有用性を知らしめたAH-64だが、その一方で「見た目の割にヤワ」というイメージも広まってしまった。

AH-64は複雑・高度な兵器であり、更に構造が複雑なヘリコプターである事も手伝っている。

ヘリコプターはローターの力でやっと浮いているという代物なのである。

その為、高地では活用が出来ず、天候の影響を受けやすい。

同じ価格の飛行機に比べても、速度や整備性、燃費は悪く、運用コストや故障率も高い。


コソボ戦争時、陸軍はtask force hawkという空軍を補助する地上攻撃用のヘリコプター部隊を編成したが、得られた評価は芳しくなかった。

高脅威環境下では搭乗者の危険度といったデメリットがメリットを上回るという事が明らかとなった為である。

航続距離の関係から前線近くの攻撃を受けかねない場所に展開する必要があった為、防備に兵力を割く必要もあった。

大規模部隊の中で運用する事を前提とした攻撃ヘリコプターを単体の部隊として運用してしまったという間違いがあったとはいえ、アルバニアに展開した際に維持する為に使用された輸送機C-17は700ソーティーを越え、コストは2億5千万ドルを超過してしまっている。


このような兵器の存在を許しているのは「戦術上の必要」であり、これでも大分良くなった方なのだ。(傍から見れば、やはり不完全なのだろうが)


派生型

AH-64A

Inferno

初期生産型。詳細は上記の通り。


AH-64Ai

イスラエルが手持ちのAH-64Aを独自にアップグレード改修したモデル。

ヘルファイアに変わってSpike-LR対戦車ミサイルを搭載し、ロケット弾はハイドラ70ロケット弾以外にGATR(Guided Advanced Tactical Rocket)レーザー誘導ロケット弾を使用できるようになっている。


AH-64B

湾岸戦争の後、アメリカ海兵隊に提案されたAH-64Aの強化型。

新型ローターやGPSなどの新型航法装置などが搭載される予定だったが、計画はAH-64C/Dに引き継がれた。


なお海兵隊は整備の面倒なAH-64を嫌い、AH-1の改良型を採用した。


AH-64C

後述のAH-64Dからローターマスト搭載のレーダーを除いたもの。

これにより低価格で販売できると目されていたが、最終的にAH-64Dに統合されている。


AH-64D

AH-64D ロングボウアパッチ

現在の主力生産機。

11か国で採用され、対地攻撃を主任務とした攻撃ヘリコプターとして活躍している。(ただし、日本は13機で調達中止)

愛称はアパッチ・ロングボウ(Apache Longbow)

機首部のTADS/PNVSが第二世代のM-TADS/PNVSアローヘッドに換装されているが、2005年以降は他のモデルも順次換装されている。


前述の通り、ローター上のロングボウ・レーダーの有無にかかわらずD型と呼ばれているが、

基本的には、輸出機もアメリカ本国と同様にレーダー装備仕様となっている。

オランダ輸出型のみレーダー未搭載:AH-64DN)


ブロックIIではC4ISR能力を付与されている。


6月4日ということで

なお、陸上自衛隊に納入されたブロックIIをベースとしたAH-64DJP(自衛隊での名称はAH-64D)は三重県の明野駐屯地や、佐賀県の目達原駐屯地に配備されている。

したがって近隣の市町村や県では、飛行する同機を目撃する事もある。

その際はAH-1Sとは違う機影・違うエンジン音などで識別する事ができる。

また、過去の計画では一旦不採用となったAIM-92 ATASの運用能力を得ている。

ライセンス生産を担当した富士重工は、調達中止に伴い生産設備等の投資回収ができなくなったとして防衛省に対し訴訟を起こしている。


WAH-64

イギリス向けのAH-64Dは当初、WAH-64と呼ばれていた事があった。

この形式番号はライセンス生産をウェストランド社が担当した事から由来する。

(実機の引き渡しが始まる頃には、イタリアのアグスタ社と合併して「アグスタ・ウエストランド社」となっていた)


正式な名称は「アパッチ AH Mk1」もしくは「AH.1」となっている。

もちろんイギリス独自の装備もあり、英国製の装備を搭載できるようにしたり、エンジンを英国産のものに換装したり、メインローターを畳める様にしたり、防潮加工を施すなどにより空母等で海上運用できるように改修を施されている。(他にも独自装備は数多い)


アパッチの英国面

運用方法は空母を拠点にできる以外は基本的には他国の攻撃ヘリコプターとほぼ同様だが、中にはぶっ飛んだものがあり、強襲作戦の際に特殊部隊員を機外にしがみつかせて輸送するというもので、曰く「この方が速くて安全だと判断された」との事。


真面目な話、こういったことは珍しくはなく、負傷した兵士の搬送のためにガンナーが機外にしがみ付いて飛行すると言うことは行なわれており、アメリカ軍でも兵士の搬送時の同様の事は行なわれ、デモフライトではイタリアのA129も同様のことを行ったことがある。

しかしあくまで戦闘終了後や後方などのある程度安全が確保された状況で行なわれることであって、強襲時に行なうことではない。


アフガニスタン駐留部隊など、一部の部隊では兵員収容能力を持つ小型強襲ヘリコプターを保有していない為にこのような事をしなければならない、といわれている。


AH-64E

AH-64D ブロックIIIを改名した最新型。

ブロックIIの更なる強化に加え、無人機の運用能力などが付与されている。

採用国はアメリカと台湾韓国である。

愛称はアパッチ・ガーディアン(Apache Guardian)


銀幕への道

アメリカの主力攻撃ヘリコプターとして活躍している事もあり、映画での露出も多い。ローン・サバイバーのラストシーンなどはアパッチ好きとしては必見。

ただし、主に脇役として登場するのが殆どで、主役として華々しい活躍をするような事は少ない。


その数少ない主役作品が1990年製作の『アパッチ』(原題:「Wings of the Apache」or「Fire Birds」)である。

「ミサイルと言いながらロケット弾を斉射する」等の描写は残念であるが、若かりしころのニコラス・ケイジを拝めるのは良いところ。


関連イラスト

AH-64D アパッチ・ロングボウ。モバ絵、指で絵が描けるのか?

無題


関連タグ

攻撃ヘリコプター AH-56 AH-1

ヒューズマクドネル・ダグラスボーイング 製造会社

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