解説
1980〜89年に日本でデビューし、芸能活動を行ったアイドル、特に歌手活動を積極的に行った若手芸能人を総合して「80年代アイドル」と紹介する。
1980年代前半は、松田聖子、中森明菜、小泉今日子ら多数の女性アイドルが生まれ、「アイドル黄金時代」と呼ばれる。また、その中でもアイドルの当たり年(デビュー年)は一般に、1980年・1982年・1984年・1985年と言われている。
70年代アイドルの流れを組み、歌謡曲やポップスを歌う若手の歌手をアイドルと称するが、「アイドル」の語が一般に浸透したことで、さらに専門的に「アイドル」という芸能活動のスタイルそのものを指すようになったのもこの時代の特徴である。
いわゆる「バラドル」が誕生したのは80年代後半からで、(多くの場合)アイドルとしてデビューしながらもなかなか日の目を浴びなかったタレントたちが、バラエティ番組での「素のリアクションを楽しむ」という笑いに迎合する形で評価されるようになり、これまでの正統派アイドルとはまた違ったジャンルのアイドルも注目されるようになった。
しかし、1980年代終盤に入るとバンドブームの煽りを受けてロックバンドが台頭。またゴールデンタイムにおける歌番組の相次ぐ終了により、“プロのアイドル”の時代は終わりを迎え、「アイドル冬の時代(または「アイドル氷河期」)」に突入した(一部では、1986年に起きた岡田有希子の自殺が芸能界の暗部を露呈させ、アイドル衰退のきっかけになったとの見方もある)。
ただし、80年代後半は折からの「美少女ブーム」、「モデルブーム」もあり、男女共に(比較的低い年齢層の)モデルや俳優が芸能界で活躍し始めた時代でもあるため、これまでのアイドルのパフォーマンススタイルが変容しはじめただけで、アイドルという存在自体が終わったというわけではないといえる。
80年代アイドルのような路線を引き継ぐアイドルとしては高橋由美子がおり、『20世紀最後の正統派アイドル』と称された。
当時のアイドル達は引退した者もいるが、芸能界に残った者は本格的にミュージシャンや俳優にシフトしたり、バラエティ系のタレントに転身したりと、それぞれに新しい形で活動している。また、結婚・出産した者の中には、既に子が二世タレントとして活動している者もいる。
30年以上経った現在でも、アイドルたちの魅力や楽曲・パフォーマンス、そしてそれらのプロデュースに魅了され、愛好するファンは多い。
近年では音楽番組などで取り上げられたことや、影響を受けたアイドル・アーティストの活躍もあり、若い世代のファンも増えている。
活躍したアイドルの一覧
ここでは代表的なアイドルについて記載する。
一部「子役・俳優などとして既にデビューしていたが、歌手デビューによりアイドルと呼ばれるようになった」人物は※で補足する。
女性
※1:女優デビューは1978年の『野生の証明』。その後も女優活動が中心である。
※2:内海和子(元子役)、工藤静香(ミス・セブンティーン出身で加入前に歌手デビューしている)など、グループ参加前から芸能活動を行なっているメンバーも在籍していた。
※3:70年代に旧芸名で子役として活動。その後87年に現在の芸名に改名し、歌手デビュー。
※4:もともとはティーンモデル・女優として活動していたが、一時期アイドルとして音楽活動を行った。
※5:チャイルズとしては85年から活動。87年から初代いいとも少女隊となり、88年にレコードデビュー。
男性
デビュー年 | |
---|---|
1980年 | 田原俊彦※1 近藤真彦※1 真田広之 |
1981年 | 沖田浩之 イモ欽トリオ |
1982年 | シブがき隊 渡辺徹※2 嶋大輔※2 羽賀健二※3 |
1983年 | 野村義男※1 チェッカーズ C-C-B 風見慎吾 |
1984年 | 吉川晃司 一世風靡セピア 坂上忍※4 |
1985年 | 少年隊 石黒賢 野村宏伸 鶴見慎吾※4 野々村誠※3 |
1986年 | 中山秀征 池田政典 息っ子クラブ |
1987年 | 光GENJI 織田裕二 仲村トオル※5 |
1988年 | 男闘呼組 江口洋介 |
1989年 | 吉田栄作 幕末塾 |
※1:いわゆるたのきんトリオ。野村は83年にバンドでレコードをリリースしたほか、ソロ歌手としても同時期にデビューしている。
※2:渡辺・嶋共に81年に俳優デビューしている。渡辺は文学座出身で、現在も俳優活動が中心。
※3:初代いいとも青年隊。ソロデビューの年を記載。
※4:子役として70年代から活動。本業はあくまで俳優だが、一時期アイドル扱いで音楽業を行った。
※5:俳優デビューは『ビーバップハイスクール』で、同作の挿入歌で86年に歌手デビューしていた。