あれこれ&作中での立ち位置
デザインしたのはスポーンの作者で有名なトッド・マクファーレン。
野性的で凶悪なスタイルからカルト的な人気を誇っており、初登場は1988年と比較的新しいキャラクターながらスパイダーマンにおけるライバルの座に着いている(後述する元になるスパイダーマンのコスチュームとしては1984年)。
登場初期は、「悪のスパイダーマン」というイメージに過ぎなかったが、完全な悪とは言えない活躍ぶりや後にヴェノム以上に凶悪極まりないカーネイジが登場した事もあって、結果的にヴェノムは悪役ではなくライバルの位置についたといえる。
現在は記事タイトルでもある「ヴェノム」が主流だが、綴りが「VENOM」なのでベノムとも読み、1990年代から2000年序盤はこちらの方が使われていた。対戦ゲーム・『マーベルVSカプコン』に登場した際は日本語読みで”ベノム”だったので中には今でもベノムと読むほうが馴染みがある人もいるだろう。
Twitterの映画の日本版公式アカウントがベノムと呟いたファンのツイートにベノムではなくヴェノムと訂正したこともあったが、直後にその発言が削除されたため現在も「ベノム」表記自体は問題ない様子である(単純に担当者、いわゆる中の人がベノムと呼ばれていたことを知らなかっただけの可能性もあり公式見解かは不明だが)
ちなみに「VENOM」とは”毒物、悪意、憎悪”などを意味する。
ヴェノムの概要
元は、ピーター・パーカーが、ブラックスパイダーマンとして着込んでいたシンビオート(共生体)であったが、人間の憎悪等を駆り立てさせる危険性を秘めていた為に、鐘の鳴り響く教会の上で、苦しみだしたシンビオートは、これを好機と見たスパイダーマンに脱ぎ捨てられた。
しかし、偶然その真下にいた、スパイダーマンを憎むエディが、落ちてきたシンビオートと融合してしまった事で、第2のスパイダーマン・ヴェノムが誕生する事になった。
シンビオートとの共生体であるため一人称は「俺たち(We)」である。
黒いネバネバはあくまでシンビオートであって、「ヴェノム」はこれを指す言葉ではない。
シンビオートがスパイダーマンの能力を全て記憶しているので、ウェブシューターやスパイダーセンスといった彼の能力をそのまま使うことが出来る上に、スパイダーマンのスパイダーセンスを潜り抜けることができる。
スパイダーマンのブラックコスチュームが元になっているだけあって基本的には黒いマッシブな身体に白い蜘蛛のマークが入っている。
しかし、シンビオートは変幻自在の為に、衣服等に擬態する事も出来る。
3代目のスコーピオが宿主となった際は、敵を捕食するという残忍な能力も得ている。
4代目であるユージン・トンプソン(フラッシュ)が「エージェント・ヴェノム」として宿主になった際は、よりヒーロー的な外見となっている。シンビオートを変形させた触手を利用して、複数の銃器を多方向に向けて使用する事が可能になり、更に専用武器である様々なタイプに変形する銃「マルチガン」も装備している。フラッシュ自身がプロの軍人としての経験を持っていた事もあって、総合的な戦闘力は、これまでのヴェノムよりも高くなったと言える。
フラッシュはシンビオートの母星においてシンビオートの真の姿を知ったことでさらにスペースナイトとしての姿を獲得した。
また、最近は人間以外の姿を取る事があり、ラプトル型の恐竜に戦隊物のごとき集団でなってデップー軍団とやりあったりしている。
この変幻自在な性質のためかコミック内では人間にまとった程度が基準な一方で迫力重視なのかサイズが明らかにでかくなっていることもしばしば。
単純なスペック自体はスパイダーマンより高いものの、シンビオートの弱点として熱と高周波(主に金属のぶつかり合う音)がある。そのため、スパイダーマンとはほぼ互角の力関係にあるといえる。ちなみにこれはカーネイジを始めとする他のシンビオートとの共生体達とも共通している。
ヴェノムとはシンビオートと人間が合体して初めて成立するキャラクターである。そのため宿主やその性格が変わる事で、キャラクターとしての立ち位置が大きく変わる存在である。凶暴なキャラであることは変わりないが、無関係の人間を積極的に襲うことはなく、場合によっては普通に人助けをしたりもするというキャラクターになったりもする。スパイダーマンとさえも、カーネイジを相手にした場合には渋々ながら手を組むことがある。
まさに、悪役というよりもライバル、アンチ・ヒーローという言葉がふさわしいキャラクターであるといえる。
シンビオート自体も固有の意思を持つためヴェノムやその派生キャラクターたちのシンビオートとの付き合い方も魅力の一つとなっている。
ちなみに、シンビオートは基本的に初代の宿主であるピーターやエディに取り付く事を好んでいるらしい。
インパクト溢れる外見と、悪役でありながらどこか憎めない味のある性格等から、スパイダーマンの敵のなかでも屈指の人気を誇っている悪役(ヴィラン)であり、現在ではダークヒーロー、そして時にはヒーローとしての側面も持ちあわせる、それがヴェノムなのである。
ただ、その特殊な経緯からか別世界観の際には中身がエディではなかったりヴェノムが人間とシンビオートの共生体でなかったりシンビオートが宇宙出身でなかったり単純な悪役だったりすることもしばしば。
ヴェノムになった人物
初代
本名エドワード・チャールズ・アラン・ブロック。
詳しくはエディ・ブロックを参照。
2代目
本名アンジェロ・フォートナート。
エディが参加したオークションで見事にシンビオートを競り落としたニューヨーク・マフィアのドンの息子。
自らの実力を父親や組織に見せ付ける為に見境の無い暴れ方をしたが、肝心のスパイダーマンを相手にすると恐れをなして一目散に逃げ出すという醜態を晒す。
その情けなさからすぐにシンビオートに見限られてしまい、ビルからビルへ飛び移った際に強制的に離脱され、転落死している。
3代目
本名マック・ガーガン。
元は「スコーピオン」という蠍似た風貌のサイボーグで、詳細は該当記事参照。
アンジェロの死後、一時的に3代目のヴェノムとなって猛威を振るっており、人間を貪り食う等、これまでのヴェノム以上の凶悪さを見せている。
コミック内では特に見せてはないがそれ以外のキャラ付けとしてかフィギュアなどで元のスコーピオンの尻尾が反映されることもある。
彼から離脱したヴェノム・シンビオートは、アメリカ政府の管理下におかれた。
4代目(エージェント・ヴェノム)
本名ユージン・トンプソン。
詳しくはエージェント・ヴェノムを参照。
5代目
本名リー・プライス
かつて軍人だった男性。
幼少期の経験や兵士だった頃のトラウマから歪んだ人格を持っており、ガーガンをも越えるほど冷酷で暴力的なサディスト。結合してその頭の中を覗いたシンビオートからはっきりと「壊れている」と告げられたほど。
分離しようとしたシンビオートをその精神力で無理矢理自らの身体に閉じ込め、殆ど虐待に近い扱いを続けていた。悪知恵も働くようで、警察やFBIの罠を察知したり犯罪者として賢く立ち回る。
最後はFBIやスパイダーマン、エディ・ブロックに追い詰められ、あえなくシンビオートを取り上げられてお縄についた。ちなみに、回収されたシンビオートはすぐさまエディによって奪われることになる。
最後は別のシンビオートで暴れていたが、多数のヒーローに鎮圧された挙句現れたカーネイジにより殺害された。
エディの元妻アン・ウェイングが一時的にシンビオートと合体した姿。
漫画では、このことがトラウマとなって彼女は後に自殺してしまった。
映画版
サム・ライミ版
『スパイダーマン3』に登場。中身はエディ。
予告編ではサンドマンとハリー=ニュー・ゴブリンがフィーチャーされており、そのビジュアルなどもほとんど明らかにされないまま、劇中中盤になって半ばサプライズ気味に姿を現し、そのまま今作のラスボスを務めた。
おおまかな誕生経緯や、能力などは、原作漫画の初代ヴェノムと代わらない。
X-MENが存在しない本作の世界では、シンビオートは宇宙空間には現れず、ニューヨーク郊外に飛来した隕石から現れた宇宙生物という扱いで、ひょんなことからピーターに発見され、彼の自宅で寄生生活を送ることになる。
ピーターは最初こそシンビオートスーツの強大な力を楽しんだものの、憎悪や攻撃性を駆り立てる性質によって親しい人々と決裂してしまったことで、最終的にはシンビオートを強引に引きはがして離別した。しかし、剥がされたシンビオートがそのまま近くにいたエディに寄生してしまい、ヴェノムが誕生した。
終盤の戦いでは、サンドマンと組んでスパイダーマンを瀕死に追い込み、ハリーが彼の加勢に駆けつけてからも互角以上の戦いを展開、ついにはハリーを殺害してしまう。
しかし、高周波が弱点であることに気づいたスパイダーマンの機転によって敗北し、最期はパンプキンボムによって、シンビオートの力に目がくらみきっていたエディごと焼きつくされて完全に消滅した。
宿主のエディがマッチョではない為に、外見はスパイダーマンと同じく細身で、性格もどちらかというと原作漫画のカーネイジに近い凶悪さである。
ファンからは「こんなのヴェノムじゃない」という批判もあったが、サム・ライミ監督自身がそもそもヴェノムのことをあまり好きじゃなく、配給会社やプロデューサーの指示で無理強いされ主要ヴィランとして出演させざるを得なかったという経緯があるから仕方ない(監督はブラックキャットを出したがっていたが受け入れられなかったとか)。そりゃあ適当なキャラ付けにもなろうものである。
マーク・ウェブ版
マーク・ウェブによってリブートされた新シリーズ『アメイジング・スパイダーマン』にも登場予定で、単独スピンオフ映画の企画が存在した。人気キャラと言うこともあって、いきなり本編に登場するのではなく、単独主役としてデビューしてから本編に合流する予定だったようだ。
しかし、『アメイジング・スパイダーマン2』が観客の不評を買ってギリギリ赤字となってしまった(特にアメリカ国内では興行的に失敗)ことから、シリーズの展開が中止され『3』以降の製作もキャンセルされる運びとなってしまい、これに伴ってヴェノムの単独映画企画も同様にお蔵入りとなった。
映画『ヴェノム(原題)』
北米では2018年10月5日公開。日本では同年11月2日公開。
従来の実写スパイダーマンシリーズや、MCUのいずれとも世界観を共有しない独立作品として製作・公開された。
上述の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズで予定されていた単独映画企画が復活したもの。
マーベル・スタジオ主導の元でスパイダーマンの新たな実写シリーズの製作が決定し、2016年公開の『シビル・ウォー/キャプテンアメリカ』にもスパイダーマンが先行登場するなど、実写版再始動へ向けての機運が高まってきたことが影響したものと思われる。
主演は、『バットマン』の『ダークナイト』シリーズでベインを演じたトム・ハーディ、監督は、『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー。
ハーディ氏は、ベインを演じる際に肉体改造を行った程のプロ意識の持ち主で、更にスパイダーマンのヴィランの中でもヴェノムが好きであると公言している事から、早くからヴェノム役としての活躍が期待されていた。
シンビオートの日本語吹替えは、『アメイジング・スパイダーマン2』でエレクトロ役を担当した中村獅童氏。
『ダークナイト』シリーズに引けをとらない陰鬱な雰囲気の予告編とは裏腹に、エディとシンビオートがコミカルな掛け合いを繰り広げるなど比較的砕けた雰囲気のバディアクションに仕上がっており、レーティングも全年齢対象。最初こそシンビオートの存在に戸惑いを隠せないエディであったものの、様々な経緯を経て次第にシンビオートとの一種の「繋がり」を築いていき、最終的には互いの合意でヴィランであるライオットと激突を繰り広げる等、「ヴェノムの誕生と自分なりの正義で行動するストーリー」として描かれている。本作におけるヴェノムはシンビオートの「負け犬」であり、底なしの食欲を誇り敵対する人間を食いちぎろうとする一方で、あの手この手で宿主のエディを守ったり元恋人と仲直りさせたりする人間臭い部分も存在している。また、寄生虫呼ばわりされると怒る。
サム・ライミ版『3』と違ってより原作のヴェノムにかなり近い描写になっており、お馴染みの決め台詞である“We are VENOM.”(「俺たちはヴェノムだ。」)もしっかり再現されている。しかしその一方で、スパイダーマンが劇中に全く登場せず、ヴェノムの誕生にも絡まないという非常に大胆な改変がなされてもいる。
マークウェブ版の大失敗を受けて独自のシリーズ展開を諦め、MCUの人気が伸びる一方のディズニー=マーベルスタジオと組んで新たなスパイダーマンシリーズを立ち上げたばかりという状況のソニーが、敢えてMCUとは距離を置いて再び独自にアメコミ映画を作るという無茶な構図に、公開前は冷ややかな意見もあった。実際、公開後も批評家からの評価は散々であった。
しかし、大方の予想を裏切って本作は世界累計興収8億ドルを超える大ヒットを記録。『3』と異なってヴェノムらしさはちゃんと描かれていた為に、高い観客支持を獲得した。
この成功を受けてソニーは、今作を起点として、MCUとは別の独自ユニバース「スパイダーマン・ユニバース(仮称)」を立ち上げることを決定。モービアスやブラックキャット、シルバーセーブル、シルクといったキャラクター達の単独映画企画を次々と立ち上げている。
映画のラストでは、あの人物の投獄されている姿が描かれた。
映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(原題)』
2021年12月3日予定。当初は2020年の予定だったがCOVID-19の大流行の影響で延期された。
前作ラストで暗示されていた通り、カーネイジが新たに登場し、ヴェノムと激闘を繰り広げる。
モーションアクターとして『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムやハリウッド版ゴジラなど数々の人気キャラを演じたアンディ・サーキスが監督を務める。また、主演のトム・ハーディが脚本に参加している。
詳細については、スパイダーマンの実写映画の項の方も参照されたい。
アニメ版
ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ
シンビオートがスパイダーマンを取り込みブラックコスチュームあるいは映画版での体型で登場。
ニューヨークで行き過ぎたヒーロー活動を行っていた。
時間制限のあるアベンジャーズとの戦いでは優位に立つも高周波という弱点を突かれスパイダーマンから分離、その後は何とハルクを取り込んでしまった。
ハルクを取り込んだ後は原作に近い体型となりシンビオートを触手として使用していた。
合流したアベンジャーズとスパイダーマンの活躍によってハルクから引き離されるとビルドアップしたハルクからガンマパンチを受けダウンし、そのままDセキュアされた。
なお、スパイダーマンの属性はアニマルだが、ハルクを取り込んだためか属性はパワーとなっている。
アルティメット・スパイダーマン
今作ではシンビオートは人工生命体であるため、ヴェノムが量産されている。
エディ・ブロックに近い体型のものや、狼やドラゴンに寄生したヴェノムなども登場する。
シーズン3では、フラッシュが寄生され、SHIELDにスカウトされエージェント・ヴェノムとなる。
原作では軍人で足を失っていたのだが、今作では学生であり足も失っていない。
アメフトのアーマーを付けたまま変身したため体型は鎧のようになっている。また、初戦の相手であったビートルの武装を剥ぎとって吸収し、より原作に近い見た目になる。
ちなみに、フラッシュは当初スカーレット・スパイダーを名乗っており、外見もほぼ同じだった。
マーベルスパイダーマン
シーズン1から登場しており、フラッシュに寄生してたため終始うなり声をあげるだけであった。
放送予定のシーズン2ではエディ・ブロックらしき人物がPVで登場している。そしてシーズン2でもヴェノムは登場する模様であり、その際は喋っていたため恐らくエディがヴェノムになると思われる。そうなると、エディのヴェノムがアニメに登場するのはスぺクタキュラースパイダーマン以来実に十数年ぶりの登場になる。
ゲーム
Marvel's Spider-Man 2
詳細は不明であるが、前作ではヴェノムの誕生を示唆するようなシーンが描かれていた。
その他
スパイダーマン/偽りの赤
スパイダーマンの敵として登場するようであるが…。
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スパイダーマン カーネイジ ヴィラン トキシン シンビオート
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